スマートフォンやインターネットの普及によって、消費者が商品やサービスを探したり、購入・契約したりするプロセスが多様化してきています。「カスタマージャーニーマップ」はユーザーの購買プロセスを可視化させるため、ユーザーの行動や心理に合ったコミュニケーションをとるときに効果的です。
本記事では、商材やユーザーに合わせて選べるカスタマージャーニーマップのテンプレート5選を無料で提供します。また、自社オリジナルカスタマージャーニーマップを作るときに参考になる購買行動モデルも紹介するので、ぜひお役立てください。
カスタマージャーニーの基本的な構成
カスタマージャーニーとは直訳すると「顧客の旅」という意味で、顧客がサービスを知ってから購入や登録に至るまでの道筋のことです。この顧客の行動フェーズや、フェーズごとに変わっていく心理ステップなどを可視化したものを「カスタマージャーニーマップ」といいます。カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客の行動や心理に合わせたアプローチがしやすくなったり、フェーズごとの施策や課題が見えやすくなったりします。
カスタマージャーニーマップはペルソナ*を設定をしてから、ターゲット像に合わせて横軸と縦軸の内容を決めます。横軸、縦軸の内容について見ていきましょう。
また、カスタマージャーニーの具体的なサンプルや、くわしい作り方については以下の記事をお役立てください。
*商品・サービスやブランドに強い愛着を持ち、他者に推奨する
横軸はユーザーの行動フェーズ・プロセス
横軸にはユーザー(顧客)が商品やサービスを認知してから購入・契約や共有にいたるまでの行動段階(フェーズ・プロセス)を配置します。例として「認知→興味・関心→検索・調査→行動→情報共有」などの5ステップがあります。
横軸の項目は、後ほど紹介するAIDMA(アイドマ)やAISAS(アイサス)などの購買行動モデルが参考になるでしょう。
縦軸は具体的な行動や感情、課題など
横軸を配置したら、横軸のフェーズ項目に合わせて縦軸の項目内容を決めていきます。縦軸はユーザーの行動や思考など、ユーザーを中心とした項目を配置します。縦軸の項目は自由なので、商材やペルソナに合わせて柔軟に項目を決めていきましょう。例として、以下のような項目が配置されます。
フェーズ | 横軸のフェーズが配置される |
---|---|
ゴール | フェーズが達成されている状態 |
タッチポイント/顧客接点環境 | ユーザーが商材を認知したり、興味を持ったりする接点のこと(テレビ、口コミ、Webサイト、オウンドメディア、SNSなど媒体名を記載する) |
顧客の行動/事実 | フェーズごとに顧客が行う行動 |
顧客の思考/感情 | フェーズごとに顧客が行う行動 |
課題/施策 | フェーズごとに売り手側が行うマーケティング施策 |
ダウンロードして作るカスタマージャーニーマップのテンプレート
カスタマージャーニーマップの縦軸・横軸の項目に悩んだり、マップの可視化に時間をかけたくなかったりする場合は、カスタマージャーニーマップのテンプレートを使用するのがおすすめです。
カスタマージャーニーマップのテンプレートはさまざまな企業が提供していますが、初めて作成するなら「HubSpot」がおすすめです。HubSpotのコンテンツには7種類のカスタマージャーニーマップのテンプレートと、作成手順や注意事項などのマニュアルが含まれています。
他には、「マーケターのよりどころ」をコンセプトにしたWebマーケティングメディア「ferret」でも、カスタマージャーニーマップのテンプレートをダウンロードできます。ferretではカスタマージャーニーの描き方やBtoBマーケティングの実践ガイドなど、マーケティング会社に役立つ豊富な資料を無料で入手できます。
カスタマージャーニーマップのテンプレートを作成する際に役立つ購買行動モデル5選
カスタマージャーニーマップは企業の商品やサービスの内容によって、必要な項目が異なります。さらに、商品やサービスの典型的なユーザ像である「ペルソナ」ごとにも行動や心理に違いがあるので、ペルソナの数だけ作成する必要があります。そのため、上記で紹介したようなテンプレートを利用して作成するのもよいですが、自社の商材に合わせて柔軟に対応できる、オリジナルのテンプレートを作成するのもおすすめです。
カスタマージャーニーマップのテンプレートをオリジナルで作成するなら、横軸にはAIDMAやAISASなど既存の「購買行動モデル」を利用するとスムーズです。購買行動モデルとは、消費者が商品やサービスを購入・契約したり、レビューを投稿してシェアしたりするまでの行動過程をモデル化したものを指します。
下記の購買行動モデルのテンプレートから近いものを見つけてカスタマージャーニーマップの横軸に利用したり、自社の商材に合わせてアレンジしたりするとよいでしょう。
AISAS(アイサス)
Attention(認知) | 広告、SNS、検索などによって、商品・サービスを知る |
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Interest(興味・関心) | 商品・サービスに興味をもつ |
Search(検索) | 商品・サービスについてインターネットで検索する |
Action(購買行動) | 商品・サービスを購入・契約する |
Share(情報共有) | 商品・サービスを購入した感想などをSNSなどを通して共有する |
AISAS(アイサス)は2004年に電通が提唱した、Web時代に合わせた購買行動モデルです。検索や情報共有といった、Web時代ならではの自発的な消費者行動のフェーズが取り入れられています。購買・契約をゴールとせず、情報共有の段階まで設けることにより、口コミの評価やSNSでの評判まで視野に入れたマーケティングを検討できます。
AIDMA(アイドマ)
Attention(認知) | 広告、SNS、検索などによって、商品・サービスを知る |
---|---|
Interest(興味・関心) | 商品・サービスに興味をもつ |
Desire(欲求) | 商品・サービスを欲しい、契約したいと思う |
Memory(記憶) | 商品・サービスを覚える |
Action(行動) | 商品・サービスを購入・契約する |
AIDMA(アイドマ)は購買行動モデルのなかで最も古くから使われています。AIDMAの特徴として、商品を欲しいと思っても必ず購入にはつながらず、記憶から忘れてしまう段階(Memory)を配置していることです。ユーザーに商材を印象づけるためにはどのように広告を工夫するか、などの施策を練るのに向いています。
DECAX(デキャックス)
Discovery(発見) | SNS、オウンドメディア、ニュースサイトなどで商品やサービスを発見する |
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Engage(関係) | 商品やサービスをクリックしたり保存したりすることで、間接的に売り手との関係を築く |
Check(確認) | 商品・サービスの詳細情報や、売り手の会社について詳しく確認する |
Action(購買) | 資料請求やお問い合わせをする |
eXperience(体験と共有) | 商品やサービスを体験し、レビューや口コミで共有する |
DECAX(デキャックス)は2015年に電通が提唱した購買行動モデルです。DECAXはユーザーがDiscovery(発見)する段階からカスタマージャーニーが始まるため、ニュースサイトやSNS、オウンドメディア(自社が保有するメディア)など、コンテンツ発信の施策を立てるのに向いています。
DECAXを使用する場合、ユーザーがコンテンツを発見しやすいようにSEO対策をしたり、信用できる高品質な情報を発信したりするコンテンツマーケティングの徹底が欠かせません。
AMTUL(アムツール)
aware(認知) | 広告、SNS、検索などによって、商品・サービスを知る |
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memory(記憶) | 商品・サービスを覚える |
trial(試用) | 商品のサンプル、サービスの無料体験などを試す |
usage(本格的使用) | 商品・サービスを購入・契約して、本格的に利用する |
loyalty(愛用・ブランド固定) | 商品を愛用し、継続的に利用するようになる |
AMTUL(アムツール)は消費者のより長期的なフェーズの変化に着目した購買行動モデルです。AIDMA(アイドマ)が1回の購入を目的としたプロセスなのに対して、AMTULは消費者が商材のファンとなり、継続的に利用する「loyalty(愛用・ブランド固定)」をゴールとしています。AIDMAでは長期利用者への特典や丁寧なアフターサービスなどを付け加えて、他社にのりかえずに継続してもらうよう、工夫することがポイントです。
5A理論
Aware(認知) | 広告、SNS、検索などによって、商品・サービスを知る |
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Appeal(訴求) | 認知した数ある情報のなかから検討の対象にしたり、内容やブランドに惹きつけられる |
Ask(調査) | 商品・サービスの口コミや売り手の会社について、SNSや検索などによって調査する |
Act(行動) | 商品・サービスを購入・契約する。または、商品を利用したり、サービスを受ける |
Advocate(奨励) | 商品・サービスやブランドに強い愛着を持ち、他者に推奨する |
5A理論はアメリカの経済学者であり「マーケティングの神様」と呼ばれているフィリップ・コトラーが提唱した、新しいカスタマージャーニーモデルです。最終的なゴールは消費者が商材を他者に勧める「Advocate(奨励)」に設定しています。
消費者が自発的に調査をしたり、商材の購入後に他社に奨励したりする内容から、Web時代を意識して提唱されたAISASと似ています。しかし、AISASは「Search(検索)」や「Share(情報共有)」などオンラインのなかで顧客が行動している想定なのに対して、5A理論の「Ask(調査)」や「Advocate(奨励)」は、オフラインのなかでの行動も含めています。5A理論はゴールの「Advocate(奨励)」が最も重要なキーとなるため、友人同士の推奨やオフラインでのコミュニケーションも包括して構成されています。
カスタマージャーニーマップを作成できるツール
カスタマージャーニーマップの無料テンプレートはPowerPoint(パワーポイント)やExcel(エクセル)形式のものが多いです。テンプレートを編集したり、テンプレートを一から作ったりするのに活用できるツールを紹介します。
PowerPoint(パワーポイント) | プレゼンテーションソフトなので、視覚的にわかりやすいカスタマージャーニーマップを作成できる。Google Slidesなどでオンライン共有も可能。 |
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Googleスプレッドシート | 表計算ツール。Excel形式のテンプレートで作成したカスタマージャーニーマップを共有したり、共同編集することが可能。 |
Canva | オンラインで使用できるグラフィックデザインツール。カスタマージャーニーマップのテンプレートを無料で使用・作成したり、共有・共同編集することが可能。 |
Figma | オンラインで使用できるデザインツール。無料のカスタマージャーニーマップのテンプレートがあり、カスタマージャーニーマップを作成したり、共同編集したりすることが可能。 |
カスタマージャーニーマップを作成する際の注意点
カスタマージャーニーマップの目的を達成するためには、定期的にアップデートをしたり、ペルソナ設定を徹底したりする工夫が欠かせません。ここでは、作成する際に押さえておきたいポイントを紹介します。
目的やゴールを明確にしておく
カスタマージャーニーマップのゴールは、契約・購入、他者への推奨、リピート購入・継続使用など、ペルソナごとに異なるはず。ゴールによってマップの構成が変わってくるので、ゴール設定とペルソナ設定をしてからフレーム作りをしましょう。社内で目的や施策に対して共通認識をもつことも欠かせません。
定期的にアップデートを実施する
カスタマージャーニーマップは一度作成したら終わりではなく、定期的に見直す必要があります。なぜなら、競合のマーケティング方法やトレンドによって消費者の心理やニーズが変化したり、施策を進めていくうちに最初に想定していたペルソナ設定がずれてしまっていることに気付いたりすることがあるからです。成果がなかなか達成できない場合も、カスタマージャーニーマップを見直すきっかけになります。
ペルソナの目線を忘れない
カスタマージャーニーマップを作成する際は、徹底したユーザー視点が重要です。企業目線だとユーザーの知識量や心理を誤って捉えてしまうことも少なくありません。ペルソナ設定をする際はターゲット層や既存顧客にヒアリングやアンケートを実施したり、社内で現場を担当している人から情報収集をしたりするとよいでしょう。
クラウド型の共同編集ツールを活用する
カスタマージャーニーマップはこまめなアップデートが必要なため、すぐに修正が共有できる、共同編集ツールを活用するのがおすすめです。Excelのデータをアップデートして共有できるGoogleスプレッドシートや、PowerPointで作成したカスタマージャーニーマップのアップデートなどを活用しましょう。
カスタマージャーニーマップは自社に合ったテンプレートを活用しよう!
カスタマージャーニーマップがあると社内で施策の共通認識を持つことができたり、ユーザーの心理に敏感になることで、目標を達成しやすくなったりとさまざまなメリットがあります。カスタマージャーニーマップのテンプレートは無料でダウンロードできるので、気になった方はぜひ使ってみてください。
女性向けオンラインスクールSHElikes(シーライクス)では、全45以上の職種スキルが学び放題です。「マーケティング入門」や「コンテンツマーケティング」などマーケティングに関するコースが豊富なので、マーケティングに関する知見やスキルも深められ、カスタマージャーニーマップの作成にも活かされるでしょう。SHElikesには受講生同士で学習の進め方や目標を共有しあえるコミュニティサイトもあるので、モチベーションを保ちながら仲間と一緒にスキルを習得したい方にもおすすめです。気になった方はお気軽に無料体験レッスンにご参加ください。
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