カスタマージャーニーは、企業が顧客視点に立ってアイデアを出すために役立ちます。カスタマージャーニーで顧客がブランドと接触する地点をタッチポイントといいますが、言葉そのものを知っていても、具体的なタッチポイントの設計方法がイメージできない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、顧客目線でマーケティングを行うために重要となる、カスタマージャーニーのタッチポイントの設計手順や考え方について、詳しく解説します。
カスタマージャーニーにおけるタッチポイントとは?
カスタマージャーニーにおけるタッチポイントは、顧客が直接的・間接的にブランドと接するさまざまなタイミングを指します。たとえば「店頭での接客」「広告、SNS」「友人からの口コミ」など、異なる場面で顧客とブランドとの接点が生まれます。この接点がタッチポイントです。
ほかにもビジネスにおいてはさまざまなタッチポイントが存在します。例として、顧客一人ひとりに対応するための会議や勉強会などのハイタッチ訪問が挙げられます。タッチポイントは、企業のマーケティングにおいて、顧客にブランドイメージを与え、売上を左右する重要なポイントです。
そもそもカスタマージャーニーとは
そもそもカスタマージャーニーとは、顧客が商品を購入するまでの道のりのことを指します。直訳すると「顧客の旅」です。カスタマージャーニーでは、企業が直接顧客と接する機会だけでなく、企業以外の第三者が顧客に影響を与えることもあります。購買プロセスを理解し、顧客体験を向上させるために重要な指標です。
顧客は、カスタマージャーニーでさまざまなステージを通過します。購買決定プロセスの1つである「AIDMA」を例にすると、「Attention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動)」のそれぞれのステージでの顧客の感情は変化します。この一連の流れをカスタマージャーニーと呼び、顧客の行動や感情を時系列で可視化した図を「カスタマージャーニーマップ」と呼びます。
タッチポイントとチャネルの違いは?
「タッチポイント」と混同しがちな言葉に「チャネル」がありますが、両者の意味は異なります。
- タッチポイント:顧客がブランドに接するタイミング
- チャネル:顧客との接点をもつ手段そのもの
チャネルの例として、SNS・広告・Webサイトなどがあります。顧客と接点をもつときに介する「媒体・流通経路」と覚えておきましょう。一方で、タッチポイントはチャネルにアクセスした顧客の行動を設計したものです。チャネルの特性を理解してタッチポイントに設定することは、顧客ニーズに合わせたマーケティングを行う手助けとなるでしょう。
カスタマージャーニーで設定されるタッチポイントの例
顧客の購買カスタマージャーニーにおけるタッチポイントは、大きく分けて「オンライン」「オフライン」の2つです。インターネットの普及によって、顧客の購買プロセスが多様化し、タッチポイントは無数にあります。オンライン・オフラインそれぞれで、ターゲットに合わせたカスタマージャーニーとタッチポイントの設計が大切です。
オンラインの場合
昔に比べて、SNSや通販などが普及している現代では、オンライン上に多岐にわたるタッチポイントが存在します。以下が、具体的な例です。
- デジタル広告
- SNSの投稿
- オウンドメディア
- 通販サイト
- メールマガジン
「SNSの投稿で商品を見かける」「Google検索をきっかけに商品を知る」などは、オンラインのタッチポイントに該当します。オンラインタッチポイントでは、パーソナライズした情報が顧客に届き、ニーズに応じた顧客体験が構築されます。
オフラインの場合
人や物を介してブランドと接触するタイミングが、オフラインのタッチポイントです。以下が、具体的な例です。
- 実店舗
- イベント
- 周囲からの口コミ
- 営業訪問、商談
- CM、チラシ、屋外広告
対人で顧客に直接影響を与えるオフラインタッチポイントは、「人・デザイン・雰囲気」などで、顧客に強い印象を与える手段となります。第三者からのタッチポイントとなる「周囲からの口コミ」は、顧客がブランドの評価手段として活用することもあるでしょう。
カスタマージャーニーでタッチポイントを明確にすべき理由
カスタマージャーニーでタッチポイントを明確にすべき理由には、主に以下の2つがあります。
- 自社に合ったチャネルを選定しやすくなる
- チャネルごとに具体的な施策を立てやすくなる
カスタマージャーニーでのタッチポイントは、ブランドに対するイメージを顧客に与える大切な瞬間です。タッチポイントで顧客体験を最大限に向上させることで、顧客のブランドイメージが向上し、最終的な商品やサービスの購入につながります。
自社に合ったチャネルを選定しやすくなる
デジタルツールの普及でタッチポイントは多様化しており、自社の顧客にマッチするタッチポイントを見つけることは容易ではないかもしれません。しかし、顧客調査やオープンデータをもとにタッチポイントを明確にできれば、収集・分析した顧客データから重要なチャネルを選定しやすくなります。
たとえば、顧客が重要視するタッチポイントが「オンライン・オフライン」どちらか明確になるだけでも、必要なチャネルが絞られます。オンラインのタッチポイントを重要視する顧客のチャネルとしては「SNS・ECサイト・公式HP」など、オフラインのタッチポイントを重要視する顧客のチャネルなら「実店舗・イベント・チラシ広告」などが想定できます。
チャネルごとに具体的な施策を立てやすくなる
タッチポイントを明確にすると、チャネルごとに具体的な施策が立てやすくなります。たとえばタッチポイントがSNS投稿の場合、チャネルはSNSプラットフォームです。考えられる施策としては、「SNS広告・インフルエンサーマーケティング」などが挙げられるでしょう。
またサービスの認知から購入、リピートに至るまでにはマーケティングや営業、カスタマーサービスなどさまざまな部署・担当者が関わります。それぞれのタッチポイントにおける課題を可視化して分析することにより、各担当者が共通認識を持ちながらやるべき施策を明確にイメージしやすくなるのです。
常に新しい情報が飛び交うインターネット上では、カスタマージャーニー設計当初は想定していなかったチャネルが登場することもあります。顧客が想定通りのチャネルを通過しない場合なども想定しながら、新しいSNS媒体の登場やトレンドの変化もキャッチできるとよいでしょう。
カスタマージャーニーのタッチポイント設計手順
企業によってさまざま方法で進められますが、カスタマージャーニーのタッチポイント設計手順として、以下の4ステップがあげられます。
- ペルソナを確認する
- 顧客接点となり得るチャネルを洗い出す
- 顧客の感情や行動を書き出す
- 具体的なアクションに落とし込む
それぞれ、詳しく解説します。
1.ペルソナを確認する
ステップ1では、自社の商品を届けるべきペルソナを設定します。ペルソナとは、商品を使用する人物設定のことです。大まかに年齢や居住地などを設定するターゲット設定と異なり、ペルソナ設定では、一人の人間を思い浮かべながら、1日の過ごし方や価値観まで情報を深掘りします。
具体的には、ターゲット層の情報収集を行い、ペルソナ像の傾向や特徴を見つけます。自社の顧客データだけでなく、オープンデータを活用することで、実態的なペルソナ像が見えてくるでしょう。ペルソナは、一人のユーザーを想像しながら作り上げるので、イラストを踏まえてイメージを膨らませてみるのも良いかもしれません。ペルソナをイメージ・言語化したら、社内で共有し、顧客イメージを統一しましょう。
2.顧客接点となり得るチャネルを洗い出す
ステップ2では、ペルソナのタッチポイントとなる可能性のあるチャネルを、可能な限り洗い出します。何でも良いからチャネルを書き出すのではなく、ペルソナの視点に立って行動パターンをイメージすることが大切です。たとえば、夜の行動パターンを考えてみると「スマホを見ている」「TV番組を見ている」「勉強をしている」など、ペルソナによって異なる生活スタイルが想像できます。
行動パターンを一通り出したら、購買プロセスのどのステージに位置した行動なのかグループ分けをします。購買プロセスモデルの1つである、アイドマ(AIDMA)やアイサス(AISAS)に当てはめると、流れをイメージしやすくなるでしょう。ステージ別の顧客行動がまとまったら、ペルソナに適したチャネルを考えます。たとえば、スマホの使用頻度が高いペルソナなら、チャネルの候補として「SNS・ECサイト」などが挙げられるかもしれません。
3.顧客の感情や行動を書き出す
ステップ3では、タッチポイントで顧客がどのような感情を抱いているかを書き出します。顧客の感情を動かすことがマーケティングでは重要です。タッチポイントごとにネガティブ・ポジティブの双方の感情を把握することで、適切なアプローチが行えるようになります。顧客の感情を具体的にイメージするために、イラストや吹き出しの活用もおすすめです。
たとえば、タッチポイントが「インフルエンサー」「SNS広告」「友達からの口コミ」であった場合を考えてみると、同じ情報を得る状態であっても、それぞれのタッチポイントで顧客の感情は異なることがわかります。チャネルやペルソナの感情によって、顧客に響くアプローチ方法は異なります。
4.具体的なアクションに落とし込む
ステップ4では、カスタマージャーニーをもとに具体的な施策を考え、アクションに落とし込みます。タッチポイントで顧客の感情に寄り添うことを意識しながら、提供すべき顧客体験を設計してみましょう。ステップ1〜3の段階でカスタマージャーニーを具体的に可視化しておけば、具体的なアプローチ方法も思い浮かびやすくなります。
アクションに合わせて「顧客ロイヤリティ施策」を行うと、さらに効果的な結果が見込めます。たとえば「SNS広告」というアクションを起こしながら、顧客ロイヤリティ施策として「既存顧客の口コミ・SNS投稿」の促進を行うなどです。とくに「認知〜検討」のステージにいる商品未購入のユーザーに対して、ブランドイメージ向上の効果が見込めます。
カスタマージャーニーにおけるタッチポイントの考え方のコツ
タッチポイントの設計方法は一通りではないので、企業に合ったカスタマージャーニーを作成するには試行錯誤を繰り返す必要があります。カスタマージャーニーにおけるタッチポイントの考え方のコツは、以下の4つです。
- 定期的に見直す
- 必要なチャネルに絞り込む
- テンプレートやツールを活用して効率化を図る
- 社内全体を巻き込んで情報を集める
それぞれ、具体的な考え方を解説します。
定期的に見直す
カスタマージャーニーは、定期的な見直しをしてこそ効果を最大限に発揮できます。具体的には、PDCAを回しながら「CV数・各タッチポイント」での数値を確認し、仮説のタッチポイントが目標数値に近づいているかを見極めます。目標数値に届かないタッチポイントがあれば、新しいタッチポイントへの変更が求められるかもしれません。
カスタマージャーニーのタッチポイントは、購買モデルの進化やトレンドによって左右されることもあります。例として、マス広告時代の代表的な購買モデルは「AIDMA(アイドマ)」でしたが、インターネット検索時代に突入し、新しく「AISAS(アイサス)」が登場しました。一度カスタマージャーニーを設計したあとも、顧客行動の変化に合わせて設計をアップデートしていく必要があります。
必要なチャネルに絞り込む
タッチポイントのチャネルが多すぎると、顧客データが分析しにくくなる可能性があります。これは「データのサイロ化」とも呼ばれ、チャネルごとにデータが分離し連携が難しくなることを指します。PDCAを回せない量のチャネルをタッチポイントに設定すると、業務過多で作業効率が下がる恐れがあるかもしれません。
企業によっては、多くのチャネルでタッチポイントを設定し、ブランディングや認知度を最大化するケースも存在します。しかし、顧客が通過する全てのチャネルで施策を実施しなければいけないというルールはありません。大切なのは、顧客にとって重要なタッチポイントに絞り込み、予算やリソースに合わせて結果が出る施策を見極めることです。
テンプレートやツールを活用して効率化を図る
個人の考えや憶測のみでカスタマージャーニーのタッチポイントを設定すると、現実との乖離が生まれる可能性があります。カスタマージャーニー設計のテンプレート、分析・管理ツールの活用は、効率的な業務を行う手助けとなるでしょう。
インターネットで無料ダウンロードできるカスタマージャーニーマップのテンプレートも存在します。一般的にはBtoB・BtoCで購買プロセスが異なるため、自社に合ったものを選びましょう。分析・管理ツールは、CRM(顧客管理システム)・チャットボットなどを、効率化したい業務に合わせて取り入れてみましょう。
社内全体を巻き込んで情報を集める
カスタマージャーニーのタッチポイントを考えるときは、さまざまな視点からの情報収集が大切です。多角的な視点でデータや意見を取り入れることで、個人の偏った視点ではなく統計的なデータに基づいたタッチポイントを導き出すことができます。ビジネスでは、無意識のうちに売り手目線で物事を考えてしまうこともあるかもしれません。社内で部署関係なくデータを集めることで、顧客視点により近いタッチポイントを生み出すことができます。
カスタマージャーニーのタッチポイントを設計後に施策を実行してみると、想定と異なる結果が得られることもあるでしょう。この場合、得られたデータを社内共有することで、社員全体の情報アップデートが可能になります。社内で意見を出し合いながら、適切なタッチポイント・顧客体験とは何かを探し出してみましょう。
カスタマージャーニーのタッチポイントを理解し、顧客体験の向上へ
カスタマージャーニーのタッチポイントは、「顧客がブランドと接触する地点」です。購買行動パターンが多様化している現代では、カスタマージャーニーにおいて適切なタッチポイントの設計は欠かせません。顧客データやオープンデータを活用し、カスタマージャーニーマップを作成してみましょう。カスタマージャーニー作成をきっかけに、顧客のインサイトが発見できるかもしれません。
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