リスクマネジメントとは?意味や目的・手順を簡単に解説

リスクマネジメントとは?意味や目的・手順を簡単に解説
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ライター 美亜
専門学校卒業後、シンガーとして音楽活動を行う。その後、リラクゼーションサロンのセラピスト、IT・web系の人材紹介会社にてライター業、派遣にて経理事務を経験。現在はフリーライターとして、主にキャリア系・IT系の記事を執筆。
エディター Tomomaru
フリーランスWeb編集・コンテンツディレクター兼たまにライター。 略歴は、アパレル→事務職を経てWebデザインをスクールで学んだのち、SHElikesと出会いWeb制作会社でマーケOLしてみたり。結果、書くことが天職だと思い込み、副業ライター道を歩んでいる。次なる野望は絵描きになること。思い込むのは自由です。

社会情勢の変化が著しい現代では、多くの企業で「リスクマネジメント」が重要視されています。一方で、「具体的に何をすればよいかわからない」とリスクマネジメントについての理解が曖昧な人もいるでしょう。

今回は、リスクマネジメントの意味や目的、手順や対応方法、効果を高めるポイントについて、簡単に解説します。

リスクマネジメントとは?

企業経営では、自然災害による建物の損傷や景気・為替の変動による経営不振など、さまざまなリスクに対応しなければいけません。そこで重要視されるのが、リスクマネジメントです。まずは、リスクマネジメントの意味や目的について紹介します。

リスクマネジメントの意味や目的

リスクマネジメントとは、企業や組織に起こり得るリスクを管理し、事前に予防したり損失を最小限に抑えるように対策したりする取り組みのことです。リスクマネジメントを行う目的には、主に企業の「維持・存続」と「発展」の二つがあります。

近年、グローバル化やDX化といった社会環境の急速な変化により、企業経営におけるリスクが増加傾向にあります。そのため、企業の存続にはリスクマネジメントが欠かせなくなっているのです。

また、個人情報の流出やSNSでの不本意な拡散など、企業の問題は自社だけに限らず社会にも少なからず影響を及ぼす可能性があります。企業価値の向上につながるIRにおいても、企業がどのようなリスクマネジメントに取り組んでいるかは、注目される項目の一つと言えるでしょう。

リスクマネジメントの類語との違い

リスクマネジメントと混同しやすい用語として、以下の3つが挙げられます。

それぞれの意味や違いを解説します。

リスクヘッジとの違い

リスクヘッジは、起こり得るリスクを事前に予測し、対応できるように備えることです。リスクヘッジがリスクを回避するための防止策の検討・実施にフォーカスしたものであるのに対し、リスクマネジメントはリスクによって引き起こされるトラブルに関してなど、幅広く対策・管理体制を整えていることを指します。

リスクマネジメントのプロセスの一部にリスクヘッジが入っていると考えてよいでしょう。

リスクアセスメントとの違い

リスクアセスメントは、企業における危険性や有害性を調査・特定し、リスクを除去したり低減したりする手法です。実際に対処までは行わず、分析・評価までを行います。

リスクアセスメントもリスクマネジメントのプロセスの一部を指している言葉であり、リスクの特定や分析・評価の他に、対応・監視も行うのがリスクマネジメントといったイメージです。

クライシスマネジメントとの違い

クライシスマネジメントは、テロや自然災害のような重大事故に備えることを意味します。危機は発生するものという考えを前提に、実際に発生した後の対処法を事前に検討しておくことがクライシスマネジメントです。

一方でリスクマネジメントは、リスクを事前に防ぐための行動も含みます。リスクマネジメントでは回避できなかった事故に対して、どのように対処するかを考えておくことがクライシスマネジメントと言えるでしょう。

リスクマネジメントの対応の種類

さまざまなリスクを想定し、備えるリスクマネジメントですが、対応の種類は以下の4つに分類できます。

効果的なリスク対策を行うには、これら4種類の意味や適切な場面を理解し、状況に応じて組み合わせることが大切です。それぞれの種類について解説します。

回避

「回避」は、言葉の通りリスクとなる要因を排除したり、対策を行ったりして、リスクの発生確率を抑えることです。具体例には以下のものが挙げられます。

  • セキュリティ対策の整っていないシステムは導入しない
  • 業績が好ましくない企業とは取引をしない
  • 情報漏えい対策のために社内ルールを定める

事業を継続して見込まれる利益と比較し、失敗したときの損失が大きい場合、事業活動を停止・撤退して回避するという選択肢を取るケースもあります。

低減

「低減」は、リスクの発生確率やリスク発生時の被害を抑えることです。企業に起こり得るリスクのなかには、完全に回避できないようなものも存在するため、低減という対応を取る必要があります。具体例は以下の通りです。

  • 自然災害に備えて、耐震工事をしたり防災グッズを見直したりする
  • 市場の大きな変化に備え、事業活動を細分化する

また、ヒューマンエラー防止のダブルチェックや安全性の高い社用車の購入なども、リスクの低減になります。

転嫁

「転嫁」は、リスクが発生したときの影響を第三者に移転することです。発生する頻度は少なくても、発生時の被害が大きいリスクに対して活用されます。具体例は以下の通りです。

  • 保険に加入し、損失発生時には補填を受ける
  • 業務の一部を他社に委託する
  • クラウドサービスでデータを管理する

責任や損失を移転するためには、対価を支払う必要があります。リスク発生時の被害の大きさと比較しながら必要な施策を検討することが大切です。

受容

「受容」は、リスクの発生をあえて受け入れて、何も対策をしないことです。発生頻度が少なく、発生時の影響も小さいリスクに対して適応されます。具体例には以下のものが挙げられます。

  • 新入社員に業務を任せる
  • 自己資金で補えるようなリスクに対しては保険に入らない

全てのリスクに対応することは難しく、発生時の損失に対策コストが見合ってない場合は、リスクを受け入れることも大切です。予測されるリスクに優先順位をつけて対応するとよいでしょう。

リスクマネジメントの手順

リスクマネジメントを進める基本的なプロセスは、以下の5つのステップで構成されています。

  1. リスクを特定する
  2. リスクを分析する
  3. リスクを評価する
  4. リスクに対応する
  5. リスクを監視する

多様化していくリスクに対して適切な対処をするためには、手順を理解し、継続的に実施することが大切です。各ステップで行うことについて、具体的に見ていきましょう。

1.リスクを特定する

まず、自社で想定されるリスクを特定し、把握します。リスクは網羅的に洗い出す必要があるため、管理部門のみで行わず、各部署に協力してもらいながらさまざまな意見を集めましょう。

この段階では、些細なリスクも見落とさないように業務や事業内容を改めて書き出し、複数のシナリオを考えるのがポイントです。現実的ではないようなリスクに対しても、「起こり得る可能性はゼロではない」という姿勢で向き合いましょう。

2.リスクを分析する

次に、特定したリスクを分析していきます。それぞれのリスクが「企業に与える影響」、「発生する確率」の両面から対策の重要度を可視化し、分類します。

データを定量的に分析するのが望ましいですが、リスクのなかには人命に関わることやコンプライアンスリスクなど、数値化できないものも存在します。これらは、他のリスクと比較して大・中・小に分類したり、専門家からの意見を取り入れたりして対応しましょう。

3.リスクを評価する

リスクの分析をした後は、分析結果を基にリスクの評価を行い、対策の優先順位を決めます。ここで大切なのは、リスクの大小に捉われず、影響度や発生頻度などを踏まえて多角的な視点で評価することです。

企業で想定されるリスク一つ一つに対応するのは、コストやリソース面を考えても現実的ではありません。リスクマップを使用することで、自社がどのリスクから対応すべきなのかが把握しやすく、複数人での共有もできるでしょう。

4.リスクに対応する

リスクの重要度や優先度が定まったら、それぞれのリスクに応じた具体的な対策を考え、実施していきます。許容範囲や各リスクに要するコストなどを検討しながら、前項で紹介した「回避」「低減」「転嫁」「受容」のいずれかを選択しましょう。場合によっては、組み合わせて対策をすることも効果的です。

また、対策のなかには時間を要するものや各部署の協力を得なければいけないものもあります。スケジュールに余裕を持って、緊急度の高いものから進めていくとよいでしょう。

5.リスクを監視する

最後に、対策を実施したリスクに対してモニタリングを行い、効果が発揮されているかどうかを確認します。もし改善点が見つかった場合は、どのタイミングでどのような問題があったのかを把握し、新しい対策案を考える必要があります。

リスクは社会情勢や経営状況により常に変化していくため、定期的な振り返りや改善を繰り返すことが大切です。また、改善点をまとめてガイドラインを作成することで、次のリスク発生時に役立つでしょう。

リスクマネジメントのポイント

リスクマネジメントの効果を高めるためには、以下の3つのポイントを押さえることが大切です。

それぞれのポイントについて、解説します。

リスクマネジメントのプロセスをマニュアル化する

対策を実施する人によって効果に差が生じないよう、リスクマネジメントのプロセスをマニュアル化する必要があります。さらに、マニュアル化した後は社内全体に共有し、客観的な評価もできるようにしておきましょう。

発生頻度の低いリスクは、イメージが沸きにくく目的が曖昧になりやすいです。そのため、マニュアル化する際は、文章だけでなく画像や映像を用いるのがおすすめです。実際にリスクが発生した際の対応もイメージしやすくなるでしょう。

組織として取り組む

リスクマネジメントは、部署やチームごとに単体で行うのではなく、組織全体で取り組むことが大切です。組織の一部だけが実施しても、組織としてのリスクマネジメントの効果は得られにくく、効率性も下がってしまいます。

経営者の下にリスクマネジメントの担当責任者や管理部署を設置し、さらに各部署でリスク管理の担当者を定めておくなど、全社でリスクマネジメントに取り組める体制を整えるとよいでしょう。定期的に管理部署とコミュニケーションを取る機会を設けるのもおすすめです。

定期的にテストし評価する

リスクマネジメントの効果を高めるには、定期的な見直しが欠かせません。入念に分析や評価を行い対策を考えたとしても、それが最適解であるとは言えないためです。定期的にテストや評価を繰り返し、試行錯誤をしていくことで、いざリスクが発生した際の損失も最小限に抑えられるでしょう。

また、改善点として従業員への教育が必要になった場合は、定期的な研修を実施するのも効果的です。常に適切な対応ができる状態を維持するように取り組みを更新しましょう。

リスクマネジメントとは、企業経営における重要な取り組みの一つ

企業や組織の大小に関わらず、リスクは起こり得るものです。事業存続のためには、想定されるリスクを事前に把握したうえで適切な対策を講じることが大切です。

また、リスクが多様化した近年では、どこでどのように企業に影響を及ぼすかわかりません。そのため、一人ひとりが自分の行動にどのようなリスクがあるかを理解したうえで、リスクマネジメントに取り組む必要があります。この記事を参考に、効果的なリスクマネジメントを検討してみてください。

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