インボイス制度が副業に与える影響は?場合別の対応方法も解説

インボイス制度が副業に与える影響は?場合別の対応方法も解説
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ライター / ライター AKI SHOJI
鹿児島出身のWebライター。 慶応義塾大学卒業後、IT企業を経て現在は広告代理店勤務。 ダブルワーク中、SHEに出会い、女性ひとりひとりの価値観やバックグラウンドを大切にする理念に共感し、Webライターとして就業開始。 女性が「年をとることはステキなことだ」と思えるような 心に寄り添う記事執筆が信念。 保持する資格は、Google Ads 認定資格・Google アナリティクス個人認定資格・ウェブ解析士。 趣味はダイビングと海外旅行、保護犬のポメラニアン「ふくちゃん」とふたり暮らし。
エディター 工藤 梨央
監修者 板山 翔
平成28年に日本初のオンライン専門の税理士事務所を開業。塾講師歴7年、大手WEBメディアで連載を持つなどの異色の経歴を持つ。5人以下の小さな会社の経営者へ向けて、様々なメディアで情報を発信しており、YouTubeチャンネル「税理士ショウの超わかりやすいビジネスQ&A」は動画9本で登録者1,000人を超えるなど急成長している。

会社員としての仕事のかたわら、別の仕事を持つことは、収入を増やしたり、自己実現をかなえたりするための魅力的な選択肢です。一方で、2023年10月1日に導入されたインボイス制度が、副業にどのような影響を与えるのかも把握しておく必要があります。

今回は、インボイス制度が副業に与える影響と副業の内容や場面に応じた対応方法についてご紹介します。

なお、インボイス制度とは何かを詳しく知りたい方は、次の記事をご参照ください。事前に把握しておくことで、副業に与える影響への理解もより深まるでしょう。

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インボイス制度への対応は副業の場合でも求められる?

すでに副業をしている方、そしてこれから副業をはじめようかと検討している方にとって、インボイス制度が及ぼす影響は気になる問題でしょう。

まずは、副業をしている人は一律に、インボイス制度への対応が求められるのか、それとも特定の雇用形態や仕事内容にのみ関係するのかを明らかにしていきます。

免税事業者と課税事業者について

結論、副業を行っている方に求められるインボイス制度への対応は、雇用形態によって違います。

たとえば、雇用形態がアルバイトやパートの場合、基本的にインボイス制度に対応する必要はありません。なぜなら、従業員と雇用主との間で雇用契約が結ばれており、雇用主が従業員に賃金を支払う義務があるからです。そのため、従業員がインボイスを発行する必要はありません。

一方、企業と取引のある人は、事業所得(事業を営んで得た収入)や雑所得(賃金や給与以外の収入)にかかわらず、インボイス制度への対応を求められることがあります。たとえば、とある企業と業務委託契約を締結している場合、自身の提供したサービスに対する請求書を発行します。この請求書を発行する際に、インボイス制度の対応が必要となるのです。

したがって、副業におけるインボイス制度への対応は、雇用形態や取引のあり方によって異なります。

インボイス制度が副業に与えると考えられる影響

2023年3月にJob総研(パーソルキャリア)が発表した調査によると、副業をしている社会人は2018年の約2倍*1に増加しています。そして、コロナ禍以降のリモートワークの普及もあいまって、今なお副業をする方は、増加傾向にあると見込まれます。

しかし、インボイス制度の導入について、「ニュースでは聞いたことがあるけど、副業には関係のない話だと思った」といった理由で、インボイス登録しない人もいるかもしれません。ただし、個人事業主がインボイス制度に登録しなかった場合、次のような影響が想定されます。

ここでは、各内容について詳しくお伝えしていきます。

取引が減少する可能性がある

インボイス制度の導入により、副業をしている人方や企業は、取引が減少する可能性があります。2023年10月以降、適格請求書(インボイス)を発行できない場合、取引先の税負担を招くからです。結果として、副業をしている人は、消費税の免税というメリットがある一方、値引きや契約解除を求められるリスクがあります。

このような背景により、取引が続く場合でも、消費税増加に伴い、一方的な値下げを受けるおそれがあるのです。しかし、この行為は法律に抵触する可能性が高いです。特に、価格や支払い条件の変更が合意されていないにもかかわらず行使される場合、不当な取引として法的な問題に発展する可能性もあります。

消費税の納税義務が発生する

個人や企業が免税事業者から課税事業者になった際に、消費税の納税義務を負う場合があります。基本的に、消費税の納税義務は、商品を販売して対価を受け取った者、すなわち事業者にあります*2

そのため、売上の大小にかかわらず、インボイス登録した場合はが一定の金額を超えた場合は消費税の納税義務が発生するのです。

人によっては経理作業に手間が増える

インボイス制度の影響によって、経理作業への負担増加が予想されます。

まず、正確な請求書を作成するための、時間と手間が増えてしまう点です。さらに、消費税率や納税に関するルールが変わる場合もあるため、常に最新の状況に対応しなければなりません。そして、確定申告に関連する書類作成も、負担に感じる方は多いかもしれません。

これらの作業が追加されることで、経理作業の手間も増える可能性が高いでしょう。

副業におけるインボイス制度への対応方法

続いては、副業をしている方の取引先別に、インボイス制度導入への対応方法をご紹介します。しかし、内容を把握したうえで、直接取引先に「課税事業者なのか、免税事業者なのか」を尋ねることはあまりおすすめしません。

なぜなら、税務状況に関する質問は「何でそんなことを聞いてくるのだろう」と、取引先に不安や懸念を抱かせる可能性があるためです。

したがって、ご自身の状況をかえりみて、今後の取引の仕方を相談する際の参考材料にしてみてください。

取引先が課税事業者の場合

個人事業者は前々年、法人は前々事業年度における課税売上高が1,000万円を超える場合、課税事業者としての義務を果たさなければなりません。

しかし、インボイス制度導入後の負担を懸念し、一定期間の経過措置や負担軽減措置が設けられています。具体的には、2029年9月30日までの間、一定割合の仕入税額控除を受けられることがあげられます。

取引先が免税事業者の場合

免税事業者と仕事をする場合、相手は仕入税控除を行わないため、適格請求書の発行や保存は不要です*3したがって、取引相手が免税事業者である場合、インボイス制度の導入に際して特別な対応は必要ありません。

取引先が一般消費者の場合

仕事をする相手が一般の消費者であれば、仕入税控除は行われないため、適格請求書の発行や保存が不要です。そのため、インボイス制度導入に際して特別な対応は必要ありません。

とはいえ、仕事の相手全員が一般消費者であるとは限りません。課税事業者向けの取引では、仕入税額控除の活用を忘れないようにしましょう。

このように、副業を行う方は、取引先ごとに柔軟な対応が求められます。

自分が買い手の場合

インボイス制度の導入で税負担が増えるのは、売り手が消費税の免税事業者で、買い手が課税事業者である場合です。売り手が免税事業者である場合、適格請求書が発行できず、買い手は仕入税額控除ができなくなります。つまり、副業をする側の税負担が増えるということです。

インボイス制度で副業が本業の勤務先にバレる?

インボイス制度において、副業が本業の勤務先に関連するかどうかは、基本的に関係ありません。副業を行う場合、登録番号や住民税などの個人情報を申告することがありますが、これらの情報は税務署や関係機関に提出され、本業の勤務先には通知されることはありません。

しかし、事業者情報はインボイスの発行事業者によって国税庁のWebサイトで公開されます。

そのため、インボイスの発行事業者に登録した登録番号を勤務先に知られた場合、個人情報の一部が公開され、副業が露呈する可能性はあります。

そのため、これから副業を開始しようと考えている人は、会社の規則や就業規則をよく確認し、副業が許可されているかを確認しましょう。許可されている場合、本業に支障がなければ何も問題ありません。

適格請求書発行事業者になるための登録申請について

インボイスへの登録は義務ではありませんが、取引先および自身の状況を考慮したうえで、適格請求書発行事業者になる選択をする方もいるでしょう。

ここでは、申請方法と期日についてご紹介します。

登録申請の方法

適格請求書を発行するためには、まず適格請求書発行事業者に登録しなければなりません*4

登録申請は税務署で行えます。その後、税務署が申請書を審査し、審査に合格すれば登録通知書が発行されますが、国税庁のWebサイトでも確認できます。

登録申請期日

2023年10月以降であってもインボイス制度に登録できるので、いつ登録しても問題はありません。

インボイス制度が開始された2023年10月1日から2029年9月30日までの6年間は、経過措置*5があります。この期間中に登録された事業者は、登録日から課税事業者として扱われます。

ただし、実際のインボイス発行には登録通知書が到着するまで待ちましょう。

インボイスへの対応は自身と取引先の状況を考慮して検討しよう!

インボイス制度への対応は一概には言えず、個々の状況に応じて柔軟に対処しなければなりません。そのため、自身と取引先の状況を総合的に考慮し、適切な対応策を検討することで、副業に集中することができます。

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※参考
*1:PR TIMES「Job総研による『2023年 副業・兼業の実態調査』を実施 今後始める8割 本業で賃金上がらず 月2万円を副業で補填」
*2:国税庁「消費税のしくみ」
*3:国税庁「No.6501 納税義務の免除」
*4:国税庁「D1-64 適格請求書発行事業者の登録申請手続(国内事業者用)」
*5:国税庁「免税事業者等からの仕入れに係る経過措置」

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。