ターゲットマーケティングとは?分析の手法や進め方をわかりやすく解説

ターゲットマーケティングとは?分析の手法や進め方をわかりやすく解説

インターネットが普及し情報を得やすくなった今、ライフスタイルやニーズも多様化しています。そのため、不特定多数に向けたマーケティングでは効果が得にくくなったことから注目を集めるようになったのが、ターゲットを絞るマーケティングです。

しかし、ターゲットを絞ってマーケティングを行うという概要は理解できるものの、具体的な方法がわからない人もいるのではないでしょうか。そこで今回はターゲットマーケティングについて詳しく紹介していきます。分析の手法や進め方を解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

ターゲットマーケティングとは

まずは、ターゲットマーケティングとはどのようなものなのか把握していきましょう。

ターゲットマーケティングとは

ターゲットマーケティングとは、自社の商品やサービスを購入する可能性が高い特定の層に集中した販促活動のことです。自社の商品やサービスがどのような層に求められているかをきちんと理解したうえで、ターゲットに合わせて戦略的なマーケティングを行います。

顧客のライフスタイルやニーズは多様化しているため、どの顧客にも当てはまるような全方位のアプローチは難しいのが現状です。アプローチをするターゲットを絞り込むことで勝負する市場が狭まり、顧客ニーズと自社の強みがマッチする特定の層に対して、効果的なマーケティングが行えるでしょう。マーケティングの成功率を高め、他社との差別化を図ることにもつながります。

マスマーケティングとの違い

ターゲットマーケティングの対義語に、マスマーケティングが挙げられます。マスマーケティングとは、市場全体をターゲットとしたマーケティング手法です。たとえば、テレビCMなどが挙げられ、不特定多数の消費者に対して広告を打ち出し、認知度を高めて売上につなげます。

一部の層に絞ってアプローチするターゲットマーケティングに対し、マスマーケティングはターゲットを絞らず画一的な訴求を行う点が大きな違いです。大量生産・大量販売が主流だった高度経済成長期がマスマーケティングの全盛といわれていますが、幅広い層に受け入れられる商品やサービスの訴求には現在でも効果的です。

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ターゲット設定の具体的な事例

引用:SHElikesマーケティング入門コース_LESSON2「ポジショニング|分析例の紹介」より

自社の商品やサービスを使う顧客を特性やニーズによって分類するセグメンテーションを行ったあと、ターゲット設定により、どのセグメント(顧客層)にアプローチするかを決めていきます。たとえば学生や若者、社会人、ファミリー層では、それぞれ嗜好性や行動特性が異なります。ターゲット設定を行うことにより、効果的なマーケティング方法を検討しやすくなるでしょう。セグメンテーションとターゲット設定がきちんとできているかどうかが、マーケティングの成功を左右します。

ターゲットとペルソナの違い

ターゲットと似た言葉に、ペルソナがあります。ターゲットは商品やサービスを提供したい想定客層の集団を指すのに対し、ペルソナは商品やサービスを利用する典型的な人物像を指します。どちらも商品やサービスのユーザーイメージを表していますが、ターゲットの場合「20代」「会社員」「関東エリアに在住」など該当する人物が複数含まれる大まかな客層です。

それに対してペルソナの場合は、「26歳、東京在住、IT企業で営業職を担当している女性、地方出身で現在一人暮らし、趣味は休日のカフェ巡り」といったように、ひとりのユーザーにフォーカス。顧客目線でのマーケティング戦略を立てる際に役立ちます。

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ターゲットマーケティングの代表的な手法「STP分析」とは

経営学者フィリップ・コトラーが提唱したSTP分析は、ターゲットマーケティングで用いられる代表的なフレームワークです。STP分析の構成項目は、以下の3つです。

各項目の概要をチェックしていきましょう。

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セグメンテーション(S)

第一ステップは、市場の細分化を意味する「セグメンテーション」です。似た性質や需要をもとに市場を分類し、小さいグループに振り替えていきます。市場を細分化するときの基準はさまざまですが、以下のような基準を組み合わせることが多いよう。

  • 属性(年齢やライフスタイル、家族構成、収入など)
  • 地域(住んでいるエリア、気候など)
  • 心理・行動(商品やサービスの購入動機、購入頻度など)

上記に当てはめて分類、分析していくと、自社の商品やサービスを購入している顧客の特徴を見い出すことができるでしょう。

ターゲティング(T)

続いて、細分化したグループの中から、ターゲットとなるグループを決めます。ターゲティングはマーケティング活動に影響を及ぼす重要なポイントです。どれを選べば自社の利益に結びつきやすいか、グループの特徴と商品やサービスの特長を照らし合わせる必要があるでしょう。顧客の反応を踏まえて定期的にターゲティングを行うと、思わぬニーズの発見につながることもあります。

ポジショニング(P)

最後にポジショニングで、設定した市場における自社の立ち位置を明確にして、どのように強みを打ち出していくか検討します。競合他社よりも何が優れていてどのような価値を提供できるのかという点を明確にしなければ、顧客の獲得にはつながりにくいでしょう。安定した売上のためには、自社のファンを増やすことが効果的です。替えのきかない商品やサービスとしてのポジションを得るために、他社に負けないポイントを確立しておきましょう。

ターゲットマーケティングの進め方

STP分析について理解したら、ターゲットマーケティングの進め方を詳しく確認していきましょう。ターゲットマーケティングは以下の流れに沿って進めていきます。

  1. 外部環境を分析する
  2. 商品・サービスの強みや弱みを分析する
  3. ターゲットを絞りこむ
  4. 6R分析でターゲットの妥当性を確認する
  5. ペルソナを設定する
  6. 顧客のインサイトを見つける

それぞれ確認していきましょう。

外部環境を分析する

まずは、外部環境の分析が第一ステップです。外部環境には、国内経済や業界の動向といった大きなものから、競合他社の動きといった小さなものもあり、規模はさまざま。外部環境の分析にはPEST分析が用いられるケースが多いよう。政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の外部環境をとりまく要素をピックアップし、自社をとりまく外部環境が今後どのように影響するかを予測します。

企業を取り巻く外部環境は、競合や市場を指す「ミクロ環境」と、政治や社会などを指す「マクロ環境」の2つがありますが、PEST分析で注目するのはマクロ環境です。いち企業がコントロールできない大きな外部環境を分析することで、社会や時代の流れに即した経営戦略を立てやすくなります。

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商品・サービスの強みや弱みを分析する

続いて、自社の商品やサービスの強みや弱みを分析します。SWOT分析により、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの要素に分類。他社にない強みや弱点に加え、PEST分析でピックアップした外部環境のうち、自社のプラスになるものとマイナスになるものを抜き出してみます。自社の事業にまつわるさまざまな情報を把握したうえで、マーケティングに使えそうなポイントを分析してみましょう。

ターゲットを絞りこむ

続いて、どのセグメントをターゲットにするか絞りこんでいきます。ターゲットを絞りこむときに参考にしたいのが、既存顧客のデータです。性別や年齢、家族構成などをチェックして、自社の商品やサービスをどのような層が利用しているのかを割り出します。コンタクトセンターの問合せ履歴も役に立つでしょう。ターゲットは「関東圏に在住の30~40代の女性」などという大まかな絞りこみで問題ありません。

6R分析でターゲットの妥当性を確認する

ターゲット設定が妥当かどうかは、6R分析でチェックできます。6R分析とは、Rから始まる6つの項目がクリアできているかを確認すること。6つの項目と分析視点は以下の通りです。

6R分析項目 分析視点
Realistic Scale:市場規模 市場規模はビジネスに適切か
Rate of Growth:市場成長性 今後の成長が見込める市場か
Rival:競合状態 競合他社の状況はどうか
Ripple Effect:波及効果 ほかのセグメントに対する影響力はどうか
Response:測定可能性の見極め 効果検証ができるかどうか

6R分析により問題ないと確認できたら、次の項目に進みましょう。

ペルソナを設定する

ターゲットが決まれば、続いてペルソナの設定です。ペルソナとは、ターゲット層の中でもより具体的な人物像のこと。年齢や性別、居住地、家族構成などはもちろん、仕事や趣味、普段使うSNS、今後の展望などライフスタイルまで設定し、より詳細な人物像に落とし込みます。

ペルソナを設定することで、ターゲット選定だけでは把握しにくかった顧客が利用するメディアや惹かれる表現、購買までの思考回路などが想定しやすくなるのがメリットです。ユーザーのニーズや抱えている課題を見つけ出しやすくなり、適切なアプローチ方法を検討しやすくなるでしょう。

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顧客のインサイトを見つける

ペルソナを設定したらインサイトを見つけていきます。インサイトとは、顧客も把握していない深層心理のこと。購入の動機となるニーズよりも深層の無意識の領域にある欲求です。インサイトを満たす商品やサービスは無意識によいなと思ってもらいやすく、他社との差別化や自然な購入につながりやすくなります。

消費者の購入意欲を刺激するのは、隠れた欲求を満たす商品やサービスです。ニーズの高い商品やサービスは世の中にたくさんあるため、市場をリードするには不十分。インサイトが把握できれば需要を生み出すことにつながり、市場でのポジションを強化できます。

ターゲットマーケティングのメリット・デメリット

ターゲットマーケティングのメリットとデメリットをそれぞれ押さえておきましょう。

メリット

ターゲットマーケティングの大きなメリットは、マーケティングの方向性が定まりやすくなることです。たとえば、SNSを利用している率の高い層にアプローチするなら、SNSコンテンツに注力するなど、適した訴求方法を選びやすくなります。コンテンツ作成においても、ターゲットに刺さりやすい企画を立案しやすく、ファン獲得にもつながりやすくなるでしょう。

顧客目線で考えてみると、自分にぴったりの商品やサービスが近づいてきたかのように感じ、満足度も高くなります。企業側も購入見込みの高い顧客とつながりやすくなり、顧客の求めているものにフレキシブルな対応ができるでしょう。

デメリット

ターゲットマーケティングのデメリットは、ターゲット層以外にアプローチしにくいことです。たとえば若い女性をターゲットにしたマーケティングの場合、ターゲット以外が広告を目にしても「自分には関係のない商品だ」と感じられてしまうと、商品購入にはつながりにくいでしょう。

ターゲット層を見誤り、魅力を感じる人が少ない層にアプローチしてしまうと、商品やサービスを購入してもらう機会を失い、利益が期待できなくなります。

ターゲットマーケティングで多様化するニーズに寄り添おう

今回はターゲットマーケティングについて解説しました。ターゲットマーケティングは、自社の商品やサービスを購入してくれる顧客の人物像を描く重要な工程です。多様化する顧客のニーズに応えつつ競合他社との差別化を図るには、ターゲットマーケティングが重要になるでしょう。

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ライター SanamiSasaki
フリーライター|新卒で金融業に従事し、出産後未経験で地元のメディアを運営する会社に転職。現在は推し活と育児を両立しながら、さまざまなWebメディアで執筆しています。
エディター 工藤 梨央

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。