BtoB向けカスタマージャーニーの作成手順!事例やポイントも解説

BtoB向けカスタマージャーニーの作成手順!事例やポイントも解説

BtoBビジネスでは、顧客が商品・サービスの購買を決定するまでに複数の担当者が関わります。複雑化しやすいBtoBの購買プロセスを把握してマーケティング戦略を策定するなら、カスタマージャーニーマップを作成することが効果的です。フェーズごとに顧客の行動や感情を整理することで、アプローチする相手や方法を理解しやすいでしょう。

本記事では、BtoB向けのカスタマージャーニーマップを作る手順やポイントを解説します。BtoB向けのカスタマージャーニー活用事例も紹介しているので、マーケティング施策立案にお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。

カスタマージャーニーとは?BtoBとBtoCの違い

カスタマージャーニーとは、顧客が商品・サービスを認知してから購買するまでの流れを旅に例えたフレームワークです。また、顧客の購買プロセスにおける行動と感情をフェーズごとに整理し、可視化したものをカスタマージャーニーマップといいます。

顧客の購買プロセスを分析することで、各フェーズにおける顧客との適切な関わり方や、効果的なマーケティング戦略が見えてくるでしょう。

カスタマージャーニーは、BtoBとBtoCのビジネスで必要な情報や整理するべきポイントが異なります。BtoBとBtoC の大きな違いは、商品・サービスの購買に至るまでに関わる人数です。

BroCでは個人の消費者を対象にマーケティング戦略を策定します。一方でBtoBでは、対象が企業になるため、業務に関わる複数の担当者へのアプローチが必要です。感情に訴えるだけではなく、多くの担当者や決裁者を納得させられる合理性が求められます。

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BtoB企業におけるカスタマージャーニーの重要性

BtoB企業にとってカスタマージャーニーは、担当者ごとのニーズや適切な訴求内容を整理できる重要なフレームワークです。ほかにも、以下のような重要性があるでしょう。

  • 各タッチポイントで実行・改善すべきことが明確になる
  • 社内全体の共通認識が生まれる
  • 顧客の感情・行動を深く理解することにつながる

ここでは1つずつ解説していきます。

各タッチポイントで実行・改善すべきことが明確になる

カスタマージャーニーでは、顧客と商品・サービスの接点となるタッチポイントにも着目します。タッチポイントをフェーズごとに確認することで、企業が顧客に対してとるべき行動や、改善すべきことを段階的に把握できます。

たとえばカスタマージャーニーマップを作成することで、企業向けセミナーの内容や公式サイトで発信する内容など、全体的なマーケティング活動を見直すことができます。カスタマージャーニーマップによって各タッチポイントでやるべきことが明確になり、生産性の高いマーケティング活動を実行しやすくなります。

社内全体の共通認識が生まれる

カスタマージャーニーマップ作成に取り組むプロジェクトチームには、さまざまな部署から関係者を集める必要があります。その結果、社内外を問わず関係者同士で連携が取りやすくなり、マーケティングの方針や考え方のすり合わせができるようになるでしょう。

また、顧客の購買プロセスを細かく可視化することにより、カスタマージャーニーマップを見るだけで商品・サービスの顧客像を理解できるようになります。関係者全員に顧客像や自社の課題などに関する共通認識があれば、意思決定のスピード向上や一貫性のある顧客体験の提供にもつながります。

顧客の感情・行動を深く理解することにつながる

カスタマージャーニーを活用することで、各フェーズにおける担当者の感情や行動を整理できます。BtoBでは、複数の担当者をたどって商品・サービスを購買するメリットや魅力を説明し、納得させる必要があります。カスタマージャーニーマップを作成することで、企業の担当者が購買フローを次に進めるにあたって、必要な情報を明確にしやすいでしょう。

たとえば担当者が社内で稟議に上げやすい資料を提供したり、最終的な決裁権がある上長に購買の決め手となる説明をおこなったりするなどです。各フェーズの担当者が抱く懸念点や担当者の行動に合わせて、合理的なアプローチを図れるようになります。

BtoBカスタマージャーニーマップの作成手順

BtoBのカスタマージャーニーは、以下の手順で作成します。

  1. 企業のぺルソナを設定する
  2. キーパーソンとなる担当者のペルソナを考える
  3. 購買に至るまでの流れと必要項目を決める
  4. 項目ごとに情報収集を行う
  5. ペルソナの思考や感情を検討する

BtoBのカスタマージャーニーマップでは、BtoCにはない作成工程があったり、複数のペルソナを作成したりします。1つずつ具体的に解説していきます。

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1.企業のぺルソナを設定する

商品やサービスの顧客像が具体的にイメージできるまで細かく設定したものを「ペルソナ」といいます。BtoBビジネスでは、顧客となる企業のペルソナを設定します。なぜなら企業によって社風や決裁権がある役職は異なり、適切なアプローチ方法もさまざまだからです。

たとえば、以下のような項目を設定して、企業のペルソナを作ります。

  • 業種
  • 事業内容
  • 年間売上
  • 事業課題
  • 従業員数
  • 決裁権がある役職
  • 企業文化

また、ペルソナをスムーズに設定するには、自社がカスタマージャーニーに取り組む目的を明確にしておくことが大切です。最終的な目的によって、設定するべきペルソナの項目は異なります。Webツールの導入やセミナーの集客など、カスタマージャーニーに取り組む目的を意識しながらペルソナを設定しましょう。

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2.キーパーソンとなる担当者のペルソナを考える

BtoBでは、キーパーソンとなる担当者に合わせて適切なアプローチを図り、効果的なマーケティング戦略を策定することが重要です。たとえば窓口となる担当者や、購買の判断をする上長、検討するうえで意見の影響度が大きい人などのペルソナです。各フェーズのキーパーソンとなる担当者ごとに、以下のような項目を設定しましょう。

  • 年齢
  • 性別
  • 家族構成
  • 趣味
  • 情報収集の手段
  • 所属部署
  • 役職業務内容

BtoBでは、担当者の人数に合わせて複数のペルソナを作成し、ペルソナの数だけカスタマージャーニーマップを作成します。キーパーソンとなる担当者の購買プロセスを可視化することにより、訴求力のあるマーケティングを行えるでしょう。

3.購買に至るまでの流れと必要項目を決める

ペルソナを設定したら、購買の流れを段階的に決めていきます。カスタマージャーニーマップでは、商品・サービスに対して無関心だった顧客が購買に至るプロセスを理解するために、商品やサービスが認知される前の状態から購買におけるフェーズを設定します。

多くのカスタマージャーニーマップでは、横軸が購買プロセスのフェーズを表します。たとえば「認知」や「比較・検討」、「社内稟議」や「購買」などです。

縦軸には、購買行動の分析に必要な項目を設定します。「顧客心理」や「行動」のほかに、「顧客の状態」や「タッチポイント」も設定すると、より具体的なカスタマージャーニーマップになるでしょう。

4.項目ごとに情報収集を行う

次に、項目ごとに必要な情報を関係者や顧客から収集します。正確なカスタマージャーニーマップを作成するためにも、多くの窓口から情報を収集することが大切です。情報収集には、以下のような方法があります。

  • アンケート調査
  • 口コミ分析
  • 競合調査
  • 顧客と接する部署へのヒアリング

事実情報をもとに作成したカスタマージャーニーマップによって、顧客の心理や行動を的確に捉えたマーケティング戦略を策定しやすくなります。

5.ペルソナの思考や感情を検討する

情報収集によって顧客の購買プロセスが具体的にイメージできるようになったら、ペルソナの思考や感情を分析して検討します。ペルソナの心理状態は、顧客視点のマーケティング活動に大きく影響する要素です。顧客のネガティブな感情をポジティブに変えることで、商品・サービスの購買に至りやすいでしょう。

たとえば「困った」、「分かりにくい」といった思考や感情を持つ部分では、サポート体制を強化したり、説明書やプレゼン資料を見直したりする必要があるでしょう。近年は商品・サービスの品質だけではなく、購買における顧客体験も重視されるからこそ、ペルソナの思考や感情を正しく理解することが重要といえます。

6.課題に合わせて具体的な施策に落とし込む

カスタマージャーニーマップによって把握した課題に合わせて、マーケティング施策を企画します。カスタマージャーニーマップを作成して顧客を理解するだけではなく、具体的な施策に落とし込むまで実行することが重要です。

たとえば最終的な決裁者の稟議が通りにくいといった課題が見つかれば、追加で資料を用意したり、無料のお試し期間を設けたりできるでしょう。カスタマージャーニーマップを俯瞰して、購買プロセスにおける顧客の行動や感情の変化に着目することが大切です。

BtoBカスタマージャーニーマップの事例

BtoBのカスタマージャーニーマップを活用した事例を参考にすることで、自社に不足している要素や視点に気づきやすいでしょう。ここでは、千葉銀行とリコーのカスタマージャーニーマップを紹介します。

千葉銀行

千葉銀行

引用:千葉銀行「パーパス・ビジョンの制定および第 15 次中期経営計画の策定について」p19より

千葉銀行では、BtoCとBtoBのカスタマージャーニーマップを作成しています。BtoBのカスタマージャーニーマップでは、銀行として利用される状態から、企業から信頼感を得て選ばれ続けるまでの状態を表しています。フェーズごとの顧客体験や銀行にとっての価値を整理した形式です。

顧客のなかで千葉銀行の存在価値が高まったポイントは、会社経営に役立つサービスや、課題解決に貢献してくれた顧客体験であると考えられます。カスタマージャーニーを通して、顧客体験に影響しているサービスを明確にできた事例です*1。

リコー

リコー1
リコー2

引用:リコーダイレクトマーケティングラボ「BtoB版「刺さるコミュニケーション開発」のPDCA」より

リコーでは、公開しているコラム記事でカスタマージャーニーマップを解説しています。検討段階から購買の意思決定につなげる方法や、取引先企業との関係性を深める方法をカスタマージャーニーマップで導く事例です。

リコーが作成したのは、各フェーズにおける顧客の感情と体験を整理したシンプルなカスタマージャーニーマップです。複雑化しやすいBtoB事業において、各フェーズの担当者や顧客体験が一目で分かるようになると、顧客の感情や購買の流れを把握しやすくなるでしょう*2。

BtoBカスタマージャーニーマップ設計のポイント

BtoBのカスタマージャーニーマップは、BtoCとは異なる設計のポイントがあります。実態に即したカスタマージャーニーマップを設計するには、以下のポイントが大切です。

  • 他部署を巻き込んで作成に取り組む
  • 顧客へのインタビュー実施も検討する
  • 優先順位を決めて効率的に改善する

ここでは、1つずつ解説していきます。

他部署を巻き込んで作成に取り組む

カスタマージャーニーマップを作成するときは、さまざまな部署を巻き込む必要があります。それぞれの部署が把握している顧客の情報を集約することで、顧客の購買プロセスを網羅したカスタマージャーニーマップを作成できます。

営業やカスタマーサポート、また開発や企画といった部署によって、関わる顧客企業の担当者が異なることもあるでしょう。顧客の購買行動を多角的な視点から分析したカスタマージャーニーマップは、実態との乖離が発生しにくいといえます。

顧客へのインタビュー実施も検討する

カスタマージャーニーでは、顧客に直接インタビューをして情報を収集することもあります。顧客へのインタビューによって、自社が気づいていない顧客の購買プロセスや、自社商品の課題を把握できる可能性があるでしょう。

たとえば、顧客と商品・サービスのタッチポイントや、企業における購買の判断基準などです。インタビューによって顧客の購買行動が具体的に理解しやすくなり、ペルソナの設計や、商品・サービスの課題確認につながります。

優先順位を決めて効率的に改善する

カスタマージャーニーマップで商品・サービスの課題や改善するポイントを抽出したら、それぞれに適したマーケティング戦略を策定する必要があります。複数の施策を立案した場合、カスタマージャーニーマップから判断して優先順位を決めましょう。

顧客がネガティブな感情を抱くポイントは売上の低下につながりやすいため、改善の優先順位が高いポイントであるといえます。すべての施策を同時進行するよりも、優先順位が高いものから実行していくほうが、効率的に全体を改善できます。

カスタマージャーニーの考察に役立つツール・テンプレートは?

効率的かつ正確にカスタマージャーニーマップを作成するなら、ツールやテンプレートを活用するのが良いでしょう。ツールやテンプレートを利用することで、収集した情報を正しく落とし込み、スムーズに作業を進められます。たとえば、以下のようなツールやテンプレートです。

  • HubSpot
  • UXPRESSIA
  • FlowMapp
  • bizocean

ツールにあるテンプレートや機能を活用することで、手間をかけずにカスタマージャーニーマップを作成できるでしょう。ツールによってはデータの分析機能などもあるため、カスタマージャーニーの考察からマーケティング施策の立案まで役立ちます。

カスタマージャーニーマップを作成する際の注意点

カスタマージャーニーマップは、以下のことに注意をして作成する必要があります。

  • 定期的なアップデートを心がける
  • 事実ベースでペルソナを考える

正確な情報を反映したカスタマージャーニーマップによって、生産性の高いマーケティング活動が行えるでしょう。ここでは、1つずつ解説していきます。

定期的なアップデートを心がける

カスタマージャーニーマップは、完成してからも定期的に見直す必要があります。なぜなら顧客のニーズやタッチポイントは、市場や社会風土の変化に影響を受けるからです。

また、商品の改良や事業フェーズの変化によって、過去に設定したペルソナが事実と沿わなくなることもあるでしょう。定期的に内容を見直しアップデートすることで、その時代に合ったカスタマージャーニーマップを作成できます。

事実ベースでペルソナを考える

カスタマージャーニーマップのペルソナは、顧客や関係者から収集した情報をもとに設定することが重要です。企業の願望や理想を含んだ顧客像では、実際の顧客の行動と乖離している可能性があります。

ペルソナ設定では、収集した情報を定量データと定性データに分類して分析しましょう。顧客の属性や感情を理解したうえで、ペルソナの設定項目に落とし込みます。事実ベースで考えたペルソナは、訴求力の高いマーケティング戦略の策定につながります。

BtoBマーケティングにはカスタマージャーニーが効果的

複雑化しやすいBtoBビジネスにおいてカスタマージャーニーは、顧客の購買プロセスや各キーパーソンへのアプローチ方法を把握するのに効果的です。実態に即したカスタマージャーニーマップの作成は、生産性の高いマーケティング活動につながるでしょう。

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引用
*1 千葉銀行「パーパス・ビジョンの制定および第 15 次中期経営計画の策定について」p19より
*2 リコーダイレクトマーケティングラボ「BtoB版「刺さるコミュニケーション開発」のPDCA」より

ABOUT ME
ライター 木村さき
新卒で求人広告代理店に就職したのち、結婚を機に退職して夫の地元に転居。そこで金融関係の企業に転職し、顧客対応部門のサブリーダーとしてメンバーの育成に携わる。現在は0歳児を育てながら、子どもを寝かしつけた後にwebライターとして活動中。
エディター 古澤 椋子
鹿児島大学大学院水産学研究科修了。水産系社団法人にて、水産に関わる調査研究、行政との折衝などを経験したのち、水産系ベンチャーにて、広報を担当。2023年からフリーライターとして活動を始め、主にエンタメ系の記事を執筆。SHElikesでキャリア、マインド共に変化した経験から、SHEsharesのライターを務める。

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