パーソナライゼーションとは、顧客のニーズに合わせて適切な商品・サービスを提案する手法のことです。顧客の価値観や行動が多様化している近年、マーケティングにおいてパーソナライゼーションは重要性を増しています。
本記事では、パーソナライゼーションが重要な理由やメリット、コツなどを解説します。活用事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
パーソナライゼーションとは
パーソナライゼーションとは、データから顧客のニーズを把握し、一人ひとりに合ったアプローチをするマーケティング手法です。顧客の属性や行動履歴などを分析し、適切な情報やサポートを提供することで、顧客の満足度や信頼を高めることができます。
たとえば、ニュースサイトで興味のある記事が表示されたり、ECサイトで好みに近い商品が表示されたりした経験がある人は多いのではないでしょうか。これらはパーソナライゼーションの一例です。
カスタマイゼーションとの違い
パーソナライゼーションと混同されがちな言葉として、カスタマイゼーションが挙げられます。パーソナライゼーションは、企業側が顧客に合った情報を最適化し提供することを指すのに対し、カスタマイゼーションは、顧客自ら情報の最適化を行うことを指します。
たとえばメルマガの場合、顧客の購買履歴やメールの開封頻度に合わせて企業側が送信内容やタイミングを調整するのがパーソナライゼーションです。一方で、顧客自身がメルマガの受信頻度や受信内容を設定することがカスタマイゼーションにあたります。
要するに、パーソナライゼーションは企業側が実施、カスタマイゼーションは顧客側が行うという点に違いがあります。
パーソナライゼーションがマーケティングで重要な理由
近年、マーケティングにおいてパーソナライゼーションがますます重要になっています。その理由は主に以下の3つが挙げられます。
順に解説します。
情報収集チャネルの複雑化
これまでの情報収集は、テレビやラジオ、雑誌、新聞など、企業が不特定多数の顧客へ一方的なアプローチをするマスマーケティングによるものが一般的でした。しかし、近年ではインターネットやSNSが普及し、情報収集チャネルは複雑化しています。
それにより、企業からの情報を一方的に受け取るだけではなく、顧客が自ら情報を検索し、収集・比較できるようになりました。情報収集チャネルが多様かつ複雑になり、顧客はさまざまな視点・情報から商品・サービスを選択するようになったため、より顧客のニーズに合ったマーケティングが必要となったのです。
消費者の価値観の多様化
情報収集チャネルが複雑化したことで、消費者の価値観は多様化しています。近年では消費者自らが知りたい情報を検索することに加え、SNSなどの口コミを通して多様な意見に触れたり、自ら発信したりできるようになりました。
一方的な情報提供を行うマスマーケティングが主流だった以前より、多様な価値観が生まれるようになったのです。そのため、個人の属性や行動に合わせてアプローチをするパーソナライゼーションの重要性が増しています。
顧客体験の重要視
顧客体験が重要視されるようになったのも、パーソナライゼーションが重要な理由です。顧客体験とは、顧客が商品・サービスに出会い、利用〜利用後までの一連の体験のことで、カスタマーエクスペリエンス(CX)とも呼ばれます。
情報収集チャネルの複雑化や価値観の多様化により、商品・サービスそのものの価値だけではなく、購入前の対応や購入後のサポートなどを含む顧客体験に価値を見出す人が増えました。適切な情報やサポートを提供することで、質の高い顧客体験につながると考えられます。
パーソナライゼーションで重要とされるデータ
パーソナライゼーションでは、データが重要です。中でも、以下の3つのデータは特に重要と言われています。
それぞれ解説します。
デモグラフィック
デモグラフィックとは、人口統計学的属性のことです。具体的には、性別や年齢、職業、家族構成など、個人の社会的な属性が挙げられます。マーケティングで基本とされるこれらのデータを活用することで、個人にあった情報提供ができるでしょう。
デモグラフィックデータを収集するには、ECサイトやサービスの会員登録時に基本情報を入力してもらうのが一般的です。
コンテキスト
コンテキストとは、顧客の背景情報のことです。サービスを利用する時間帯や使用しているデバイスの種類、居住地域など顧客が置かれている環境にまつわるデータです。
コンテキストデータを収集することで、顧客が行動に移しやすい情報提供をできる可能性があります。たとえば、顧客が住む地域の店舗情報を提供することなどがそれにあたります。
ビヘイビアー
顧客の行動データを指すビヘイビアーは、パーソナライゼーションにおいて最も効果の高いデータと言われています。顧客が閲覧した商品や購買履歴、カートには入れたが購入しなかったもの、どのバナーをクリックしているかなどの行動データがビヘイビアーにあたります。
ビヘイビアーを把握することで顧客の行動データに関連する情報や商品を表示できるなど、個人の興味関心に合う情報提供が可能となります。顧客の満足度向上や行動促進につながる重要なデータであると言えるでしょう。
パーソナライゼーション活用のメリット
続いて、パーソナライゼーションを活用するメリットを解説します。具体的には、主に以下の4つです。
メリットを把握し、効果的な活用法を検討してみてください。
顧客との関係構築
効果的なパーソナライゼーションの実現は、顧客との関係構築につながります。パーソナライゼーションを活用すると、マスマーケティングのような不特定多数へ向けた情報提供ではなく、顧客の関心や趣味嗜好に合わせた情報提供が可能になるためです。
見込み客の潜在的なニーズに合わせてアプローチを行うことで購買行動につなげるなど、顧客との関係性をより深めることができるでしょう。
顧客満足度の向上
ニーズに合った情報提供は、顧客満足度の向上に寄与すると言えるでしょう。価値観が多様化し顧客体験が重要視されるようになったことで、個人に最適化したサポートや情報提供が必要性を増したため、ニーズを予測した情報提供が顧客満足度につながるのです。
パーソナライゼーションを効果的に活用し一人ひとりに合ったコミュニケーションを行うことで、商品やサービス、企業に対する顧客満足度は向上すると考えられます。
サービス解約の防止
パーソナライゼーションを行い顧客満足度を向上させることで、サービス解約の防止にもつながります。商品やサービスを利用・購入するにあたってさまざまな候補があるなか、顧客はより自分に合ったものを利用し続けたいと考えるでしょう。
パーソナライゼーションを行い質の高い顧客体験をすることで、企業や商品・サービスに対する信頼や満足度が高まり、顧客が継続して商品やサービスを利用・購入することにつながります。
顧客情報の蓄積
パーソナライゼーションを実施すると、顧客情報を蓄積できます。パーソナライゼーションのためにデモグラフィック・コンテキスト・ビヘイビアーといったデータを集めたり、実施したパーソナライゼーションの結果をもとに、顧客の行動やニーズをさらに知ることができたりとさまざまな情報を収集できるでしょう。
それらの情報をさらに活用することで、より質の高い効率的なマーケティング施策へつなげられます。
パーソナライゼーションの注意点
パーソナライゼーションは重要なマーケティング手法ですが、注意しておかなければならない点もいくつかあります。
これらの注意点を把握し、正しく効果的に活用しましょう。
変化するユーザーニーズの把握
ユーザーニーズはタイミングなどによって変化するため注意が必要です。パーソナライゼーションは、個人のデータから一人ひとりに最適化した情報・サービス提供を行います。しかし、タイミングなどにより求めている情報が変化することは珍しいことではありません。
変化に気づかずに見当違いな情報・サービス提供をし続けてしまうと、信頼感の低下につながり顧客が離れてしまうことも考えられます。顧客が求めるものはタイミングや環境下により変化するものだと念頭においておきましょう。
情報の偏り
パーソナライゼーションでは、顧客の属性や趣味嗜好、行動に基づいて情報提供を行うため、場合によっては提供する情報が偏ってしまうことがあります。顧客へ届ける情報が限定されてしまい、新たな行動促進へつながりにくくなったり、同じような情報ばかりが届くことで不信感を抱かせてしまったりするといったケースも考えられます。
顧客に合わせた情報提供は重要ですが、偏りすぎてしまわないように調整することが大切です。
セキュリティの管理体制
パーソナライゼーションでは、顧客に関わる詳細かつ膨大なデータを収集・活用します。そのため、セキュリティの管理体制には十分に注意が必要です。
万が一顧客情報が漏洩してしまえば、企業やサービスは社会的な信用を失うことになるでしょう。デモグラフィックなどのデータを収集する際は顧客に基本情報を提供してもらうことが一般的であるため、顧客から安心して情報提供してもらうためにも個人情報の取り扱いには細心の注意を払いつつ継続的なセキュリティの強化が求められます。
パーソナライゼーションのコツ
パーソナライゼーションを効果的に行うためにはコツがあります。具体的には以下の3つです。
それぞれ解説するので、パーソナライゼーションを行う際の参考にしてください。
タイミングを見計らう
効果的なパーソナライゼーションを行うには、タイミングが重要です。顧客の行動データなどをもとに、適切なタイミングでアプローチを行うとよいでしょう。
たとえば、顧客がサービスを利用しやすい時間帯にプッシュ通知を送信したり、特定の商品をよく検索しているタイミングでそれにまつわるメルマガを配信したりする例が挙げられます。顧客の行動につながりやすいタイミングに応じたコミュニケーションを取ることで、よりパーソナライゼーションの効果が期待できるでしょう。
パターンの検証
パターンの検証も、パーソナライゼーションを行うには欠かせません。マーケティング手法のひとつであるABテストを用いて、より効果のあるパターンを検証しましょう。具体的には、AとBの異なるパターンを用意し、それぞれ同じ条件のもとで試します。これにより、どちらのパターンのほうが効果があるのかを検証できます。
属性ごとにどのパターンが受け入れられやすいのかを把握することで、より質の高いパーソナライゼーションを行うことができるでしょう。
適した手段の選択
情報収集チャネルの複雑化にともない、顧客と企業のコミュニケーションの方法も多様化しています。企業側の一方通行的な情報発信だけではなく、双方向のコミュニケーションが可能となり、電話やメール、SNSなど手段の幅も広がりました。
顧客によってコミュニケーションを取りやすい方法は異なるため、それぞれの状況に合わせた手段を選択することが大切です。
パーソナライゼーションの活用事例
最後にパーソナライゼーションの活用事例を紹介します。
パーソナライゼーションの活用を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
ECサイトのレコメンド機能
レコメンド機能とは、ECサイトやWebサイトで商品・コンテンツを「おすすめ」として提案する仕組みのことです。Amazonや楽天市場などのECサイトが代表的な活用例で、商品を購入する際、関連商品やよく一緒に購入されている商品がおすすめとして表示されるのはレコメンド機能の一部です。また、顧客の購入履歴や閲覧履歴をもとに、個人の趣味嗜好に合わせた商品を表示させるといった活用方法もあります。
レコメンド機能を活用することで、顧客の購買行動を促進することにつながるでしょう。
SNSで過去に見た動画と似た内容のものが表示される
SNSの利用が当たり前となった近年、SNS上での行動データを活用することで、パーソナライズ化された情報提供ができるでしょう。一般的には顧客のSNSアカウントと連携を行うことでデータを収集します。
例としては、SNSで過去に閲覧した動画と似た内容のものを表示するといった方法が挙げられます。
検索・閲覧した内容の関連情報がパーソナライズド広告として表示される
行動データを活用し、顧客が検索・閲覧した内容の関連情報をパーソナライズド広告として表示させる事例もあります。自身の興味に近い広告が表示され、目に留まった経験がある人もいるのではないでしょうか。
蓄積データに基づき顧客一人ひとりの関心や趣味嗜好に合った広告を表示することで、潜在ニーズにアプローチできる可能性が高まります。
ニュースサイトで興味のある記事が表示される
ニュースサイトには膨大な量の記事が掲載されています。その中で、自分の興味に近い記事が分かりやすい位置に表示され、ついクリックをした経験がある人もいるでしょう。
顧客の行動データや属性、居住地域から、個人にとって有益な情報や興味関心に近い記事を表示させる活用事例は多く見られます。これにより顧客の行動促進につなげたり、顧客と企業の親密性を高めたりする効果が期待できるでしょう。
効果的なマーケティングにはパーソナライゼーションの活用が鍵!
顧客の価値観や情報収集の手段が多様化している現代、一人ひとりに合わせたアプローチをするためにパーソナライゼーションは重要です。
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