顧客満足度を高め目標達成へ導くマーケティング施策には、データから情報を読み取り推測する統計学が欠かせません。しかし、「いまいち統計学をマーケティングに活用できていない」「統計学がどのようなものかわからない」という方も少なくないでしょう。
そこで本記事では、マーケティングに統計学を活用することの重要性や、統計モデル・分析手法の具体的な活用方法について詳しく解説していきます。最後には、統計学のおすすめの学習方法についても紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
統計学とは?
統計学とは、データの収集や整理・分析を通じ、ある事象や集団の特徴および傾向を分析するための学問です。主に、データから情報を抽出したり、得た情報から物事を予測・意思決定する際に活用されます。
ここからは、
- データ分析との違い
- マーケティングにおける統計学の重要性
上記のポイントについて、具体的に解説していきます。
データ分析との違い
統計学とデータ分析は密接に関連していますが、以下のようにそれぞれ異なる役割を持ちます。
- 目的と範囲
- 統計学:データをもとに推論・予測し、データから何が推測できるかを裏付ける
データ分析:データの抽出・可視化やパターンを見つけ意思決定をサポート
- アプローチ方法
- 統計学:不確実性のあるデータを扱うため、確率論や推測統計を用いる
データ分析:表計算ソフトなどを用い、実用的なデータの分析を行う
- ツールと手法
- 統計学:記述統計や推測統計などの数学的手法を中心に分析
データ分析:AIや機械学習アルゴリズムなど幅広い技術を駆使して分析
- 応用例
- 統計学:小規模なサンプルデータから母集団全体の傾向を推測する場合など
データ分析:日常的なビジネスや実務に広く応用
上記からわかるように、統計学は「推論」に焦点をあて、データ分析は抽出されたデータからインサイトを得て「行動」につなげるためのアプローチといえます。しかし、両者は補完的な関係にあるため、統計学の理論をベースにデータ分析すると、実務的な問題の解決に役立つでしょう。
マーケティングにおける統計学の重要性
戦略的なマーケティングには、数値などのデータ分析に基づき行うロジカルシンキングを用いるのが有効ですが、そのロジカルシンキングに役立つのが統計学です。統計学を活用すると、感情や感覚に訴えかけるエモーショナルマーケティングだけに偏らず、客観的なデータに基づき信頼度の高いマーケティング施策の立案が可能となります。
また、マーケティングやキャンペーンの効果測定時も、統計学によるデータの抽出が役立つため、効率的なマーケティング施策の最適化ができるでしょう。
マーケティングで統計学を活用するメリット5つ
マーケティングに統計学を活用すると、一体どのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットとして以下のものが挙げられます。
それぞれ詳しく説明していきます。
1.データドリブンな意思決定ができる
マーケティングにおける統計学の活用には、データドリブンな意思決定ができるといったメリットがあります。その理由は、信頼性のあるデータ分析と推測を得意とする統計学の特徴によるためです。
また、効果的なマーケティングには、施策の客観的評価に基づく最適化が求められます。そこで統計学を用いることにより、感覚的な判断に頼らずデータから導き出された結果を抽出できるというわけです。
2.マーケティング効果の測定と最適化ができる
統計学の特徴であるデータの客観的な分析と信頼性の高い推論により、マーケティング効果の測定と最適化が可能です。マーケティングにおける統計学の活用は、データの変動を捉え施策の効果を正確に評価し、それらを改善・最適化させるための根拠となります。
また、単なる事象の相関関係ではなく、因果関係を特定する手法が発達しているのが統計学の特徴です。客観的なデータの分析により、リスク管理や因果関係の特定のほか、プロモーションによる顧客の行動変化などを捉えられるでしょう。
3.市場予測とトレンド分析ができる
過去のデータからパターンを発見し、未来を予測するのも統計学を取り入れるメリットのひとつです。統計学の活用により、膨大なマーケティングデータから見落とされがちなトレンドやパターンを導き出します。
たとえば、時系列分析や回帰分析などの手法を用いて消費者行動や市場の変動を把握すると、現在や未来のトレンドを予測できるといった形です。
4.競争優位性を強化できる
統計学の活用により、目標達成に必要な競争優位性を強化できるといったメリットもあります。統計的手法を活用した予測モデルにより、市場動向や消費者行動を予測できるため、競合他社よりも先行してマーケティング施策を実行できるでしょう。
また、実行したマーケティング施策の効果測定や最適化も行えるため、より戦略的なアプローチが可能となります。
5.リスク管理ができる
将来的な予測分析や消費者行動の予測が可能なため、マーケティング施策の失敗や意思決定のリスク分散など、さまざまなリスク管理ができるのもメリットです。
たとえば、A/Bテストや回帰分析などの統計的手法を用い、あらかじめリスクの高いマーケティング施策や費用対効果の低い施策を洗い出せます。このように、リスクを定量的に評価することで、予防策やリスク回避策を講じられるのも、統計学を活用することの強みといえるでしょう。
マーケティングに役立つ統計学の主な種類3つ
マーケティングに役立つ統計学には、主に以下の3つがあります。
マーケティングやWebマーケティングのシーンで活用できる統計的手法なので、ぜひ参考にしてみてください。
記述統計
記述統計とは、データの全体的な傾向や分布、散布度などを捉えるために、数値やグラフを用いてデータを整理・要約するものです。データの集計および分析において基本となるステップであり、以下の要素が含まれます。
- 中心傾向の測定
- データの平均や中央値、最頻値などを示す
- 散布度の測定
- 範囲や分散、標準偏差などを示す
- データの分析
- ヒストグラムや頻度分布を示す
このように、記述統計はデータ全体の理解や視覚化を簡潔にまとめるのが特徴です。アンケート調査や売上データなどを洗い出したいときに活用できるでしょう。
回帰分析
回帰分析は、1つまたは複数の変数(独立変数)が、他の変数(従属変数)にどのように影響を与えるかを分析する統計手法です。回帰分析を用いると、変数間の関係を数式で表現したり将来の値を予測したりと、どの要因が従属変数に影響するのかを特定できます。回帰分析の種類は以下の通りです。
- 単回帰分析
- 1つの独立変数と1つの従属変数の関係を分析
- 重回帰分析
- オ2つ以上の独立変数が従属変数にどのように影響するかを分析
- ロジスティック回帰
- 従属変数が2つのカテゴリの場合に使用し、分類予測に用いる
このように、データの関係性を捉える際や将来予測の際に活用できる分析手法として知られています。
推測統計
推測統計とは、限られたサンプルデータをもとに、母集団全体の特性や傾向を推測する統計的手法です。サンプルデータから推測を行うため、誤差や不確実性を考慮しながら、母集団について確率的な結論を導き出すことを目的とします。以下は、推測統計の具体的手法です。
- 仮説検定
- 母集団への仮説を立て、仮説の正当性をサンプルデータを用いて検証
- 点推定と区間推定
- サンプルデータを用い、母集団のパラメータを推定
- 回帰分析
- 変数間の関係をモデル化し、1つの変数が他の変数に与える影響を推測
上記の手法を用いて実際に得られたサンプルデータを活用し、母集団全体への意思決定を支援するのが特徴です。ビジネス以外にも、医療や社会科学など幅広いシーンで利用されています。
マーケティングに役立つ主な統計モデル7つ
マーケティングの統計学には、主な分析手法として活用できる以下の7つの統計モデルがあります。
具体的な活用方法についても触れているので、ぜひ参考にしてみてください。
1.線形回帰モデル
線形回帰モデルは、売上や顧客行動などの連続的な変数や価格・広告費のほか、プロモーション施策などの独立変数との関係を明らかにできるものです。線形回帰モデルの活用法には以下のものがあります。
- 売上予測
- 広告費やプロモーション活動が売上にどのような影響を与えるのか数値化し、将来の売上を予測
- 価格分析
- 商品価格と売上の関係を分析し、価格設定を最適化
シンプルな統計モデルのため解釈しやすく、マーケティングに欠かせない売上予測やコスト分析など、幅広く活用されています。
2.ロジスティック回帰モデル
ロジスティック回帰モデルは、顧客が商品を購入する・しないといった、目的とする行動をとるかどうかなどの二値分類問題に適したモデルです。主な活用法は、以下の2つです。
- 顧客行動予測
- 顧客が次に購入するかどうか、離脱するかどうかなどの行動を予測
- キャンペーン効果の判定
- 特定のマーケティング施策が購入決定にどの程度影響を与えたかを分析
いずれの場合も、データが連続的なものではなく、結果が「合格・不合格」などの答えが2つしかないカテゴリになる場合に有効なモデルです。
3.時系列分析モデル
時系列分析モデルは、売上や顧客数などのデータが時間の経過に応じてどのように変化するかを分析するものです。活用方法は、主に以下の2つが挙げられます。
- 売上予測
- 月次や季節ごとの売上パターンを把握でき、需要予測や在庫管理に役立つ
- キャンペーンタイミングの最適化
- 過去のデータをもとに、マーケティング活動の最も効果的なタイミングを最適化
季節性やトレンド、サイクルを捉えるのが得意な分析モデルのため、過去のデータから将来の予測ができるのが特徴といえます。
4.クラスター分析モデル
クラスター分析モデルとは、顧客を行動や属性に基づき似たグループに分けるために用いるものです。分析における活用法には以下のものがあります。
- 顧客セグメンテーション
- 購買パターン・地域・年齢・趣味嗜好などのデータから顧客をグループ化し、パーソナライドマーケティングを展開
- 商品推薦システム
- 似た顧客グループに基づき、各顧客に適した商品を推薦
このように、ターゲットセグメントを明確にし、顧客ごとに最適なマーケティング施策を提供できるのが特徴といえるでしょう。
5.コンジョイント分析モデル
コンジョイント分析モデルとは、顧客がどのように製品の異なる要素(価格、昨日、ブランドなど)を評価し、最終的にどのような意思決定を行うかを理解するためのものです。以下は、コンジョイント分析モデルの主な活用法です。
- 新製品の設計
- 顧客が製品のどの属性に最も価値を感じているかを分析し、新製品を設計
- 価格設定
- 価格感度を分析し、顧客にとって最も魅力的な価格帯を見つけ、売上最大化を図る
このように、顧客の選好を詳しく捉えられるため、新製品の開発や価格戦略に有効な統計モデルといえます。
6.決定木モデル
決定木モデルとは、データを条件に基づいて階層的に分割し、顧客行動や売上結果などを予測するためのものです。主な活用方法は以下の通りです。
- 顧客離脱予測
- 顧客の行動履歴や属性データをもとに、どの顧客が離脱する可能性が高いかを特定し対策を講じる
- クロスセル・アップセル戦略
- 既存の顧客データから、どの顧客が追加商品を購入する可能性が高いかを予測
決定木モデルは、分岐条件が視覚的に分かりやすいため意思決定をサポートしやすく、マーケティング施策の立案に役立ちます。
7.ベイジアンモデル
ベイジアンモデルは、過去のデータに基づいて確立を更新しながら推論を行う手法です。主な活用方法には、以下のものが挙げられます。
- パーソナライズドマーケティング
- 顧客の過去の行動や嗜好に基づき、最新の情報収集や広告を最適化
- 意思決定支援
- 新規市場情報や競合データを入手し、広告予算やプロモーション計画を最適化
このように、新しい情報が得られるたびに予測精度を高められ、とくに複雑なマーケティングシナリオにおいて活用できるのがベイジアンモデルです。
マーケティングに重要な統計学の学習方法
効果的なマーケティングには、統計学の活用が重要であることがおわかりいただけたのではないでしょうか。統計学を効果的に活用したい場合、基礎知識をしっかりと習得することが大切です。これから統計学を学びたいという方に向け、マーケティングのための統計分析で必要な統計学の学習方法3つをご紹介します。
統計学の基礎学習におすすめな書籍や統計検定といった資格の紹介など、詳しく解説していくのでぜひ参考にしてみてください。
書籍や講座で基礎を習得する
マーケティングに統計学を活用したい場合、まずは本や講座などで基礎を習得するのもおすすめです。書籍や講座であれば、自分の好きなタイミングで受講・学習を進められるため、すきま時間で学習しやすいでしょう。
一方で、書籍の場合は出版年によっては最新情報ではないこともあるため、扱う内容がマーケティング市場において最新の情報であるかどうかを見極めることが大切です。以下は、統計学やデータ分析に必須の知識を紹介している、統計学入門におすすめな書籍です。気になる方はぜひ参考にしてみてください。
統計学にまつわる資格を取得する
統計学にまつわる資格を取得すると、取得に向けた学習計画や段階的な学習内容により、基礎知識を定着させやすくなるといったメリットがあります。なかでも、マーケティングに役立つ「統計検定」は、統計学に関する知識や応用力を評価する全国統一試験です。難易度は4級から準1級と、さまざまなレベルの方に合わせた試験内容で実施されています。
統計学の基礎から理解したい方は、入門にふさわしい4級からチャレンジしてみると良いでしょう。データや表の読み方のほか、確率に関する基礎知識などを身につけ活用する方法が学べます。
スクールで学習する
スクール学習は、マーケティングや統計学に関する知識を持った現役マーケターや有識者から指導を受けられるといったメリットがあります。その際、オンラインスクールであれば受講時間やスケジュールを自分で選べることも多く、プロの講師から直接学びつつすきま時間で学習しやすいためおすすめです。
また、効率的に学べて独学よりも挫折しにくいのがスクール学習のメリットのひとつ。ともに学ぶ仲間ができると、学習の継続性が高まるほか、知識や技術の情報交換ができるといった魅力もあります。
マーケティングスキルを高めるなら統計学を活用しよう!
戦略的なマーケティングに必要なロジカルシンキングには、統計学の活用がおすすめであることがおわかりいただけたと思います。また、データ分析とあわせて活用すれば、より効果的なマーケティング戦略を立てられるようになるでしょう。統計学やデータ分析をマーケティングに活かしたいけど、基礎知識に不安があったり苦手意識があったりする方は、スクールでの学習がおすすめです。
女性向けオンラインキャリアスクールSHElikes(シーライクス)では、マーケティングの基礎から学べる「マーケティング入門コース」やデータに基づく主張や実案を行いたい方におすすめな「データ分析コース」のほか、ロジカルシンキングについて学べる「ビジネスコース」など、全45種類以上の職種スキルを学べます。
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