ブランディングとは?具体的な考え方や成功事例も紹介

ブランディングとは?具体的な考え方や成功事例も紹介

近年、企業だけでなく個人の活動においてもブランディングが重要視されています。一方で「ブランディングとは何かを明確に説明できない」「具体的に何をすれば良い?」と悩む方もいるのではないでしょうか。

インターネットやSNSなどが普及してメディアが増えたことにより、ブランディングを考えることは事業で成果を出すための重要な要素の一つです。「より多くのユーザーにブランドを知ってもらいたい」「ブランディングの設計ミスによるトラブルを未然に防止したい」といった方は、ぜひこの記事を読んでブランディングに関する理解を深めてください。

そもそもブランディングとは?

「ブランド」や「ブランディング」は抽象的な概念なので、人によって解釈はやや異なります。多くの場合は、「ブランドを作る活動」を指すことが一般的です。

AMA(アメリカマーケティング教会)では、「ブランドとは、ある販売者の商品やサービスを他の販売者の商品やサービスと区別するための名前、用語、デザイン、シンボル、またはその他の特徴」*1と定義されています。

つまりブランディングとは、競合他社との差別化を図るためのさまざまな施策および活動といえるでしょう。この概念は自分の強み・サービスをアピールしたい個人のビジネス活動などにも応用できるはずです。ブランディングの重要性や実施方法を理解し、それぞれの強みを活かせる方法で実践することは、事業のさらなる成長につながるでしょう。

なぜブランディングが大切なのか

「どうしてブランディングがそこまで大切なの?」と気になる方もいるかもしれません。適切なブランディングを設計することには、下記のメリットが存在します。

  • 価格競争から脱却できる
  • 競合との比較が少なくなる
  • 広告費を削減できる

上記のメリットは企業だけではなく、個人で発信活動をする方やフリーランスとして仕事をする方にも当てはまるでしょう。順番に解説します。

価格競争から脱却できる

適切なブランディング活動をおこなえると、価格競争に巻き込まれずに商品を販売できることがブランディングの魅力の一つです。例えばファッション業界の一部では値段を抑えた「ファストファッション」が流行しています。しかしハイブランドとして認知されている「Louis Vuitton」や「HERMES」などは高価格帯の商品を販売しているにもかかわらず、事業を成長させています。

売上が成長する理由にはさまざま企業努力がありますが、ブランドの認知率も大きな要因の一つです。したがって競合他社との差別化ができるブランディングを設計すれば、事業を成長させられるでしょう。

参考:
ルイ・ヴィトンの終わらぬ旅
Hermès Finance

競合との比較が少なくなる

競合他社との比較が少なくなることもブランドを正しく設計する魅力です。というのもSNSやWebサイトなどから技術やノウハウの情報を得やすい現代においては、商品の機能に大きな差は生まれにくいと考えられます。場合によっては低価格帯の商品の方が高価格帯の商品よりも優れていることもあるでしょう。

例えば自動車産業では「ランボルギーニ」や「フェラーリ」などの高級車が人気を集めています。しかしガソリンの燃費や運転のしやすさなどについては、低価格で購入できる自動車の方が優れているかもしれません。それでも高級車を販売している企業が一定の売上を挙げている理由は、ブランドの魅力にあるといえるでしょう。

つまり適切なブランディングを実施できた企業は「この会社の商品が欲しい!」とファンが増えることが期待できます。したがって競合他社との比較・検討のフェーズを飛ばして購入してもらえる可能性が高くなります。

参考:
ランボルギーニ – 公式サイト | Lamborghini.com
オフィシャル・フェラーリ・ウェブサイト

広告費を削減できる

ブランディングの効果を発揮できる企業には、広告費を削減しながら認知拡大に成功している企業が多く見られます。例えばブランドを確立している企業の商品やサービスはYouTuberやインフルエンサーに取り上げられることが多いです。第三者目線で自発的に商品を紹介してくれるため、リアルな情報を視聴者に届けてくれます。発信者のファンのなかには、サービスに興味を抱いてくれることも考えられるでしょう。

近年ではインフルエンサーとタイアップする企業も少なくありません。したがってブランドを確立できる企業は、広告よりも高い効果を期待できるマーケティング施策に乗り出せるでしょう。

ブランディングに含まれる2つの要素

「そもそもブランディングってどうやって考えるの?」と気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。個人や企業によっても異なりますが、ブランディングの作り方や使い方を間違えている方はしばしば見られます。企業・個人にかかわらず、ブランディングには下記の要素が必要だと理解しておきましょう。

  • インナーブランディング
  • アウターブランディング

順番に解説します。

インナーブランディング

インナーブランディングは、従業員などの組織に関係するあらゆる人に向けて自社の理念やコンセプトを理解してもらうための活動を指します。個人のブランディングに当てはめると「自己理解」に該当することが一般的です。仕事や発信活動などでは、ブランドイメージを崩さないための「ブランド理解」が大切になります。

例えば「高級感・ラグジュアリー」をコンセプトにしているにもかかわらず、従業員が上品とはいえない接客をしてしまうと、顧客に対して「ブランドに一貫性がない」といった印象を与えるかもしれません。

ポジティブなブランドイメージを世間で確立するためにもインナーブランディングを実施し、組織全体で一貫性のある行動を促すことも重要なのです。ハリボテのブランディングにならないためにも、自分を含め協力してくれる方々に理念やビジョンを共感してもらう活動を行ってください。

アウターブランディング

アウターブランディングは、自社外に向けたブランディングを意味します。具体的にはSNSの発信やテレビCMなどが挙げられます一般的に認識されているブランディングがアウターブランディングであり、ロゴやコンテンツなどの視覚的なアウトプットが該当するでしょう。Amazonの配送段ボールのデザインなどもアウターブランディングの一つと考えられます。

ブランディングをおこなう目的によっても異なりますが、「どのように見らる必要があるか」の考えから逆算して設計することもあります。企業の理念やビジョンを反映するインナーブランディングに沿いながら関係性を考慮してデザインを作ると良いでしょう。

ただしインナーブランディングを考えずにアウトプットを行うと、ブランドイメージにズレが生じる可能性があります。両者のブランディングに一貫性をもたせて施策を打ち出すことが重要です。

参考:アマゾン

適切なブランディングを設計するワークステップ

ここからはブランディングを設計する具体的な流れを見ていきましょう。

  1. 自社の強みを理解する
  2. 市場を分析する
  3. 方向性を決める
  4. ターゲットを選定する
  5. コンセプトの設計・共有を行う
  6. 戦略を立案する
  7. アウトプットを設計する
  8. 仮説・検証を行う

ブランディングの本格的な設計は企業だけでなく個人での発信活動においても効果的です。企業は自社の事業、個人は自分の活動に当てはめて考えてみてください。順番に解説します。

1.自社の強みを理解する

ブランディングを考えるうえで非常に大切なことは、自社の強みを理解することです。強みを理解せずにブランディングを行っても、商品やサービス、発信コンテンツの信頼性が低くなる可能性があります。競合のやり方を参考にしすぎた結果、自社ではサービス範囲外の対応も期待され、ブランドが崩れる事例も少なくありません。無理な背伸びをせず、提供できる範囲の中から自分たちの強みを洗い出しましょう。

2.市場・競合を分析する

次に、自社の強みを生かせる市場を見つけましょう。競合の商品やサービス、発信内容を確認して市場の分析を行います。競合を分析する場合は商品やサービスの値段、機能やデザイン、市場にいるユーザー属性などを詳しくチェックしてください。どのような発信が伸びているかを参考にすることが大切です。

多くの情報を分析して、自社ブランドが確立できそうなポジションを明確にしましょう。自社が狙うべきポジションがわからない場合は、市場の細分化からポジショニングまで理解できる「STP分析」などを活用してみてください。

3.方向性を決める

市場分析のあとは自社のブランディング活動における方向性を考えます。市場にいる競合と同じ理念やコンセプトでは差別化が難しくなります。そのため他社とは違うビジョンを明確に示すことが大切です。

方向性を決める際は、自分たちだけの強みであるUSP(競合には真似できない独自の強み)の解像度も組織内で高くすることも大切です。自社のビジョンを達成できる方向性を決めて、適切なブランドを設計しましょう。

4.ターゲットを選定する

方向性を固めたら、自社の強みを生かした商品やサービス、情報発信に反応してくれるターゲットを探しましょう。販売を目的にしたブランド認知を行う場合、競合のファン・ユーザーなどを分析するとターゲットが絞りやすくなります。

SNS発信でも同様に、特定のジャンルで人気のあるインフルエンサーなどのフォロワーや投稿へのコメントといった要素を調査し、ユーザー属性を分析してみてください。

5.コンセプトの設計・共有を行う

方針からターゲット選定までが完了したら、ブランドコンセプトを設計しましょう。自社の理念・コンセプトとターゲットの属性を分析し、ユーザーへクリティカルに訴求できるような言語化が大切ですコンセプトを決める際にキャッチコピーなども考えておくとよいでしょう。

複数人のチームでブランドの設計を行う場合は言語化したコンセプトを共有しメンバー全員に理解・共感してもらうことも重要と考えられます。

6.戦略の立案をする

コンセプトの設計・共有が完了したら、具体的なブランディング戦略を考えましょう。ターゲットが利用するメディアや媒体を分析して、どのような発信を行うかを考えるフェーズです。

例えば10〜20代を対象にする場合、TikTokなどの若年層のユーザーが多いSNSを活用すると良いかもしれません。一方で40代以上をターゲットにするなら、アカウントの信頼性が比較的高いといわれるFacebookが有効でしょう。

ターゲットによって発信内容や適切なPRの手法は異なるので、しっかりとしたマーケティングプランを設計しましょう。ブランディング戦略の考え方は下記の記事で詳しく解説しているので、そちらも参考にしてください。

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7.アウトプットを設計する

戦略までを考えたら、ターゲットに適切なコンテンツを作成しましょう。商品やWebサイトなどのデザイン、SNSの発信内容を考えます。サービスによっては、接客マニュアルやレギュレーションなども必要になるかもしれません。

ブランドコンセプトを基に配色やフォント、シンボルなどを作成して、ブランドイメージが一目でわかるアウトプットを作りましょう。

8.仮説・検証を行う

アウトプットを作成したら実際にPRを開始して効果を検証します。SNSのいいねやコメント数など、Webサイトの滞在時間や直帰率などをチェックしてデータを集めましょう。予想よりも反応が悪い場合は、「なぜ上手くいかないのか」と仮説を立て次の施策を考えます。

一方で予想以上の反響があった際は油断せず、「なぜ上手くいっているのか」を考えることが大切です。仮説と検証を繰り返し、ブランドを成長させていきましょう。

適切なブランディングを考えるポイント

ここからは、適切なブランディングを考えるポイントを紹介します。具体的には下記の通りです。

  • シズル感を意識する
  • 無理のないコンセプトで設計する

順番に解説します。

シズル感を意識する

シズル感とは広告業界で使用される用語の一つであり、簡単にお伝えすると「らしさ」を意味することが一般的です。例えば焼肉店などの広告で多く見られるのは、「肉が焼かれている様子」の画像が使用されており、焼肉屋の「らしさ」を演出する傾向にあります。有名ブランドの店舗やWebサイトを覗いてみると、その企業の「らしさ」が多く見られるでしょう。

ユーザーの記憶にブランドを定着してもらうためにも、自社の商品やサービス、理念やコンセプトを演出できるシズル感を意識してください。

無理のないコンセプトで設計する

コンセプトを設計する際は、無理のない範囲で設計しましょう。というのも魅力的なブランドを設計したいあまり、誇張したブランディングをしてしまう事例は少なくありません。成長した結果のブランドをイメージすることは大切ですが、ユーザーの期待値を上げすぎる施策は逆効果になる可能性があります。したがって自社が対応できるブランドコンセプトを考えましょう。

ブランディングで成功した企業事例

ブランディングを実施している企業の事例を紹介します。「成功」といっても、「成功している状態とは何か」の捉え方は人によって異なります。企業や個人それぞれの目的や強みは多様でブランディングの方法もさまざまです。

ここで紹介する事例はあくまでも自社もしくは自分のブランディングのヒントを得るための参考としてご覧ください。

スターバックス

テレビ広告を使用しないことで有名なスターバックスは、ブランディングに成功している企業の一つといえるでしょう。顧客満足度の向上を大切にしており、ユーザーの口コミで飛躍的な成長を遂げています。

スターバックスが掲げるバリューである「誰もが場所を感じられるような文化を作ります」*2を基に、店舗の外観や内装が丁寧に作り込まれていることも魅力の一つです。サービスの質の高さからスターバックスを利用することがステータスと感じる方も多く、飲食業界でブランディングに成功している事例といえるでしょう。

参考:Our Mission and Values|スターバックス コーヒー ジャパン

Apple

圧倒的なユーザーファーストを意識した開発を行っているAppleも、ブランディングに成功している企業と考えられます。洗練されたデザインを基に設計されたApple製品は世界中でヒットしています。「アップル信者」という言葉があるほどのユーザーがおり、他社製品と比較せずにAppleの商品を購入する方は少なくありません。

製品だけではなくWebサイトや実店舗などで使用するフォントやデザインも統一されているため、ブランディングを徹底している企業の一つと考えられるでしょう。

参考:Apple

ブランディングを設計する際の注意点

ブランディングにはさまざまな魅力がありますが、下記の注意点も存在します。

  • アウターブランディングだけに力を入れない
  • 設計を丁寧に考える

上記の項目を意識しながら適切なブランディングを行ってください。

アウターブランディングだけに力を入れない

ブランディングを設計する際に多いのは、アウターブランディングだけに力を入れることです。WebサイトやSNSのデザインだけをおしゃれにするあまり、肝心の理念がブレてしまうとブランディングが崩れる可能性があります。

したがって適切にブランディングをおこなうためにも、インナーブランディングを徹底的に考えて、それらに沿ったアウトプットを作成してください。

設計を丁寧に考える

ブランドコンセプトの設計を疎かにして発信活動を始めると、自社の強みを生かせない可能性があります。例えば人気のデザインなどを参考にしただけの商品やサービスを開発しても、競合他社と比較されたり価格競争に巻き込まれたりするかもしれません。

ブランディングには自社の理念や概念に共感してもらう目的もあるので、上手くいっている競合を参考にするだけではなく、自社の強みを生かせるブランディングプランを考える必要があります。

ブランディングに関するよくある質問

最後にブランディングに関するよくある質問を紹介します。

ブランディングとPRの違いは?

ブランディングとPRの認識は、企業や業界によって定義や役割はことなる傾向にあります。日本パブリックリレーションズ協会ではPRを「関係性の構築・維持のマネジメント」と定義しています。*3つまりPRは、認知拡大や理解の促進を行う広報活動と考えられるでしょう。

ブランディングとマーケティングの違いは?

ブランディングはマーケティングの一つに該当します。マーケティングは事業を成長させる施策の全てを意味することが一般的であり、認知拡大に利用されるブランディングはマーケティングの一環と考えられます。

ブランディングを理解して上手に活用しよう

ブランディングは企業だけではく、個人で発信活動をする方やフリーランスとして仕事をする方にとっても重要なマーケティング要素の一つです。ブランディングを確立できると市場で独自のポジジョンを確立できたり、価格競争から離脱できたりします。ただし他者からの見られ方だけを考えたブランディングにはリスクがあるので、設計する際は丁寧に考えてください。

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※出典
*1:「AMA(アメリカマーケティング協会)ブランディング」より
*2:Our Mission and Values|スターバックス コーヒー ジャパン」より
*3:「日本パブリックリレーションズ協会 パブリックリレーションズとは」より

ABOUT ME
ライター KeitoKurisu
埼玉県の美容学校を卒業後、銀座の美容室での経験を経て、雑誌・広告業界のヘアメイクとして活動。その後、SEOメディア事業や映像制作会社を立ち上げ、脚本とディレクター業務を行う。現在は、アート作品の個展を行いながら、フリーライターとして活動中。
エディター Kakuhata Kyosuke
同志社大学 生命医科学部医情報学科卒。在学中、基礎科学や生体情報の取得・制御、プログラミングについて学ぶ。大学院進学後Pythonデータ解析や生体化学を学んだあとライター業を開始。現在はフリーランスとして活動し、キャリア領域のメディアを中心にSEO記事を編集・執筆している。

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