メンター制度とは?企業が導入する目的やメリット・デメリット、効果を紹介!

メンター制度とは?企業が導入する目的やメリット・デメリット、効果を紹介!
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ライター あゆ
カナダ拠点のフリーランスライター。23歳で初海外・留学を経験。帰国後にWeb広告代理店に転職、SNS広告の記事・クリエイティブ作成、運用を担当。その後、再度カナダに渡航し現地で美容部員として働く。その後、SHEに出会い現在ライターを務める。
エディター Tomomaru
フリーランスWeb編集・コンテンツディレクター兼たまにライター。 略歴は、アパレル→事務職を経てWebデザインをスクールで学んだのち、SHElikesと出会いWeb制作会社でマーケOLしてみたり。結果、書くことが天職だと思い込み、副業ライター道を歩んでいる。次なる野望は絵描きになること。思い込むのは自由です。

少子高齢化が進む日本において、人材の定着・活躍促進のために有効な方法とされている「メンター制度」。社内のメンター制度を通じて、新入社員の離職率低下とともに先輩社員の部下育成スキルの向上が期待できます。

本記事では、メンター制度の基本的な知識を分かりやすく解説します。メンター・メンティ・企業側それぞれのメリット・デメリットも紹介するので、メンター制度を導入する際の参考にしてください。

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メンター制度とは

厚生労働省の「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」によると、メンター制度は以下のように記載されています。

メンター制度とは、豊富な知識と職業経験を有した社内の先輩社員(メンター)が、後輩社員(メンティ)に対して行う個別支援活動です。キャリア形成上の課題解決を援助して個人の成長を支えるとともに、職場内での悩みや問題解決をサポートする役割を果たします。*1

要するにメンター制度とは、先輩社員が新入社員・若手の中途社員をサポートする人材育成方法のことです。相談役としてメンターが存在し、対象者の不安や悩み事へのアドバイスを行います。

メンター・メンティ・メンタリング

メンター制度に関する基本的な用語は、以下の通りです。

  • メンター:助言をする人
  • メンティ:助言をもらう人
  • メンタリング:メンターがメンティに助言を行うこと

そもそもメンター(mentor)とは、英語で「指導者・助言者」という意味があります。企業では、新入社員よりも数年先に入社した先輩がメンターになることが一般的です。メンティとして新入社員、メンターとして先輩社員が配置されます。会社によっては、部署長などの役職においてもメンター制度を取り入れることがあるようです。

OJT・エルダー制度との違い

メンター制度と似た言葉に、OJT・エルダー制度があります。厳密には以下のような違いがあります。

  • OJT:新入社員への業務トレーニングのこと
  • エルダー制度:OJTの一種、同業務の先輩社員が新入社員を指導する

OJT・エルダー制度は、主に仕事での業務トレーニングを目的としています。一方でメンター制度は、キャリア形成においての不安や悩みを幅広く解消するためのものです。

また、エルダー制度・OJTでは業務を共にする先輩がサポートを行うのに対し、メンター制度では、他部署の先輩がメンターとなることが一般的です。メンターとメンティを同一部署にしない理由は、 業務での上下関係に固執せず、メンタリングを行うためとされています。

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コーチングとの違い

メンタリングとコーチングは、1対1の対話という点は同じです。しかし、目的が以下のように異なります。

  • コーチング:相手に質問を投げかけ、本人に答えを導き出してもらう
  • メンタリング:課題解決のためにアドバイスや経験のシェアを行う

コーチングは、本人に答えを導き出してもらうことをゴールとした人材育成方法です。メンタリングのように、先輩から経験談をもとにしたアドバイスを行うことは少ないとされています。

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メンター制度を企業が導入する目的

メンター制度は、どのような目的を達成するために活用できるのでしょうか。企業がメンター制度を導入する目的は、主に以下の3つです。

  • 社員の育成
  • 人材の定着率向上、離職防止
  • 女性の活躍推進

孤立化を防ぎ、社員が生き生きと働ける会社作りのためにメンター制度は役立ちます。社内のコミュニケーションが増えることで、風通しの良い会社の実現も目指せるでしょう。

社員の育成

メンター制度の目的として、新入社員・先輩社員ともに責任感のある人材を育成することが挙げられます。新入社員は、メンタリングを通して自分では気づけない課題を発見することができ、先輩社員はメンティのサポートを行うことで手本としての意識が高まります。

また、部署を超えた社員同士のコミュニケーションは、他者の視点を取り入れ新しいアイデアを得ることにもつながるかもしれません。スキルや知識を共有しあうことで、個々の概念に縛られず社員同士が助け合う風土を創り上げることができるでしょう。

人材の定着率向上、離職防止

新入社員の精神的な不安へのサポートを行い、早期離職率を下げることもメンター制度の目的です。厚生労働省の調査では、令和2年3月卒業者の就職後3年以内の離職率*2は、以下のように表記されています。

  • 新規高卒就職者:37.0%
  • 新規大卒就職者:32.3%

このように、新入社員の3〜4割が3年以内に離職していることから、人材の定着率向上を目指す企業の動きが見られます。メンター制度を通じて新入社員に会社に馴染んでもらうことは、早期離職を減らすために重要なポイントです。

女性の活躍推進

人材育成は、男女平等に行うことが基本です。人材育成方法の一つであるメンター制度では、個人の悩みに合わせたサポートができるため、女性一人ひとりのキャリアやライフプランに関する悩みを解決する場にもなります。

男性社員と女性社員では、キャリア形成で異なる悩みを抱えることもあるかもしれません。新入女性社員とロールモデルとなる先輩女性社員をマッチさせることで、女性ならではの悩みも相談しやすくなります。

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メンター制度のメリット

メンター制度の主なメリットは、社内でのコミュニケーションが増え、社員同士が意識を高め合えることです。これまでメンティだった新入社員が新しいメンターとなり、次に入社した後輩社員をサポートする連鎖のことを「メンタリングチェーン」と呼びます。これは、メンティ・メンターともにメリットがあります。

メンター側のメリット

まずは、メンター側のメリットを解説します。

責任感が芽生える

メンターとなる先輩には、後輩の手本という責任感が芽生えます。たとえば入社2〜3年目の若手社員がメンターを担当することで、部下の育成方法を学ぶ機会となります。新入社員にアドバイスをする中で、自身の行動や考え方を見直すこともできるでしょう。後輩とのコミュニケーションを重ねることで、アドバイスをするための言語化能力も身につきます。

メンター経験を活かせる

メンター経験は、管理職で活かせるスキルとなります。管理職は、部下育成のための高いコミュニケーション力が求められますが、これはメンターとして求められるスキルに近いです。

部下の状態を把握し、相談しやすい雰囲気作りを行うのが管理職の役目の1つです。メンターとして相手の気持ちを汲み取りながら声をかけられる社員は、管理職としても活躍が期待できるでしょう。

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メンティ側のメリット

続いて、メンティ側のメリットです。

自社理解が深まる

メンター制度は、メンティにとって会社を深く知る機会となります。新入社員は入社後、自分の部署以外とのコミュニケーションは多くないかもしれません。会社の全体像を把握するために、他部署のメンターからの情報が頼りになります。「この会社で長期的に働きたい」と思ってもらうためにも、組織体制や各部署でのキャリアを理解してもらうことが大切です。

不安が解消できる

メンティは、メンターに相談することで不安や悩みを1人で抱え込まずに済みます。とくに新入社員は、先輩社員との接し方など対人関係に悩むことも多いでしょう。たとえば同部署で働く先輩からの指摘で落ち込んでしまうケースもあるかもしれません。新入社員ならではの悩み解決に、一歩先を行くメンターの助言は役立つでしょう。

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企業側のメリット

メンター制度は、企業にとって以下のメリットがあります。

離職率の低下

メンター制度を通して新入社員の満足度が向上すれば、従業員の離職率の低下、すなわち人材定着の効果が期待できます。メンタリングでは、上司や管理職では解決が難しい個々の悩みに対して、助言を与えることができます。一人ひとりに対する精神的なサポートにより、離職を考え始めたメンティの察知・ケアが可能となるでしょう。

コミュニケーションの活性化

現代では、チャットやオンラインMTGなど社内でのコミュニケーション方法も多様化しています。メンター制度を導入することは、社員同士の直接的な会話を増やし、互いの理解を深めるために役立ちます。コミュニケーションの活性化は社内の風通しを良くできるうえ、経営陣が気づけないような現場の課題を発見することにもつながります。

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メンター制度のデメリット

メンター制度には、少なからずデメリットや注意点も存在します。メンター制度を導入する前にこれらを把握し、対策を練っておきましょう。

メンター側のデメリット

メンター側のデメリットは、以下の通りです。

業務以外の負荷が増える

メンターは、メンタリングと通常の業務を並行して行うため業務負担が大きくなります。メンター制度で時間が削られてしまう場合は、業務量を減らす工夫も必要かもしれません。メンターがタスク過多にならないよう、業務量や繁忙期を考慮しながらメンター制度の仕組みを作りましょう。

自己評価に直結しない

メンターとしての業務が会社から評価されない場合、メンターのモチベーションの低下につながる恐れがあります。メンティのサポートは体力的・精神的にも負担が大きいものということを、運営側は忘れてはいけません。メンター制度を評価するシステムを導入することで、メンターとしてのやりがいを感じやすくなるでしょう。

メンティ側のデメリット

続いて、メンティ側のデメリットです。

ストレスを感じる場合がある

性格は人それぞれなので、悩みや不満を他人に打ち明けることに抵抗を感じるメンティもいるでしょう。メンター制度を強制すると、人と話すことに苦手意識をもつ人のストレスを増加させてしまうこともあります。全員にメンター制度を強制するのではなく、個々の性格に合わせて柔軟に対応できるとよいでしょう。

メンターの指導力に左右される

メンターの経験値や指導力によって、各メンティが受けるサポートの質にばらつきが出る可能性があります。全てのメンティが同等のサポートを受けるためには、メンターに対する研修も重要です。メンティに不平等さを感じさせないよう、一定のスキルをメンターに習得してもらうよう努めましょう。

企業側のデメリット

企業にとって、メンター制度では以下のようなデメリットやリスクを想定する必要があります。

メンター・メンティの相性次第では離職リスクがある

相性の良い・悪いは、人それぞれです。もしマッチングの相性が悪かった場合、双方にストレスがかかり離職につながることもあるかもしれません。適性検査で慎重にマッチングを行う、マッチング後の不満を相談できる機会を作るなど対策をしましょう。

業務に支障をきたす場合がある

メンター制度による負担が大きければ、メンター・メンティともに体力的または精神的に疲弊してしまい、業務に集中できなくなるケースも考えられます。メンティの不安を取り除くためのメンター制度にも関わらず、社員に抱えきれない業務を与えてしまっては逆効果です。メンター制度は、社員の業務負担を考慮しながら導入しましょう。

メンター制度の導入・運用方法6ステップ

メンター制度の導入・運用方法は、以下の6ステップです。

  1. 目的の明確化
  2. 実施計画・運用体制の構築
  3. メンターとメンティの選定・マッチング
  4. 事前研修の開催
  5. メンタリングの実施
  6. 評価・改善

必要なリソースや期間について確認しながら、メンター制度の導入が可能かどうか検討しましょう。それぞれのステップを具体的に解説します。

1.目的の明確化

まず、メンター制度を導入する目的を明確にします。たとえば「新入社員の離職率低下」、「女性の就業年数増加」などが例です。これらはデータで数値化できるので、効果測定がしやすいです。しかし、メンター制度の効果はすぐに数値に反映されるものではありません。短期的な指標として、社員への満足度調査や面談を通じてのヒアリングも行いましょう。

2.実施計画・運用体制の構築

次に、メンター制度の運用をスムーズに進めるための体制を構築します。主に以下のような内容を決めていきます。

  • 守秘義務
  • 面談の時間、期間、場所
  • トラブル発生時の対処法
  • 相談窓口の設定

メンター制度実施後に想定よりも時間や人員リソースが必要と発覚した場合、対処が難しくなります。導入前にリソースを確認し、実現可能な計画を立てましょう。

3.メンターとメンティの選定・マッチング

社員それぞれの性格をふまえて、メンターとメンティのマッチングを行います。選定は、主に人事部や部署の管理職が担当することが多いです。メンターとメンティの相性を見極めるためには、事前に個々の情報をヒアリングすることが重要です。マッチングの方法としては「アサインメント方式」「ドラフト方式」などがあります。メンターとしての傾聴力・質問力・受容力がある社員を見極めることも重要です。

4.事前研修の開催

メンター制度を実施する前に、理解を深めるための事前研修を行います。ガイドラインで「相談内容を口外しない」「メンターの意見を否定しない」などのルールを記載することで、対象者が安心してメンタリングに取り組むことができます。

5.メンタリングの実施

メンタリングを実施したら、問題点や成功事例について意見交換を行います。異なるポジション・部署の社員がコミュニケーションを取り合うことで、メンター制度はより良いものになっていきます。定期的にメンタリング実施状況の報告、メンティもしくはメンター同士での意見交換をしましょう。

6.評価・改善

メンター制度を一定期間実施したら、目的・目標に対する結果を評価します。評価方法として、以下の例があります。

  • 直近の新入社員の定着率データ
  • 実際にメンタリングを行った社員の声

長期的にメンター制度を続けていくために、社員の意見に真摯に対応しましょう。必要であればルールの見直しなども行い、改善に向けて取り組みます。

メンター制度を運用する際のポイントや注意点

適切な人材マッチングや運用の管理ができなければ、メンター制度は形骸化しただけの「いらない」ものになってしまいます。意味のないメンター制度にしないためにも、ここではメンター制度の運用ポイントや注意点を解説します。

メンター・メンティ双方へのフォロー

メンター制度を導入する場合、メンター・メンティ双方へのフォローを行うリソースを確保しましょう。メンターは、メンティのサポート方法に悩むことがあるかもしれません。一方でメンティは、メンターとのミスマッチがストレスの原因になることも考えられます。

これらの解決策として、メンタリングで悩みを抱えたときに相談できる人が必要です。交流会や相談窓口の設置などを行い、双方を支援する体制を整えましょう。

ミスマッチを防ぐ

メンティの理想のロールモデルに少しでも近いメンターを見つけられるよう、マッチングの方法を工夫してみましょう。メンターとメンティのミスマッチを防ぐために、1人のメンティに対して複数のメンターをつけて相性をテストする方法があります。

適性検査や性格診断も参考にできますが、適切なマッチングかどうかは定かではありません。そもそもメンティ・メンターの双方が100%満足するマッチングを見つけることは難しいという理解も必要です。

人材育成の施策としてメンター制度を活用してみよう

メンター制度が機能すれば、社員の安心感を高め離職率を減らすことが期待できます。社内コミュニケーションが増えたり、部門・部署を超えて社員の団結力も生まれたりするでしょう。メンター経験者には、人材育成スキルの習得ができるメリットもあります。

女性向けキャリアスクールSHElikes(シーライクス)では、メンタリングに活かせる「人材管理・マネジメント系スキルなど、全40以上の職種スキルを幅広く学べます。

コミュニティを通して、自分にとってのメンターといえるような仲間も見つかるかもしれません。興味があるスキルを学びながら、理想のキャリアを実現させましょう。

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※引用
*1:厚生労働省「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」より

※出典
*2:厚生労働省「Press Release 新規学卒就職者の離職状況」より

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。