マーケティング・マネジメントとは、簡単にいうと「マーケティングをより効果的なものにするための仕組みづくり」のことです。マーケティングを成功に導くためには、マーケティング活動全体を統括し、マネジメントすることが重要となります。
今回は、より効果的なマーケティングのために必要なマーケティング・マネジメントの基礎やプロセス、成功例について解説します。マーケティングの全体像を掴み、効果的な戦略立案をしたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
マーケティング・マネジメントとは?
マーケティングは、企業や組織が商品・サービスを市場に導入、顧客を獲得し維持するための戦略的なアプローチやプロセスを指します。一方で、マーケティング・マネジメントは、そのアプローチやプロセスを包括的に管理するものです。マーケティングのプロセスを安定化させ、より効果的に進めるために仕組みづくりをします。
企業が持続的に利益を得るには、戦略立案および施策の実行・評価を繰り返していくことが大切です。そのプロセスを管理し、マーケティングを成功に導くのがマーケティング・マネジメントの役割といえるでしょう。
マーケティング・マネジメントのプロセス
マーケティング・マネジメントは、以下の5つのプロセスで行われます。
一つひとつ解説します。
1.市場調査と分析
市場調査とは、市場の動向やトレンドを把握するために、調査や情報分析を行うことです。たとえば、調査項目には以下のものがあります。
- 顧客のニーズ
- 消費者数
- 市場・業界の動向(トレンド)
- 特定の商品・サービスの販売量(=市場規模の把握)
- 競合他社の内部要因(弱み・強み)と自社を比較する
このような項目をベースとして、市場の未来を予測・分析、考察するために活用します。なお、市場調査に用いられる調査方法は、定量調査と定性調査の2つに分けられます。
2.マーケティング戦略の策定
マーケティングをはじめる際、最初に行うのは自社商品が置かれている状況の把握です。市場全体の把握や自社製品の立ち位置を明確化するために、STP(エスティーピー)分析というフレームワークを活用します。
STP分析には、以下のようなメリットがあります。
- 顧客のニーズを整理できる
- 自社商品の強みを明確化できる
- 競合他社との差別化ポイントを把握できる
- プロモーション戦略を立案する
それぞれの項目について、順番に解説します。
セグメンテーション
セグメンテーションとは、市場を顧客やニーズなどの共通項によって細分化するプロセスです。ここでの市場とは、消費財市場と生産財市場の2つに分けられます。
- 消費財市場
- 消費を目的として個人や家庭で使用される財やサービスが対象
- 生産財市場
- 生産のために使用される財やサービスが対象
このように、市場調査を終えた後に情報を細分化し、ターゲットとする市場を切り分け、マーケティングの土台を作ります。
ターゲティング
ターゲティングとは、細分化された市場から参入すべきセグメントを選定することです。セグメントの段階で、自社商品が競争優位性の高い市場をターゲットに設定します。ちなみに、ターゲティングには以下のタイプがあります
- 無差別型マーケティング
- 差別型マーケティング
- 集中型マーケティング
これらのタイプを選定し、適切にターゲティングすることが、マーケティング戦略の決め手となるといっても過言ではありません。
ポジショニング
ポジショニングとは、自社商品が顧客のニーズを満たし、ベネフィット(利益)を生み出すために必要なポジションを確立させることです。競争優位性の高いポジションを確立させるためには、以下のポイントを参考にしてみてください。
- 顧客ニーズのあるポジションか
- 顧客ニーズを正確に把握できているか
- 自社の理念や戦略との整合性は取れているか
- ポジショニングマップで相関性が低い軸を設定できているか
やみくもにポジショニングを設定せず、これらのポイントを押さえて実践することが大切です。
3.マーケティングミックス
マーケティングミックスとは、マーケティングにおける実行戦略を指します。具体的には、実施するマーケティングを具体化させるために重要な「製品(Product)」「価格(Price)」「流通(Place)」「販売促進(Promotion)」の4つの要素について考え、組み合わせるのがマーケティングミックスです。
市場ニーズと要素の間に齟齬が生じないように組み合わせ、要素同士の働きに相乗効果を狙えるよう整合性を持たせることが大切です。
4.実施
実施の段階では、いよいよ立案した行動計画のもと、マーケティングを実行します。戦略を実行する際には、集客・商談・販売それぞれの過程において、マーケティングミックスで定めたKPI(重要業績評価指標)に届いているか把握するようにしましょう。
その際、課題が不明瞭だと、施策の本筋を見誤ったり余計なコストを消費したりするかもしれません。実施の際には、課題を明確にすることが大切です。
5.モニタリングと評価
マーケティングは実施して終わりではなく、マーケティング施策の成果をモニタリングし、評価することが重要です。マーケティングにおいて改善すべき点をピックアップし、マーケティングの有効性を測定しましょう。
モニタリングや評価から導かれた結果から課題を明確化させ、戦略を練り直すことが大切です。
マーケティング・マネジメントで使用するフレームワーク
マーケティング・マネジメントでは、以下のフレームワークをよく用います。
一つひとつ、詳しく解説します。
PEST分析
PEST(ペスト)分析では、「政治的要因(Politics)」「経済的要因(Economy)」「社会的要因(Society)」「技術的要因(Technology)」の4つの要因に当てはめ分析するフレームワークです。
これらの要因が自社商品へどのように影響するのかについて予測し、あらかじめ危機管理対策を実施することで、受ける影響が最小限となることを目指します。
STP分析
STP分析とは、マーケットの全体像を掴むためのフレームワークとして用いられます。前述したセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの3つを行い、マーケティング戦略の方向性や施策を決定するため、分析・検討するものです。
マーケットを細分化させ、適切なターゲットを絞り込み、そのマーケット内で最大価値を発揮するためのアピール方法を定めます。
3C分析
3C分析とは、「市場・顧客(Customer)」「自社(Company)」「競合他社(Competitor)」の3つの視点により、現状を分析するフレームワークとして用いられます。3つのCにおける自社の強みや弱みを分析し、客観的な視点から事業を取り巻く外部環境分析が可能です。
現状を明確にし、顧客ニーズの把握や競合他社との差別化を図りたいときに活用できるフレームワークといえます。
4P分析
4P分析とは、マーケティングにおける実行戦略のことを指したもので、マーケティングミックスの一つです。前述した4つの構成要素(製品・価格・流通・プロモーション)のうち、自社の強みと弱みはどの要素にあたるのかを分析できるフレームワークです。
自社商品を効果的にマーケットへ届けるため、とくに押さえておきたいフレームワークといえるでしょう。
SWOT分析
SWOT分析は、内部環境の「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」と外部環境の「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の観点から、現状を把握し明確化させるためのフレームワークとして用いられます。
自社ではコントロールできない外部環境を分析することで、取りこぼしている利益獲得の機会はないか、また脅威とする要素への対処法はないか検討したい際に効果的です。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析とは、自社商品の製造・出荷・販売からサービスといったビジネスの流れを、「価値の連鎖」として提唱したものです。アメリカの経営学者マイケル・E・ポーター氏が提唱した考え方で、企業の多様な活動が最終的にどのような付加価値を持ち、貢献しているのかを示すフレームワークです。
分析要素は、自社商品の量的・質的要素です。この2つの要素同士の関係性を明確化し、競争優位性に劣る部分を導き出します。
マーケティング・マネジメントの成功例
ここからは、マーケティング・マネジメントに取り組み成功した企業の実例を紹介します。企業の抱える課題や背景に対し、どのようなアクションで成果を上げたのか解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)
プロクター・アンド・ギャンブル(以下P&G)は、紙おむつブランドのパンパースや除菌消臭用品のファブリーズなどをはじめとする商品で有名な企業です。P&Gの成功事例のひとつに、低価格帯のパンパースの失敗から高価格帯のパンパースのマーケティングを成功させたというものがあります。
失敗の理由は、予算の関係で広告を積極的に打たず、パッケージの色を変更し認知されなかったという点でした。この失敗から、消費者側の心理を理解し顧客接点の見直しを行なったことで、マーケティングを成功させることができたのです。
スターバックスコーヒー
スターバックスコーヒーは、アメリカ発祥のコーヒーチェーンです。世界最大ともいわれ、その名を知らない人はいないでしょう。そんなスターバックスコーヒーがマーケティングに成功した理由は、徹底した市場調査や顧客体験、戦略的な店舗配置などが挙げられます。
店舗そのものがマーケティングの1つと考え、顧客にとって居心地の良い空間を徹底的に作り上げました。また、高い顧客体験を提供するコミュニケーション手法も成功の鍵となっています。
株式会社ファーストリテイリング
ファストファッションブランドとして知られているユニクロなどを運営するファーストリテイリングは、独自のマーケティング戦略により、2021年に時価総額が10兆円を超えました。
その背景には、商品開発から製造、そして販売までを自社で対応することで、コストカットに成功し品質を維持しながら価格を下げることに成功したことなどが挙げられます。
ファッションブランドの多くがデザインなどに注力するのに対し、ユニクロは価格以上の機能性をアピールした商品展開で、競争優位性を確立しました。徹底した競合他社との差別化戦略やコストリーダーシップ戦略がマーケティングを成功へと導いたのです。
マーケティング・マネジメントを学び、効果的なマーケティングのプロセスを理解しよう!
企業のマーケティングを成功させるための鍵は、マーケティング・マネジメントにあるといっても過言ではありません。効果的なマーケティング戦略を実施するためには、プロセスごとに分け、全体像を掴みながら進めることが重要です。
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