ウェルビーイングとは?意味や注目される理由をわかりやすく解説

ウェルビーイングとは?意味や注目される理由をわかりやすく解説
ABOUT ME
ライター 大竹菜々子
高校3年生で脚本家としてデビュー。2018年5月、脚本を担当した映画『猫カフェ』及び『チャットレディのキセキ』が公開される。 慶應義塾大学法学部進学後は、「トラベル Watch」「グルメ Watch」(株式会社インプレス)にてライター・編集者としての活動を開始した。 現在に至るまで、「レスポンス」(株式会社イード)や「ビギナーズ」 (株式会社マーケットエンタープライズ)などで取材記事やSEO記事作成を手掛けている。 なお 2022 年からは、オウンドメディア立ち上げに関わるなど、メディアプロデューサーとしても活動している。JAPAN MENSA会員。
エディター 古澤 椋子
鹿児島大学大学院水産学研究科修了。水産系社団法人にて、水産に関わる調査研究、行政との折衝などを経験したのち、水産系ベンチャーにて、広報を担当。2023年からフリーライターとして活動を始め、主にエンタメ系の記事を執筆。SHElikesでキャリア、マインド共に変化した経験から、SHEsharesのライターを務める。

ウェルビーイングとは、人が身体的、精神的に健康であり社会的にも満たされている良好な状態のことです。従業員のライフワークバランスが見直されるなど、企業経営においてウェルビーイングに基づいた働き方を考えることが重要視されています。

この記事では、ウェルビーイングの意味や注目されている背景、企業における取り組みの事例などを紹介します。

ウェルビーイングとは?

ウェルビーイング(well-being)は、「Well(良い)」と「Being(状態)」が組み合わせられて構成される言葉です。

この言葉は、世界保健機関(WHO)の設立時に作成された世界保健機関憲章前文でスーミン・スー博士が「Health(健康)」を定義した文章で初めて登場しました。

世界保健機関憲章前文 (日本WHO協会仮訳)*1

「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。」

“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.”

この文章の通り、ウェルビーイングとは単純に身体に疾患がないということだけでなく、身体的、精神的、社会的に満ち足りていて充実した状態を指しています。

これまで「健康」といえば、身体的に問題がなく良好であるという狭義の概念で捉えられてきました。それに対しウェルビーイングは、身体的・精神的にはもちろん、社会的なつながりまで良好な状態であることを追求します。

ウェルビーイングと幸福(Happiness)のちがい

ウェルビーイングと同じように満ち足りていることを表す言葉として「幸福(Happiness)」があります。ウェルビーイングと「幸福」にはどのような違いがあるのでしょうか。

ウェルビーイングが継続的・持続的に満ち足りている状態を指すのに対し、「幸福」は主に瞬間的・一時的な精神面での幸せを表しています。

現在、企業経営においては、従業員の瞬間的な満足感を高めて幸福を増すよりも、継続的に満ち足りた状態で働き続けてもらうウェルビーイングを重視する傾向があります。

ウェルビーイングとSDGsの関係

最近では、ウェルビーイングと同時に「SDGs」という言葉もよく目にするようになりました。ウェルビーイングとSDGsには、どのような関係があるのでしょうか。

SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の略称で、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」となります。SDGsでは17種類の目標が提示されており、3つ目には「全ての人に健康と福祉を(Good Health and Well-Being)」という目標が掲げられています。

SDGsは、国連に加盟している全193カ国により採択された世界的な目標です。2030年までに17種類の目標達成に向けて行動することで、「持続可能な社会」を目指し、「誰一人取り残さない」ことを誓っています。

全ての人が持続的に発展する社会を実現するというSDGsの目標は、ウェルビーイングの「持続的に満ち足りた状態を目指す姿勢」も内包しているといえるでしょう。ウェルビーイングを実現するために1人ひとりが生き方や生活と向き合うことで、SDGsの達成にもつながるといえます。

ウェルビーイングが注目される背景

ウェルビーイングへの注目が集まっている背景としては、次のような要因が考えられます。

  • 価値観の多様化
  • パンデミックの影響
  • SDGsの影響

価値観の多様化

ビジネスシーンでウェルビーイングが注目される背景として、人々の価値観の多様化が挙げられます。現代では「ダイバーシティ」という言葉をよく耳にするように、異なる人種や価値観、セクシャリティ、宗教、障がいなどさまざまなバックグラウンドをもつ人々を受け入れる動きがあります。

このような多様性を認識することで、企業においても新たなアイデアが生まれたりコミュニケーションが活発になったりと、ビジネスチャンスを広げるきっかけとなるでしょう。

価値観やバックグラウンドが多様であるという認識が広がるとともに、働き方も大きく変化し多様化が進んでいます。ウェルビーイングが注目されているのは、人々が充実した生活のなかで個々に合う働き方によって能力を発揮することが目指されているためといえるでしょう。

パンデミックの影響

ウェルビーイングが注目されるようになった背景としては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響も大きいといえます。

コロナ禍によって対面での仕事や人との接触が避けられるようになり、企業では急速にリモートワークが推し進められオンライン会議が増加しました。

リモートワークでは通勤のストレスは解消されますが、社員間でのコミュニケーションをとることが少なくなり、業務中に孤独を感じやすいという精神面での負担が指摘されています。

このようなパンデミックにおける働き方の変化のなかで、自身の働き方について再考する人も増えています。身体的にも精神的にも健康的な状態で働ける環境が目指された結果、ウェルビーイングにも注目が集まっていると考えられます。

SDGsの影響

2015年に国連で採択されたSDGsには、「全ての人に健康と福祉を(Good Health and Well-Being)」が含まれています。SDGsに含まれたことで、ウェルビーイングは特に注目を集めるようになりました。

ウェルビーイングがSDGsに含まれているということは、企業や個人がウェルビーングな生き方を達成することで、日本のSDGs達成度に貢献できるということです。一人ひとりが身体的にも精神的にも健康な状態を目指すことで、持続可能な社会の実現に一歩近づくことができます。

働き方改革とウェルビーイング

ウェルビーイングであるためには、働き方について考えることが欠かせません。

現在盛んにおこなわれている働き方改革では、労働の多様化が目指されています。ここからは、ウェルビーイングと働き方の関係について紹介します。

働き方改革とは?

働き方改革とは、社員一人ひとりの状況や悩み、個性に合わせて労働環境を見直すことで働きやすさを追い求める改革です。

具体的には、時短勤務やテレワークの導入、オフィス環境の改善や雇用形態による処遇差の見直しなどが挙げられます。企業が柔軟な対応を取ることで労働環境における不満やストレスを軽減できれば、組織全体の生産性を上昇させることができるでしょう。

この働き方改革で重要となるのは、改革をおこなう内容がその企業の業務内容や従業員に合っているかどうかという点です。働き方改革としてテレワークを導入した結果、意思疎通が複雑化し負担が大きくなってしまうケースもあります。

社内の状況に応じて必要な改革の内容が異なることに注意し、実際にその改革が社員にどのように影響したかまで調査し続けることが大切です。

働き方改革とウェルビーイングの関係

働き方改革とウェルビーイングには深い関係性があります。

働き方改革によって、フレックスタイム制、リモートワークが導入できれば、通勤によるストレスが軽減され、プライベートの時間も増えるなど、個人のウェルビーングの実現に繋がります。

また、ウェルビーイングを追求する上で、人との関わりも重要な要素です。働き方だけでなく、社員間のコミュニケーションに課題はないか、性別や年齢、立場による働きにくさはないかを確認して改善することもウェルビーイングの向上に役立ちます。

人間関係が円滑な職場であればあるほど仕事に対する充足感は増えていくため、社員のウェルビーイングを目指すために働き方改革を進めることは有効な手段であると言えるでしょう。

ウェルビーイングに関する企業の取り組み事例

実際に企業でどのようなウェルビーイングに関する取り組みがおこなわれているのかをみていきましょう。海外企業、日本企業に分けてそれぞれ解説します

  • 【海外企業事例】Google
  • 【海外企業事例】IKEA
  • 【日本企業事例】楽天
  • 【日本企業事例】アシックス

海外企業の取り組み事例

ウェルビーイングは海外において大きな注目を集めており、さまざまな大手企業で取り組みが進められています。

Google

アメリカの大企業である「Google」は、2018年5月に開発者向けのカンファレンスで「デジタルウェルビーイング」という言葉を提唱しました。便利なデジタル機器によるメリットを活用しつつも、機器に支配されず適切な距離を取り日常生活のバランスをとることを目指すという取り組みです。

後にGoogleは、デジタル機器の使いすぎにより自分らしいライフスタイルが崩れてしまうというユーザー向けの「デジタルウェルビーイング」というアプリを開発しました。このアプリでは、デバイスの利用状況に合わせてアプリの利用時間を制限することができたり、メールに優先順位をつけることでユーザーをオフラインに促したりできます。デジタルウェルビーイングが活用されることで、デジタルデトックスにもつながるでしょう。

このように、早くからウェルビーイングに着目してサービス作りを進めてきたGoogleは、社内でも従業員の働き方や職場環境の改善に努めています。例えばGoogleがおこなっている「20%ルール」*2というワークスタイルは、業務時間の20%を普段と異なる業務に充ててよいというものです。これにより、GmailやGoogleマップといった多くの人が活用しているサービスが誕生しました。

また「プロジェクト・アリストテレス」*3という施策では、従業員がありのままの自分で議論を交わすことができる環境を作り、生産性を向上させることを目指しています。誰かに意見を伝えたとき、恥ずかしく思ったり相手の反応を気にしたりする必要がないような、お互いに信頼し合えるチームづくりが目指されています。

IKEA

スウェーデン発祥で様々な国に店舗を展開している「IKEA」では、より多くの優れたアイデアを生み出すためにジェンダー平等や多様性を尊重する姿勢をとり、積極的にウェルビーイングに取り組んでいます。

主な取組みとしては、理事会や委員会のメンバーを男性と女性で均等な割合にする男女機会均等の促進や、性的指向に関わらずすべてのスタッフに平等な機会を設ける企業を目指す取組みがなされています。

日本法人であるイケアジャパン株式会社*4でも、ウェルビーイングの取組み例が具体的に紹介されています。例えば、従業員の不安や心配ごとを相談出来る体制の構築や、ヨガやメンタルヘルスに関するトレーニング、有給休暇の取得推進などです。

日本企業の取り組み事例

日本の企業においても、ウェルビーイングに関する取り組みが広がっています。代表的な2社の事例を紹介します。

楽天

日本でインターネット関連のサービスを広く提供している「楽天グループ」は、イノベーションの原動力には人の多様性こそが必要であると考え、社員のウェルビーイングにつながる環境や仕組みづくりをおこなっています。*5

具体的には、社員のスキルや能力に合わせてビジネススキル研修や英語力、異文化マネジメント力を伸ばす取り組みなどを提供しています。これらのほかにも、社員とマネージャーが1対1で話し合う「1on1ミーティング」*6が実施されています。このミーティングでは、働くうえでの悩みの相談や普段の働き方に関するフィードバックを受けることが可能です。

さらに、リモートワークでの環境サポートや、フレックスタイム制を取り入れることで、業務の忙しさや個人の働き方に合わせてより柔軟に働ける環境が整えられています。

アシックス

国内スポーツメーカーの「株式会社アシックス」は、働く社員の健康を重視しウェルビーイングに取り組んでいます。

アシックスのウェルビーイングに関する取り組みは、「ヘルスリテラシーの向上支援」「メンタルヘルス対応の強化」「生活習慣の改善支援」の3つに分けることができます。*7身体の健康面では、医師などの専門スタッフとの連携によって健康情報の解説やメンタルヘルスケアセミナーなどがおこなわれています。

生活習慣の改善については、アプリを使用したイベントが開催されているほか、仕事時の姿勢の改善やリモートワークにおける運動習慣の機会創出など、さまざまな角度から生活習慣病の予防に役立つ試みがなされています。

このように従業員の健康をサポートすることで生産性を上げ、より豊かな環境づくりを目指すことで企業全体のウェルビーイングも目指すことができるでしょう。

ウェルビーイングについて学べる本

ここでは、ウェルビーイングについて学べる本を紹介します。ウェルビーイングに関する施策や実際の効果に興味がある方は、ぜひ読んでみてください。

前野隆司・前野マドカ「ウェルビーイング」

「ウェルビーイングって一体何?」「最近よく耳にするけれどよくわからない……」と感じている方におすすめの1冊です。

ウェルビーイングという言葉の概念について丁寧に解説したうえで、どのようにして注目され始めたか、ウェルビーイングの取り組みがどうして必要とされているのかを紐解いていきます。ウェルビーイングという概念を理解する際につまずきがちな「一時的な幸せ」との違いについても、結婚や昇進など身近なイベントを例に挙げつつ説明することでイメージしやすくなっています。

さらにウェルビーイングについての研究を取り上げ、経営の視点や地域や家族とウェルビーイングの関わりなど、さまざまな視点から見たウェルビーイングが紹介されている点もおすすめのポイントです。

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石川善樹・吉田尚記「むかしむかし あるところにウェルビーイングがありました 日本文化から読み解く 幸せのカタチ」

この本では、ウェルビーイングが一般的にどのような言葉なのかということはひとまず置いて、「自分が『よい』と思える状況がウェルビーイングだと考えてください」と冒頭に書かれています。

「ウェルビーイングとはどのような意味で、どのような状態が該当するのだろう?」と難しく考え始める前に、感覚的に「良く在る」という概念を読者に伝えてくれる本です。

堅苦しく難しい「概念」の解説よりも「本当の幸せとはなんなのか」が書かれ、ウェルビーイングの原型は歴史や文化、日々の生活のなかにも隠れているという主張がなされています。

非常に読みやすい文体のため、どんどん読み進めることができるでしょう。ウェルビーイングに興味があるものの、抽象的でなんとなく難しく感じてしまっている方にぜひ手に取ってほしい1冊です。

ウェルビーイングを取り入れて充実した毎日に

この記事では、ウェルビーイングの意味やSDGsとの関わり、注目されている理由、国内外の企業の取り組みについて見てきました。

ビジネスにおいてウェルビーイングを追求することは、働く人にも企業にも良い影響を与える可能性が高いです。一個人の満ち足りた状態の持続を追求し、社会全体のウェルビーイングを目指していきましょう。

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あわせて読みたい:ワーケーションとは?メリット・デメリットや導入のポイントも紹介!

*1:公益社団法人 日本WHO協会「世界保健機関(WHO)憲章とは」より
*2:Grow with Google「Work@Google 20%」より
*3:Google re:Work「『効果的なチームとは何か』を知る」より
*4:IKEA「イケア、従業員のウェルビーイング実現の取り組みを強化」より
*5:楽天「健康・安全・ウェルネス」より
*6:楽天「Corporate Topics:「1on1ミーティング」が生み出す、楽天流・コンピテンシー開発」より
*7:株式会社アシックス コーポレートサイト「アシックスの健康経営」より

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。