ロールプレイングとは、仕事における実務スキル向上のためのトレーニング手法の1つです。接客・営業・部下育成・コーチングなどさまざまな分野で活用されています。一方で、具体的な研修方法がわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、企業に向けてロールプレイングの実施目的と研修のやり方を解説します。導入事例や注意点も紹介するので、参考にしてみてください。
ロールプレイングとは?
「ロールプレイング(ロープレ)」とは、状況を模擬的に作りだして対応力を高める研修方法です。「role(役割)+ playing(演じる)」から成り立ち、「役割演技法」とも呼ばれます。実際のシチュエーションを想定して役になりきることで、業務で活かせる実務スキルの向上が期待できます。
座学は大多数に対して共通知識を伝えられるというメリットがありますが、個々にまで着目したトレーニングを行うのは難しいでしょう。そこで個々の実務スキルを高めるための、ロールプレイング研修が効果的です。
ロールプレイングの目的
ロールプレイングの目的は、社員の実務スキルを高めることです。接客や営業をはじめとした対人スキルは、知識的なノウハウを学んでも実務スキルが伴わないことがあります。たとえばセールスのアプローチ方法を学んでも、現場の状況によって顧客への最適な声がけの方法は異なるでしょう。
知識を「理解しているレベル」から「実際に使えるレベル」までもっていくために、ロールプレイングは効果的です。実務スキルを伸ばして成功体験を積むことは、社員の自信アップにもつながります。
ロールプレイングのメリット
ロールプレイングは、営業研修・ビジネスマナー研修・社内コミュニケーション研修などさまざまな場面で活用でき、企業にとって以下のようなメリットがあります。
- 実践スキルが身につく
- ノウハウを共有できる
- 課題の発見につながる
- コミュニケーション力の向上
ここからはそれぞれのメリットを具体的に解説します。
実践スキルが身につく
ロールプレイング研修は、座学研修に比べて実践スキルの向上を優先しています。座学研修をしても実務に慣れるまでは時間がかかるように、頭で理論が分かっていても行動スキルが伴うとは限りません。現場を想定したロールプレイングは、即戦力として現場で活躍するためのスキルを効率的に習得できます。
ノウハウを共有できる
社員同士でロールプレイングを行うと、効果的な接客方法のノウハウを共有し合うことができます。とくに実務経験がある社員の好事例や失敗例の共有は、実務に反映しやすく価値あるものです。共有されたノウハウを現場で実施したのち、次の研修で共有することで、社員のスキルが徐々に向上していくでしょう。
課題の発見につながる
ロールプレイングは、個人で気づくことが難しい課題を社員同士が発見するために役立ちます。普段、接客や営業は顧客に対して行うので、社員同士が互いの対話スキルを確認する機会はなかなかありません。他の社員の実力を知ることで、各自が不足している部分を認識することができるでしょう。
コミュニケーション力の向上
ロールプレイングを通して他者理解を深めることで、コミュニケーション力の向上が期待できます。フィードバックをする際は、相手に理解してもらうための言い回しの工夫が必要であり、受ける側は話し手の伝えたい内容を汲み取る力が求められます。対顧客に限らず、社内での人間関係を円滑にするためにもロールプレイングは効果的です。
ロールプレイングのデメリット
ロールプレイング内容によっては、以下のようなデメリットが起こる可能性もあります。
- 緊張感の欠如
- 新たな課題を見つけにくい
それぞれのデメリットを解説しながら、対策方法についても触れていきます。
緊張感の欠如
同じ内容のロールプレイングを続けると、緊張感が欠けてしまい本来の効果が得られなくなる恐れがあります。とくに同じ店舗・部署の人同士でロープレを行う場合、互いに話すことに慣れてしまい、顧客と接する際の雰囲気を作り出すことが難しくなるかもしれません。「組み合わせを変える」「チーム制にしてみる」など社員を飽きさせない工夫をしましょう。
新たな課題を見つけにくい
研修で同じシチュエーション・形式を毎回続けていると、ロールプレイングの結果も同じものになってしまいます。既知の情報のみ得られても、新たな課題を見つけることは難しいです。ロールプレイングの「方法・場面・人」を変えるなどして、社員が新鮮な気持ちで研修に取り組めるようにしましょう。
ロールプレイングの種類
ロールプレイングの種類は、主に4つの型に分けられます。
- ケース型
- 問題解決型
- モデリング型
- グループ型
目的によって最適な型が変わってくるので、それぞれの特徴を理解しましょう。
ケース型
最も一般的なロールプレイングが「ケース型」です。人物や状況を細かく設定した状況でロールプレイングを行います。たとえば「不満を持った顧客からの電話」「商品の返品」など具体的なシチュエーションを設定します。ケース型で重要なのが、状況設定をできるだけ現実的・具体的にすることです。社員が本番の状況をイメージできるようにすることで、緊張感を高めることができます。
問題解決型
「問題解決型」は、過去に実際にあった事例をもとにロールプレイングを行う方法です。「リアル型」とも呼ばれます。実在する問題を題材にして、同じ状況に直面したときの対応力を高めます。問題解決型は、ネガティブな現状を解決したい場合に効果的です。ロールプレイングを考察することで、実際に問題を解決する糸口が見つかる可能性もあります。
モデリング型
「モデリング型」は、代表者がロールプレイングを行った後に、その他大勢がその真似をしてロールプレイングを行う方法です。「基本スキルを大多数に教育したい」「好事例を全員に共有したい」などの目的で活用しやすい型です。見本となるスキルを、大多数に効率よくシェアすることができます。個別のロールプレイングに入る前の練習としても使える型です。
グループ型
「グループ型」は、2人以上でグループを作り、役割を入れ替えながら繰り返し行うロールプレイングの方法です。役割を交互に演じることで、違う立場の視点を得ることを目的としています。たとえば、営業役を演じたあとに顧客役と入れ替わることで、自分の営業トークは相手からどう見えているか考えられるようになります。
ロールプレイング研修のやり方
ロールプレイングで実務スキルを効率的に高めるには、どのような研修を行えばよいのでしょうか。ロールプレイングのやり方は、主に以下の4ステップです。
- 目的やテーマを決める
- 現実的な場面を設定する
- 役割を明確にする
- フィードバックを行う
ここからは、各ステップを詳しく解説します。
1.目的やテーマを決める
まずはロールプレイングを行う目的を設定します。研修を通して社員に習得してもらいたいスキルを考えてみましょう。たとえば接客や営業のスキルを向上したい場合、「顧客の商品購入」「顧客の新規会員登録」「顧客へのクレーム対応」などが目的として設定できます。目的を明確に決めることで、続く場面設定や人物設定で迷うことも少なくなるでしょう。
2.シーンや場面を設定する
実際のシチュエーションを想定した場面を設定します。実務として使えるスキル習得のために、できるだけ現実的なシーンを取り入れましょう。たとえば「顧客の商品購入」をゴールとした場合、シーンとしては「店員からアプローチする場面」「顧客から質問がくる場面」などが想定できます。状況についても「レジでの会計中」「商品を手に取っているとき」など細かく設定していきます。
3.役割と人物設定を行う
次に、役割と人物設定を行います。たとえば接客のロールプレイングならば、「販売員役と顧客役」のような設定です。人物設定では顧客の情報を明確にするために「性別・年齢・商品使用歴」などを決めます。また、参加者に人物設定を覚えてもらうために、口頭だけでなく資料に記載するなどしましょう。
4.フィードバックを行う
ロールプレイング実施後、フィードバックを行います。フィードバックシートを用意しておくと、目的に沿った評価がしやすくなります。また、ロールプレイングを行う2人に対して、もう1人「オブザーバー」と呼ばれるフィードバックを行う役割を含める方法があります。第三者目線で評価に集中できるため、フィードバックの質を高めたいときに効果的です。
ロールプレイング研修の導入事例
ロールプレイング研修は、企業によってさまざまな内容が存在します。時間や人員リソースを考慮しながら目的に合わせて実施する必要があるため、ベストな研修制度は企業によって異なるでしょう。ここからは企業の導入事例を紹介するので、取り入れられるアイデアがあれば参考にしてみてください。
株式会社ビジネスコンサルタント
コンサルティングサービス企業の「株式会社ビジネスコンサルタント」は、オンラインロールプレイングコンテストを実施しています。コンテスト内容は「セールストークで商品をいかにお客様に魅力的に伝えられるか」というものです。ラーニングツールでAI相手にセールストークを練習してから各自が動画をアップロードし、投票によって順位が決まる仕組みです。
新人教育の際、先輩が常に正しいフィードバックを行えるとは限りません。オンラインロールプレイングを導入することで、社員に平等な教育機会を与えられるようになったそうです。また上位のロールプレイング動画は学習コンテンツとして採用しており、優秀なセールストークを知る機会を作っています。*1
ロールプレイングを実施するときのポイントや注意点
ロールプレイングを実施する際、重要なのがフィードバックの質です。社員同士でフィードバックを行う場合、全員が同レベルのスキルを持ち合わせているとは限りません。以下の点に気をつけながら、フィードバックを行いましょう。
良い点・悪い点をバランス良く伝える
フィードバックで悪い点ばかりを伝えてしまうと、相手の自信を喪失させることにつながりかねません。社員の長所となるスキルを伸ばすためにも、必ず良かった点も共有しましょう。良かった点を共有してから改善点に触れていくと、相手もフィードバックを受け入れやすくなります。互いに気持ちよくフィードバックを行うことは、良好な社員同士の関係構築にもつながります。
チェック項目を用意しておく
できるだけ具体的なフィードバックが行えるよう、チェック項目を用意しておきます。事前に評価すべきポイントを理解してもらうことで、社員がフィードバックすべき内容を把握しやすくなります。たとえば接客シーンなら「商品を顧客の手元に差し出したか」「特典を説明したか」などの項目が設定できます。評価者の混乱を防ぐためにも、分かりやすいチェック項目を設定しましょう。
ロールプレイングで実務スキルを底上げしよう
ロールプレイングの目的は、社員の実務的なスキルを向上させることです。研修内容を現場で活かすためには、現場を想定したシチュエーション設定をしましょう。社員が気持ちよく研修に取り組めるように、ロールプレイングの組み合わせやフィードバック方法も工夫してみてください。
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出典
*1:株式会社LDcube「営業研修における効果的で面白い施策とは?組織内での事例やコツを紹介!」より