現在働き方の多様化が広がっており、副業したりフリーランスとして活躍したりするケースも多いよう。そんなときに必要になるのが、税務署に開業の届出をするための開業届です。しかし、開業届について詳しくわからない人も多いのではないでしょうか。開業届を提出するメリットもありますがデメリットもあるため、事前にきちんと把握しておく必要があります。
そこで今回は、開業届とは何か詳しく解説します。開業の届出をする理由や提出方法、必要書類等もご紹介するので、これから個人事業主になる人はぜひ参考にしてみてください。
開業届とは?
開業届とは、個人で事業を開始したことを税務署に報告するための書類のこと。正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」で、事業所の新設や移転、廃止の際の届出としても使います。
なぜ提出するかというと、国税である所得税を納めるため。会社員であれば給料から所得税が天引きされますが、個人事業主の場合は1年間の所得を計算し確定申告をしなければなりません。開業届の提出により、個人事業主として所得税を納めることを通知することになります。
開業届を提出するメリット
開業届を提出しなくても事業を開始することはできるため、メリット・デメリットを比較して提出を検討する人もいるようです。開業届の提出によるメリットには以下のような点が挙げられます。
それぞれ解説していきます。
青色申告できる
開業届を提出すると、確定申告の際に青色申告を選択できるというメリットがあります。確定申告には、青色申告と白色申告の2つの方法があります。青色申告のメリットは、節税効果の高い青色申告控除が用意されている点。所得金額から最大65万円の控除が受けられます。
青色申告の特徴は、控除枠が大きい点。白色申告の場合控除枠は最大10万円ですが、青色申告の場合は最大65万円の控除が受けられます。課税対象となる額が少なくなり、所得税や住民税の節税につながるでしょう。
なお、青色申告をする場合には、開業届と合わせて「青色申告承認申請書」の提出と複式簿記による申請などいくつかの要件を満たす必要があります。
屋号で銀行口座を作れる
開業届を提出すると、屋号で銀行口座を作成できるというメリットもあります。プライベートと事業の口座を合わせていると、仕事にまつわる出費をチェックする作業も大変です。事業所得とプライベートのお金を分けることができると、経理管理がスムーズになるでしょう。
事業によるお金の流れがわかりやすくなり、帳簿をつけるときや確定申告書を作成するときにも役立ちます。事業用の口座であると明確になることで、取引先からの信頼度が高まる可能性もあるでしょう。
小規模企業共済に加入できる
小規模企業共済への加入資格が得られるというメリットも挙げられます。個人事業主には会社員のように退職金がないため、退職後の備えに不安を感じる人もいるでしょう。小規模企業共済とは、個人事業主などが退職金を積み立てるための制度です。月々積み立てることで、退職後の生活に備えることができます。小規模企業共済の掛け金は、全額所得控除の対象になり、税金の負担を軽減できる点も特徴です。
小規模企業共済への加入申し込みの際には確定申告の控えが必要ですが、事業を開始したばかりの場合は開業届の控えを提出します。
開業届を提出するデメリット
開業届を提出するデメリットも把握しておきましょう。
- 失業保険がもらえなくなる可能性がある
- 収入が上がれば社会保険の扶養を出る必要がある
それぞれ解説していきます。
失業保険がもらえなくなる可能性がある
会社を辞めて失業手当を受け取っている、もしくはこれから受給しようと考えている場合、開業届を提出すると失業保険がもらえなくなる可能性がある点に注意が必要です。失業手当を受ける条件は、就職する意思があることです。開業届を提出することにより再就職の意思がないとみなされた場合、失業保険が受け取れなくなる可能性もあるでしょう。
収入が上がれば社会保険の扶養を出る必要がある
配偶者の扶養に入っている場合、収入によっては扶養を外れてしまう可能性もあるでしょう。扶養から出る場合自己負担で保険に加入しなければならなくなります。扶養の範囲は加入している健康保険組合によってルールが異なるため一概にはいえませんが、多いのは以下の2つのケースです。
- 開業した時点で扶養から外れる
- 一定の収入を超えていなければ扶養に入れる
扶養から出たくないといった場合には、開業届を提出する前に扶養対象の条件を確認しておくのがおすすめです。
開業時に提出が必要な書類
開業時に提出が必要なものは以下の通りです。
従業員を雇う場合は、状況に応じて以下の書類も用意する必要があるでしょう。
さらに、本人確認書類、マイナンバーが確認できるもの、印鑑の用意も必要です。それぞれ詳しく解説します。
開業届
開業届と呼ばれているものの正式名称は、税務署に提出する「個人事業の開業・廃業等届出書」です。開業届を提出する際には、開業届と開業届の控えの両方を提出します。銀行口座の開設や小規模企業共済の加入など、開業届の控えが必要なこともあります。提出後は控えをなくさないよう保管しておきましょう。
青色申告承認申請書
確定申告で青色申告する場合には、「青色申告承認申請書」を提出しなければなりません。開業届と合わせて提出しておくのがよいでしょう。「青色申告承認申請書」の提出期限は、確定申告する年の3月15日まで。申請書を提出していなかったり期限を過ぎてしまった場合には、自動的に白色申告になります。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
従業員を雇って事業をするときに検討したいのが、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」です。源泉徴収税は原則として源泉徴収した翌月の10日までに納付しなければなりません。しかし、従業員が10人未満の場合、年に2回まとめて納付できる特例があります。この特例を認めてもらうために必要になるのが、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」です。
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
従業員を雇うときには「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」にて税務署に届け出る必要があります。事業主は従業員の給与から所得税を天引きして、本人の代わりに国に納めなくてはなりません。「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を提出することにより、納付に必要な用紙を送ってもらえるようになります。
青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書
青色申告で確定申告する事業者が家族に給与を支払う際には「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」を提出しておきましょう。家族や親族に支払う給与は、通常経費になりません。経費として計上するには「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」の提出が必要になります。所得額にも大きく影響を与えるため、家族への給与を検討しているなら忘れず提出しておきましょう。
本人確認書類
税務署に開業届を持参する場合は、なりすまし防止のため本人確認書類による確認が行われます。 運転免許証やパスポート、公的医療保険の被保険者証などを用意しておきましょう。
マイナンバーがわかるもの
マイナンバーの確認も必要になるため、マイナンバーが記載された通知カードや住民票、マイナンバーカードのいずれかも用意しておきましょう。なお、マイナンバーカードがあれば本人確認書類も兼ねることができ、別途本人確認書類は不要になります。
印鑑
以前は押印欄が設けられていた開業届ですが、現在は押印の必要はありません。ただし、間違えた箇所があった場合は、二重線を引いたうえに修正印を押す必要があります。税務署に開業届を持ち込む場合は、印鑑も持っておくと安心です。
開業届にかかる費用や提出期限
開業届にかかる費用や提出期限についても確認しておきましょう。
開業届に費用はかかる?
開業届の手続きに手数料や印紙税などの費用はかかりません。窓口で手続きする場合はコピー代や印刷代、郵送で手続きする場合は切手や郵送料がかかりますが、手続き自体は0円でできます。
開業届の提出期限は?
開業届の提出は、原則事業開始から1ヶ月以内です。しかし、個人事業主の場合開業日がはっきり分かりにくいことも珍しくありません。決まったルールはなく、本人で設定することができます。また、提出が遅れたり提出しなかったりした場合の罰則は定められていませんが、提出するのが決まりのため早めに提出しましょう。
開業届の作成方法
開業届の作成方法を確認していきましょう。
自分で作成する
引用:国税庁「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
まずは自分で作成する方法について解説していきます。開業届は管轄の税務署で受け取るほか、国税庁のホームページでのダウンロードも可能です。
①提出先・提出日
開業届の提出先は、納税地の所轄の税務署です。わからないときは国税庁のホームページで検索して調べることができます。提出日は開業届を税務署に提出する日です。
②納税地・住所
「住所地」「居住地」「事業所等」のどれかを選び、住所を記載します。事務所や店舗がある場合は「事業所等」になりますが、自宅で事業を行う場合は生活の拠点である「住所地」を選びましょう。海外に住んでいて日本に住所はないといった場合には、「居住地」を選びます。
③氏名・生年月日・個人番号
事業者の氏名と生年月日、マイナンバーを記載します。
④職業・屋号
職業と屋号を記載します。職業の記載方法には特別な決まりはありませんが、ライターやシステムエンジニアなど、客観的にわかる具体的な名称を記載しましょう。屋号がない場合は空欄のままで問題ありません。
⑤届出の区分・所得の種類
届出の区分は「開業」、所得の種類は「事業所得」になります。不動産投資の所得がメインであれば「不動産所得」を選択しましょう。
⑥事務所等を新設した日
「事務所等を新設した日」は開業日のことです。事業を開始した日を記載します。ただし、個人事業主は開業日がはっきりしないこともあるでしょう。決まったルールはないので、自分で開業日を設定してかまいません。
⑦開業に伴う届出書の提出の有無
開業届と合わせて「青色申告承認申請書」を提出するなら、上の段の「有」を選択しましょう。「消費税の課税事業者選択届出書」を提出するなら下の段の「有」を選択します。
⑧事業の概要
ライターならWeb記事の執筆、システムエンジニアならソフトウェアの設計・開発などといったように、どんな仕事をするのか、事業内容を具体的に記載します。
⑨給与等の支払の状況
青色事業専従者がいるなら「専従者」、それ以外の従業員がいるなら「使用人」に人数を記載します。「税額の有無」は、給与から源泉所得税を引く必要性の有無です。従業員の給与が8万8,000円を超える予定であれば、有を選択しましょう。自分1人のみで事業を行う場合は、全て空欄です。
オンラインのソフトで作成する
オンラインのソフトで開業届を作成する方法もあります。最近はオンライン上で書類作成ができるサービスも充実しており、無料で使えるものも見つけられるでしょう。スマホやパソコンから指示されたステップに沿って解答していくだけで開業届が完成するため、手軽に作成できるのが魅力です。開業届はもちろん、青色申告承認申請書など合わせて提出する書類を作成できるソフトもあるので、活用するのもおすすめです。
開業届の提出方法
開業届が用意できたら提出して完了です。開業届の提出方法は3つあります。
それぞれチェックしていきましょう。
税務署の窓口で提出する
ひとつめは、税務署に持参して提出する方法です。窓口の受付時間は、基本的に平日8:30〜17:00までとなっています。時間外であっても、税務署に備えられている時間外収受箱による提出も可能です。
郵送で提出する
所轄の税務署宛に、郵送で開業届を提出する方法もあります。以下の書類を封筒に入れ、税務署に郵送します。
- 開業届
- 開業届(控え)
- マイナンバー確認書類
- 切手を貼った返信用封筒
返信用封筒を同封しておくことで、後日受付印が押印された控えを返送してもらえます。
e-Taxで提出する
e-Taxによりオンラインで提出する方法もあります。e-Taxの受付時間は、メンテナンスなどによる例外もありますが基本的に以下のとおりです。
火曜~金曜:24時間いつでも
月曜と土日祝日:8:30~24:00
また、確定申告の時期は土日を含み24時間いつでも受付しています。e-Taxで提出した場合は、データを受け付けた旨の文言が記載されたメール文書が受付印の代わりとなるため、メールを印刷して保管しておく必要があることも把握しておきましょう。
開業届は個人事業主としての第一歩!
今回は開業届とは何か解説しました。開業届を提出することで青色申告ができるなど、さまざまなメリットがあります。開業届を提出しなくても罰則はなく後回しにしてしまう人もいるようですが、個人事業主としての自覚を持つことができるきっかけにもなるでしょう。開業届を提出して個人事業主の第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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