多種多様な商品やサービスがあふれる今、顧客のニーズをきちんととらえてアプローチする重要性が高まっています。セグメントは顧客ニーズをとらえるための重要なプロセスのひとつで、効果的なマーケティング施策を打ち出すためにも欠かせません。そこで今回は、マーケティングにおけるセグメントについて詳しく解説していきます。ターゲットとの違いやSTP分析についてもきちんと理解して、セグメントを正しく活用するための参考にしてみてください。
マーケティングにおけるセグメントとは
「セグメント(segment)」とは、区分や部分を表す言葉です。マーケティングにおいては、なんらかの基準で集団をグループ分けした区分をセグメントと称します。グループごとに適したマーケティング活動を行うことで、より効果的なアプローチが行えます。
セグメンテーションとの違い
セグメントに似ている言葉に「セグメンテーション(Segmentation)」があります。セグメンテーションは、英語で区分けという意味を持つ言葉です。特定の条件に基づき顧客を分類する行為そのものを指すときに用いられます。
ターゲットとの違い
セグメントと混同されやすい「ターゲット」との違いも把握しておきましょう。ターゲットは自社が売り込みたいと考えているグループを指す言葉です。まずいくつかのセグメントに分類し、その中から商品やサービスに見合ったターゲットを選定するという流れになります。
たとえば、顧客の中から地域や男女などいくつかにグループ分けしたものがセグメントで、その中から「美容に興味のある30代女性」などとアプローチするセグメントを絞り込んだものがターゲットです。
分類したセグメントの中からターゲットを決めるため、セグメントとターゲットは深いかかわりがあります。
STP分析との関係性
セグメントを実際にマーケティングに活用する際は、STP分析という手法を使います。
STP分析は、マーケティング戦略を検討する際に使用される分析手法の1つです。STP分析という言葉は、Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)の頭文字に由来しています。STP分析は、以下の流れで分析を行います。
- セグメンテーション=市場をいくつかの区分に分ける
- ターゲティング=狙うセグメントを定める
- ポジショニング=ターゲットに対する自社の立ち位置を決める
STP分析を行う目的は、マーケットの全体像を把握して狙うべきターゲットを見極め、競合商品やサービスとの位置関係を把握することです。これらを押さえてチームで共有することで、マーケティング活動が進めやすくなります。
なぜマーケティングにおいてセグメントが重要なのか
マーケティングでセグメントを活用する大きな目的は、顧客に最適なアプローチを行うことにあります。大量生産、大量消費の時代は、ターゲットを絞らずマスメディアを用いて不特定多数に向けたプロモーションを行うのが一般的でした。しかし、たくさんのものやサービスが溢れており、顧客のニーズも千差万別である現在は、不徳的多数に向けたアプローチでは誰にも深く刺さらなかったというケースも少なくありません。
そこで活用されているのが、セグメントです。セグメントは、自社の商品やサービスをどのような属性の顧客に狙いを定めるかを判断するときに用いるもの。ターゲットが明確でないと、売り込みたい顧客に効果的なアプローチができません。たとえば、ファッションブランドのメーカーの場合、同じ30代女性でも仕事をしているのか子どもがいるのかといったカテゴリにより、押し出すアイテムや効果的なフレーズは異なるでしょう。
セグメントで市場を区分けして、ターゲットを検討することで、狙った顧客に効果的なアプローチをすることにつながります。
セグメントの代表的な分類方法
引用:SHElikes マーケティング入門コース_LESSON1「セグメンテーションとターゲティング」より
一般的にセグメンテーションで用いられる分類パターンには、以下の4つが挙げられます。
それぞれについて詳しく確認していきましょう。
地理的変数
地理的変数は、住んでいるエリアや気候など、地理的な要素をもとに分類します。地理的変数の切り口の一例は以下の通りです。
- 世界や日本の地域(アジア、ヨーロッパ、東日本、日本海沿岸部など)
- 日本の地方(北海道、関東、中国など)
- 気温や湿度などの気候(気温、湿度、降雨量など)
- 人口密度(都市部、郊外など)
- 文化(車社会、近所とのつながりが薄いなど)
- 宗教(飲酒禁止など)
衣料品や食料品、家電製品といった、気候やライフスタイルにより売れ行きに差が出やすいものは、地理的変数を用いるのが有効です。
心理的変数
心理的変数は、価値観やライフスタイルなどの心理的要素をもとに分類します。心理的変数の切り口の一例は以下の通りです。
- 社会階層(上、中、中の上など)
- ライフスタイルや価値観(ブランド志向、オーガニックを好むなど)
- パーソナリティ(社交的、神経質など)
属性は同じでも、心理特性が同じになるわけではありません。近年は嗜好性が多様化しているため、心理的変数を用いて商品やサービスにより得られる体験価値やライフスタイルをアピールする方法も多く用いられています。定性的な概念のため絞り込みにくいといわれていましたが、ITの普及により精度が高まり、マーケティングにも活用できるようになりました。ほかの変数と併せて、多角的に検証したいときにも役立ちます。
行動変数
行動変数は、利用頻度、情報収集方法、使用用途など、顧客の購買行動をもとに分類します。行動変数の切り口の一例は以下の通りです。
- 使用場面(日常的に使用する、毎週使うなど)
- 知識の有無(全く認知していない、関心はあるが詳しくはないなど)
- 利用頻度(ライトユーザー、ヘビーユーザーなど)
顧客の行動を追跡して導き出される、たとえばまだ商品やサービスの知識がない人と、すでに使用したことのあるリピーターでは、刺さるポイントが異なる可能性があります。行動変数を活用することで、それぞれ違った施策を検討できるでしょう。心理的変数と同じく、ITの広がりにより、購買履歴が把握しやすくなり、マーケティングに活用されるケースも増えています。
人口動態変数
人口動態変数は、年齢や性別、家族構成、所得などの人工統計学的要素をもとに分類します。人口動態変数の切り口の一例は以下の通りです。
- 年齢(20代、30代、40~50代など)
- 性別(男、女など)
- 世帯人数(1人、2人、3人以上など)
- 家族構成(独身、既婚、子どもの有無など)
- 職業(IT系、事務職、営業職、サービス業など)
- 世帯所得(300万円未満、500万~600万円など)
- 最終学歴(高校、大学、専門学校など)
人口動向変数は、セグメンテーションにおいて最も利用されることの多い変数です。購買傾向との関係も深いことに加え、公表されている国勢調査の結果や自社のアンケートなどからデータが入手しやすいという側面があります。
たとえば性別と年齢を掛け合わせた人口動態変数は、従来のマスマーケティングで使用されることが多かった手法です。ただし、この年代はこうだろうというステレオタイプには注意が必要でしょう。
セグメント分けにおける評価基準
セグメントが適切かどうかは、「4Rの指標」もしくは「6Rの指標」を用いて確認できます。ひとつの指標に固執するのではなく、すべての指標を総合的に判断することが、マーケティング成功に向けたポイントです。指標の内容について確認していきましょう。
4Rの指標
4Rとは、以下に挙げる4つの項目からセグメントの有効性を検討する指標です「4R」に基づいてセグメントの有効性を判断することで、自社のターゲットとして最適な層を選ぶことができます。
Rank:優先順位
Realistic:市場規模
Reach:到達の可能性
Response:反応の測定可能性
Rankとは、セグメントの優先順位のことです。ターゲットを選ぶ際は、自社にとって利益の大きいセグメントを選ぶことが大切です。関心を持ってもらい、購入につながる優先順位の高い商品やサービスになりえるかどうか考えてみましょう。関心度が高い商品やサービスであれば、市場において注目を集めやすくなるはずです。
Realisticとは市場規模のことを指し、対象としているセグメントの市場規模が適切かどうか検討します。見込み客が少なければ、売上の確保は難しくなるでしょう。その場合、たとえニーズがあっても有効ではないと判断できます。反対に、特殊な客層にターゲットを絞り小さな市場でも安定して売り上げをあげる方法もあるでしょう。自社の売り上げ目標を達成できる規模の市場を選ぶことが大切です。
Reachとは、選んだセグメントに対して製品・サービスを届ける方法の有無を判断することを指します。たとえば、海外に向けて発信したい場合、言語の壁や輸送にかかる費用などが発生します。そこにコストをかけられなければ、ターゲットに商品やサービスを届けることができません。アプローチする手段がなければ、有効とはいえないでしょう。
Responseとは、効果測定の可否を検討することを指します。結果を検証できなければ、ターゲットの妥当性が判断できません。消費者からの反応を見ることで、新しい戦略が生まれる可能性もあります。アプローチしたあとに客観的な反応を見て分析できるかどうか考えてみるとよいでしょう。
6Rの指標
4Rに以下の2つの指標を加えた指標が6Rです。
Rate of growth:成長性
Rival:競合状況
Rate of growthとは、市場の成長率を示す指標です。これから先ビジネスチャンスが広がる可能性がある市場かどうか、市場サイクルをもとに検討してみましょう。市場が小さくても将来性がある場合は、候補になりえます。
Rivalとは、競合が激しい市場ではないかを把握する指標です。どんなに魅力的なセグメントでも、すでに強力な競合先がある場合、差別化が難しい可能性もあるでしょう。同じセグメントを狙う商品やサービスが多いと、価格競争になってしまい思うような売り上げにならないことも考えられます。その場合、差別化ができる別のセグメントに狙いを定めた方がよいかもしれません。
セグメントを活用するマーケティング戦略の例
セグメントを活用するマーケティング戦略はいくつかありますが、その中の集中戦略と差別化戦略の事例をチェックしていきましょう。
集中戦略
集中戦略とは、特定の市場セグメントに集中して戦略を展開する手法のことを指します。限定的な顧客層をターゲットにアプローチするため、規模を急激に拡大するのは難しいという側面はありますが、セグメントに対して奥行きのある戦略を実施できるのが特徴です。
例えばオリオンビールは、沖縄県民に集中型マーケティングを展開しています。沖縄県民の嗜好を商品に落とし込んだ商品開発により県内でのシェアを確立。同時にその徹底ぶりが県外からの関心を引いています。
差別化戦略
差別化型戦略とは、他社との違いを出すことで優位に立つマーケティング戦略です。他社にはない特徴を全面的に押し出し、市場の中で強い地位を築くことにつながります。差別化に成功した場合、顧客は商品やサービスの価値を重視して購入する可能性が高くなり、競合他社との価格競争に巻き込まれにくくなるのが特徴です。
例えばスターバックスコーヒーは、差別化戦略によりコーヒーチェーン店の中で確固たる地位を確立しています。あえて広告を出さず、おしゃれで居心地のよい店内や細やかなオーダーに応じるバリスタなど、従来のカフェと一線を画した空間作りを徹底。スターバックスコーヒーでしか味わえない時間を提供し、多くの顧客を獲得しています。
セグメントを活用して効果的なマーケティング戦略を立てよう
趣味や嗜好、考え方が多様化する今、年代や性別のような単純なカテゴリ分けでは効果的なアプローチが難しくなっています。そのために重要となるのが、市場をセグメントに分けターゲットを明確にすること。ターゲットに設定したセグメントについて理解し、セグメントに合わせた商品やサービスの設計、宣伝活動を組み立てていくことが大切です。
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