社会環境の変化が激しい現代、従来よりも個人を主体とした働き方が普及してきています。
今回は、現代のキャリア形成において有用とされている「プロティアンキャリア」の考え方について解説します。
「プロティアンキャリアとは?」、「プロティアンキャリアを実践するメリットは?」などの疑問がある方や、個人を軸とした働き方に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
プロティアンキャリアの意味とは?
「プロティアン(protean)」という言葉は、ギリシャ神話に出てくる神プロテウスに由来します。あらゆるものに姿を変える力がプロテウスにあることから、プロティアンは「変化し続ける」「変幻自在な」などを意味します。その語源から、プロティアンキャリアとは、環境や社会に応じて、自分自身を自由に変化させながらキャリアを形成していくことを指します。
プロティアンキャリアで重要なポイントは、「組織主体ではなく、個人を主体にしてキャリアを形成すること」と「環境変化に応じて、自分の意志で必要なものに変化できること」のふたつです。プロティアンキャリアを実践することにより、自分らしく働きながら、組織や社会に役立つ適応能力を身につけることが期待できるでしょう。
これまでのキャリアとの違い
従来のキャリアとプロティアンキャリアの違いは、「キャリア形成の主体をどこに置いているか」という点です。
従来型のキャリアでは、会社と従業員が長期的な契約関係を築くスタイルが定着していたことから、組織内での地位や給与が重要視されていました。しかし、終身雇用の崩壊や新型コロナウイルスの流行による社会情勢の変化などによって、組織内に限定したキャリア形成に不安を抱く労働者が増えていきました。
プロティアンキャリアは組織内でのキャリアではなく、個人のキャリアを主体としています。そのため、従来のように組織内に重点を置いたキャリアアップよりも、個人のなかで感じられる自己成長や充実感、自由といった心理的成功を目的とします。
同じ企業で働き続ける場合も、従来型とは仕事への意識が異なるため、取り組み方が変わってくるでしょう。
プロティアンキャリアのメリット
組織だけに頼らず、自発的に行動していくプロティアンキャリアを実践することによって、仕事や自己成長における以下のようなメリットが得られます。
具体的な内容を見ていきましょう。
仕事のモチベーションを維持できる
プロティアンキャリアは、従来のように組織に評価されることではなく、「自分がどうなりたいか」という個人の目的を主体にして働きます。キャリア構築が組織任せだと、仕事に対して「お金をもらうための手段」と考えやすくなります。しかし、自身のライフプランを意識しながら働くことで、給与面以外での働くことの意義を感じられることから、モチベーションを保ちやすくなるでしょう。
仕事への心理的な満足感や充実感が感じやすくなるため、プライベートとのメリハリをつけることもできます。
自分自身の能力アップにつながる
プロティアンキャリアは、あらゆる環境に柔軟に対応できる能力や知識を習得していく必要があります。自身の目的に向けて積極的に情報を取り入れてスキルアップを重ねていくため、組織の指示に従って業務をこなしていくよりも、スピーディーな自己成長が期待できるでしょう。
また、ひとつの組織に依存しないスキルアップを意識することで、将来的に働く場所や、働き方の選択肢が広がりやすくなります。
社会で役立つ人材へと成長できる
プロティアンキャリアは個人を主体としたキャリア理論ですが、モチベーションを保ちながら主体的に仕事をしていくことで、結果的に組織に役立つ力を得ることができます。
プロティアンキャリアによって自己成長することは、転職や独立を考えていない人にとっても有用です。あらゆる環境で活躍できる適応能力を磨くことで、組織内での昇格や昇給などの評価につながることも期待できるでしょう。
プロティアンキャリアに必要な要素
プロティアンキャリアを実践するためには、自分らしさを確立させる「アイデンティティ」と、あらゆる環境に適応できる「アダプタビリティ」の要素が欠かせません。それぞれの意味を詳しく見ていきましょう。
アイデンティティ
アイデンティティとは「自己同一性」「自分が自分であること」などを意味しますが、プロティアンキャリアにおけるアイデンティティは、主に「自分らしくある」ことを意味します。そのなかには「自分がどうなりたいか」という自己イメージや、目的や能力に対する自己理解が含まれます。自分自身をしっかり理解することで、組織や環境に振り回されない、自分主体のキャリア形成ができるようになるでしょう。
アダプタビリティ
アダプタビリティとは、直訳では「適応性、順応性、融通性」を意味します。プロティアンキャリアにおけるアダプタビリティは「環境や社会の変化への適応力」を指します。
従来型のキャリア形成では組織のなかで生き残るための適応能力が必要でしたが、プロティアンキャリアでは、ひとつの組織に限らない柔軟な理解や適応能力が重要視されます。アダプタビリティは、アイデンティティを確立したうえで、積極的に業務やスキルアップに取り組むことで高めることができるでしょう。
プロティアンキャリアを身につけるまでのステップ
プロティアンキャリアは、1976年にボストン大学名誉教授ダグラス・ホールが提唱したキャリア理論です。ダグラス・ホールによると、プロティアンキャリアを促進するための10のステップ*1というものがあります。
10のステップは、労働者ではなく組織やキャリア支援者向けの内容になります。内容は「キャリアを有しているのは個人である」という認識から始まり、個人が発達するための情報やサポート、人間関係などの学習を促進します。ステップ9では「職務の熟達より、学習者としてのアイデンティティを重視する」ことを述べ、ステップ10では「発達のために自分の周りにある資源を使う、という思考傾向をのばす」ことを促進させます。
10のステップを意識することで、組織主体ではなく自分を主体として働く、モチベーションや適応能力の高い人材の育成が期待できるでしょう。
プロティアンキャリアとは個人を主体としたキャリア理論
終身雇用の崩壊や働き方の多様化など流動的な社会において、組織主体の働き方に不安を感じることもあるでしょう。プロティアンキャリアのように個人を主体とした働き方の実現には、あらゆる環境や企業に適応できるビジネススキルを習得することが重要になります。
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※参考
*1:ナカニシヤ出版「新版キャリアの心理学[第2番]」より