ディレクションとは、プロジェクトや制作現場での全体指揮・進行管理をすることを言います。Webや広告、映像制作など、チームで制作を行う業種を中心にディレクションを行う職業は増えています。
そこで今回はディレクションについて、意味や使い方、ディレクションをするために必要なスキルを解説します。後半では、ディレクションを生かせる業界やディレクション能力の活用事例もご紹介します。
ディレクションとは?
そもそもディレクションとは何なのでしょうか。まずはディレクションの意味、混同されやすい言葉との違いについて解説します。
ディレクションの意味
ディレクションとは、チーム全体の指揮・進行管理を行うことです。英語の「方向」「指揮」「監督」「管理」を意味する「direction」に由来する言葉で、「ディレクションする」「ディレクションをうける」といった使い方をします。
ビジネスの場でも広く使われ、ディレクションの業務を行う人のことをディレクターと言います。具体的な業務内容は、プロジェクトや制作物の企画立案、進行管理、メンバーへの指示出し、品質管理、社内外でのやりとり・交渉、トラブル対応などです。業種やプロジェクトによって、ディレクターがどこまでの業務を担当するかは異なります。
ディレクションとマネジメントの違い
ディレクションと似ている言葉として混同されがちな「マネジメント」との違いについて解説します。
ビジネスの場におけるマネジメントとは、企業が掲げる数字や目標に対して、事業や組織全体を管理する業務のことを言います。一方ディレクションは、プロジェクトや制作物の完成に向けて、業務の進行管理や調整を行うことです。
どちらも「管理する」という点では共通していますが、ディレクションはプロジェクトごとの管理、マネジメントは事業・組織全体の管理や経営視点でのスタッフの管理といった違いがあります。
ディレクション業務に求められる能力やスキル
ディレクションの業務をする際、どのような能力やスキルが求められるのでしょうか。大きく分けて、以下の6つの能力が求められます。
- スケジュール管理能力
- コミュニケーション力
- リーダーシップ
- 問題提起・解決力
- 判断・決断力
- 柔軟性
ひとつずつ順に解説します。
スケジュール管理能力
ディレクション業務には、スケジュール管理能力が欠かせません。ディレクターの業務は幅広くマルチタスクになることも多いため、自分自身のタスクを漏れなくこなせるように管理をしていかなければなりません。
加えて、プロジェクト全体の指揮・進行管理を担当する者として、自分のタスクだけではなく全体のスケジュールや工数を把握し、締め切りに間に合うよう管理する必要があります。締め切りから逆算して間に合うスケジュールを立てたり、各所で進行が遅れないようにフォローをしたりする力があるとディレクターとして活躍が見込めます。
コミュニケーション力
関係各所とのやりとりが発生するディレクション業務にはコミュニケーション力も必要です。コミュニケーションを取る相手は、プロジェクトメンバーやクライアントなどさまざま。
メンバーへの指示出しや業務を進めるうえでの情報共有の際には、漏れなく分かりやすいコミュニケーションができるとよいでしょう。また、場合によってはクライアントとの折衝やトラブル発生時の対応など、プロジェクトメンバー外への適切なやりとりが求められることもあります。
関わる人たちが気持ちよく業務に取り組み、円滑にプロジェクトを進められるように、ディレクション業務にはコミュニケーション力が必要不可欠なスキルと言えるでしょう。
リーダーシップ
ディレクション業務では、プロジェクト全体の舵をとり、完遂に向けて尽力しなければなりません。そのためには、チーム全体を統率するリーダーシップも必要なスキルです。
例えばWeb制作の現場であれば、デザイナー、ライター、プログラマーなどさまざまなメンバーが集まり、それぞれが各担当分野の業務を行っています。専門領域の異なるメンバーでひとつの制作物を作り上げるには、メンバーをまとめ上げる力を持つ人が必要になるのです。
とは言え、上に立ちメンバーを引っ張ることだけがリーダーシップとは限りません。メンバーが力を発揮できるように、チームの一員としてメンバーに働きかけることが、ディレクション業務において求められるリーダーシップなのではないでしょうか。
問題提起・解決力
ディレクション業務には、問題提起をしたり、それを解決したりする力も求められます。企画立案の際や、プロジェクトを進めるうえで発生した課題解決、トラブル対処などの際に力を発揮できるでしょう。
企画立案の際には、市場の分析をして問題を見つけたり、見つかった問題の解決策となる企画を立てたりします。根拠のある提案や課題解決、トラブルの対処をするためには、なんとなくではなく論理的な思考に基づいて話ができるとよいでしょう。ディレクターとして、論理的に解決策を講じることができると、周囲からの信頼にもつながります。
判断・決断力
プロジェクトを進行していると、さまざまな場面で判断を迫られたり、メンバーから指示を仰がれたりすることがあります。そんな時、判断力や決断力に長けている人がディレクションを担当していれば、メンバーも安心して各業務に取り組めるでしょう。
ディレクターは、プロジェクトの総監督のようなポジションでもあります。日々の業務の方向性はもちろん、重要な決定事項もディレクターの判断となることが多いため、ディレクターの判断や決断がプロジェクトの成功を左右すると言っても過言ではありません。
チームに大きな影響を与えるポジションという意味ではやりがいを感じられるかもしれません。その分、責任を持って判断・決断ができ、チームを動かしていく力が求められます。
柔軟性
柔軟性もディレクション業務には欠かせないスキルです。ディレクション業務では、プロジェクト全体を俯瞰し進行管理や対応を行う必要があるため、状況に応じて臨機応変な対応をしていかなければなりません。
想定外のトラブルが起こった場合でも冷静に進行できるように、あらかじめ余裕のあるスケジュールを組んだり、トラブルを予測しながら業務を進めたりして、何かあった場合でも柔軟に対応できるようにしておけるとよさそうです。
また、関係各所とさまざまなやりとりを日常的に行うため、コミュニケーションを取る相手に応じて適切な対応も求められます。
ディレクションが必要な仕事
では、ディレクションが必要な仕事にはどのようなものがあるのでしょうか。以下で紹介している業界では、ディレクターのポジションを設けている場合が多いです。
業務内容や呼称はそれぞれ異なるため、ひとつずつ解説していきます。
Web
Web業界でディレクション業務を担当する人のことを「Webディレクター」と呼びます。一般的に、Webサイトの制作におけるプロジェクト指揮・進行管理を行います。また、企画立案から制作に加えて、Webサイトのリリース後も運用や改善まで担当することがあります。
Webデザイナーやライター、プログラマーといった各専門領域のクリエイターや、マーケター、SEO担当など、多くのメンバーをまとめながらWebサイトの完成を目指します。限られた時間と予算のなかで効果の出るWebサイトを作れるかが、Webディレクターの腕の見せどころです。
Webディレクターについて詳しく知りたい人は、以下の記事も合わせてチェックしてみてください。
広告
広告業界にもディレクターのポジションがあります。一口に広告といっても、制作するものやプロジェクトの内容はさまざまです。担当する内容に応じて、「アートディレクター」「イベントディレクター」「空間ディレクター」などと分野別にディレクターがついていることが特徴です。
その中でも「クリエイティブディレクター」は広告制作物全体の責任者として、より広範囲のディレクションを担当するポジションです。広告業界のディレクション業務については、以下の記事でも詳しく解説しています。
出版
ひとつの本や雑誌ができあがるまでにも多くの人が制作に携わっており、ディレクション業務が必要です。出版業界においては、編集者をディレクターと呼ぶ場合があります。
出版業界のディレクション業務では、各所への指示出しや調整だけでなく、原稿の校正や編集をしたり、ライターや作家の相談に乗ったりすることもあります。また、出版した本や雑誌、記事を一人でも多くの人に届けるために、完成後のプロモーションにも尽力することがあります。
映像
映像制作の現場においては、映像ディレクターが企画の立案や撮影、編集などに携わり、制作チームと協力しながら進行管理を行っています。映像の種類は、テレビ番組や映画、CM、プロモーションビデオなど多岐にわたります。
映像ディレクターになるには、映像制作会社やテレビ局、広告代理店などに就職するのが一般的です。また、動画編集などのスキルとかけ合わせてフリーランスで活動する人も増えています。
ゲーム
ゲーム業界においてディレクションをする人のことは「ゲームディレクター」と呼ばれています。ゲーム全体のクオリティを保つために重要なポジションで、制作に携わるデザイナーやプログラマーをまとめます。
ゲームディレクターは、ゲーム開発の工程で指示出しや進行管理をするだけでなく、完成後の運用・改善まで担当することもあります。
アパレル
アパレル業界でも、ブランドの企画や商品・店舗のデザイン、生産管理、プロモーションなどの統括をするディレクションの業務があります。場合によっては、撮影のディレクションや、プロモーションのためのSNSディレクションなども行うため、業務範囲は多岐にわたるでしょう。
アパレル業界におけるディレクターは、「アパレルブランドディレクター」「クリエイティブディレクター」「ファッションディレクター」など、いくつか呼称があり、業務の範囲は場合によって異なります。
ディレクション能力の活用例
最後に、ディレクターとして活躍している方を紹介します。
ディレクション能力は、他のスキルと掛け合わせることでより活用の幅が広がります。インタビュー記事と合わせて読み、あなたなりの活用方法を考えてみてはいかがでしょうか。
きゃんまりさん|転勤族×0歳児の母。ディレクションに自信がなかった営業から、デザイナーに寄り添う敏腕ディレクターに!
広告代理店の営業職でありながら、受注後はプロジェクトの進行管理をするディレクターも担当しているきゃんまりさん。
以前は営業として自己流でディレクションを行っていたため、デザイナーとのコミュニケーションは手探りだったと言います。ディレクターの業務に生かそうと、SHElikesに入会しデザインやプロジェクトマネジメントのスキルを学んだそうです。
きゃんまりさんのようにデザインの知識や業務内容を具体的に知っていると、指示を出したりチームをまとめたりする際には相手の立場に立って業務を進めることができ、信頼関係にもつながるのではないでしょうか。
以前は自信がなかったきゃんまりさんですが、現在はデザイナーさんに「尊敬するディレクターさん」と紹介されるようになったそうです。
ディレクション能力と他のスキルをかけ合わせると、活躍の幅が広がる!
ディレクション能力があると、さまざまな業界でその力を生かすことができます。また、ディレクション能力と他のスキルや経験をかけ合わせることで、より活躍の幅も広がるでしょう。
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