近年、ビジネスを成功させるうえで重視されている「UXデザイン」。ユーザーのニーズを満たす商品やサービスを提供するためにも、UXデザインの考え方や知識は欠かせません。
今回は、UXデザインの成功事例10選とともに、UXデザインの考え方や必要なプロセス、もたらす効果について解説します。
UXデザインとは?
UXとは、「User Experience(ユーザーエクスペリエンス)」の略で、ユーザーが商品やサービスを利用する際に得られる体験のことです。つまりUXデザインとは、ユーザーニーズを的確に捉え「ユーザーが良い体験をできるように設計すること」を指します。
デザインというと見た目の要素をイメージしがちですが、UXデザインはユーザー視点でUXを設計し、サービスや商品を通してポジティブな体験・印象を与えるのが役割です。
以下の記事ではUXデザインについて詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
UXデザインの成功事例10選を紹介!
それでは、実際のUXデザインの成功事例として、サービスや商品を10選紹介します。どのようなUXデザインを取り入れ、どのような効果をもたらしているのかを事例と一緒に見ていきましょう。
LINE
「LINE」は、LINEヤフー株式会社が運営するコミュニケーションアプリです。チャット機能や無料通話機能だけでなく、最新ニュースや天気、鉄道の運行情報まで多数の機能が搭載されています。
従来のコミュニケーションツールとしては、メールで1件1件のやり取りを開いていくのが一般的でした。しかし、LINEでは送受信の内容が1つの画面で完結し、グループでのやり取りもまるで会話しているような感覚を味わえます。
老若男女問わず、気軽にコミュニケーションを取れるUXデザインにより、2023年6月末時点では月間ユーザー数9,500万人*1を記録しています。
クックパッド
「クックパッド」は、クックパッド株式会社が運営する料理サイトです。料理レシピの投稿・検索機能に加え、作った料理をおすすめできる「つくれぽ」など、多くの機能を提供しています。
クックパッドでは料理の手順紹介に動画や画像を取り入れており、初めて作る料理でもイメージしやすいのが特徴です。また、料理を写真で記録したり、気になるレシピをフォルダ分けして整理したりと、毎日の献立作成をサポートしています。
毎日の料理を楽しみにするUXデザインで、2023年3月時点では国内月間利用者数が約5,100万人*2にもなり、公式アプリも多くのユーザーに愛されています。
Netflix
「Netflix」は、カリフォルニア州に本社を置くNetflix, Inc.が運営する動画配信サービスです。定額、低価格で数多くのドラマや映画、アニメ、ドキュメンタリーなどの幅広いコンテンツを視聴できます。
コンテンツの幅広さや操作性の良さはもちろん、オリジナルコンテンツの質の高さはNetflixならではの特徴です。動画コンテンツの制作や取得、特にオリジナルコンテンツの制作に力を入れており、他のサービスでは味わえない高揚感や刺激というユーザー体験を与えています。
NINTENDO SWITCH
「NINTENDO SWITCH」は、任天堂株式会社が開発・提供しているゲーム機です。「いつでも、どこでも、誰とでも。」をコンセプトに、自由なプレイスタイルでゲームを楽しむことができます。
成功要因の1つとなったUXデザインは、何と言っても自由度の高い仕組みにあります。据え置き型として複数人で利用でき、テレビにつなげれば大画面で楽しめる家庭用ゲーム機でありながらも、持ち運びも可能で外出先でも手軽に利用できます。オンライン機能も搭載しており、遠くの人との交流を深められるツールとしても高評価を受けている人気商品です。
Oisix
「Oisix」は、オイシックス・ラ・大地株式会社が運営する食品宅配サービスです。肉や魚、野菜をはじめとした食材を定期的に自宅へ配送してくれます。
Oisix定期注文アプリのリリース当時、Webサイトとアプリでは平均売上単価-350円の差が生じましたがが、UXデザイン見直しの施策後には+80円の単価差まで成果をあげました*3。
写真とキャッチコピーで商品の魅力をわかりやすく訴求したり、お客様の属性に合わせたお得情報を知らせたり、よく買う商品を注文後に表示させたりなど、ユーザーの使いやすさを追及したからこその成功事例です。
メルカリ
「メルカリ」は、株式会社メルカリが運営する日本最大のフリマサービスです。個人がオンライン上で商品の売買を行い、売上金は日本全国のお店で使える「メルペイ」とも連携しています。
対面でのフリーマーケットとは異なり、全国どこにいても24時間簡単にモノの売り買いが楽しめるメルカリ。スマホで写真を撮って最短3分で出品できるという手軽さから、アプリの利用者数増加以外にも、経済やあらゆる価値の循環といった効果を発揮しています。
また、AIの活用や公的機関との連携を通して、個人でも安全かつ安心に取引を行えるという良質なユーザー体験を提供しているのも特徴です。
アイカサ
「アイカサ」は、株式会社Nature Innovation Groupが運営する傘のシェアリングサービスです。日本各地に設置しているスポットで手軽に傘の貸し借りができるため、天気を気にせずに手ぶらでお出かけができるようになりました。
ビニール傘を購入するよりも安く利用できるアイカサは「雨の日の嬉しいユーザー体験」を提供することに成功し、公式サイトの情報によるとアプリ登録者数は30万人を超え、スポット数はおよそ950か所にわたるとのことです*4。導入企業も幅広く、ビニール傘の廃棄物軽減にも効果を発揮しています。
Coke ON
「Coke ON」は日本コカ・コーラ株式会社の公式アプリです。Coke ON対応のスマホ自販機と接続してドリンクを購入すればスタンプが貯まり、15個貯めるとドリンクチケットとも交換できるようになります。また、歩いて目標歩数を達成するだけで、スタンプを貯めることも可能です。
アプリ1つで日常の利便性が向上するだけでなく、「ドリンクを無料でもらえるのが嬉しい」というポジティブな体験を与え、2023年11月現在では5,000万ダウンロードを突破*5しています。コカ・コーラに対するイメージの向上やブランディング、売上増加にもつなげられている、成功事例の1つです。
ZOZO
「株式会社ZOZO」は、ファッションを通じて人々に笑顔を届けるサービスを次々と提供し続けています。
たとえば、24時間どこにいても買い物ができるファッションEC「ZOZOTOWN」、トレンドや着こなしが閲覧できるコーディネートアプリ「WEAR」、3D技術を活用して一人ひとりの高精度な体型計測を可能にした「ZOZOSUIT」などがあります。
数多くの新体験ファッションサービスを提供することで、場所や時間、体型、老若男女問わず、ファッションを起点とした悩み解決というユーザー体験を実現しています。
スターバックス
「スターバックス」は、米国シアトルに本社を置く世界大手コーヒーチェーンの1つです。上質なコーヒーだけでなく、季節ごとの限定オリジナルドリンクが特徴です。
しかし、スターバックスのUXデザインは、商品の提供に留まりません。お客様に「最高の体験(コト)を提供」をミッション・バリューとして、身近にある少しリッチな空間を提供しています。モバイルオーダーも可能になり、店員との会話が苦手な人、待つのが嫌いな人でも気軽に訪れられる場所になりました。
また、書店とのコラボもしており、「読書×カフェ」という空間によりオシャレかつリラックスできる体験の提供も実現させています。
UXデザインの考え方
最適なUXデザインを実現するためには、サービスを作るうえで「UXデザイン」の概念を一致させることが大切です。James Garrett氏が提唱したUXの考え方として、UXデザインには以下の5段階モデルが存在します。
- 戦略
- 要件
- 構造
- 骨格
- 表層
それぞれ見ていきましょう。
戦略
戦略段階では、ユーザーのニーズとプロダクトの目的を定めます。たとえば、「誰に向けたサービスか」「どのような課題・悩みを抱えているのか」「経営・プロダクトのゴールは何か」など、具体的に定義を決めていきます。
この段階で具体的な最終目標や目的、方向性を明確にしておくことで、プロダクト制作中に各所で認識の齟齬が生まれにくくなります。制作過程において全ての原点、土台となる、大切な工程です。
要件
要件段階では、ユーザーのニーズを満たすために必要な要件を定義していきます。戦略を実現するために、どのような機能やコンテンツが必要か、予算や納期の中で最適な設計は何かを決めていく段階です。
ユーザーの課題解決に向けて、戦略段階よりも詳細なユーザーインタビューやアンケート調査を行い、データ解析を踏まえた仕様書の作成が求められます。この仕様書を基に今後の作業が進められるため、5段階の中でも重要度が高いプロセスです。
構造
構造段階では、要件を基に、ユーザーの行動を想定しながら全体構造設計を行います。サイトマップやページリストを作成し、ユーザーが求める情報へ辿り着くための情報整理・インフラ設計を考えるフェーズです。
具体的には、ユーザーがそのページを見るために、どのようなレイアウトでどのような情報・経路が必要かといった、コンテンツの関連性を詳しく決めていきます。「使いやすい」「わかりやすい」とユーザーに思ってもらうための、土台を作る重要なプロセスです。
骨格
骨格段階では、構造段階で決めた設計を基に、画面のデザインやレイアウト、機能性などの詳細を決定します。ユーザーが理解しやすいように、インターフェース上の情報設計を行う段階です。
実際にエンジニアやデザイナーが作業をするうえで必要な、ワイヤーフレーム(構成案)の作成も行います。前述の構造段階やこの骨格段階では、制作関係者との議論が必須です。議論をしないまま進めると、いざ作業を始める際に時間・予算・技術的に難しいとフィードバックを受ける可能性があります。
表層
最終の表層段階では、ユーザーが実際に使用するサービスのデザインを完成させていきます。骨格段階で作成したワイヤーフレームを基に、ユーザーが快適だと感じるようなUI設計を行うことが重要です。
具体的な作業としては、色やフォントの選定、見出しやボタンなどの制作、画像の選定、レイアウトの調整などが挙げられます。ユーザーが視覚的に認識する場所のため、魅力や操作性だけでなく、サービスやブランドの統一感も表現するデザイン設計が求められるでしょう。
UXデザインを行ううえで必要なプロセス
実際にUXデザインを行ううえで必要なプロセスは、以下の4つです。
- 調査
- 分析
- 設計
- 評価
前項で紹介したUXデザインの考え方を基にして、このプロセスを実行することで、ユーザーにとって最適なプロダクト制作が期待できます。それぞれ見ていきましょう。
1.調査
初めに、ユーザーのニーズや課題、現状を把握するための調査を行います。調査方法には、ユーザーインタビューやアンケート、競合の資料収集やフォーカスグループなどが挙げられます。
ターゲットユーザーの心理や欲求、行動をしっかりと把握しなければ、UXデザインの方向性が間違ったままのプロダクト制作になりかねません。UXデザインや経済的な目的を明確に定めるためにも、市場調査・ユーザーの意見収集を徹底して行いましょう。
2.分析
次に、調査結果を基にした分析を行い、ユーザーが何を求めているかを明確にします。ペルソナやカスタマージャーニーマップを作成し、ユーザーのニーズを満たすプロダクトを開発するための準備段階です。
ペルソナは、アンケートに回答してくれたユーザーの年齢や職業、性別などから割り出した具体的な人物像(ターゲット)のことを指します。カスタマージャーニーマップは、ユーザーが製品やサービスを利用・購入・リピートするまでの行動や思考の流れを可視化したものです。分析フェーズでは、これらを活用し、解決すべき課題を抽出することを目的としています。
3.設計
分析が完了したら、作成したペルソナやカスタマージャーニーマップを基に、プロダクトの設計を行います。ユーザーの課題解決を実現するためのプロトタイプ(試作品)を実際に作成し、試行錯誤を繰り返しながら完成へと近づけましょう。
ただ、ターゲットユーザーに寄り添ったUXデザインを考えることは大切ですが、分析結果に偏りすぎないプロダクトを制作することも重要です。前項で抽出した課題は、あくまでも調査結果から導き出した仮定のため、プロトタイプの作成段階ではフラットな視点を持つことを心掛けましょう。
4.評価
最後に、作成したプロトタイプをターゲットユーザーに試してもらい、評価を受けます。本当にユーザーの欲求が満たされるか、解決策は妥当なものであるかなど、想定したUXデザインが効果を発揮しているか確認する工程です。
制作段階では気づけなかった問題点やバグを知ることで、リリースの前後問わず、最適なUXデザインに近づきます。率直なユーザー意見を収集し、評価の悪い箇所は改善方法を考えて対処することが大切です。
UXデザインの成功事例を参考に、考え方やスキルを身につけよう!
この記事では、UXデザインの成功事例10選を紹介しました。UXデザインはユーザーが良い体験をできるようにサービス・商品の設計をすることを指し、他社との差別化を図るためにも多くの企業で重視されています。
最適なUXデザインを実現するためには、UXデザインの概念をしっかりと理解し、適切なプロセスを踏むことが大切です。UXデザインについて具体的な知識・スキルを身につけたい人には、女性向けキャリアスクールSHElikes(シーライクス)がおすすめです。実際の事例を通して、UXデザインのプロセスを体感でき、クリエイティブをユーザー目線で設計できるスキルが身につきます。
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※出典
*1:LINEキャンパス「年代や性別、都市部や地方を問わず、日本の人口分布に近いユーザー分布」より
*2:cookpad news コラム「クックパッド25周年「最も愛されたレシピ」ランキング5を発表」より
*5:日本コカ・コーラ株式会社「Coke ON」より
※参考
*3:UX MILK「食材宅配サービスOisixにおけるUXの取り組みとアプリの改善事例」より
*4:アイカサ公式サイト「アイカサとは」より