マーケティングチャネルとは、生産したものを消費者の手に届けるまでの経路のことです。
最近では消費者の商品選択の動向を捉えることも難しくなってきており、販売戦略の見直しを行っている企業も増えています。それに伴い、マーケティングチャネルについて戦略的に考えることが重要になっています。
この記事では、マーケティングチャネルの定義や種類、活用するポイントなどを解説します。
マーケティングチャネルとは?
マーケティングチャネルとは、メーカーが生産したものが消費者側に届くまでにたどる経路や、関係する組織のことです。関係する組織とは、例えば仲介業者、卸売業者、実際に販売を行う小売業者などです。
スマートフォンの普及により、インターネットを介した広告やSNS投稿をはじめとするマーケティングチャネルの種類はさらに増えました。これまで消費者はテレビやラジオなどのマスメディアから受動的に情報を得ていましたが、SNSを使うことで能動的に情報収集を行うようになりました。自ら検索し比較検討したうえでオンラインショップから購入するなど、購入までのプロセスが多様化しているといえるでしょう。
どうすれば効率よく消費者の元へ商品の情報を届けることができるのかをあらためて検討することが求められています。
マーケティングチャネルの定義
マーケティングチャネルの定義は、次のように考えられています*1。
・最終消費者にとって自社製品が入手できるようにメーカーによって使用される流通機関の組み合わせを言う
・チャネルとは仕事の専門化と責任の割り当てを通じてマーケティング機能を遂行する参加者達から構成されたひとつの統合システムである
・チャネルは企業がターゲットとする市場セグメントにサーブするために利用する外部の経営単位と同様に社内のマーケティング組織単位を含む
大須賀明「マーケティング・チャネル戦略について」
これらのことから、マーケティングチャネルは最終消費者に販売する際の販促方法、流通経路、機関の組み合わせで、販売するため構成されている社内外の組織も含まれます。
マーケティングチャネルの3つの種類
効率よく商品やサービスを消費者に届けるためには、適切なアプローチをすることが大切です。マーケティングチャネルは、目的ごとに3つの種類に分けられます。それぞれのマーケティングチャネルの特徴は、次のようなものです。
流通チャネル
流通チャネルとは、製品が消費者へと届くまでの経路を指します。卸売業者や小売業者、物流業者など、商品やサービスの販売者と消費者の間をつなぐ組織も含まれます。
この中間層のチャネルが多ければ多いほど、中間マージンが発生し利益が少なくなってしまいます。このためマーケティングチャネルを見直す場合は、流通チャネルを効率化することが重要です。流通チャネルは、製品生産者と最終顧客との間に介在する業者の数によって、0段階から3段階までの計4段階があります。
0段階チャネル
0段階チャネルとは、生産者が自社商品を直接販売するビジネスモデルです。
インフラが整っていなかったころは、直接販売する形式がほとんどを占めていました。ですが近年、インターネットの普及によって実店舗を持たずとも直接販売が行いやすくなってきています。
中間業者を介さないため利益率は高くなり、消費者のニーズがつかみやすいといったメリットもあります。
1段階チャネル
1段階チャネルとは、生産者が直接小売店に販売を委託するビジネスモデルです。運送費と商品が売れた際のマージンが発生しますが、卸売業者を介さない分、商品を比較的低価格で販売することができます。
また小売店側にとっても、価格競争において優位に立つことができる低価格での販売はメリットとなるでしょう。このことから、生産者との直接取引を目指す傾向は高まっています。
2段階チャネル
2段階チャネルとは、生産者と小売業者の間に卸売業者が介在するビジネスモデルです。1段階チャネルに比べると卸売業者が入る分、マージンが多く抜かれることになり、生産者の利益は減ってしまいます。一方で、生産者にとってはさらなるマージンが発生してしまうものの、卸売業者を介して広範囲で販売できるというメリットがあります。
2段階チャネルの販売方式では、卸売業者がカテゴリーごとに商品を大量に仕入れ、それを小売業者に出荷し、小売業者が販売を行います。
3段階チャネル
3段階チャネルとは、複数の卸売業者を介して販売するビジネスモデルです。文具業界や海産物、農産物などの販売で採用されています。最近はインターネットの普及によって流通チャネルが省略される傾向にあるので、現在では珍しいチャネルといえるでしょう。
さまざまな卸売業者によって広く展開することができますが、段階が多くなることで中間マージンが多くかかり、生産者の利益は低くなってしまいます。
販売チャネル
販売チャネルとは、消費者が商品やサービスを購入するための販売方法や販売場所のことを指します。具体的には、ECサイトや実店舗といった商品やサービスが購入できる場所と手段すべてが販売チャネルにあたります。
販売チャネルは商品やサービスを提供するだけではなく、企業が顧客との接点を持つために重要な役割を果たしています。売上の最大化を目指すためには、販売チャネル戦略を入念に練ることが大切です。
商品の特徴やターゲットを考え、ニーズに合った販売チャネルを設けることで、消費者の購買欲を刺激し満足度を高めることが可能となるでしょう。
コミュニケーションチャネル(商品情報伝達経路)
コミュニケーションチャネルとは、商品やサービスに関する情報を消費者に知らせる手段や経路のことを指します。
長く活用されている手段としては、テレビ、雑誌、新聞等に掲載されている広告が挙げられます。また近年ではインターネットの普及により、Web広告、SNS運用によるコミュニケーションチャネルも増えてきています。
また、コミュニケーションチャネルは商品情報伝達経路として機能するだけではありません。インターネットやSNSのコメントなどを通じて顧客の声を聞くことにより、アフターケアや商品開発に活かすことができるようになります。
顧客満足度や顧客体験が重要となっている現在のビジネスにおいて、コミュニケーションチャネルは非常に重要度の高いチャネルといえるでしょう。
マーケティングチャネルの活用ステップ
マーケティングチャネルを活用する際にたどるべきステップを解説します。
1. 目標を設定する
まずは、マーケティングチャネルを活用する際の目標を設定します。何を目指すのかによって、選択すべきチャネルは大きく変わります。
例えば、「売上増加を目指したい」「販路を拡大したい」「認知を高めたい」といった目標によって、ECサイトを活用するのか、SNSを活用するのか、さまざまな選択肢が考えられるでしょう。
共通の目標を設定することで、チャネルの構成員に対して自分達が何を目指すべきなのかを示すことが可能です。
2. ターゲティングを行う
目標を定めたら、それを達成するためにどのような顧客層をターゲットとすればよいか考えましょう。ターゲットとする顧客層によって、有効な施策が異なります。
例えば高校生をターゲットとした場合、TikTokなど若年層の利用率が高いSNSの利用が効果的と考えられるでしょう。高齢者がターゲットの場合は、インターネット経由よりもテレビや新聞を使った広告が有効だと考えられます。
また年齢だけではなく、住んでいる場所や性別によっても生活様式はさまざまです。ターゲットとする顧客層のライフスタイルをしっかりと分析して把握することが重要になります。
3. ターゲットに合ったチャネルを選択する
ターゲティングが完了したら、そのターゲットとなる顧客層に適したチャネルを探していきます。
ターゲットに情報が届かないチャネルを選んでしまうと認知が広がらないため、商品の購入にはつながりません。またターゲットとなる顧客層に商品情報が届いても、ユーザーにとって利便性の高いチャネルで販売できていなければ、購入には至らないでしょう。
ターゲットとする顧客層にどのような経路で商品を届けるのか検討し、ターゲット層のニーズや利便性に合った方法を選ぶことが大切です。販売者と消費者をつなぐマーケティングチャネルの役割を意識し、自分たちが設定したターゲットに合わせて選択するようにしましょう。
4. コンテンツを作成する
ターゲットや選択したチャネルの特性に合わせ、コンテンツを作成します。SNSの投稿や動画コンテンツ、文章コンテンツなど、目標やターゲットの傾向を考慮しながら制作するコンテンツを決めることが大切です。
特に、YouTubeやTikTok、Instagramなどでも公開することができる動画コンテンツは、画像やテキストだけでは補いきれない多くの情報を消費者に向けて発信することができます。
内容が興味深いものであればユーザー同士で話題にもなり、さらなる宣伝効果が期待できるでしょう。
5. 結果を分析する
コンテンツを公開した後は、選択したチャネルが効果的に機能しているかどうか、定期的にデータを収集して分析を行いましょう。
顧客の消費行動は流動的なので、常に最新のデータを入手し続けるのがポイントです。結果によってはステップを遡って目標やターゲティング、コンテンツ内容を見直すなどトライアンドエラーを繰り返すことが重要となります。
マーケティングチャネル成功のためのポイント
マーケティングチャネルは目標に応じて使い分ける必要がありますが、成功のためにおさえるべき共通のポイントはチェックしましょう。
他戦略との整合性をとる
マーケティングチャネルは、マーケティングミックスの一要素です。マーケティングミックスはProduct(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)の4つの要素からなり、4つ目のプロモーションがチャネル戦略にあたります。
他の戦略との間に矛盾が生じてしまうと、マーケティングを統一的に進めることができなくなり、結果的に失敗につながってしまうでしょう。例えばプロダクト戦略や価格戦略、プロモーション戦略と整合性が取れていないと、商品の世界観に違和感が生じてしまい顧客離れにつながってしまうこともあります。
具体的には、送料が無料であっても商品価格が高かったり、せっかくこだわりの製品を開発したにもかかわらず広告で魅力が伝えられていなかったりする場合、マーケティングチャネルの見直しが必要といえます。
オムニチャネルを導入する
オムニチャネルとは、実店舗やECショップ、SNSなどすべてのチャネル(経路や媒体)で一貫して顧客との接点を作り、それぞれのチャネルを連携させてアプローチする販売戦略のことをいいます。
例えば実店舗に在庫がなかった場合も、商品を取り寄せてもらい自宅に送ってもらったり、ネットショップで購入した商品を実店舗で交換できたりという方法です。ほかにも、SNSでクーポンの広告を出し実店舗への来店を促したりする施策は、オムニチャネルを活用している事例ということができます。
オムニチャネルを導入することで消費者の利便性や満足度の向上を見込むことができるので、売上アップにつなげられるというメリットがあります。他方で、オムニチャネルにはコストがかかる面もあり、費用対効果を検証しながら実行する必要があります。
中長期的なスパンで取り組む
マーケティングチャネルの構築は、社内だけでできる施策を進める以外に外部との関係を築きながら進めなければならないため、時間やコストがかかります。特に流通や販売に関する部分には他社との関係づくりが不可欠なので、中長期的なスパンで取り組む必要があります。
外部関係者との関係構築には時間を要するため、長期的な視点で戦略を立てることが必要です。なお流通チャネルに関しては、最近では仕入れサイトを活用するケースも増えています。費用対効果とあわせて検討しましょう。
マーケティングチャネルを構築して売り上げを確実なものにしよう
マーケティングチャネルは、しっかりと戦略を練れば練るほど集客やユーザーの利便性につながる部分です。さまざまなチャネルを俯瞰してそれぞれの集客状況を収集・分析し最適化する過程は非常に労力を要しますが、その結果ターゲットユーザーに商品を届けることができれば、ビジネスを大きく発展させることができるでしょう。
自社や商品・サービスに合ったチャネルを選択し、販売戦略に合うコンテンツとして提供することで、売り上げをより確実なものにすることができます。
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