デプスインタビューとは?目的やメリット、インタビューのやり方について解説

デプスインタビューとは?目的やメリット、インタビューのやり方について解説

デプスインタビューとは、1対1のインタビュー形式で対象者の話を掘り下げる調査方法のことです。アンケート調査とは異なり、定性的な情報をじっくり聞き出すことができるため、ユーザーの考えや行動心理を詳しく分析したいときに役立ちます。

しかし、インタビューの方法やコツを押さえて行わなければ十分な効果を得られない可能性があります。

本記事では、デプスインタビューについて、目的やメリット・デメリット、インタビューのやり方を解説します。後半ではインタビューのコツも紹介するので、ぜひご覧ください。

デプスインタビューとは?

デプスインタビューとは?

デプスインタビューとは、インタビュアーと対象者が1対1で面談を行い、インタビュー対象者から話を聞く調査方法のことです。深さを意味する「デプス(depth)」とインタビューをかけ合わせてできた言葉で、「パーソナル・インタビュー」と呼ばれることもあります。

デプスインタビューは、1人あたり1時間などの比較的長い時間を費やして行います。個人の意見を深掘りできるため、商品やサービスの選択プロセス、購入理由などを詳しく調査することが可能です。特に、ペルソナ、ラダリング*、カスタマージャーニーマップを作成する場合などに行うと効果的です。

*ラダリング:商品・サービスの「どこに価値があるのか」を繰り返し掘り下げることで、価値構造を明らかにする手法

デプスインタビューの目的

デプスインタビューを行う目的は、主に以下の3つです。

順番に解説します。

ターゲット層の心理を把握するため

1つ目の目的は、商品やサービスのターゲット層の心理を把握するためです。デプスインタビューでは、1対1の対話の中で、インタビュー対象者が発した言葉をさらに深掘りしたり、発言の奥にある考え方や心理を紐解いたりすることができます。

アンケート回答だけでは得られない具体的な情報を得ることができ、インタビュー対象者の深層心理の理解につながるでしょう。インタビューを通してターゲット層となる人の心理を理解することで、潜在ニーズを拾うことができます。

アイデアの参考にするため

アイデアの参考にするために、デプスインタビューを行うケースもよくあります。「何に魅力を感じたのか」「どこに不安を感じたのか」など、インタビュー対象者の詳細な意見を知ることができれば、それらの意見が新しいアイデアの材料になる可能性は大いにあります。

新しいアイデアを求めている場合や、アイデアの方向性を変えたいときなどは、デプスインタビューを通してヒントを得るとよいでしょう。

深層心理や行動原理の深掘りのため

対象者の深層心理や行動原理の深掘りをするためにも、デプスインタビューが活用されます。

一問一答で進めるのではなく、1つの問いについて「何を考えてその回答に至ったのか」という背景や動機、思考の過程まで掘り下げるのがデプスインタビューの特徴です。これにより、意思決定や行動に影響を与える要因やパターンを理解し、深い洞察を得ることができるのです。

あわせて読みたい
マーケティングリサーチとは?調査の内容や目的、市場調査の方法を解説
マーケティング調査とは?調査の内容や目的、市場調査の方法を解説マーケティング調査は、企業が抱えるマーケティングの課題を解決するために必要不可欠なものとして注目が高まっています。しかし、マーケティ…

デプスインタビューのメリット

複数人を対象に行うアンケート調査などとは異なる効果が期待できるデプスインタビュー。行うことで得られるメリットは、主に以下の2つです。

順番に見ていきましょう。

1対1で行うため、詳細な情報まで得ることができる

デプスインタビューを行うメリットの1つ目は、詳細な情報まで得ることができる点です。たとえば、お金や健康などのデリケートなテーマを扱う場合、他に参加者がいるとインタビュー対象者は話しにくく感じるでしょう。また、他の参加者の意見を聞くことで意見が変わってしまったり、遠慮して本音を話せなくなったりする人もいます。

その点、デプスインタビューは1対1で行うため、一歩踏み込んだ質問に対しても回答してもらいやすくなる傾向があります。また、1人あたりにじっくりと時間をかけられるため、意見の詳細や背景まで詳しく掘り下げることができるでしょう。

対象者の反応や表情なども含めて情報を得ることができる

デプスインタビューは、1人のインタビュー対象者に対してじっくりコミュニケーションを取りながら進めます。そのため、インタビュー対象者の発言だけではなく反応や表情なども含めて情報を得ることができます。

アンケート回答や大人数が集まる場でのヒアリングでは得られない、細やかなニュアンスまで確認することができるでしょう。表情や空気感、質問に対してすぐに回答が返ってくるのか、考え込むのかなど、投げかけた質問に対する言葉以外のリアクションにも注目してみてください。

デプスインタビューのデメリット

一方で、デプスインタビューには以下のようなデメリットもあります。

デメリットを理解したうえで、有効な活用方法を検討してみてください。

対象者が1人であるため、結果にバイアスがかかってしまう

デプスインタビューは1対1で話を引き出すため、得られる情報や調査結果に偏りが出てしまうことがあります。得られる情報はあくまで個人の意見であることや、質問のしかたによって結果が変わる場合があることに留意しておきましょう。

また、インタビュー対象者によっては、大多数とは異なる意見や代表性に欠ける情報が集まる可能性もあります。デプスインタビューを通して得られた情報をもとにアンケート調査などを行い、バイアスがかかっていないかを確認するのもおすすめです。

インタビューのクオリティが、インタビュアーの技量に依存してしまう

インタビュアーの技量によってインタビューのクオリティが左右されることも、デプスインタビューのデメリットといえます。デプスインタビューでは、数字やデータでは表せないインタビュー対象者の心理や行動の背景を引き出さなければならないため、質問や深掘りのしかたが重要になるのです。

インタビュアーがスキル不足だと、インタビュー対象者の心理を掴めないかもしれません。本音を引き出すことが得意なインタビュアーを選定したり、インタビューのコツを意識して取り組んだりするとよいでしょう。このあと解説するデプスインタビューのやり方やコツも取り入れてみてください。

デプスインタビューのやり方

ここから、デプスインタビューのやり方を解説します。具体的には、以下の5つのステップで進めていきます。

  1. デプスインタビューの目的、期待する成果を明らかにする
  2. 対象の選定と人数、コストの確認
  3. インタビュー時間と質問内容の精査
  4. インタビューを実施する
  5. インタビューで得た情報をまとめ、施策に生かす

順に見ていきましょう。

1.デプスインタビューの目的、期待する成果を明らかにする

まずは、デプスインタビューを行う目的や期待する成果を明確にしましょう。目的が明確になっていないと、インタビュー対象者や質問内容を決める際に軸がぶれてしまいます。

デプスインタビューを実施する目的はさまざまです。たとえば「商品・サービスの課題を見つけたい」「ターゲット層の人々がどのような動機で行動に至っているのか知りたい」などが挙げられます。インタビューを通して求めている情報を得るためにも、最初に目的を明確にしておくことは重要です。

2.対象の選定と人数、コストの確認

次に、インタビュー対象者の選定と人数の決定、コストの確認を行います。インタビュー対象者の選定では、デプスインタビューの目的に合わせて対象者の属性を決定するとよいでしょう。たとえば、商品やサービスのターゲットと近い属性や、インタビューテーマに関わりがある人を選ぶと効果的です。対象者が決まれば、インタビューを行う人数も決定します。

あわせて、コストも把握しておきましょう。インタビュアーやインタビュー対象者、会場にかかる費用などを確認しておくとよいでしょう。

3.インタビュー時間と質問内容の精査

インタビュー当日に向けて準備を行います。具体的には、インタビュー時間や質問内容の精査を行っておきましょう。デプスインタビューにかかる時間は、1人あたりおおよそ1〜1.5時間です。

質問内容は、あらかじめおおまかに準備しておきましょう。しかし、1対1の対話形式となるデプスインタビューでは、話の流れに沿って質問内容を変えたり、深掘りをしたりすることも重要です。事前に質問内容を考える際には、「必ず聞きたいこと」「できれば聞きたいこと」などと分けて準備しておくと、当日の臨機応変な対応にもつながるでしょう。

4.インタビューを実施する

準備が整えば、実際にインタビューに挑みます。まずは、事前に準備しておいた段取りや質問内容をもとに、対象者へのインタビューを行います。そこから、得られた回答をもとに、インタビュー対象者の考えや価値観をさらに深掘りしていくとよいでしょう。

インタビュー対象者は「上手く話せるだろうか」と緊張していることもあります。リラックスして話せるよう、インタビュアーが率先して雰囲気作りをすることも大切です。詳しいインタビューのコツは、後ほど解説するので確認してみてください。

5.インタビューで得た情報をまとめ、施策に生かす

インタビューを実施した後は、得られた情報をまとめて施策に生かしましょう。インタビュー対象者の意見やリアクションをまとめ、レポートとして整理していきます。そうすることで結果を分析しやすくなり、施策や次のアイデアにも落とし込みやすくなります。

定性的な情報が多く得られるデプスインタビューでは、アンケート調査などより情報量が多く、結果が複雑になることが多いです。分析には時間を要する場合があるので、その時間を加味してスケジュールを立てておくことをおすすめします。

デプスインタビューのコツ

最後に、デプスインタビューのコツを解説します。事前準備はもちろん大切ですが、インタビュー当日の心がけやアプローチ方法も調査の質を左右するといっても過言ではありません。

順に解説するので、これからデプスインタビューを行う人はぜひ参考にしてください。

答えやすい雰囲気作りに気を配る

インタビュー対象者は、インタビューに慣れていないことがほとんどです。本音を引き出すには、答えやすい雰囲気を作り、相手の不安や緊張を解きほぐすことが重要です。たとえば、インタビューの本題に入る前にアイスブレイクを取り入れることをおすすめします。お互いに自己紹介をし共通点を見つけるなど、場を和ませるコミュニケーションを取ってみましょう。

また、相手が話しているときは適度に相槌を入れたり、表情に変化をつけたりするのも効果的です。インタビュー対象者に共感の気持ちや話を前のめりに聞いている姿勢が伝われば、より安心して話ができるようになるはずです。

答えやすい質問をする

質問のしかたは、インタビュー対象者が答えやすいように意識しましょう。答えやすい質問をするコツは二つ。1つ目は、事前に答えやすい質問を準備しておくことです。たとえば「他には〜〜という意見がありますが、◯◯さんはどう考えますか?」など過去のインタビューや他のデータを用いて質問すると、インタビュー対象者は回答しやすくなります。

二つ目は、相手の反応を見て深掘るポイントを探すことです。最初は簡単な質問から始め、インタビュー対象者が食いついたテーマや繰り返し口にする言葉を捉えて、それらをヒントにさらに質問を深掘ります。相手をよく観察し、臨機応変に話を進めることを意識しましょう。

答えが1つとは限らない質問をする

デプスインタビューでは、「はい」「いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンではなく、インタビュー対象者が自由に答えられるオープンクエスチョンで質問をすることが大切です。そうすることで、対象者の考え方や価値観を細かく捉えられます。

質問をする際は「なぜですか?」「どのように感じましたか?」などの問いかけを意識しましょう。また、回答に対して「つまり、こういうことですか?」とまとめてしまうと、相手の答えを限定してしまうことにつながります。回答の幅を限定したり、誘導したりすることは避け、インタビュー対象者が自由に発言できる余地を残した問いかけを行いましょう。

効果的なやり方を身につけて、デプスインタビューを実施しよう

効果的なやり方を身につけて、デプスインタビューを実施しよう

デプスインタビューとは、インタビュー対象者の価値観や思考のプロセスを深掘りできる、ターゲットを分析したいときに役立つ調査方法です。マーケティングにおける仮説の構築や新たな施策の検討など、効果的なデプスインタビューを実施できれば活用できる場面は多々あります。

女性向けキャリアスクールSHElikes(シーライクス)では、マーケティングコースをはじめ、全45以上の職種スキルを学習できる環境をご用意しています。データ分析やインタビューを学べるコースもあり、必要なスキルを幅広く身につけることができます。

キャリアデザインを学べるコースやコンテンツもあるため、キャリアチェンジ・キャリアアップのきっかけも見つかるはずです。興味のある方は、ぜひ無料体験レッスンにお越しください。

あわせて読みたい
カスタマージャーニーとは?意味や作り方をわかりやすく解説!
カスタマージャーニーとは?意味や作り方をわかりやすく解説!マーケティングの現場において、「カスタマージャーニー」という言葉を耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。カスタマー…
あわせて読みたい
ペルソナとは?マーケティングで活用するメリットや設定方法・具体例を解説
ペルソナとは?マーケティングで活用するメリットや設定方法・具体例を解説マーケティングの基本として、最初に勉強する人も多いペルソナ。ペルソナ設定を行えば、ペルソナに近いユーザーに適した商品やサービスを作り…
ABOUT ME
ライター momoka
ライターを中心に活動中|HR業界営業→人事担当→ポータルサイト原稿制作を経てフリーランスに|最近はインタビュー・採用広報が中心。エッセイも書きたいです|SHElikesキャリアプランナー&ファシ, 広報 , 撮影
エディター Tomomaru
フリーランスWeb編集・コンテンツディレクター兼たまにライター。 略歴は、アパレル→事務職を経てWebデザインをスクールで学んだのち、SHElikesと出会いWeb制作会社でマーケOLしてみたり。結果、書くことが天職だと思い込み、副業ライター道を歩んでいる。次なる野望は絵描きになること。思い込むのは自由です。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。