業務委託契約で仕事を受発注する際、準委任契約を締結するケースは多くあります。しかし「準委任契約って何?」「請負契約とは何が違うの?」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
本記事では、準委任契約の内容や委任契約・請負契約との違いについて解説します。準委任契約で仕事を受発注する方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
準委任契約とは
準委任契約とは、業務委託契約における契約形態の1つです。業務を外部に依頼する、あるいは依頼される場合に使われます。本章では準委任契約の種類や、混同されやすい契約形態との違いを解説します。
本章を参考に、準委任契約への理解を深めましょう。
準委任契約の種類
準委任契約は以下2つの種類に分けることができます。主な違いは、報酬の対象と業務完了の義務の有無です。
種類 | 報酬の対象 | 業務完了の業務 | |
---|---|---|---|
準委任契約 | 成果完成型 | 成果物・納品物の完成 | なし |
履行割合型 | 業務の遂行 | ||
請負契約 | 成果物・納品物の完成 | あり |
準委任契約はいずれの型も、依頼された業務を決められた期間内に遂行することに対する契約です。
履行割合型の契約では、受注者(受任者)側の責任以外で業務を途中終了した場合、すでに履行した業務割合分の報酬を請求できます。報酬の対象はあくまでも業務の「遂行」であり、完了義務はありません。
準委任契約を締結する場合は、その内容が「履行割合型」と「成果完成型」のどちらにあたるのか、事前に確認しておきましょう。
準委任契約と委任契約の違い
準委任契約と委任契約は、いずれも業務委託契約などで用いられる契約種類です。これらは、法律行為を委任するかどうかで区別されています。
委任契約は法律行為の委託、準委任契約は法律行為以外の事務手続きを委託するものです。民法では、委任、準委任について以下のように説明されています。
(委任)
第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。(準委任)
引用:e-Gov法令検索|民法
第六百五十六条 この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する。
準委任契約と請負契約の違い
準委任契約と混同されやすい契約形態が「請負契約」です。準委任契約と請負契約は、契約する対象が異なります。
準委任契約は「業務の遂行」に対する契約、請負契約は「業務を遂行し、成果物を納品すること」を対象にした契約です。請負契約について、民法では以下のとおり記載されています。
(請負)
引用:e-Gov法令検索|民法
第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
つまり、準委任契約と請負契約は「成果物・納品物の提出」が契約対象か否かが異なります。
準委任契約と派遣契約の違い
準委任契約と類似した形態に「派遣契約」があります。これらは契約を締結する対象者と、指揮命令権の有無が異なります。
契約の種類 | 契約を締結する対象者 | 指揮命令権 |
---|---|---|
準委任契約 | 業務の発注者と受注者 | なし |
派遣契約 | 派遣会社(派遣元)と企業(派遣先) | あり |
準委任契約は業務の発注者と、受注する労働者もしくは事業者間の契約です。一方、派遣契約は派遣会社と企業が締結する契約です。派遣会社は労働者と雇用関係を結び、企業に労働者を派遣します。
準委任契約の場合、発注者に指揮命令権はありません。そのため、仕事の受注者が仕事の内容やスケジュールを自由に設定可能です。派遣契約では、企業が労働者に対して指揮命令権を持ちます。労働者は派遣先企業のルールに従います。
また、準委任契約において、業務の遂行やそれに伴う損害に対する責任を負うのは受注側です。一方派遣契約では、派遣社員の故意や重過失でない場合、指揮命令権のある派遣先企業が責任を負います。
準委任契約書に記載する内容
準委任契約書に記載すべき内容は以下の項目です。
項目 | 内容 |
---|---|
業務目的および内容 | 受注者が実施すべき業務の目的と具体的な内容 |
業務の遂行方法 | 業務遂行にあたっての方法、手順、指示など |
契約期間 | 契約の開始日と終了日、有効期間など |
報酬の金額 | 受注者に支払われる報酬の額と支払い時期 |
知的財産の帰属 | 業務の過程で生じた知的財産権の帰属先 |
秘密保持 | 業務上知り得た秘密情報の守秘義務 |
損害賠償の有無 | 債務不履行によって生じた損害の賠償責任 |
禁止事項 | 受注者に対し、業務遂行上禁止される行為 |
契約解除 | 契約を解除できる事由と解除手続き |
契約締結後のトラブルを未然に防ぐためにも、上記の項目を網羅して準委任契約書を作成しましょう。
準委任契約における義務と権利
準委任契約における義務・権利は以下の4つです。
準委任契約で負う責任や権利の範囲について、あらかじめ理解しておきましょう。
報告義務
準委任契約では、受注者による報告義務があります。民法第645条では以下のとおり定められています。
(受任者による報告)
引用:e-Gov法令検索|民法
第六百四十五条 受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない。
発注者から依頼を受けた業務の進捗や結果について共有を求められた場合、受注者は随時状況の報告が必要です。
善管注意義務
準委任契約において、受注者は善管注意義務を負います。善管注意義務とは、委任された業務を遂行するにあたって最善を尽くし、適切かつ誠実に取り組む義務のことです。善管注意義務について、民法第644条には、受注者の注意義務として以下のとおり記載されています。
(受任者の注意義務)
引用:e-Gov法令検索|民法
第六百四十四条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
善管注意義務を欠いたことによって発生した損害については、受注者自身が賠償責任を負います。トラブルを回避するためにも、注意義務の意識をもって業務を遂行しましょう。
再委託の禁止
準委任契約は、受託者の能力に対する信頼をもとに契約が成立するものであり、原則再委託が禁止されています。民法上でも、以下のとおり、復受任者を選任し業務を再委託することは禁止されています。
(復受任者の選任等)
引用:e-Gov法令検索|民法
第六百四十四条の二 受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。
ただし委託者との協議のうえで同意が得られた場合など、例外的に再委託が認められる場合もあります。
報酬請求権
準委任契約の報酬が発生するタイミングは、成果完成型と履行割合型で変わるため注意が必要です。民法648条では、受注者の報酬について以下のように定められています。
(受任者の報酬)
第六百四十八条 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
2 受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第六百二十四条第二項の規定を準用する。
3 受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。
二 委任が履行の中途で終了したとき。(成果等に対する報酬)
※引用:e-Gov法令検索|民法
第六百四十八条の二 委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。
つまり履行割合型の場合は委任された業務を履行したタイミング、成果完成型は成果物を提出したタイミングで報酬請求権が発生します。
種類 | 報酬請求権の発生タイミング | |
---|---|---|
準委任契約 | 成果完成型 | 成果物・納品物を引き渡した時 |
履行割合型 | 委任された業務を履行した時 |
準委任契約における発注者(委任者)側のメリット・デメリット
準委任契約において、発注者側のメリット・デメリットは以下のとおりです。
<メリット>
- 人材育成・労務管理コストの削減
- 専門家に業務を委託できる
- 委託業務の内容や期間を柔軟に設定できる
<デメリット>
- 仕事の指揮命令権がない
- 相手の裁量に左右される
- 成果が得られない場合がある
発注者として準委任契約をする予定の方は、本章の内容を把握しておきましょう。
発注者のメリット
発注者のメリットは、準委任契約によって、人材育成や労務管理のコストを削減できることです。また、専門知識を持つ人材に業務を委任できるため、自社にない高度な知識・技術を活用しやすいのも利点といえます。さらに、準委任契約は業務内容や期間を柔軟に設定できるため、自社の状況に合わせて調整しやすい点もメリットです。
発注者のデメリット
準委任契約は受託者に対する指揮命令権がないため、発注者側で作業の進捗や質を管理できない点はデメリットです。また、受託者の裁量やスキルレベルによって、成果物の質が左右されるリスクもあるでしょう。受託者の不誠実な対応などにより期待した成果が得られない場合や、損害を被るリスクもある点は注意が必要です。
準委任契約における受注者(受任者)側のメリット・デメリット
準委任契約における受注者側のメリット・デメリットは以下のとおりです。
<メリット>
- 成果物の提出義務がない
- 自分の裁量で仕事ができる
<デメリット>
- 契約打ち切りの可能性がある
- 収入・生活が不安定になる場合がある
受注者として準委任契約を締結する際の参考にしてください。
受注者のメリット
準委任契約の場合、受注者の義務は「成果物の提出」ではなく「契約の履行」について義務を負います。そのため、受任する作業の内容や方針に変更があった場合でも、柔軟に対応しやすいのがメリットです。また、発注者が指揮命令権を持たないことから、自身の裁量で作業できるのも受注者のメリットといえます。
受注者のデメリット
準委任契約は基本的に双方がいつでも解除できるため、発注者の都合で契約を打ち切られるリスクがあるのはデメリットです。収入が予期せず途絶えるなど、安定した収入が見込めず、生活に不安定さが伴う場合があります。契約解除のリスクを踏まえ、あらかじめ複数の委託者と取引しておくなどの対策が必要です。
準委任契約の注意点
準委任契約の締結時は「偽装請負」に注意する必要があります。偽装請負とは、形式としては準委任契約であるものの、事実上は労働者派遣となっている状態を指し、違法行為です。
本来、準委任契約の発注者は指揮命令権を持ちません。しかし発注者から業務に対して過剰な指示や出退勤の命令を受けている場合は、偽装請負にあたる可能性があります。
トラブルを避けるためにも、事前に発注者と契約内容をすり合わせ、契約書に反映するようにしましょう。
準委任契約における義務や権利を理解してトラブルを未然に防ごう
本記事では準委任契約に関する基礎知識や、発注者・受注者それぞれのメリットデメリットを解説しました。
準委任契約は発注者・受注者双方にメリットがある契約形態です。ただし偽装請負などのトラブルも少なくないため、適切な契約書を作成することが大切です。
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