「休職したことがあると、転職で不利になる?」「休職中に転職を成功させたい」このように考えている方もいるのではないでしょうか。たしかに、休職経験があることで転職活動が不利になる可能性はあります。しかし伝え方を工夫すれば、休職の経験があっても転職することは可能でしょう。
この記事では、転職で不利になりやすいケースや休職中に転職活動をする際の注意点、伝え方などを解説します。休職から次のステップに進むために、ぜひ記事の内容を参考にしてください。
不利になるケースもあるが伝え方次第
休職の経験があると、転職活動で不利になる可能性があります。企業は休職者に対して「また長期的に休む可能性があるのではないか」「心身の健康など、何か問題があるのかもしれない」と懸念を抱くためです。企業としては採用した人に長く活躍してほしいため、休職の経歴がある人の採用は慎重になるケースが多いでしょう。
しかし、休職の事実があっても伝え方次第で、不利な状況を乗り越えられます。「なぜ休職することになったのか」「今はどんな状況で、これからどのように働いていきたいか」を前向きに伝えることが大切です。そうすることで、採用担当者の不安を払拭して、ポジティブな印象を与えられます。

休職が転職で不利になりやすいケースとは?
休職の状況によっては、転職時に不利になりやすいものもあります。特に、以下3つのケースは注意が必要です。
再度休職の可能性が心配される場合
再び休職する可能性があると、採用を見送られることがあります。企業からすると、「入社後にまた休職してしまうのではないか」という不安があるためです。
「株式会社リクルート 就職みらい研究所」の調査によると、企業は従業員1人を採用するのに、以下の費用をかけていることがわかっています。*1
- 新卒採用:93.6万円
- 中途採用:103.3万円
上記のデータからわかるように、企業は採用や従業員の教育に多くの費用と時間をかけます。そのため、また休職する可能性が高いと判断されると、採用されづらくなるでしょう。特に心の不調や持病がある場合や、過去に何度も休職を繰り返しているケースでは、選考に影響が出やすいです。
体調不良による休職を経験している場合は、現在の病状などを説明し、現在は問題なく働けることをアピールすると良いでしょう。
休職期間が長期間で復職していない場合
長い間、復職していない場合も、転職で不利になりやすいケースの1つです。元の職場を長く休んでいると、企業は以下のような疑問を持ちます。
- どうして復職できなかったのだろう
- 働く意欲がないのではないか
- 休職の原因がまだ解決していないのかもしれない
また、休職期間が長い人に対して、仕事に必要なスキルや知識が古くなっていたり、職場に慣れるのが難しかったりといった心配も抱きやすいです。そのため、休職期間が数ヶ月から数年と長い人は、転職の選考で不利になる可能性が高いでしょう。
休職をしていないと嘘をついた場合
「休職をしていない」と嘘をついた場合、かえって転職で不利になる可能性があります。休職によって選考が通りづらくなることもあるため、転職活動で休職の事実を隠したくなる人もいるでしょう。
しかし、職務経歴書や履歴書で職歴をごまかしたり、面接で「休職はしていない」と嘘をついたりする行為は「経歴詐称」に該当する可能性があります。そのため、休職の事実を隠して採用されても、バレたときに内定取り消しや解雇などにつながるリスクがあるでしょう。
休職したことを伝えるのは抵抗があるかもしれませんが、長い目で見ると正直に話すのがベストといえます。休職について質問された場合や、経歴をごまかすような書き方はせず、誠実に回答することが大切です。
休職中に転職活動する場合の注意点
休職中に転職活動をすることは、法律で禁止されていません。しかし、休職中に転職活動をするうえで、いくつか注意したいポイントがあります。
現職の就業規則を確認する
休職中の転職活動は、日本国憲法で「職業選択の自由」が保障されていることにより、法律的に問題となることはありません。*2しかし、法律的に問題がなくても会社の就業規則で禁止されている場合、転職活動が「就業規則違反」と捉えられる可能性があるため注意が必要です。
たとえば、会社によっては「休職期間中は療養に専念すること」のように規則で定められている場合があります。もし、会社のルールで禁止されているにも関わらず転職活動を行ってしまうと、就業規則違反として減給や出勤停止、重い場合は解雇になることも考えられるでしょう。
そのため、休職中に転職活動を始める場合、まずは現職の就業規則を確認することが大切です。
転職中であることを不用意に人に話さない
休職中に転職活動をしていることを、不用意に人に離さないことも重要です。うっかり同僚や友人に話してしまうと、噂が広まって上司の耳に入る可能性があります。
また、自身のSNSに転職中であることを書き込むことも避けましょう。たとえば、転職活動の状況や職場の不満などをSNSに投稿すると、会社の関係者に知られるリスクが高まります。
もし、休職中に転職しているという情報が漏れると、就業規則違反の処分を受けたり、職場の人との関係が悪くなって円満退社が難しくなったりするかもしれません。また、「復職をしたい」と思っても、会社に戻りづらくなる可能性もあります。
そのため、転職活動に関する話は家族や転職エージェントなど、限られた人にだけ打ち明けるようにしましょう。
体調が不安なら回復後の活動がおすすめ
体調に不安がある場合は、回復してから転職活動を始めるようにしましょう。転職活動は、職務経歴書や履歴書などの書類作成や面接対策などで体力を消耗します。また、選考結果で一喜一憂することが多く、メンタル面の負担も大きいです。
体調が回復していない状態で転職活動を始めても、かえってストレスを抱えて症状が悪化したり、回復が遅くなったりする可能性も考えられます。また、体調が万全でないまま転職活動をしても、本来の力を発揮できずに不採用につながることもあるでしょう。
まずは転職活動を始めても問題ない状態かどうか、冷静に判断することが大切です。そのうえで、体調に不安な点がある場合は、十分に回復してから転職活動を始めることが望ましいでしょう。

不利を回避する!休職理由の伝え方
休職経験があると転職で不利になりやすいですが、伝え方を工夫することで成功につなげられます。ここでは、転職を成功させるために効果的な休職理由の伝え方を紹介します。
休職期間中の学びや成長をアピールする
休職期間をただのブランクではなく、学びや成長の期間と捉えて、その経験を前向きに伝えることが大切です。困難な状況を乗り越えるなかで気づいたことや、身につけたことを伝えることで、あなたの人間力や向上心をアピールできるでしょう。
たとえば、仕事に対する考え方や新しく身についたスキルを、具体的な事例を踏まえて伝えられると効果的です。
- 体調管理の大切さを実感したことで、生活習慣を整えられるようになった
- 休職後にすぐに活躍できるよう、資格の取得をした
- ボランティアや地域活動を通じて、コミュニケーションの大切さを学んだ
上記のような実体験をもとに、「休職中に何を学び、企業でどう活かせるか」まで伝えられると、採用担当者にポジティブな印象を与えられます。
現在は就業可能なことを理由とともに伝える
「今は問題なく就業できる」ということを、その理由と一緒に伝えることも不可欠です。企業が休職経験者の採用を検討する際、特に気にすることは「今は働ける状態なのか?」ということです。
そのため書類や面接では、休職の原因となった問題がすでに解決していて、現在は就業可能であることをはっきりと伝えましょう。そのとき、働くことができる根拠を具体的に伝えることが大切です。
- 主治医の先生から復職や就労の許可が出ている
- 必要な治療やリハビリが終わり、症状も安定している
- 規則正しい生活習慣が身につき、通勤や日中の活動に支障がない
上記のように就業可能な理由を伝えて、採用担当者の不安を和らげられると、休職の事実があっても不利に働きづらいでしょう。
再度休職しないための対策を伝える
再び休職しないための対策を伝えることも重要です。休職中であることや休職していたことを伝えると、採用担当者から「休職しないために、どんな対策をしていますか?」と質問される可能性があります。
その際に、自分が取り組んでいる対策を具体的に説明することで、問題意識や積極性をアピールできるでしょう。
たとえば、働き方が原因で休職した場合は「タスクや時間管理アプリを使って、仕事の進め方を工夫している」と伝えられます。また、心身の不調が休職理由の場合は、「定期的な通院やカウンセリングによって、自分の状態を客観的に把握し管理している」と伝えられるでしょう。
このように、再度休職しないための工夫を説明することで、採用担当者に「自己管理ができる人なんだな」「同じ理由で休職するリスクは低そう」と感じてもらえます。
復職ではなく転職を選んだ理由を伝える
休職理由を伝える際、復職ではなく転職を選んだ理由もあわせて説明しましょう。なぜなら、休職を経験している場合、採用担当者から「どうして元の会社に戻らないのか」「復職できない問題があるのかも」という疑問を抱かれやすいからです。
そのため、転職を選択した明確な理由を伝えることが大切といえます。なかには、職場に不満があり、転職を決意した人もいるでしょう。しかし、現職の不満を転職理由として伝えると、かえってマイナスイメージを与えてしまいかねません。
職場への不満ではなく将来に向けたポジティブな理由を説明することで、復職ではなく転職を選んだ前向きな意欲を伝えられます。
- キャリアチェンジやスキルアップのため
- 自分に合った労働環境を求めたため
- 会社の状況が変わったため
- ライフスタイルに変化があったため
上記のような理由を具体的かつポジティブに伝えることで、採用担当者に納得してもらいやすくなるでしょう。

休職中や休職後の転職についてよくある質問
休職中や休職後に転職活動を行う際、さまざまな不安や疑問を抱くはずです。ここでは、よくある質問についての具体的な回答を紹介します。
不利な状況を回避して、転職成功につなげるためにもぜひ参考にしてください。
転職エージェントに休職を伝えるべき?
転職エージェントを活用しながら、転職活動を進めている方もいるでしょう。転職エージェントを利用している場合は、休職中であることや休職した経験について、正直に伝えることが望ましいです。
むしろ休職の事実を伝えることで、あなたの状況や事情に合った求人を紹介してもらえる可能性が高まります。たとえば、通院が必要な場合はフレキシブルに働ける企業や、体力的に楽な求人を紹介してもらいやすくなるでしょう。
また、休職理由の伝え方について、プロの視点から的確なアドバイスをもらえるため、面接の質問対策ができるのもメリットです。休職の経験があることを転職エージェントに伝えたうえでサポートを受けることが、転職成功の近道といえるでしょう。
履歴書や職務経歴書に休職は記載すべき?
休職した事実を履歴書や職務経歴書に記載すべきか、悩む人は多いです。「休職したことを記載すべき」という法律的な義務はなく、休職期間が短い場合はあえて書かないという選択肢もあります。
しかし、休職の事実を伝えていないと、後から発覚した際に「経歴を隠していた」と思われて、信頼を失うリスクがあるでしょう。また、面接時に経歴を聞かれた際、答えづらくなったり、辻褄が合わなくなってしまったりすることも考えられます。
そのため、必ずしも記載すべきとはいえませんが、応募先企業からの信頼を得るためにも正直に書くことがおすすめです。書類に休職のことを記載する場合は、職歴欄に以下の内容を書きましょう。
- 休職期間
- 簡単な理由
- 現在は働ける状況であること
休職の事実は転職先にバレる?
「休職していたことを、黙っていればバレないのではないか」と考える方もいるかもしれません。しかし、休職の事実は、入社に必要な手続きや入社後のタイミングで発覚する可能性が高いです。特に以下のようなケースで、休職していたことがバレやすいといえます。
- 源泉徴収票や住民税を確認されたとき
- 傷病手当金を申請したとき
- リファレンスチェックを受けたとき
- SNSの投稿や前職の同僚とのつながり など
もし入社後に休職のことがバレると、経歴訴訟と認識されて何らかの処分を受ける可能性があります。また、休職そのものは問題視されなくても「正直に話してくれなかった」と、会社からの信頼を失うことも考えられるでしょう。
休職中の転職活動は法律的に問題ない?
休職中に転職活動を行うことについて、法律的には問題ありません。日本国憲法第22条第1項で「職業選択の自由」が保障されており「どんな状況で仕事を探し、転職するか」は労働者の権利として守られています。
ただし、法律的に問題ないといっても、会社では禁止されていることがあります。「現職の就業規則を確認する」で解説したとおり、会社によっては就業規則で休職中の過ごし方を決めていたり、転職活動を禁止していたりするところがあるからです。
もし、会社のルールに違反した場合は、懲戒処分を受けるリスクがあります。そのため、休職中の転職活動は法律違反ではありませんが、今の会社の就業規則を確認しつつ、慎重に進める必要があるといえるでしょう。
休職経験の伝え方を工夫して、転職を成功させよう
この記事では、転職で不利になりやすい休職のケースや、休職中に転職活動をする際の注意点などを解説しました。記事でお伝えしたように、休職の経験があると転職で不利に働くケースがあります。
特に再び休職する可能性があったり、長い間復職していなかったりすると、採用担当者にマイナスなイメージを与えやすいでしょう。しかし、転職に向けた前向きな姿勢と、再び休職しないための工夫を伝えることで、ポジティブな印象を与えられます。
あわせて、休職経験者が転職を成功させるうえで、スキルの取得は不可欠です。仕事に必要なスキルや知識が古くなっていないことや、即戦力になれることを伝えられるからです。
女性向けキャリアスクール「SHElikes(シーライクス)」は、全45以上の職種スキルが学び放題のスクールです。デザインやライティング、マーケティングなど、さまざまな現場で活かせるスキルをつまみ食い受講によって身につけられます。休職経験をスキルでカバーしたい方は、ぜひSHElikesの活用を検討してみてください。
SHElikesのなかでも、転職に特化した「レギュラープラン」は経済産業省のリスキリング補助金の対象になっています。受講料の還元を受けながら、キャリアコーチングや面接対策などのサポートを受けられるのがポイントです。条件を満たせば、入会時に受講料の50%の早期還元が受けられます。気になる方は関連記事をご覧ください。




参考:
*1:就職みらい研究所|就職白書2020
*2:厚生労働省|憲法22条に規定する職業選択の自由について