PEST分析の企業事例7選を紹介!やり方をわかりやすく解説

PEST分析の企業事例7選を紹介!やり方をわかりやすく解説

PEST分析とは、マーケティングに役立てられるフレームワークのひとつです。しかし、PEST分析という言葉を聞いたことはあっても、実際のところどんな場面で使うのか、どのような手法なのか、詳しく分からないという方もいるでしょう。

今回はそんな方に向けて、PEST分析の概要や事例をわかりやすく解説します。

PEST分析とは?

PEST分析とは?

PEST分析とは、自社を取り巻く外部環境を分析し、現在や将来にどのような影響を与えるかを把握・予測するためのフレームワークです。「PEST」とは、次の4つの要素の頭文字が由来になっています。

  • Politics(政治)
  • Economy(経済)
  • Society(社会)
  • Technology(技術)

PEST分析では外部環境を上記の4つに分類し、事業戦略の策定などの際に活用します。

新しく事業を立ち上げる際には、自社の現状や市場の動きだけでなく、自社ではコントロールできない政治や経済などの外部環境を把握しておくことが重要です。成長中のトレンドを把握したり思わぬリスクを回避したりすることにもつながるため、より実効性の高い事業戦略の策定に役立ちます。

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PEST分析の企業事例7選を紹介

 PEST分析は、実際にさまざまな業界の企業で用いられています。ここでは次の7つの業界の事例を紹介します。

それぞれの事例について解説していきます。

飲食業

飲食業にはさまざまなジャンルや業態がありますが、ここでは女性をターゲットにした韓国料理の定食屋の例を紹介します。

Politics(政治) 「すべての女性が輝く社会づくり」などの政策で働く女性が増え、外食需要も増加
Economy(経済) 新型コロナウイルスの影響から回復し、売上が回復傾向にある
Society(社会) 女性の社会進出により個別に食事をとる機会の増加、韓国ブームによる韓国料理への注目度の高まり
Technology(技術) IT機器の導入により、調理や接客が自動化しつつある

それぞれの要素を組み合わせて考えると、女性が1人でも利用しやすい韓国料理の定食屋のニーズは今後も増加すると予測できるでしょう。ただし、流行の動向は注意してチェックする必要があるでしょう。

製造業界

ここではオフィス機器の製造をしている企業の例を紹介します。

Politics(政治) リモートワークやペーパーレス化の推奨
Economy(経済) 原料価格の高騰
Society(社会) 生活スタイルの多様化により、リモートワークの需要が増加
Technology(技術) IT技術の進化により、リモートワークやペーパーレス化を支援するツールの開発が進む

リモートワークの広がりやペーパーレス化が加速しており、複合機やコピー機などは今後も市場規模が縮小すると予測されます。リモートワークに対応した支援ツールの開発など、事業の方向性を検討する余地があるといえるでしょう。

アパレル業界

ここではメーカーから衣類を仕入れて販売している一般的なアパレル企業の例を紹介します。

Politics(政治) 新型コロナウイルスが5類感染症に移行し、外出する機会が増加
Economy(経済) 消費税増税や物価高騰により、低価格製品の需要が増加
Society(社会) SDGsの普及により、サスティナブル製品への需要が増加
Technology(技術) ECサイトの活用が増加

新型コロナウイルスが5類感染症に移行後、外出する機会が増加したことで外出用の衣類の需要は回復しています。SDGsの普及によるサスティナブル製品への需要の増加やECサイトの活用により、今後も需要の回復傾向は続くと考えられるでしょう。

自動車業界

ここでは自動車業界の企業の例を紹介します。

Politics(政治) ガソリン車廃止の方向、電気自動車購入時の補助金
Economy(経済) 自動車市場は縮小傾向、原油価格の高騰
Society(社会) 若者の自動車離れ、カーシェアリングの普及
Technology(技術) 自動運転技術などの開発が進む

ガソリン車の廃止や原油価格の高騰などのマイナス要因がある反面、今後は補助金制度や技術開発などによって電気自動車への需要の増加が予測できます。電気自動車の開発やカーシェア事業は今後も成長が期待できるでしょう。

コンビニ業界

ここではコンビニ業界の企業の例を紹介します。

Politics(政治) 営業時間に関する制限が緩和し、24時間営業を見直す動き
Economy(経済) 店舗数の増加、原料価格の高騰
Society(社会) 少子高齢化による購買力の縮小、人手不足
Technology(技術) キャッシュレス決済やセルフレジの普及

原料価格の高騰や人手不足の問題はあるものの、IT技術の進化による人的コストの削減は期待できるでしょう。店舗数や営業時間を見直すなど、少子高齢化による影響を考慮した店舗経営が求められるようになるでしょう。

IT業界

ここではIT業界のなかでもクラウド型のサービスを提供するSaaSを扱う企業の例を紹介します。

Politics(政治) DXの推進、企業のIT化推進のための補助金制度
Economy(経済) クラウドサービス市場の拡大
Society(社会) デジタルリテラシーにおける世代間格差
Technology(技術) IoTの普及、AI技術の進化

IT業界のなかでもSaaS業界はとくに変化が激しい傾向にあるため、常に最新の動向をチェックしていくことが求められます。クラウドサービス市場は拡大しているため、世代間格差の解消に向けた取り組みが急務といえるでしょう。

観光業界

ここでは観光業界の企業の例を紹介します。

Politics(政治) ビザ政策の緩和
Economy(経済) 円安によるインバウンド需要の増加
Society(社会) 新型コロナウイルスの影響から回復し、国内旅行ヘの需要が高まっている
Technology(技術) オンライン予約の普及、AIによる旅行プランの提案

国内旅行の需要は新型コロナウイルスの影響から回復しているものの、円安の影響で海外旅行の需要は回復しきっていない現状があります。また、ビザ政策の緩和や円安の影響により、海外からの旅行客が増えています。国内旅行やインバウンドは、今後も需要が高い状況が続くと予測できるでしょう。

PEST分析のやり方を解説

ここでは実際にPEST分析を行う場合の手順を紹介します。PEST分析のやり方は次の通りです。

  1. 4つの要素ごとにリサーチする
  2. 事実と解釈に分ける
  3. 自社や業界にとっての機会か脅威かで分ける
  4. 短期的か長期的かで分ける

各ステップについて解説していきます。

1.4つの要素ごとにリサーチする

まずは事業に関連する情報について、4つの要素ごとにリサーチしていきます。具体的には次のような観点で情報を収集していきます。

  • Politics(政治):政府の方針や政権の動向、法改正による規制強化や緩和、物流に関わる国際的な政治動向など
  • Economy(経済):為替・株価・金利などの動向、インフレ・デフレなど物価に関わる動向、雇用情勢など
  • Society(社会):人口動態の変化、消費スタイルの変化、社会問題、流行や世論など
  • Technology(技術):業界に関わる技術革新、ITインフラの変化、新たに取得・消滅した特許権など

正確な情報を収集するために、公的機関の統計データや業界団体から発信された情報などを積極的に活用しましょう。

2.事実と解釈に分ける

4つの要素の情報を収集したら、それぞれを「事実」と「解釈」に分類します。事実とは実際に起きていること、解釈とは物ごとに関する個人的な考えのことです。データなどをもとにした根拠のある事象や実際に発生した事象などは事実といえますが、事実をもとにした主観的な見解は「解釈」に分類します。

外部環境を正しく把握するためには、主観による思い込みを排除し、事実を正確に見極めることが大切です。

3.自社や業界にとっての機会か脅威かで分ける

「事実」に分類した情報は、さらに「機会」と「脅威」に分類していきます。「機会」は自社にとってチャンスになり得るもの、「脅威」は自社にとってリスクとなり得るものを意味します。

同じ業界であっても、ひとつの事象に対してそれが「機会」になる企業もあれば「脅威」となる企業もあるため、あくまでも「自社の場合はどうか」を慎重に見極めなければなりません。また、一見脅威に見える事象にも新規事業のチャンスが潜んでいる可能性もあるので、多角的な視点で分類することが大切です。

4.短期的か長期的かで分ける

機会と脅威へ分類したら、それぞれの事象の影響が短期的なものなのか長期的なものなのかを見極めていきます。すぐに変化するもの、長期間続くもの、周期的なものなど、時間軸で整理していくことで優先順位が明確になり、チャンスを逃すことなく事業戦略を実行できるようになります。

また、状況に合った施策を適切なタイミングで実行することは、リスク回避にもつながるでしょう。チームのメンバー間で時間軸の認識にズレが生じることのないよう、時系列を意識しながら事業戦略を考えていくことが大切です。

マーケティングに役立つ他の分析方法

PEST分析はあくまでも外部環境を分析する手法なので、実効性のある事業戦略を策定するためには、複数の分析方法を取り入れることが大切です。マーケティングに役立つ分析方法の一例は、次の通りです。

それぞれの分析方法について解説していきます。

STP分析

STP分析とは、マーケティング戦略の策定に役立つフレームワークで、次の3つの言葉の頭文字が由来になっています。

  • Segmentation(セグメンテーション):市場を細分化する
  • Targeting(ターゲティング):どの市場を狙うかを決める
  • Positioning(ポジショニング):自社の立ち位置を明確にする

市場を細分化して事業における顧客ニーズを把握することで、ペルソナのイメージを明確にできます。そして狙うべきターゲット市場を特定できれば、より効果的なアプローチ法を検討しやすくなるでしょう。競合他社と差別化を図り、自社の立ち位置を明確にすることで、効果的なマーケティング戦略の策定に役立てられるようになります。

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4C分析

4C分析とは、自社の事業を客観的に判断するために使われるフレームワークで、次の4つの言葉の頭文字が由来になっています。

  • Customer value(顧客価値)
  • Cost(顧客コスト)
  • Convenience(利便性)
  • Communication(コミュニケーションのとりやすさ)

上記の4つは、自社の事業を顧客目線で考えるための観点です。具体的には、新規事業を始める際や既存事業を見直す際に、商品やサービスについて「購入したあとにどのような価値を感じられるか」「価格は妥当か」「購入までのプロセスの利便性はどうか」「コミュニケーションを十分にとれるか」という4つの要素を分析していきます。

これらの要素は顧客が購入を判断するのに大きな影響を与えるとされており、自社にとって最適なアプローチ方法を検討するのに役立ちます。

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SWOT分析

SWOTとは、内部環境と外部環境についてそれぞれ分析していくフレームワークで、次の4つの言葉の頭文字が由来になっています。

  • Strength(強み):内部環境のプラス要因
  • Weakness(弱み):内部環境のマイナス要因
  • Opportunity(機会):外部環境のプラス要因
  • Threat(脅威):外部環境のマイナス要因

上記のように、自社における内部環境の「強み」と「弱み」、さらに外部環境の「機会」と「脅威」をそれぞれ分類して分析していきます。内部環境と外部環境を正確に把握することで、より実効性の高いマーケティング戦略の策定に役立てられます。

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PEST分析を活用して実効性の高いマーケティング戦略を策定しよう

PEST分析は、外部環境を分析して自社のマーケティング戦略に役立てるためのフレームワークです。業界ごとの事例を参考にPEST分析を実践し、実効性の高いマーケティング戦略の策定に役立てましょう。

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ABOUT ME
ライター 山吹あや
地方国立大学教育学部を卒業後、小中学校教員として11年間勤務。息子とダウン症の娘の子育てとの両立のため、現在は教員を退職しWebライターとして活動中。整理収納アドバイザー2級、教員免許状を保有。
エディター 古澤 椋子
鹿児島大学大学院水産学研究科修了。水産系社団法人にて、水産に関わる調査研究、行政との折衝などを経験したのち、水産系ベンチャーにて、広報を担当。2023年からフリーライターとして活動を始め、主にエンタメ系の記事を執筆。SHElikesでキャリア、マインド共に変化した経験から、SHEsharesのライターを務める。

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