個人・企業問わず、気軽にアカウントの開設や運用ができるSNS(ソーシャルネットワーキングシステム)。世界中で利用者が増加し続けている今、企業戦略における「SNSマーケティング」の重要性はますます高まっています。
そこで本記事では、SNSマーケティングによって得られるメリットや、留意すべきデメリット、主要なSNS媒体の特徴や運用で成果を出すためのポイントを解説します。SNS運用やマーケティングに関連する仕事に興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
SNSマーケティングの重要性
SNSマーケティングとは、SNSを利用して商品・サービスの認知拡大や販売促進などを行うマーケティング手法です。
Facebook、Instagram、X(旧Twitter)をはじめとするSNSのユーザーは、2022年時点で45億9,000万人*1 。ICT総研発表の「2022年度SNS利用動向に関する調査」では、日本のSNS利用者数は8,270万人であることが明らかにされています*2。
SNSユーザーが年々増加し、企業がこぞってSNSアカウントの運用に乗り出している現代において、SNS運用は重要なマーケティング手法の一つといえるでしょう。
SNSマーケティングのメリット
SNSをマーケティングに活用することで、どのような効果が得られるのでしょうか。まずは、SNSマーケティングに期待できる5つのメリットについてみていきましょう。
顧客とのコミュニケーションをとることができる
SNSでは、商品やサービスに関する発信を一方的に行うだけでなく、リアクションやコメントのやり取りによってユーザーとリアルタイムでコミュニケーションをとることができます。ユーザーとの密なコミュニケーションは、ファンの獲得や信頼関係の構築につながります。また、得られた意見をサービス改善に生かすことよる顧客ロイヤリティの向上や、販売促進、リピート率向上などの効果も見込めるはずです。
ユーザーの反応を素早くキャッチしマーケティングに反映させられる点は、一方的な発信にとどまるWeb広告やWebサイト運営などとの大きな違いといえるでしょう。
認知を拡大することができる
日本人のおよそ82%*2 がSNSを利用している今、マーケティングにSNSを活用することで、大幅な認知拡大をはかれる可能性があります。また、魅力的なアカウントに育てることで、Web広告に興味を示さないインターネットユーザーにも商品やサービスの情報を届けられるため、新たな潜在顧客の発見にもつながるでしょう。
さらに、企業の影響力やフォロワー数に関係なく、リポスト(旧リツイート)機能などによる情報の拡散によって短期間でのアクセス数急増、さらには急速な認知度向上が期待できるのもSNSの魅力です。
ブランディング効果が見込める
SNSでの継続的な発信は、企業や商品・サービスのブランディングにも有効です。インパクトのある投稿によってユーザーに企業名や商品名を強く印象づけることができれば、認知度や購買意欲の向上につながりやすくなります。
SNSマーケティングでブランディング効果を得るためには、発信内容やブランドイメージの統一、他社との差別化が重要です。さらに、SNS上での積極的なコミュニケーションやフォロワーに向けたキャンペーンによって、ユーザーをファン化するのも有効といえるでしょう。
広告コストの削減ができる
SNSアカウントの多くは無料で作成可能なため、有料掲載のWeb広告やテレビCMなどでの宣伝に比べて、広告にかける初期費用の大幅な削減が見込めます。また、SNS投稿によって無料で宣伝できるだけでなく、情報拡散にも費用が発生しないため、ランニングコストの削減にもつながります。
さらに、アカウントの維持自体にも費用がかからない点も、大きなメリットといえるでしょう。
情報拡散のスピードが速い
1回の投稿で多くのユーザーに商品やサービスに関する情報を届けられる情報拡散スピードの速さも、SNSの魅力の一つです。また、投稿に興味関心を持ったユーザーによるリポストなどによって拡散の輪が無限に広がっていくのも、SNSの特徴といえます。
ただし、拡散スピードの速さは炎上リスクと隣り合わせのため、徹底した炎上対策を行いながら運用することが大切です。
SNSマーケティングのデメリット
SNSマーケティングには多くのメリットがある反面、注意点も存在します。安全かつ効果的にSNSを運用するために、SNSマーケティングのデメリットも確認しておきましょう。
炎上リスクがある
情報拡散スピードが速いということは、ネガティブな情報も同様に素早く広まってしまうことを意味します。つまり、SNSアカウントでの不適切な発信、あるいは誤った情報の発信が、企業にとって不利益な状況に陥るような炎上につながるおそれもあるのです。また、ユーザー間で情報が拡散される間に、意図せず炎上につながる可能性も否定できません。
一度SNS上に投稿された情報は、完璧に消し去ることが難しいのが現状です。そのため、情報を発信する企業や、商品・サービスを拡散するインフルエンサー、情報を受け取り共有しあうユーザーそれぞれに、発信内容に責任を持つことや情報を精査する力が求められます。
運用が負担になる可能性がある
SNSマーケティングを効果的に行うためには、継続的な投稿やユーザーとの積極的なコミュニケーション、運用の効果測定・分析などが重要です。また、ユーザーが求めるものは常に変化するため、市場調査によって最新トレンドを把握し、戦略を見直すことも求められます。さらに、画像や動画が必要な媒体の場合は、投稿内容の作成にもある程度の時間が必要です。
SNSは手軽に利用できますが、継続的な運用には相応の負担がともないます。そのため、運用を続けるための体制づくりやリソースの確保が重要といえるでしょう。
成果が出るまでには時間がかかる
SNSを利用して認知拡大や売上向上をはかるには、継続的な発信によってユーザーの信頼を得ることでフォロワーを増やし、影響力を高める必要があります。そのため、成果が出るまでにはある程度の時間がかかります。
効果的にSNSマーケティングを行うためには、フォロワーにとって有益な情報を発信し、長期的に支持されるアカウントに育てることが大切です。
SNSマーケティングの媒体ごとの特徴
SNSは、媒体ごとに利用者層や特徴が異なります。運用目的に合った媒体を選び効果的にマーケティングを行うために、主要な3つのSNS「X(旧Twitter)」「Facebook」「Instagram」の違いを把握しておきましょう。
X(旧Twitter)
X(旧Twitter)は、短文(最大140文字)や画像、動画を投稿するSNSです。日本ではLINE、YouTubeに次いで多くの国内ユーザーを抱えています*2。気軽に投稿しやすいことから各ユーザーの更新頻度が高く、リアルタイムの発信や最新情報の共有に適しています。
また、リポスト機能があることによって投稿が拡散され急速に話題を集める現象、いわゆる「バズ」が生まれやすいのも特徴の一つです。さらに、フォローやリポストを利用してキャンペーンを行えば、費用をかけることなくフォロワーの獲得や認知拡大を行える可能性もあります。
Facebookは、2023年6月時点の月間アクティブユーザー数が30億3,000万人*3、日本でも30代から40代を中心に多くのユーザーが利用している世界最大のSNSです。運営元は、アメリカのMeta社(旧称Facebook社)です。実名登録制を採用しており、ユーザーの年齢や学歴、仕事などの情報がプロフィール上に記載されることから、信頼性の高いSNSとして知られています。
また、広告プラットフォームが充実しているうえ、同社が運営するInstagramとの連携も可能なため、多くの企業がマーケティングに活用しています。
Instagramは、Facebookと同じMeta社が運営する写真や動画の投稿がメインのSNSです。10代から20代の若年層のユーザーが多く、視覚に訴える発信、いわゆる「インスタ映え」する商品・サービスの画像投稿によって、フォロワーの獲得や商品の購買行動を促すのに適しています。
また、インスタライブでの生配信によってWebサイトでは伝えきれない魅力を発信したり、インスタグラマーと呼ばれるインフルエンサーとのコラボレーションによって認知拡大をはかることも可能です。
SNSマーケティングを成功させるポイント
SNSを効果的に運用するためには、目的の明確化から万が一に備えた炎上対策まで、戦略的に計画しておくことが重要です。ここでは、SNSマーケティングを成功させるためにおさえておきたい6つのポイントをご紹介します。
目的を明確にする
SNSを効果的に運用していくためには、アカウントの投稿内容に一貫性を持たせ、SNSマーケティングを行う目的を明確にすることが大切です。
- 企業・ブランドの認知度を高める
- 商品・サービスの購入を促す
- イベントのための集客を行う
上記のようにSNSで情報発信を行う目的を明らかにしたうえで、最適な施策を検討することで、より効果的な運用につながるはずです。
ペルソナを定める
目的を明確にしたら、SNSの市場調査や競合調査を行い、商品・サービスのターゲットとなるペルソナ(顧客像)を定めましょう。ペルソナを設定し、どのような行動をしてほしいかを明確にすることは、目的達成にもっとも効果的なSNSの選定にも役立ちます。
総務省情報通信政策研究所が発表した「令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書*4 」によると、X(旧Twitter)とInstagramは10代・20代、Facebookは30代・40代の利用者が多い傾向にあることが明らかになっています。ペルソナを設定し、ユーザー層と合致するSNSを選ぶことで、より戦略的なSNS運用を行えるでしょう。
ユーザーとのコミュニケーションをとる
SNSマーケティングでは、継続的に運用することに加えて、ユーザーと積極的なコミュニケーションをとることも成功に導くためのポイントとなります。コミュニケーション手段は、主に2種類に分けられます。
- アクティブコミュニケーション:自社商品を話題にしているユーザーを企業側が見つけ、リアクションやコメントを残したり、リポストしたりする
- パッシブコミュニケーション:ユーザーのメンションやリプライに企業側がリアクション・返信する
いずれも、企業とユーザーの距離を縮め、商品・サービスへの興味関心を引きつける効果的な方法といえるでしょう。
プロフィールにこだわる
SNSユーザーは投稿内容に興味を持ったあと、プロフィール欄でどのような企業や投稿者が運用しているアカウントであるかを確認し、フォローするかを判断します。つまり、SNSのプロフィールはアカウントの顔といっても過言ではありません。
アカウントの第一印象を決めるプロフィールには、どこで何をしている企業であるか、またユーザーにとってどんなメリットのある商品・サービスを提供しているかなどを簡潔にわかりやすく記載します。さらに、親近感や信頼感につながる企業ロゴなどのアイコン・ヘッダー画像を設定しましょう。
PDCAを回す
SNS上のユーザーの声を収集・分析しながら運用の効果測定を行える点は、企業がSNSをマーケティングに用いるメリットの一つです。一方的な情報発信に終始せず、得られた分析結果をもとにPDCAサイクルを回すことが、より効果的なSNSの活用につながります。
アカウント上でもリーチ数などの一定の分析結果は確認できますが、より詳細な情報をもとに的確な運用を行うためには、XアナリティクスやInstagramインサイトといった各SNS専用の分析ツールの活用がおすすめです。
炎上対策をする
炎上対策は、インターネット上のすべてのコンテンツにおいて重要な課題です。特に、拡散能力の高いSNSでは、誤った情報や受け取り手によって不快に感じる可能性のある投稿が、大きな炎上につながるケースもあります。
SNSに一度投稿された情報は瞬く間に拡散されるため、事態の収拾は容易ではありません。炎上リスクを極力抑えるためには、運用側のネットリテラシーの向上や投稿前のチェック体制の強化はもちろん、万が一炎上した場合の初期対応に関するマニュアル策定なども必須といえるでしょう。
SNSマーケティングのメリットを生かして効果的に運用しよう
顧客とのコミュニケーションのとりやすさや情報拡散力の素早さなど、多くのメリットを持つSNSマーケティング。SNSを活用し成果を得るためには、目的を明確化したうえで、炎上対策を行いながら戦略的に運用することが大切です。
SNS運用を行う際は、SNSに関する基礎知識のほか、媒体ごとの特徴についてあらかじめ学んでおくとよいでしょう。
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※出典
*1:総務省「令和5年版 情報通信白書」より
*2:ICT総研「2022年度SNS利用動向に関する調査」より
*3:Meta「2023年第2四半期(4月-6月)業績ハイライト」より
*4:総務省情報通信政策研究所「令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」p69より