ソーシャルマーケティングとは?具体的な事例とともにわかりやすく解説

ソーシャルマーケティングとは?具体的な事例とともにわかりやすく解説

「ソーシャルマーケティング」という言葉は聞くけれど、よくわからないという方も多いのではないでしょうか?そこでこの記事では、ソーシャルマーケティングとは何かを簡単に説明したうえで、導入するメリットや注意点、企業による事例5選を紹介していきます。

ソーシャルマーケティングとは?

ソーシャルマーケティングとは、簡単にいうと「社会的課題の解決や社会全体の利益向上を目的としたマーケティング手法」を意味します。一般的なマーケティングは、企業の商品やサービスの販売促進が主な目的です。

一方、ソーシャルマーケティングは、環境問題や経済格差、災害といった課題を解決し社会貢献を行うことで、消費者や投資家からの信頼を獲得し、間接的な利益向上を目指します。

ソーシャルマーケティングが注目される背景

ソーシャルマーケティングが注目される背景には、社会的課題に対して問題意識を抱える人が増えていることが挙げられます。これは、国連総会でSDGs(持続可能な開発目標)が採択されたことや、SNSにより社会問題や企業活動に関する情報を誰もが簡単に入手できるようになったことが大きく影響しています。

これまで、社会的課題の解決は国や地方自治体が担うものとされてきました。しかし、近年は企業にも課題解決に対する期待が寄せられるようになっています。そのため、企業にとってソーシャルマーケティングにより社会貢献性の高さをアピールすることの重要性が高まっているのです。

類似したマーケティング手法との違い

ソーシャルマーケティングは、「CSR」「ソーシャルメディアマーケティング」と混同される場合があります。

それぞれの違いを見ていきましょう。

CSRとの違い

ソーシャルマーケティングとCSRは、それぞれ目的が異なります。CSRとは「企業の社会的責任」という意味であり、社会や環境に対して責任を果たし、社会全体の利益を向上させることが目的です。一方でソーシャルマーケティングは、社会的課題の解決により、企業イメージの向上につなげることが目的とされています。

言い換えると、CSRは企業が社会に対する義務や責任を果たすという側面が強いのに対して、ソーシャルマーケティングは社会的課題の解決をビジネスとして取り組んでいるという違いがあるともいえます。

ソーシャルメディアマーケティングとの違い

ソーシャルマーケティングとソーシャルメディアマーケティングは名前が似ていることから混同されやすいですが、目的や手法が異なります。ソーシャルメディアマーケティングは、ソーシャルメディア(InstagramやX、TikTokなどのSNS)を活用して、商品やサービスをPRするマーケティングのこと。

よって、SNSを使って直接的に売上向上や顧客獲得を目指します。一方、ソーシャルマーケティングは、社会的課題解決による間接的なブランドイメージ向上や信頼獲得を目指すという違いがあります。

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ソーシャルマーケティングを導入するメリット

企業がソーシャルマーケティングを導入するメリットは、以下の4つです。

それぞれ詳しく解説します。

企業イメージの向上につながる

環境問題や災害といった社会的課題の解決に取り組むことで、消費者に対して社会貢献性の高い企業という印象を与えることができ、企業イメージの向上につながります。

その結果、企業の信頼度が高まり、顧客と長期的な関係を築くことができます。継続して社会貢献を続けることは時間も労力もかかりますが、社会から信頼される企業になるための近道ともいえるでしょう。

競合他社と差別化できる

ソーシャルマーケティングにより企業イメージが向上すると、競合他社との差別化にもつながります。たとえば、同じ価格の水が並んでいる場合、「売上の一部を水質改善に寄付します」と書かれた商品があれば、そちらを選ぶ人が多いのではないでしょうか。

このように、ソーシャルマーケティングを導入することで、単なる商品の機能や価格だけではなく、企業が行っている活動という背景情報から選んでもらえる機会を増やすことができます。

投資家へのPRになる

ソーシャルマーケティングを行うことで、消費者だけでなく、投資家に対してPRができるというメリットもあります。近年は、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3要素を考慮して投資先を選定する「ESG投資」が注目されており、投資家も企業の社会的責任や持続可能性を重視する傾向にあります。

ソーシャルマーケティングを実行すれば、投資家からの評価を得やすくなり、資金調達もしやすくなるでしょう。

従業員のエンゲージメント向上・優秀な人材確保につながる

企業が社会貢献性の高い活動に取り組む姿勢を示すことで、従業員のエンゲージメントが向上したり、優秀な人材の確保につながったりする効果も期待できます。

自分の仕事が社会に貢献していると感じられると、会社へのエンゲージメントは自然と向上するもの。さらに、優秀な人材を惹きつける要因にもなるため、人材確保や離職率の低減につながります。

ソーシャルマーケティング実施時に認識しておくべきポイント

ソーシャルマーケティング実施時に認識しておくべきポイントは、以下の3つです。

それぞれ詳しく解説します。

実施の効果が見えにくい

一般的なマーケティングであれば、売上やアクセス数など、わかりやすい指標で測定することができますが、ソーシャルマーケティングは効果を定量的に測ることが難しい点がデメリットといえます。効果が見えにくいことを理解したうえで実施しないと、なかなか成果がわからず途中で頓挫してしまうかもしれません。

効果を測るには、アンケート調査やSNS上での反響などを通じて、社会的インパクトや消費者の共感度合いを把握する仕組みを作るとよいでしょう。定量と定性の両面で効果を測定する工夫が求められます。

ビジネスの利益に直結しづらい

ソーシャルマーケティングの成果は、企業イメージの向上やブランド価値の強化といった長期的な効果として現れることが多く、短期的な利益にはつながりにくいです。そのため、通常のビジネス活動とは別の予算で取り組むことが重要になります。

ソーシャルマーケティングを実施する際は、短期的な利益ではなく長期的な視野で、事業計画や予算配分を組み立てることをおすすめします。

継続的に実施する必要がある

ソーシャルマーケティングを実施するうえで最も重要なのは、継続的に取り組むことです。短期間の施策だけでは、企業の社会的課題への姿勢が十分に伝わりにくい可能性があります。

継続的に一貫した活動を続けることで、徐々に社会からの信頼を得ることができるでしょう。そのため、長期的な視点を持ち、続けやすい活動を選ぶことをおすすめします。

企業によるソーシャルマーケティング事例5選

企業によるソーシャルマーケティングの具体例を5つ紹介します。

各事例について詳しく解説するので、参考にしてください。

ユニクロ「RE.UNIQLO」

アパレルブランドのユニクロは、着なくなった自社製品を消費者から回収し、リユースやリサイクルをする「RE.UNIQLO」という取り組みを実施。​回収された衣類は、以下のように活用されています。

  • 難民キャンプや被災地への緊急災害支援
  • 新たな価値を加えてお客様へお届け
  • 着なくなった服の素材から新しい服を作るリサイクル
  • 断熱材や防音材などの素材に活用

​この取り組みにより、廃棄物や二酸化炭素排出量の削減を目指すユニクロ。この活動の発信は、ブランドイメージ向上にも寄与しています。

トヨタ自動車「トヨタ環境チャレンジ2050」

トヨタ自動車は、2015年に「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表。「もっといいクルマ」「もっといいモノづくり」「いい町・いい社会」という3つの領域で、6つのチャレンジを行うことを掲げました。クルマの持つマイナス要素を限りなくゼロに近づけ、社会にプラスをもたらすことを目指しています。

具体的には、「2050年グローバル新車平均走行時CO2排出量を90%削減」や「ライフサイクル視点で、材料・部品・モノづくりを含めたトータルでのCO2排出ゼロ」といった目標が設定されています。この目標実現に向けた取り組みは、社会全体の環境意識を高めることにも寄与しているでしょう。

サントリー「人類外採用」

サントリーの「人類外採用」もソーシャルマーケティングの具体例。これは、「動物」「植物」「昆虫」「菌類」の4つを募集職種とした、ユニークな設定の求人サイトです。「天然水の森」に生息する動植物をサントリー「天然水の森」の「社員」に見立て、その生態や直面する課題、関連するサントリーの取り組みなどを紹介。

楽しみながら水源林保全の大切さを学べる仕掛けが盛り込まれています。このキャンペーンはSNSなどで注目され大きな反響を呼び、多くの人が自然との共生を意識するきっかけとなり、企業と消費者が一体となって環境保護を考える動きを広げました。

森永製菓「1チョコ for 1スマイル」

森永製菓の「1チョコ for 1スマイル」は、対象商品1個の購入につき、1円をカカオ生産国の子どもたちの教育支援に寄付するキャンペーンです。​2024年度までに、338,567,446円の支援金が集まり、6カ国183の村・集落の17,503人のこどもたちを支援してきました。

支援金は、ガーナなどカカオ生産国の未来を担う子どもたちの教育環境の改善や児童労働問題への取り組みなどに使われています。子どもたちの将来の可能性を広げる一助となっているのです。

ボルヴィック「1L for 10L」

ミネラルウォーターブランドのボルヴィックは、製品1リットルの購入につき、アフリカのマリ共和国に10リットルの安全な水を提供する「1L for 10L」キャンペーンを実施しました。10年間の取り組みによって供給された水の量は、5,036,817,768リットル。

清潔で安全な水の供給を通じて、汚れた水に起因する病気の有病率を減らすことが目的でしたが、ボルヴィックの売上も増加。売上と社会的課題の解決の両立に成功した、ソーシャルマーケティングの好事例といえます。

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ソーシャルマーケティングについて学び実践しよう

この記事では、ソーシャルマーケティングとは何かを解説したうえで、導入のメリットや注意点、具体的な事例を紹介しました。紹介した事例は大手企業ばかりですが、取り組み内容や考え方は、どの企業でも真似できるものばかりです。

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立教大学 文学部英米文学科卒業後、新卒で楽天株式会社に入社。ECコンサルタントとして約300社の売上拡大に貢献したのち、地方移住を機にフリーランスのWebライターへ転身。年間約250本の執筆と約200本のディレクションを手がけ、現在はフリーランスになりたい女性を応援するメディア「フリ女子」を運営中。
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企業でプロジェクトマネージャーとして働きながら、副業ライターとして活動中|ECサイトディレクター⇒UXデザイナー⇒プロジェクトマネージャー|主にIT系・Webマーケティング系・転職系の記事を執筆

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