リストラクチャリングとは?意味やメリット、事例をわかりやすく紹介!

リストラクチャリングとは?意味やメリット、事例をわかりやすく紹介!

リストラクチャリングは、企業の価値を高めたり経営を効率化するために行う施策のことです。企業の持つ経営資源を構築し直し、より良い方向に導くために行います。ネガティブなイメージのあるリストラを連想するかもしれませんが、本来は人員整理や人員削減だけを意味する言葉ではありません。

そこで今回は、リストラクチャリングについて詳しく解説します。リストラクチャリングの方法とメリット・デメリット、実際に成功した事例を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

リストラクチャリングとは

リストラクチャリングは、構築し直しを意味する英語「restructuring」に由来するビジネス用語で、企業が経営資源を再配置して事業や組織を最適化するために実施する施策を指します。たとえば、事業を縮小する、撤退する、分社化するなど、根本的なところから再構築することを総称してリストラクチャリングと言います。リストラクチャリングと混同されがちな言葉との違いを把握していきましょう。

リストラクチャリングとリストラの違い

「リストラ」という言葉に聞きなじみのある人も多いでしょう。リストラはリストラクチャリングを略した言葉で、経営の安定化を目指して行われる施策を指します。しかし、日本では解雇というネガティブな意味合いで捉えられており、本来のリストラクチャリングとは少し違うニュアンスで理解されているケースが多いようです。

たしかに、リストラスチャリングでは、企業の再構築のプロセスのひとつとして人員整理が行われることもあります。しかし、人員整理はリストラクチャリングの方法のひとつで、単なる解雇とは意味が異なることを理解しておきましょう。

リストラクチャリングとリエンジニアリングの違い

リストラクチャリングと混同されやすい言葉に、リエンジニアリングがあります。リエンジニアリングは、業務プロセスからフローや戦略の見直しを行い、経営状態の改善を図る手法です。どちらも経営状態をより良くするために行う手法という点は同じですが、リストラクチャリングは業務そのものからの見直し、リエンジニアリングは業務プロセスからの見直しを指すことが多く、アプローチの方法に違いがあります。

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リストラクチャリングの方法

リストラスチャリングの方法は、主に以下の4つの方法が用いられます。

それぞれ確認していきましょう。

財務リストラクチャリング

財務リストラクチャリングは、企業の財務状況が悪化したときにキャッシュフローの改善のために行われるリストラクチャリングです。財務リストラクチャリングには、資産・財務・増資と3つの種類があり、それぞれの分野を改善することでキャッシュを生み出します。財務リストラクチャリングは会計や財務についての豊富な知識が必要になるため、税理士や公認会計士などの専門家に依頼するのが一般的です。

資産リストラクチャリング

資産リストラクチャリングは、企業が持つ資産を見直してキャッシュフローを改善することです。具体的には、保有している有価証券や不動産を売却し、現金にするなどの方法が挙げられます。事業や売上につながらない資産を売却すれば、短期間で資産を増やしたり借入金を弁済したりすることができます。資金を作ることで、業務にかける資産を増やし業務拡大につなげることができるでしょう。

債務リストラクチャリング

債務リストラクチャリングは、会社の債務を削減して現在の支出を減らし、キャッシュフローを改善することです。具体的には、債権放棄やリスケなどを行い、負債利子の条件を緩和するなどの方法が挙げられます。経営を圧迫している原因が債務によるものであるときに実施されるのが一般的です。債務を削減して負担を減らすことで、経営状態の改善を目指します。

増資リストラクチャリング

増資リストラクチャリングは、純資産の資本を増強してキャッシュフローを改善することです。具体的には、スポンサーに出資を募る、債務を株式化するなどが挙げられます。事業リストラクチャリングを選択せず増資したいときに使われる手法ですが、投資してもらう場合には返済義務が生じることも理解しておきましょう。

事業リストラクチャリング

事業リストラクチャリングは、事業そのものの見直しや整理を行い、企業構造を変革させる方法のことです。複数の事業を行う企業の場合は、まず分析を行い不採算部門を洗い出します。そのうえで、採算の取れない事業を売却・廃止する、規模を縮小するなどの策を講じ、無駄な事業を削減します。成長が望める事業に多くの資源を投資するなどして、企業の競争力を高めることが事業リストラクチャリングの目的です。絶えず変動する市場に対応して成長していくためには、事業リストラクチャリングの観点が重要になります。

業務リストラクチャリング

業務リストラクチャリングは、業務内容の改善により、営業利益を高めるための変革を行うことです。たとえば市場調査により顧客のニーズに合わせた商品開発を行い売上改善を目指したり、事業にかかる経費を見直したりと、企業の状況に合わせさまざまな方法が挙げられます。

リストラでイメージされやすい人員整理による人件費の削減も、業務リストラクチャリングの一環です。事業規模の縮小や撤退で不要になった人員を削減する、業務システムの導入により人員を削減する、作業量の振り分けし直しで不要な人員を削減するなどの方法がとられます。ただし、正当な理由のない解雇は違法になるため、専門家の助言を受けつつ行うのが一般的です。人員削減する場合は退職金を支払うことで資産が一時的に減る恐れがあることも理解しておきましょう。

M&Aによる買収

M&Aによる買収も、リストラクチャリングの手法のひとつです。M&A(Merger and Acquisition)は会社の合併や買収のことを指します。M&Aの目的は、新しい市場に進出する、自社の弱みを補完して競争力を高める、技術やリソースを獲得するなど、企業に新しい付加価値を創ること。競争力を高めたい事業との相乗効果が期待できる事業を買収することで、企業の事業構造を改革し業績の回復を目指します。

リストラクチャリングのメリット

リストラクチャリングには、以下のようなメリットがあります。

それぞれ確認していきましょう。

利益率を改善できる

リストラクチャリングのメリットは、利益率を改善できることです。人員削減による経費削減や利益率の低い分野の整理などといったリストラクチャリングを行うことで、会社全体の利益率を改善できるでしょう。利益率が改善できれば、事業の拡大や負債の返済などができ、会社のこれからの成長につなげることができます。

事業の強化につながる

事業リストラクチャリングを行うメリットは、事業の強化につながることです。事業リストラクチャリングを行うと、不採算部門に割いていた人員やリソースを収益が見込める主力事業に注力できます。人員やリソースを有効活用することは事業の強化に欠かせません。主力事業が順調に成長すれば持続的な成長が見込め、新規事業への参入も検討できるでしょう。

負債による負担が軽減する

債務リストラクチャリングを行うメリットは、負債による負担が軽減することです。負債が多いと返済の負担が大きくなるため、キャッシュフローを圧迫する原因になるケースも少なくありません。債務リストラクチャリングを行うことで負担が減ると、財務状態が健全になるでしょう。キャッシュフローが整うことで、企業の健全な成長にもつながります。

リストラクチャリングのデメリット

リストラクチャリングのデメリットには以下のような点が挙げられます。

それぞれ確認していきましょう。

モチベーション低下につながる可能性もある

リストラクチャリングでは、人員整理したり配置転換したりするケースもあります。会社をよりよくするために行ったリストラクチャリングが原因で、従業員のモチベーションに悪影響を及ぼしかねないというデメリットもあるでしょう。

たとえば、かかる労力以上に人員を減らしてしまう、希望しない配置転換でやる気を削いでしまうなど、従業員のモチベーションを低下につながる可能性があります。また、人員削減により「自分も対象になるのではないか」という疑心暗鬼が広がり、従業員のモチベーションが低下してしまうことも考えられるでしょう。モチベーションが低下すると、リストラクチャリングを実施したにも関わらず作業効率が落ちてしまう可能性もあります。

事業の変革は慎重に見極める必要がある

事業の中には、現在利益が出ているものの今後の成長が見込めないものもあれば、反対に現在利益が出ていなくても今後利益につながるものもあります。事業が発展し収益が安定するまでには、長い時間かかることも珍しくありません。

将来性がある事業なのにも関わらず、現在収益が出ていないという理由で縮小したり撤退したりする可能性があるのは、デメリットのひとつ。この判断がリストラクチャリングを成功させるためのカギになるため、整理すべき事業は慎重に見極める必要があります。短期的な視点だけでなく、市場の動向や成長の可能性なども視野にいれて検討する必要があるでしょう。

リストラクチャリングの事例

実際に行われたリストラクチャリングの成功事例を2つご紹介します。

パナソニック

ひとつめの事例は、日本を代表するメーカーであるパナソニックの行ったリストラクチャリングです。パナソニックは2012年と2013年にテレビ事業の失敗が大きな要因となり、大きな赤字を出してしまいました。赤字を解消するため、リストラクチャリングに着手。赤字の原因となったテレビ事業や半導体事業を縮小させ、伸びている自動車関連事業や住宅関連事業に資金を集中させる方法で経営業況を回復させました。利益率の低い事業を縮小し将来性のある事業に投資する、まさに理想的なリストラクチャリングと言えるでしょう。

日本レーザー

レーザー機器や光学機器を取り扱う日本レーザーは、バブル崩壊をきっかけに業績が下降。債務超過に陥り倒産寸前という厳しい状況に追い込まれました。リストラクチャリングにより危機を救ったのは、日本電子から出向してきた5代目社長。従業員の成長なしに業績回復はないという考えのもと、雇用を守ることを明言し評価制度を成果主義に見直すなど、従業員の満足度を高めモチベーションを維持することに注力しました。このリストラクチャリングの結果、不良債権や赤字を4年でなくし、以後黒字を継続しています。

リストラクチャリングの意味をきちんと理解しよう

今回は、リストラクチャリングについて解説しました。リストラクチャリングは、「リストラ=人員削減」という意味に加え、事業を見直し改善するという意味を含んだ言葉です。ネガティブな言葉ではなく、事業をより効率的なものにするというポジティブな意味合いを持った言葉と言えるでしょう。

企業の売却や事業の見直し、財務の見直しなど、リストラクチャリングには状況に応じたさまざまな方法があります。自社の経営改善に取り組む場合は、まずアプローチ方法を検討するところからスタートするのがよいでしょう。

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ライター SanamiSasaki
フリーライター|新卒で金融業に従事し、出産後未経験で地元のメディアを運営する会社に転職。現在は推し活と育児を両立しながら、さまざまなWebメディアで執筆しています。
エディター 工藤 梨央

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