DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味や定義を簡単に解説!

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?意味や定義を簡単に解説!
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ライター shin
航空系の会社に勤務した後、フリーランスとしての活動を開始。現在は主にWebメディアに携わりつつ海外を転々としている。

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。しかし、以下のように思うこともあるのではないでしょうか。

「DXの意味や定義が分からない」
「DXのメリットは何?」

そこで、本記事ではDXの意味や定義を簡単にわかりやすく解説。また、DXのメリットとデメリットやDXを推進する方法も紹介します。

DXについて詳しく知りたい方やDXの推進を検討している方は、最後までチェックしてみてください。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

DX(デジタルトランスフォーメーション) とは何かを理解するため、以下の2つを簡単に説明します。

  • DXの意味・定義
  • IT化とDXの違い

それぞれを詳しく見ていきましょう。

DXの意味・定義

DX(デジタルトランスフォーメーション) は、経済産業省に以下のように定義されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること*1

つまりDXとは、データやデジタルテクノロジーを活用して企業の競争力や生産性をアップさせることで、自社の優位性を高めることを意味します。

IT化とDXの違い

IT化とDXは混同されがちですが、それぞれの目的は違います。IT化の主な目的は、デジタルテクノロジーの活用による業務の効率化です。例としては、連絡手段が電話や手紙からメールやチャットツールになったり、文書を紙ではなくPDFファイルで保管したりなどが挙げられます。既存の業務プロセスは変えずに生産性の向上を図るのがIT化だといえます。

一方で、DXの目的はデジタル技術を活用して製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、新たな価値を生み出すことです。IT化は主に社内に目を向けているのに対し、DXは社内だけではなく取引先や消費者のような社外関係者も含めているといえます。

なお、DXに取り組むためにはデジタル技術の活用が欠かせません。そのため、IT化はDXを推進するための手段の1つだといえるでしょう。

経済産業省「DXレポート」から探るDX推進の背景

ここでは、経済産業省の「DXレポート」からDX推進の背景を見ていきましょう。今回は、以下4つのレポートを取り上げます。

  • DXレポート(2018年)
  • DXレポート2(2020年)
  • DXレポート2.1(2021年)
  • DXレポート2.2(2022年)

各内容をチェックしてみましょう。

DXレポート(2018年)

DXレポート(2018年)では、DX推進の背景として「2025年の崖」を挙げています*2。もしDXを実現できないと「データを活用できないことが理由で市場の変化に対応できない」「IT人材の不足によりシステムトラブルやデータ滅失などのリスクが高まる」といった課題に直面し、2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるようです。

この課題への対処法としては、以下が提案されています。

  • 「DX推進システムガイドライン」を策定することで、ITシステムの構築に必要なポイントとステップを明確にする。
  • 「見える化」指標を策定して、企業のITシステムの全体像を把握できるようにする。
  • 業界や課題ごとに共通のプラットフォームを構築することで、早期かつ低予算でのシステム刷新を目指す。

上記に加えて、同レポートではDXの実行に必要な知識とスキルを備えた人材の育成と確保は各企業にとって最重要事項であるとされています。

DXレポート2(2020年)

DXレポート2(2020年)では、新型コロナウィルス感染症の拡大によりITインフラの整備や環境変化への対応が余儀なくされたことをDX推進の背景としています*3。ITシステムの導入はもちろん、固定観念にとらわれずに押印や客先常駐、対面販売などの企業文化や商習慣を変革できたかどうかが事業継続の可否を決めた要因の1つのようです。

同レポートでは、企業が取り組むべきアクションとして業務環境のオンライン化(テレワークやオンライン会議など)や業務プロセスのデジタル化(ペーパーレス化や営業活動のデジタル化など)を挙げています。また、コロナ禍のような環境の変化は今後も起こり得ると考え、企業文化を変革して柔軟性や対応力を身につけることが大切だとしています。

DXレポート2.1(2021年)

DXレポート2.1(2021年)では、DX推進の背景におけるユーザー企業とベンダー企業のジレンマを指摘しています*4

  • ユーザー企業:DX未着手もしくは取り組み中の企業を指す
  • ベンダー企業:DX推進をサポートする企業を指す

ユーザー企業はDXにかかるコストを削減でき、ベンダー企業は安定的なビジネスができるため、Win-Winの関係に見えます。しかし、現状の関係では以下のような課題があり、デジタル産業への変革が阻まれているそうです。

  • ユーザー企業側:ベンダー企業任せにすることでIT人材が育たない。変革に対する危機感がなくなる。
  • ベンダー企業側:ユーザー企業のDXをサポートしていると、最終的には自分たちが不要になってしまう。

同レポートは変革に向けた施策として、DX推進指標を策定して自社の成熟度を評価したり、変革までの具体的な道筋を示して企業が着実にDXを推進できるようにしたりなどを挙げています。

DXレポート2.2(2022年)

DXレポート2.2(2022年)では、DXレポート2.1と同様にDX推進の背景としてユーザー企業とベンダー企業のジレンマによる構造的な課題を挙げています*5。現状では個社単独でのDXが困難なため、産業全体での変革が必要だとしています。

デジタル産業への変革に向けた具体的な方向性や取り組みとして、以下の3つを提示しています。

  • デジタルを省力化や効率化ではなく収益向上のために活用すべきである
  • DX推進にあたって、経営者はビジョンや戦略だけではなく「行動指針」も示す
  • 経営者自身の価値観を外部へ発信して同じ価値観を持つ同志を集めることで、互いに変革を推進する新たな関係を構築する

なお、DX推進に取り組む企業は着実に増えているようです。しかし、企業のデジタル投資は主に既存ビジネスの効率化に向けられており、DX推進のために投入される経営資源が企業の成長や変革につながっているとはいえないのが現状だとされています。

DX推進における企業の課題

続いて、DX推進における企業の課題を説明します。結論からいうと、以下の4つが課題として挙げられます。

  • 人材不足
  • リテラシー不足
  • アナログな文化と価値観
  • 資金不足

それぞれを詳しく見ていきましょう。

人材不足

1つ目の課題は、人材不足です。「DX白書2023」*6によると、「DXを推進する人材が充足している」と感じている人の割合は10.9%とされています。アメリカでは73.4%が「充足している」と回答しているため、日本におけるDX人材不足は深刻だといえるでしょう。

また、DXを推進する人材像を設定して社内に周知しているかを尋ねた結果、「設定し、社内に周知している」の割合は18.4%です。DXを推進する人材像が明確になっていないことも課題だといえます。

リテラシー不足

リテラシー不足も、DX推進における企業の課題の1つです。総務省によると、デジタル化を進めるうえでの課題や障壁として「人材不足」の次に挙げられるのが「デジタル技術の知識・リテラシー不足」だとされています*7

また、日本の企業では「DX案件を通じたOJTプログラム」「DX推進リーダー研修」「デジタル技術研修」などについて「実施・支援なし」の割合が4割から7割と高いのが現状です。DXを推進する人材の育成が進んでいないため、リテラシー不足が深刻化しているといえます*6

アナログな文化と価値観

アナログな文化と価値観も課題だといえます。総務省によると、デジタル化を進める際の課題として「アナログな文化・価値観が定着している」の割合は約33%のようです*7。アメリカは約19%、ドイツは約17%のため、日本の企業はアナログな文化や価値観が根強く残っているといえます。

ペーパーレス化への抵抗や対面での会議の重要視、原則出社の徹底など、これまでの企業文化や業務環境を変革できないことが、DXの推進を妨げていると考えられるでしょう。

資金不足

資金不足も、企業の課題として挙げられます。日本におけるDX推進のための予算確保状況は「必要な都度、申請し、承認されたものが確保される」が約45%、「確保されていない」が28%で、どちらもアメリカと比べて高いようです*6

一方で、日本は「年度の予算の中にDX枠として継続的に確保されている」が約24%なのに対し、アメリカは約40%とされています。DXを推進するためには、継続的に予算を確保していくことが必要といえるでしょう。

企業がDXに取り組むメリット

企業がDXに取り組むメリットは、以下の3つが挙げられます。

  • 生産性の向上が期待できる
  • 多様な課題を解決できるようになる
  • リスク回避につながる

各メリットを詳しく説明します。

生産性の向上が期待できる

企業がDXに取り組むメリットの1つは、生産性の向上が期待できることです。デジタルテクノロジーの活用を通じて作業の効率化や自動化ができれば、少ないリソースで大きな成果を得られるでしょう。

また、DXにより従業員の負担が軽減されれば、これまで取り組む余裕がなかった業務や新たなビジネスの創出などに時間を使えるようになるといえます。そうすると、サービスやビジネスモデルを変革できる可能性は高まります。

多様な課題を解決できるようになる

多様な課題を解決できるようになるのも、企業がDXを推進するメリットの1つです。データやデジタルテクノロジーを活用すれば社会課題やトレンドなどを分析して適切な戦略や施策の立案と実行がしやすくなるため、さまざまなニーズに対応できるでしょう。

多様な課題を解決できれば企業の優位性が高まり、競争力がアップするといえます。

リスク回避につながる

企業がDXに取り組むことは、リスク回避につながります。DXの推進によってペーパーレス化を進めたりテレワークやオンライン会議を可能にしたりすることで、災害や感染症の蔓延などが今後発生した際に柔軟に対応しやすくなるでしょう。

また、DXの推進を通じて業務フローを透明化すれば誰でも業務内容を把握できるようになるため、業務の引き継ぎや担当者不在時の対応などをスムーズに行えるといえます。

企業がDXに取り組むデメリット

企業がDXに取り組む際のデメリットは、以下の2つが挙げられます。

  • コストがかかる
  • 成果が出るまでに時間がかかる

それぞれを詳しく見ていきましょう。

コストがかかる

まず、DXの推進はコストがかかります。DXに取り組むためにはデバイスを購入して新しいシステムやツールを導入する必要があるため、初期費用や毎月の固定費をしっかり確認するようにしてください。

なお、DXは会社全体で取り組む必要がある点は押さえておきましょう。特定の担当者や部署だけがDXに取り組んでも効果は得られないといえるため、会社全体でDXを推進することを前提に予算を組む必要があります

成果が出るまでに時間がかかる

成果が出るまでに時間がかかることも、企業がDXに取り組むデメリットです。システムやツールなどを導入して業務の効率化や自動化を達成するだけでも、ある程度の時間を要するでしょう。そのため、データやデジタルテクノロジーを活用してサービスやビジネスモデルなどを変革するには、数年はかかるといえます。

DXを推進する際は、長期的な視点で取り組むことが大切です。

企業がDXを推進するためのステップ

企業がDXを推進するためのステップは、以下の通りです。

  1. 現状・課題の把握
  2. 組織体制の見直し・構築
  3. 業務効率化の推進
  4. データ活用

各ステップを詳しく見てみましょう。

1.現状・課題の把握

DXの推進にあたり、まずは自社の現状や課題を把握します。社内で使っているシステムや情報資産、人材などを洗い出し、自社の強みや弱みを明確にしましょう。現状と課題を可視化できれば、DXの方向性が定まるといえます。

なお、DXに取り組んでいる途中で状況が変わる場合もあるため、現状と課題の把握は随時行うことが大切です。

2.組織体制の見直し・構築

続いて、組織体制の見直しと構築をします。現状の組織体制でDXの推進が可能なのか、専門チームの立ち上げやDX人材の確保などが必要なのかをチェックしましょう。DX人材を確保する方法としては、「外部の人材を採用する」「社内でDX人材を育成する」の2通りがあります。

ちなみに、DX人材の具体例としてはデータサイエンティストやプログラマー、プロジェクトマネージャーなどが挙げられます。DX推進に必要なスキルを持った人材を集め、組織体制を構築しましょう。

3.業務効率化の推進

組織体制を構築したら、デジタルテクノロジーを活用して業務の効率化を推進します。システムやツールなどの導入により効率よく業務を行えるようになれば、生産性が高まるでしょう。

なお、業務効率化の推進は会社全体で取り組むことが大切です。特定の部署だけがデジタル化をすると他部署との連携がスムーズに取れず、かえって効率が悪くなる可能性があります。

デジタルテクノロジーを活用した業務の効率化は、全社的かつ長期的な視点で取り組むようにしてください。

4.データ活用

業務をデジタル化したら、データを活用します。デジタルテクノロジーを取り入れることで得られる売上の推移や顧客の行動パターンなどのデータを適切に分析・活用すれば、既存のビジネスの改善や新しい事業の創出などができるでしょう。

さまざまな選択肢がありトレンドの変化も激しい昨今では、データに基づいた経営判断や意思決定が大切です。データの活用により組織やビジネスモデルを変革できれば、企業の競争力を高められるでしょう。

DX推進企業のわかりやすい実例

最後に、DX推進企業のわかりやすい例を紹介します。今回は、以下3社の実例を見てみましょう。

  • アサヒグループホールディングス株式会社
  • 株式会社トヨタシステムズ
  • 株式会社りそなホールディングス

各企業の取り組みを詳しく説明します。

アサヒグループホールディングス株式会社

アサヒグループホールディングス株式会社は、DXをBX(ビジネストランスフォーメーション)と捉えてビジネスに変革を起こしています。たとえば、一人ひとりのウェルビーイングに対応できるパーソナライゼーションモデルの確立や、ビジネスモデルの変化に柔軟に対応するための基盤の構築などに取り組んでいるそうです。

また、デジタルネイティブ組織へと変革するため、外部から専門家を採用したり、社内でDX人材を育成したりしています。デジタル技術とデータを中心としたビジネスを展開し、新しい価値を生み出す組織を目指しています。

株式会社トヨタシステムズ

株式会社トヨタシステムズは、デジタル化を通じてトヨタグループを世界トップ企業に匹敵するデジタル企業にすることを目標としています。新しいビジネスやサービスを創出できるようグループでデータを共有したり、デジタル技術を活用して働き方改革を進めたりしているそうです。

デジタル人材の育成体制も整備しており、一人ひとりがITのプロ人材となれるよう社内研修やセミナーなどを実施しています。また、「寄り添い支援」という取り組みを通じてアプリ開発やデータ分析などの現場をサポートしているのも特徴です。

株式会社りそなホールディングス

株式会社りそなホールディングスは、デジタル技術を活用して「会えないお客さま」と取引する機会の拡大を目指しています。デジタルチャネルの整備によりこれまで有効な接点を持てなかった顧客とつながることで、新しい価値の創造に取り組んでいるようです。

また、データサイエンスにも注力しており、データをもとにした新たなビジネスチャンスの創出に挑戦しています。将来の構想として、リアルとネットの両面における顧客基盤の拡充や新規ビジネスの立ち上げなどを目標に掲げています。

デジタルトランスフォーメーションとは何かを理解して、DXの推進を目指そう

デジタルトランスフォーメーションとは、データやデジタルテクノロジーを活用して企業の競争力や生産性をアップさせることです。DXに取り組むことで業務の効率化や新たな価値の創出を目指せるうえ、環境の変化にも柔軟に対応できるようになるでしょう。

DXの推進には費用と時間がかかりますが、DXに取り組まないと時代に取り残されてしまう可能性があります。本記事で紹介したDX推進のステップや企業の実例などをチェックして、DX推進に向けた取り組みを始めましょう。

なお、DXの推進にあたって必要なデータやデジタルテクノロジーなどに関する知識を身につけたい場合は、女性向けキャリアスクールSHElikes(シーライクス)をチェックしてみてください。データの収集や分析について学べる「データ分析コース」やプロジェクトをスムーズに進めるためのスキルの習得を目指せる「プロジェクトマネジメントコース」などがあります。

ほかにもWebデザインやライティング、マーケティングなどさまざまなコースがあるので、スキルを掛け合わせて身につけることで環境の変化に対応できる人材を目指せるでしょう。

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※引用
*1:経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」P1より

※出典
*2:経済産業省「DXレポート(2018年)~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」より
*3:経済産業省「DXレポート2 中間取りまとめ(概要)」より
*4:経済産業省「DXレポート2.1(DXレポート2追補版)(概要)」より
*5:経済産業省「DXレポート2.2(概要)」より
*6:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX白書2023」より
*7:総務省「令和4年版 情報通信白書」第2部 情報通信分野の現状と課題より

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。