人材育成の方法としてコーチングとティーチングの2つがあげられます。似た言葉ですが厳密には意味合いが異なり、それぞれに有効なケースは異なるため上手く使い分ける必要があります。
しかし、どのような場面に適しているのかや、具体的にどのような方法で行えばいいのかわからない人もいるでしょう。そこで今回は、コーチングとティーチングの違い、使い分け方などについて詳しく解説します。後半ではそれぞれのメリット・デメリットも解説しているのでぜひ最後までご覧ください。
コーチングとティーチングの違いとは
コーチングとティーチングは、人材育成などで使われる言葉ですが、それぞれ目的が違います。
- コーチングの定義:自分で答えを引き出すサポートをする
- ティーチングの定義:答えを教えて育成する
ここからは、上記2点について詳しく解説するので意味を比較してみてください。
コーチングの定義
コーチングとは、コミュニケーションを通して相手に気づきを与え、目標達成をサポートする手法のことです。希望の場所に送り届ける馬車の意味合いも持つ「Coach(指導する)」に由来しています。
状況によっても異なりますが、基本的に1対1で行われ、コミュニケーションを重ねながら自分で応えを探し出せるように部下を導きます。コーチングを活用しやすいのは、長期的な目標の達成をサポートするときや自由な発想が必要なときです。答えのない仕事内容には、コーチングが適しています。
ティーチングの定義
ティーチングとは、経験やノウハウのある人が相手に「答え」を伝えながら育成する手法のことです。この言葉は「Teach(教える)」に由来しています。そのため、先生が生徒に授業を行うように、専門知識を持つ人や部下よりも経験がある人がティーチングを実施して育てることが一般的です。
指導を受ける人への一方通行的なコミュニケーションが多く、明確な上下関係があります。仕事の基礎知識やルーティン業務などあらかじめ決まっていることを習得するときは、ティーチングが適しています。
コーチングとティーチングの使い分け方
コーチングとティーチングの使い分けるには、どのようなアプローチで人材育成を行うのかを明確にすることが大切です。コーチングとティーチングは適した場面が違うため、目的に応じて使い分けるのがいいでしょう。
コーチングが有効な場合
企業によっても異なりますが、コーチングは、入社1~3年目などの若手社員や、管理職候補の中堅社員などの人材育成におすすめのアプローチといわれています。コーチングを受ける側は、ある程度のスキルや経験があることが条件といえるでしょう。また、対等な立場でコミュニケーションを取るため、信頼関係を築きたいときにも有効です。詳しく見ていきましょう。
ある程度のスキルや経験が備わっている
コーチングは、対象者にある程度のスキルや経験が備わっていなければかえって育成に時間がかかるなど、効果が発揮しにくくなります。教える相手のポテンシャルを引き出す指導法であるため、コーチングが役立つのは新入社員などの研修ではなく、ある程度仕事の経験を積んだスタッフや管理職の育成です。
たとえば営業経験のあるスタッフに対し、どうすれば売上アップできるのかの答えを自分なりに見出してほしい場合などにコーチングがおすすめです。。相手の中にある考えや知識などの整理を手助けし、サポートを通して指導することが大切です。
上司と部下の信頼関係を築く
上司と部下の信頼関係を築くときにも、コーチングが有効です。コーチングを行うにあたっては、部下に心を開いてもらうため、マンツーマンでしっかり話を聞き、相手を認める姿勢を持ちます。
自然と悩みや体調の変化にも目が届きやすくなり、ストレスを抱える前に対策を検討しやすくなるでしょう。部下の考えや適正が正しく理解できれば、適切な業務や部署に配置することもでき、能力を発揮してもらいやすくなります。コーチングをうまく取り入れ信頼関係を構築することは、職場環境をよくすることにもつながるでしょう。
ティーチングが有効な場合
ティーチングは、まだスキルや経験の少ない新入社員の人材育成におすすめのアプローチ方法です。また、比較的スピーディーに知識を身につけられるため、緊急性の高い業務やマニュアルでこなせる作業を任せたいときにも適しています。
スキルや経験が少ない
ティーチングは、決まった業務内容を教えるときに有効な方法です。たとえば、まだ自社での経験が少ない新入社員や中途採用で入社した社員に対し、ルーティンワークを習得してもらいたいときに適しています。一定の基準に至る知識や技術を短い期間で教えることができ、いち早く戦力として活躍してもらえるでしょう。
業務の緊急性が高い
ティーチングは短時間で情報伝達ができるため、緊急性が高い業務を教えるときにも向いています。エラーやクレームなど、即座に対応が求められるときには、ティーチングがいいでしょう。解決までに時間がかかってしまうと顧客の満足度が低下したり新たなクレームにつながったりと、トラブルが大きくなる可能性があります。そのような緊急性の高い業務においては、ティーチングを実施して解決策をきちんと提示することでスピーディーな対応につながります。
コーチングのメリット
コーチングには3つのメリットが挙げられます。
- 自主性を養える
- 新しい考えを発見できる
- 仕事もモチベーションが高まる
得られるメリットを具体的に把握していきましょう。
自主性を養える
コーチングのメリットは、自分で考える力がつけられることです。自主的に考える力を養う質問を投げかけるため、自分で取り組む力が身につきます。考える力や行動力、多角的に考える能力を持つ人材を育成することにつながるでしょう。誰かにやらされるのではなく、自分で答えを見つけ選択したという自覚が持てれば、相手のモチベーションアップも期待できます。
新しい考えを引き出せる
自分だけで考えていると視野が狭くなりがちですが、コーチングによりほかの人からの指導を受ける機会を設けることで、今まで気が付かなかった能力や可能性を見出すことにつながります。コミュニケーションを交わすことで新しい発想や物事の見方に触れることもあるでしょう。いろいろな視点から柔軟に考えられるようになるきっかけを得られるかもしれません。
仕事のモチベーションが高まる
誰かにやらされるのではなく、自分で答えを見つけ選択したという自覚が持てれば、モチベーションも高まります。モチベーションを高めるためには、目的や目標が明確であることが大切です。「これからどうするべきなのか」という答えが見つかれば、努力しやすくもなるでしょう。気持ちが前向きになると、自ずとパフォーマンスも高まります。
コーチングのデメリット
コーチングのデメリットには、以下のような点があります。
- 時間がかかる
- 双方に知識やスキルが必要
それぞれ見ていきましょう。
時間がかかる
コーチングのデメリットは、効果が出るまでに時間がかかる可能性があることです。自主性を大事にするため、スキル習得までにある程度の時間を要します。効果が出るまでに時間がかかることを忘れず、長期的な視点で継続して取り組む必要があるでしょう。仕事の緊急度によっては、ティーチングに切り替えるなど柔軟に対応するほうがスピーディーに業務を進行できます。特にコーチングを行う上司が自分の業務を抱えている場合、その業務と並行してコーチングをする負担がかかる側面もあります。
双方に知識やスキルが必要となる
コーチングを受ける人はもちろんですが、コーチとなる人も部下の業務をきちんと把握している必要があります。正しく理解していないと適切な質問が投げかけられないばかりか、相手を混乱させてしまう可能性もあるでしょう。また、コーチングを受ける側もコーチングについて理解していないと、思った答えがもらえず不満につながることもあるかもしれません。コーチングする側は相手の業務の知識とコーチングのスキルが、コーチングを受ける側はコーチングについての正しい理解が必要です。
ティーチングのメリット
続いて、ティーチングのメリットを確認していきましょう。
- 知識や技術の習得につながる
- スピード感がある
上記の2点について、詳しく解説していきます。
基本的な知識や技術の習得につながる
ひとつずつ手順を教えるティーチングは、スピード感をもって知識や技術を身につけられることがメリットです。一度に大勢に指導できるため、効率的に人材育成を行えるでしょう。上司のやり方をそのまま周知でき、企業の理念や組織風土などについて共通のイメージを印象づけることも可能です。基礎となる知識や技術を習得させたい場合、ティーチングがいいでしょう。
スピード感がある
ティーチングは主に答えを社員に伝えることから、時間をかけすぎずに一定のレベルまで社員を育成できる点もメリットです。短期間で重要なスキルやノウハウを伝達できるため、早く習得してもらえます。また集合研修などのように一度に複数人を指導できるため、育成にかかる時間や手間の削減にもつながるでしょう。スピード感を持って業務に必要な基礎的なスキルを習得してもらいたいときはティーチングが有効です。
ティーチングのデメリット
ティーチングには、以下の2つのデメリットが考えられます。
- 主体性が育ちにくい
- モチベーションが下がる可能性がある
その理由を見ていきましょう。
主体性が育ちにくい
ティーチングのデメリットは、主体性が育ちにくいことです。教える側の情報発信が基本のため、受動的になりがちです。「自分で主体的に考えて行動する」という習慣が身につきにくくなり、応用力を伸ばせない可能性があります。常にティーチングのスタイルで指導を続けると、何か問題が起きたときにすぐに上司に答えを求める可能性もあるかもしれません。
モチベーション低下を起こす可能性がある
ティーチングでは、基本的に教えられたことをそのままやるよう求められます。そのため、スキルを活かしきれなかったり意に添わなかったりすることもあるでしょう。ティーチングばかりで指導していると、仕事のモチベーションが下がることも考えられます。
入社した社員を長期間ティーチングのみで育成した場合、モチベーションが高まらず業務に対してやりがいを見つけにくいかもしれません。部下のモチベーションが湧くような環境をつくるためにも、コーチングとティーチングを使い分けることが大切です。
コーチングを行う際のポイント
コーチングを行うときには、以下の2点が重要です。
- 相手の自主性を尊重する
- 疑問や質問を投げかける
詳しくみていきましょう。
相手の自主性を尊重する
コーチングで最も重要なのは、相手の自主性を尊重することです。そのためには、相手の話にしっかり耳を傾ける傾聴の姿勢が大切です。途中で遮ることなく、まずは話を最後までしっかりと聞きましょう。言葉だけでなく相手の感情にも配慮し、上司や部下などの立場ではなく対等な関係で受け止めるように意識します。
もし意見を挟みたい場合も、最後まで聞いたうえで方向性を提示するような言葉を投げかけるといいでしょう。相手の自主性を尊重することが、信頼関係の構築にもつながります。
疑問や質問を投げかける
相手が話に詰まりなかなか解決につながらないこともあるでしょう。そんなときは気づきを促すような疑問や質問を投げかけます。決して答えを提示するのではなく、自分で考えるきっかけになるように意識することが大切です。「はい」「いいえ」で答えられる質問ではなく、以下の5W1Hを中心に質問を組み立ててみましょう。
- When:いつ
- Where:どこで
- Who:だれが
- What:なにを
- Why:なぜ
- How:どのように
たとえば「なんで失敗したと思う?」ではなく「失敗の原因で思い当たることはある?」などというように、客観的に状況を把握できる質問をしてみましょう。質問の数が多いと思考が散漫になってしまうため、質問の数は最低限に抑えるのもポイントです。
ティーチングを行う際のポイント
ティーチングを効果的に行うために押さえておきたいのは、以下の2点です。
- できる限り言語化する
- 具体例を交え、手本を見せる
それぞれ解説していきましょう。
できる限り言語化する
ティーチングする際は、できる限り言語化して伝えることが大切です。相手がイメージしにくい抽象的な内容では、短時間で理解しにくくなります。指導したい内容を言語化し、より具体的かつ明確に示しましょう。しかし、普段の業務を全て言語化して説明するのは意外と難しいものです。言語化する際には、「何をやるのか」「なぜやるのか」「どうやってやるのか」の3つをセットで伝えるよう意識すると具体的になりやすいでしょう。
具体例を交え、手本を見せる
座学で伝えるだけでなく、オリエンテーションなどで具体例を交えてお手本を見せることも大切です。やってみせたうえで補足説明を加え実際にやってみてもらう、この流れで進めることで相手は効率的にスキルを習得できます。
きちんとできるようになるまで寄り添いながら、根気強くティーチングを積み重ねます。加えて、教えたあとにきちんと理解できているか確認する時間を設けることも大切です。教えたことを実践してもらい、よかった点を褒めることでモチベーションアップにもつながるでしょう。
コーチングとティーチングの違いが学べる本
コーチングとティーチングについて理解を深めるためにも、以下の本を参考にするのもいいでしょう。
- リーダー必須の職場コミュニケーション61のスキル
- 仕事を教えることになったら読む本
それぞれ詳しく紹介します。
「リーダー必須の職場コミュニケーション61のスキル」著:五十嵐 仁
「リーダー必須の職場コミュニケーション61のスキル」は、職場でのコミュニケーションに役立つノウハウが紹介されている本です。ティーチングやコーチングの基本スキル以外に、職場やチームをよくするためのコミュニケーションスキルも紹介されています。リーダーとしての立ち振る舞いに悩んだときの参考になるかもしれません。
「仕事を教えることになったら読む本」著:濱田 秀彦
「仕事を教えることになったら読む本」は、教え方に悩む方におすすめです。この本で教えているのは、知識を与えるティーチング、スキルを身に付けさせるトレーニング、意識を高めるコーチングの3つの使い分けるテクニック。どんな業種や職種でも通用する、教え方の基本がまとめられています。教え方を上達させたいなら、参考にするといいでしょう。
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