サービスデザインとは?UXとの違いや成功事例をわかりやすく解説!

サービスデザインとは?UXとの違いや成功事例をわかりやすく解説!
ABOUT ME
ライター 大竹菜々子
高校3年生で脚本家としてデビュー。2018年5月、脚本を担当した映画『猫カフェ』及び『チャットレディのキセキ』が公開される。 慶應義塾大学法学部進学後は、「トラベル Watch」「グルメ Watch」(株式会社インプレス)にてライター・編集者としての活動を開始した。 現在に至るまで、「レスポンス」(株式会社イード)や「ビギナーズ」 (株式会社マーケットエンタープライズ)などで取材記事やSEO記事作成を手掛けている。 なお 2022 年からは、オウンドメディア立ち上げに関わるなど、メディアプロデューサーとしても活動している。JAPAN MENSA会員。
エディター 古澤 椋子
鹿児島大学大学院水産学研究科修了。水産系社団法人にて、水産に関わる調査研究、行政との折衝などを経験したのち、水産系ベンチャーにて、広報を担当。2023年からフリーライターとして活動を始め、主にエンタメ系の記事を執筆。SHElikesでキャリア、マインド共に変化した経験から、SHEsharesのライターを務める。

顧客が商品やサービスに求める価値が多様化している現在、提供する商品やサービスの質を高めるだけでは、顧客に選んでもらうことは困難になっています。商品を繰り返し購入してくれるような根強いファンを作るためには、商品そのものの質だけでなく購入前に触れる広告やパッケージ、店舗スタッフによる接客、アフターサービスなど、一連の体験すべてが重要な要素です。

このため最近では、サービスデザインの考え方が注目を集めています。サービスデザインとは、顧客体験のデザインに加えてそれを提供する組織や仕組みも整えていくことが大切であるという考え方です。

この記事では、サービスデザインの重要性や必要なプロセス、外部企業に依頼する際のポイント、成功事例などを解説します。

サービスデザインとは

サービスデザインとは、商品やサービスの価値を顧客視点で創造し、継続的に提供する組織や仕組みを構築していくための手法です。デザイン思考(デザインシンキング)を具体的にビジネスに落とし込む流れの1つとしても用いられます。

デザイン思考をわかりやすく定義すると「デザイン制作における思考方法を用い、それをビジネスや経営に活かしていく取り組み」ということができます。ここでいう「デザイン」とは、配色やレイアウトなど「装飾」のことではなく、目に見える形に落とし込む以前にそのテーマについて魅力を洗い出して「設計」していくフローを含みます。デザイナーは装飾する作業に取り掛かる前に、どのような形や配色を採用することでそのテーマの魅力が存分に伝わるかを設計しています。

このように、「ニーズや目的を考える」「ユーザー視点から考える」「試作をする」など、デザイナーがおこなっている設計の順序をビジネスに取り入れたものがデザイン思考です。サービスデザインにおいても、ユーザーの体験価値に配慮したサービスの構築や既存の事業改善などでデザイン思考が効果を発揮するでしょう。

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サービスデザインの定義

サービスデザインの定義について、経済産業省は「顧客体験のみならず、顧客体験を継続的に実現するための組織と仕組みをデザインすることで新たな価値を創出するための方法論である」*1と述べています。

サービスデザインの対象には顧客体験だけでなく、企業の体制や現場で働く従業員なども含まれます。そして顧客体験はユーザーが商品によって得られる体験のほか、商品を認知して購入することから、利用・利用後までのすべての体験を指します。

理想的な顧客体験を提供して継続的な利用を促すことに加え、企業運営の方法や組織構造までを見直すことがサービスデザインの目的です。

UXデザインとの違い

サービスデザインと似た言葉として、「UX(ユーザーエクスペリエンス)デザイン」があります。UXデザインとは、ユーザーが製品やサービスを通じて得られる体験を意味しており、製品やサービスを通じたユーザーの体験すべてを設計することが求められます。

UXデザインとサービスデザインの違いは、デザインの対象として企業やステークホルダー(利害関係者)が含まれるかどうかという点です。サービスデザインの対象には、組織や仕組みのデザインまでが含まれていました。サービスデザインはユーザー体験に限らず、商品やサービスの提供をする企業の体制やシステムといった運用側の体制のデザインまでを指します。

対してUXデザインは、商品やサービスの利用を通じて得られるフロントステージのユーザー体験に着目します。UXデザインとサービスデザインの考え方を結びつけることで、ユーザーの顧客体験そのものを超え、それを提供する組織や環境などあらゆる要素を包括的に捉えることができるようになるでしょう。

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サービスデザインが重要視されている背景

近年では、あらゆるビジネスにおいてサービスデザインが重要視されています。

さまざまな産業が成熟したことで便利なモノが世の中に溢れるようになり、インターネットやSNS、口コミサイトなどで情報を得やすくなりました。顧客がさまざまな情報を容易に比較できるようになったため、商品やサービスの選定基準が高くなっています。

また生活に必要な最低限のモノが手に入ったことで、商品やサービスそのものの質だけではなくユーザーサポートなどの付加価値や企業が掲げるミッションへの共感によって購入を決める傾向もあります。地球温暖化や資源の枯渇といった環境問題への意識もますます高まっており、企業は社会に与える影響を考えて事業を展開することが求められています。

サービスデザインでは、商品・サービスが内包する新たな価値を探し出し、それを活かした顧客体験を提供することで、他社との差別化を目指すことができるでしょう。

サービスデザインの6原則

サービスデザインの実践書である「This is Service Design Doing」では、サービスデザインの考え方として「サービスデザインの6原則」が提唱されています。

ユーザー中心であること

サービスデザインでは、商品やサービスを利用するユーザーのエクスペリエンスを考慮することが求められます。常に顧客の視点を持ち、ニーズに応えるサービスを作ることが大切です。

日本のものづくり業界におけるユーザー中心の考え方は、2000年ごろから広まりはじめました。当時はインターネットの普及などにより、高機能ではあるもののわかりにくいシステムが多く作られていました。そこで「もっとわかりやすくて使いやすいものを作ろう」と考えられるようになり、機能中心・組織中心よりもユーザーを中心に据えて商品やサービスを設計する考え方が広まっています。

さらにサービスデザインでは、顧客のみならず従業員などサービスに関与するすべての人の経験や体験を考慮してサービスを検討することが大切です。誰のためのサービスなのかということを常に問い続けることで、さまざまな立場の人が満足できるサービスの創出へとつながるでしょう。

全体的な視点

サービスデザインの対象はフロントステージでのユーザー体験だけでなく、実際に商品を提供している組織や現場スタッフを含むバックステージもデザインの対象です。場合によっては社会情勢や世界情勢、地球環境についても考慮しなければなりません。すべてのステークホルダーのニーズに持続的に対応できるものを目指す必要があります。

そのためには、あらゆる視点を組み合わせて全体を俯瞰することが大切です。これにより、局所的な課題を1つずつ解決していくのではなく、それぞれの個別の要素がつながり合って作用するようになります。全体像を捉えることができれば、すべての人々にとってサービスの価値が向上するような最適化を目指すことができるでしょう。

反復的なプロセス

サービスデザインのプロセスは、一度完了すれば終わりというわけではありません。実装に向けて探索・改善・実験の反復的アプローチをおこない、状況に応じて各ステップを行き来して反復的に進める必要があります。

たとえば、プロトタイピング(試作)のステップで生じた課題を解決するために、リサーチ(調査)のステップに戻って原因を調べ、やり直す場合もあります。プロセスを順番通りに進めるよりも、繰り返しによってサービスの完成度を高めることが大切です。

また、ユーザーの心理やニーズ、社会の状況は日々変化しています。一度組み立てたサービスをそのままとせず、常に探索・改善・実験を繰り返すことでサービスを改良しましょう。

共創

サービスデザインにあたっては、多様な背景や役割を持つステークホルダーと共創できる場を作りましょう。

自身が属する組織・部署の中だけではなく、さまざまな関係者とともに考えることが重要です。サービスを企画する当事者以外の人(地域住人や学生、他業種や他分野の事業者、学校、行政、専門家など)も一緒に参加するアプローチによって、さまざまな立場の意見を尊重することで現状や目指すべき完成形を多面的に捉えることができます。その結果、アイデアや意見の交換による新たな発見が生まれ、長く愛されるサービスを創造することができるでしょう。

またステークホルダーと一緒に考えながら実践していくことで信頼関係が生まれ、サービスへの関与度が高まりファンを育てていくことにもつながります。社会環境や遵守しなければならない法規などのさまざまな観点を踏まえて、商品やサービスを作り上げていくためにも、すべてのステークホルダーが積極的に関与しサービスを組み立てる必要があります。 

リアルさ

サービスデザインの過程では、顧客のニーズを調査し現実に根差した試作品を作ることが欠かせません。コンサルティングサービスやコンセプトのように形のないサービスや価値観についても、物理的にまたはデジタルで存在を明確に表す必要があります。

ここでいう「リアル」とは、「実感する」という言葉に置き換えることができるでしょう。たとえば、小売業界など対面販売からネット通販へ売り上げの比重が移行しているサービスにおいて、返品ポリシーが店舗販売とネット通販で異なるとユーザーは納得のいく購買体験の実感を覚えづらくなります。

サービスやコンセプトといった無形の価値を提供する場合においても、可視化した手順を示すビジュアル・サービスマップを作ることで、見落としや思い込みなどの誤解を防ぐことができるでしょう。

このような「実感=現実の確認」という物理的な行為が、サービスをより現実感のあるものにします。デザインの際、アイデアを机上の理論で終わらせないための姿勢でもあるといえるでしょう。

連続的であること

どんなユーザー体験にも時間の流れがあり、すべての行動・思考が連なり影響し合っています。サービスを提供する企業や組織は開発・マーケティング・販売といった異なる担当部署に分かれていますが、実際に体験する顧客にとってはすべてが連続していることを意識しましょう。顧客は一貫性のある体験に安心感を覚え魅力を感じるため、サービス全体を連続的に捉えることが大切です。

どのようなサービスにおいても、最初に印象が悪かったものには警戒心が生まれ、楽しかった経験は大切な思い出になります。継続的なサービスデザインを実現するためには、行動観察やワークショップなど多角的なリサーチによる多様な課題の可視化が効果的です。

サービスデザインのプロセス

サービスデザインで考えなければならないことは多岐にわたり、画一的なプロセスがあるわけではありません。必要に応じて次のような基本ステップを行き来し、組み合わせて活用します。

  1. 調査と理解
  2. 定義と構想
  3. プロトタイプと反復
  4. 実施と導入
  5. 継続的な評価と改善

1.調査と理解

サービスデザインにおいて最初に取り組みたいステップとして、調査(リサーチ)があります。特定の顧客の行動や価値観、ニーズを調査し理解しましょう。このステップでは、行動の仮説を立てたり既存の仮説を参考にしたり、ユーザーや競合他社を調査したりすることで情報収集をおこないます。

調査では顧客の潜在ニーズを理解することが大切です。そのためには、顧客調査やカスタマージャーニーマップの作成などをおこなうようにしましょう。カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品やサービスを認知してから購入するまでの流れを図で可視化したものです。この調査により、顧客の価値観や行動を分析することができます。

また顧客以外にも、予備調査として業界動向や業界をリードしている組織、競合他社や類似商品など外部環境の調査もおこないます。データを収集することができたら、集まった情報をさまざまな角度から分析して仮説を検証します。顧客の価値観や潜在的な欲求を把握して、顧客への理解を深めていきましょう。

2.定義と構想

このステップでは、リサーチした結果やニーズを踏まえてユーザーが抱える問題を解決する方法を考えます。サービスの改善や新たな価値を生み出すためのアイデアを考案しましょう。この工程は「アイディエーション」とも呼ばれます。

アイディエーションの手法としては、「Crazy8」や「タイムマシン」といったさまざまなものがあります。いずれの方法においても、出されたすべてのアイデアを否定することなく他者の意見を巻き込みながら抽出していくことが原則です。

抽出されたアイデアは次のプロセスで検証を繰り返してブラッシュアップを重ね、よりよいアイデアを模索します。新たなアイデアは、進化を繰り返すためのきっかけとなるでしょう。

3.プロトタイプと反復

ブラッシュアップしたアイデアは、触って検証できるプロトタイプ(試作品)やワイヤーフレーム(サービス設計図)を作成して検証します。

デザインコンセプトを踏まえてビジュアルイメージを表現したり操作性を試したりできるよう、プロトタイプとして形にしてみましょう。実際に見て触りながら検証することで、イメージしている段階では気づかなかった課題や不便な点がみえてきます。最初から完成を目指すのではなく、問題点の洗い出しと解決のトライアンドエラーを繰り返していきましょう。

よってプロトタイピングは、早い段階から小規模で試すのがおすすめです。実際に体験することで、ユーザー目線からサービスの質を高めることができるでしょう。

検証したアイデアが不十分であることがわかった場合は、リサーチのプロセスに戻ることも大切です。

4.実施と導入

次に、プロトタイプで受けたフィードバックを踏まえつつプロダクトを実装します。

実際に商品やサービスを提供するためには、生産体制や運用体制といった環境も整えなければなりません。ここからは、製造部門やPRを担当する広報部門、カスタマーサクセスといった各部門とより強力に関わる必要があります。

例えばスマホアプリを実装する場合、インターフェースには表れない内部処理や、ユーザーが利用することが想定されるデバイスの種類、ユーザーの利用状況を測定するログ機能、セキュリティを保つためのシステムなど、ユーザーとの直接の接点以外にもさまざまな必要事項を網羅した設計作業が必要です。家電や自動車、日用品など実体のある製品では、生産体制の整備もおこなわなければなりません。

実装では多くの担当者と協力して1つのプロダクトを作り上げます。デザインコンセプトやサービスデザインで目指す顧客体験のイメージをしっかりと伝えることが大切です。

5.継続的な評価と改善

サービスデザインでは、ここまでのステップを繰り返しながら改良を続けることが重要です。PDCAなどのフレームワークを活用するのもよいでしょう。

例えば、プロトタイピングの段階で発見した課題を解決するために、最初のステップに戻って原因がどこにあるのかを調査する場合もあります。ユーザーのニーズや状況の変化に応じて改善するために、反復的かつ継続的にブラッシュアップすることが大切です。

サービスデザインを外注する際の会社選びのポイント

サービスデザインを外部企業に依頼する場合、どのようなポイントをおさえておけばよいのでしょうか。

実績と経験が豊富

まずは、過去の実績と経験を確認することが大切です。実際に手がけたプロジェクトの内容や導入事例が公開されていると望ましいでしょう。

特にチェックしたいのが、どのような種類のプロジェクトを手掛け、どのような雰囲気のデザインを得意としているかという点です。アプリやWebサービス、パッケージ、自動車、家電など、自社のプロジェクトに近い実績が豊富な会社を選ぶようにしましょう。

作りたい商品やサービスに関するノウハウがある会社であれば、スムーズに仕事を進めることができます。自社のプロダクトとマッチするデザインを多く手掛けている会社なら、イメージしている以上のものを実現してもらえる可能性も高まるでしょう。

ワンストップで対応できる

ワンストップ対応とは、一社への発注のみで制作に関わる作業をすべて完了させられることです。ワンストップ対応が可能な会社の場合、社内にいるデザイナーやプログラマーが各フローの制作を担当してくれるため、発注側の工数が大幅に削減されます。また窓口が一本化されているため、修正や方向転換の指示をおこないたい場合もスムーズに進めることができます。

このように、全体を俯瞰してサービスを設計するためにも、サービス開発の上流からデザイン、プロダクト開発、実装までをワンストップで対応可能な企業に依頼するのがおすすめです。サービスデザインのプロセスをしっかり反復するためにも、ワンストップで対応できる会社に依頼できるとよいでしょう。

ノウハウを蓄積できる

外部企業に依頼する場合でも、将来的な内製化を見据えることは重要です。そのため、開発を通じて、蓄積した技術や知識を提供してもらうスキルトランスファーに協力的な企業を探すというのも1つの選定方法です。

ノウハウは社員が日々業務をおこなうなかで生まれていくため、そのノウハウを企業全体で蓄積するナレッジマネジメントをおこなうことで業務の効率化が期待できます。情報が蓄積されうまく共有することができれば、ノウハウが企業の資産となり組織全体の業務効率化や生産性の向上に役立つでしょう。

とはいえ、いきなり完璧なサービスデザインを実現することは簡単ではありません。「既存サービスを改善し、競合との差別化を図りたい」「魅力のある顧客体験を提供したい」「顧客満足度を改善したい」といった課題がある場合は、まず将来的にノウハウを共有してくれる企業に依頼するのがおすすめです。

サービスデザインの成功事例

成功事例を参考にすることで、自社の商品・サービスの開発に必要なポイントを発見できるかもしれません。実際のサービスデザインの成功事例をみていきましょう。

パナソニックホールディングス株式会社「KIZASHI-LAB」

パナソニックラボラトリーは、パナソニックグループのイノベーション創出を推進するために、共創型イノベーション発信拠点や未来洞察を活用したワークショップを展開しています。

パナソニックラボラトリーも、コロナ禍の影響で共創活動がリアルからオンラインへ大きくシフトしたことにより、豊富なナレッジを十分に活用できていない状態に陥っていました。そこで第一歩として、参考メディア調査やユーザーインタビューをおこない分析を実施。議論を進めていき、サービスで実現したい価値やターゲット、体験のコンセプトがみえてきました。*2

これにより、オンラインプラットフォーム活動「KIZASHI-LAB」*3が始動しました。Webサイトを「『未来を考える素材』の情報公開」だけにとどまらず、「一人一人が未来を創り出す、イノベーション推進活動の象徴」として公開しました。

制作の過程では想定していたターゲットにプロトタイプを操作してもらい、新たな課題が見つかると改善施策を新たなプロトタイプに反映をさせていたそうです。

株式会社ピコトン「子どもの子どもまでプロジェクト」

株式会社ピコトンは、「子どもの想像力と創造性を応援する」というビジョンのもと多彩な工作キットを企画・製造・販売しています。大型商業施設や博物館でのイベントのほか、自動車販売店で子どもたちが待ち時間を過ごす際に提供されています。

手軽な価格帯で利用できる工作キットは人気を集めていましたが、実際にキットを使うエンドユーザーからはブランドが認知されにくい状況にありました。

そこで考案されたのが、新しい社会貢献のプラットフォーム「子どもの子どもまでプロジェクト」*4です。このプロジェクトでは、支援者がWebサイトを通じて工作キットやおもちゃを購入すると、支援を必要とする施設にも同じ製品が届きます。

「子どもの子どもまでプロジェクト」は、2022年キッズデザイン賞協議会長賞を受賞したことをきっかけに、プラットフォームに参加登録する教育施設・児童福祉施設がさらに増えています。最近では学童保育施設とも協力し、学童に通う子どもたちとの商品開発のプログラムも実施されました。このプログラムではワークショップを通じてアイデアを出し、一部のアイデアはピコトンの社員と一緒にブラッシュアップを重ねます。実際に制作された作品はテスト販売をおこない、実際に作品を購入してもらうことができました。

「子どもの子どもまでプロジェクト」は、子どもたちにものづくりの機会や作ったものに対してフィードバックを受けられる機会を提供し、子どもたちがものを作る楽しさや喜びを感じることができる体験そのものをデザインしたといえるでしょう。

株式会社パルコ「MEME/ZINE」

日本各地にショッピングセンター「PARCO」を展開する株式会社パルコは、若手社員を対象にした、独創性の高い企画・サービスのプロデュース能力向上を目的とした人材育成プログラム「MEME/ZINE」*5を実施しました。

「ZINE」とは個人や少人数の有志が主に非営利で発行する自主的な出版物のことです。同プログラムでは、興味関心の領域が近い社員同士で3人1組の「倶楽部」を結成し、その活動を通じて起こしたい変化を妄想することでZINEの企画・制作をおこないました。

結成された架空の「伝説の倶楽部」は、「伝説になるまでの活動の歴史を描く」という設定で、自分たちがこれから生み出す「変化」を将来から遡るように言語化しZINEに落とし込みます。自ら編集やデザインをおこなったことでクリエイティビティが鍛えられ、部署を超えて協力しあう土壌を作ることに成功しています。

サービスデザインでユーザー体験の満足度を高めよう

この記事では、サービスデザインの定義や必要なプロセス、実際の事例などを紹介しました。

サービスデザインのメリットは、顧客体験のみならず商品やサービスを提供する企業や仕組みもデザインすることで、新たな価値を生み出していくことができる点にあります。サービスデザインを取り入れることで商品・サービスに性能や価格以外の付加価値を与え、競合との差別化を図ることもできるでしょう。

女性向けキャリアスクールのSHElikes(シーライクス)では、コンテンツマーケティングやブランディングなどサービスデザインにつながる考え方を身につけることができます。興味のある方は、ぜひ無料体験レッスンに参加してみてください。

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*1 経済産業省「令和元年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業 我が国におけるサービスデザインの効果的な導入及び実践の在り方に関する調査研究報告書[詳細版]」本報告書の構成より
*2 株式会社グラグリッド「イノベーション推進プラットフォーム”KIZASHI-LAB”の構想とUXデザイン」より
*3 パナソニックグループ「KIZASHI-LAB」
*4 株式会社ロフトワーク「創造性教育と社会、企業をつなぐ新事業のデザイン『子どもの子どもまでプロジェクト』」より
*5 株式会社ロフトワーク「パルコによる創造性人材の育成 文化的ムーブメントにつながる、サービス開発能力を引き出す」より

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。