会社や仕事の目標設定を面倒に感じ、積極的な取り組み方ができない従業員は多いのではないでしょうか。しかし、適切な目標を定めることによって、従業員は仕事へのモチベーションを維持しながら効率的な働き方ができるようになります。
この記事では、会社で目標を設定することの重要性を解説します。仕事の目標設定に役立つフレームワークや具体例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。目標設定を通して従業員の意欲を高め、会社や部署の組織力を強化しましょう。
会社・仕事における目標設定の種類
仕事における目標の種類には、会社や部署、個人の目標があります。目標設定では、会社の目標を定めたうえで、それを達成するために各部署がやるべきことを掲げます。さらに会社や部署の目標を細分化した個人目標を、従業員ごとに設定するのがよいでしょう。
また、目標には数値的な指標を用いる「定量目標」と数値化できない「定性目標」があります。定量目標と定性目標を組み合わせることで、より具体的で評価基準が明確な目標になります。
目標設定が会社や仕事において重要な理由
従業員が目標を持って働くことには、さまざまなメリットがあります。ここでは、会社や仕事において目標設定が重要な理由を解説します。
会社の目標設定が面倒に感じる人や、従業員に目標を持つことの重要性を認識させたい人は、確認しておきましょう。
目標が行動指針になる
会社で設定した目標は、組織や個人が働くうえでの行動指針になります。目標があることによって、組織の方向性や、従業員のやるべきことが明確になるからです。
具体的には、従業員の意識を統一することで会社や部署に一体感が生まれたり、各々が取り組むべき課題や業務の優先順位を把握しやすくなったりします。漠然と業務をこなすよりも生産性が高く効率的な働き方を実現しやすいでしょう。
人事評価の際の基準が明確になる
目標を設定することで、人事評価の透明性や公平性が高まります。目標の達成状況やプロセスが、人事評価の基準になるからです。
たとえば、目標の達成度を昇給や昇格に反映させることで、本人や他の従業員が評価に不満を感じにくくなります。目標が達成できず人事評価が低い従業員に対しても、根拠を持って説明することが可能です。
目標によって管理職が従業員を評価しやすくなるほか、従業員の人事評価に対する納得感を高められるでしょう。
会社と従業員の信頼関係の構築につながる
目標設定は、会社と従業員が信頼関係を築く機会になります。個人目標を設定する際に管理職と従業員がコミュニケーションを取ることで、相互理解を深められるからです。
個人目標を設定する際には、会社や部署の目標を設定した背景や、従業員に期待していることなどを説明する必要があります。日頃の働きや今後のビジョンなどについて話し合うことにより、組織が目指す姿や、会社から従業員への感謝を伝えられるでしょう。
従業員のモチベーションが向上する
目標設定は、従業員のモチベーション向上にもつながります。目標を意識することで、計画性を持って業務や課題に取り組みやすくなるからです。目標を達成した際には大きな達成感をおぼえ、仕事への自信を持てるようになるでしょう。
また、目標設定を通して、自分に足りない要素を分析したり、成長を実感したりする機会が生まれます。従業員は自分に必要なスキルを身につけ、次の目標達成に向かって励むことで、前向きな姿勢で仕事と向き合いやすくなります。
会社での目標設定に役立つ代表的なフレームワーク
仕事の目標をスムーズに設定するには、フレームワークを活用するのもおすすめです。ここでは、目標設定に役立つ代表的なフレームワークを紹介します。
フレームワークの活用によって、適切で効果的な目標を設定しやすくなるでしょう。
SMARTの法則
SMARTの法則とは、以下の5項目を基準にして目標を設定するフレームワークです。
- S(Specific):具体性がある
- M(Measurable):測定できる
- A(Achievable):達成できる
- R(Relevant):関連性がある
- T(Time bound):期限がある
SMARTの法則の要素を満たした目標には、明確な評価指標があるといえます。いつまでにどのような成果を挙げるのか、会社や部署の目標に対してどのように関連しているのかを簡潔に表せるでしょう。
KPIツリー
KPIツリーとは、KPIとKGIを段階的に整理するフレームワークです。ちなみにKGIは定量的な最終目標のことであり、KPIとはKGI達成に向けた中間指標をいいます。
KPIツリーでは、KGIとKPIを上から下へ枝分かれさせた階層構造で図式化します。KPIツリーを用いるメリットは、KGIとKPIの関連性が可視化され、取り組むべき課題の優先順位や最終目標達成までの道筋が分かりやすくなることです。
KPIツリーによって目標を達成する意義を視覚的に理解できるため、従業員のモチベーション向上に効果的といえます。
OKR
OKRとは、「O:Objective(目的)」と「KR:Key Result(成果指標)」を組み合わせた目標管理手法です。OKRでは、定性的な目的を果たすためにやるべきことを、定量的な指標を用いて整理します。
OKRの特徴は、部署や個人の目標を会社の目標にリンクさせることや、70%程度の達成率が想定されるハイレベルな短期目標を掲げることです。その結果、従業員のチャレンジ精神を育みながら会社の目標達成を目指せます。
また、会社や部署の目標にリンクした個人目標から組織への貢献度を認識しやすくなるため、従業員の帰属意識を高める効果もあるでしょう。

MBO
MBOとは、従業員が自ら目標を設定し、プロセスを管理する目標管理制度のことです。管理職は従業員の目標設定や達成までのプロセスをサポートし、期間終了後は本人と一緒に振り返りながら達成率に応じて評価します。
MBOは人事評価に活用されやすいため、達成率100%が求められるレベルの目標を上司と部下の間だけで共有するケースが多いといえます。目標設定や達成までの進捗管理を通して従業員の主体性が育ち、組織力を強化する効果が期待できるでしょう。

会社・仕事における目標設定のポイント
会社や仕事で設定する目標は、人事評価や従業員のモチベーションに影響します。目標を設定するにあたって、以下のポイントを押さえておきましょう。
目標の決め方が分からない人や、適切な目標設定ができていないと感じる人は、ぜひ参考にしてください。
目標を具体化する
会社や仕事における目標には、具体的な項目や数値を用いることが大切です。具体性のある目標によって、従業員の課題や達成基準が分かりやすくなるからです。
たとえば「週7件以上の商談アポイントを取る」「商談による受注率10%アップ」「半年以内に〇〇資格試験合格」など、期日や課題が明確である目標がよいでしょう。
資格取得や業務効率向上のための行動目標などといった数値化できない項目も、達成の可否や進捗状況が分かるよう、具体的に書き表す必要があります。
目標達成までの中間目標を設定する
組織や個人の目標を設定する際には、最終目標だけではなく中間目標も設定しましょう。小さな目標を1つずつクリアしていくことで、効率的に最終目標への道筋を進めやすくなります。
また、中間目標の設定は、会社が従業員の取り組み方を正当に評価しやすくなるメリットもあります。従業員が目標達成までのプロセスでつまずいたポイントを振り返り、次の目標設定に反映することも可能です。
従業員は中間目標があることで達成感を得ながら最終目標へ向かいやすくなるほか、会社は適切なフィードバックを提供しやすくなる効果が期待できます。
個人目標は会社や部署の目標にリンクさせる
従業員の個人目標は、会社や部署の目標にリンクさせましょう。会社や部署の目標に沿った個人目標を従業員が追うことで、組織としての生産性や一体感が高まるからです。
たとえば会社が「地域シェア率1位」の目標を掲げる場合、従業員が「新規契約数の増加」や「顧客満足度の向上」といった目標を設定することで、会社の目標達成につながります。
また、従業員が会社や部署の目標にリンクした個人目標を意識して働くなかで、組織の方針や理念を理解しやすくなるメリットもあります。目標設定を通して、会社への帰属意識や愛着を意味する「従業員エンゲージメント」が高まる効果もあるでしょう。
フレームワークを用いた目標設定の具体例
ここでは、フレームワークを用いた部署目標と個人目標の具体例を紹介します。フレームワークごとに、目標の書き方や設定する項目は異なります。自社や事業内容に合うフレームワークを選び、効率的に目標を設定しましょう。
部署の目標設定の例文|OKRを活用する場合
部署の目標設定にOKRを活用する場合、Objective(目的)は定性的な内容に定め、Key Result(成果指標)には定量的な項目を設定します。
たとえばマーケティング部署がOKRを用いる場合、Objectiveに「ブランドの認知拡大を図り、3ヶ月以内に新規顧客の増加を促進する」と設定すると、Key Resultには以下のような項目が挙げられます。
- 公式Instagramのフォロワーを月間5千人ずつ増加
- 3ヶ月でSNSからECサイトへの遷移率20%増加
- キャンペーンを実施してECサイト新規会員数1万人増加
目的と指標を整理して効率的に進捗を管理するなら、OKRのフレームワークが適しているでしょう。
個人の目標設定の例文|SMARTの法則を活用する場合
個人目標をどのように設定すればよいか分からない場合は、SMARTの法則に沿って検討するのがおすすめです。営業職の個人目標にSMARTの法則を活用すると、以下のようになります。
- 今期中に新規顧客を5社契約し、月間売上15%向上
- 半年以内に売上を前期比10%増加
- 月間売上100万円達成のために週3件以上の商談アポイントメントを確約
SMARTの法則によって、管理職が内容を理解しやすく納得感を与えられる目標を設定できるでしょう。

目標設定時の注意点
会社で部署や個人の目標を設定する際には、目標に取り組む本人とコミュニケーションを図りながら適正なレベルを見極めることが大切です。ここでは、目標設定時の注意点を解説します。
注意点を確認し、従業員が積極的に取り組める目標を設定しましょう。
会社が一方的に目標設定してしまう
目標設定を行ううえで、会社の理想や要求を押しつける目標にならないよう注意が必要です。目標を会社が一方的に設定すると、従業員は当事者意識が薄れ、達成意欲を持ちにくいでしょう。
たとえば、本人の意向と異なるビジョンに向かう目標や、従業員の就業状況などが考慮されていない目標を設定してしまうと、仕事へのモチベーションが下がる恐れがあります。会社と従業員の双方が納得できる目標設定をするには、密にコミュニケーションを取って相談しながら進めることが大切です。
無理な目標や簡単な目標を設定してしまう
仕事の目標は、現状から努力することで到達できるレベルの数値に定めましょう。ハードルが高すぎる目標や、容易に達成できてしまう目標は、従業員のモチベーションが下がる原因になります。
たとえば営業職の場合、現状の売上成績に対して現実的に達成が難しいと考えられる目標額を掲げると、従業員に大きなプレッシャーやストレスを与えます。とはいえ、今期の成績と変わりのない簡単な目標では、従業員は目標達成に向けて工夫や努力することに消極的になりやすいでしょう。
短期目標や中期目標、長期目標のすべてにおいて、従業員の成績や働き方などを考慮した目標設定が重要です。
目標の期限を定めていない
目標設定の際は、達成期限を明確に決めておきましょう。期限を設けることで、従業員が計画的に行動しやすくなるからです。たとえば月単位や年度単位など、短期目標から長期目標まですべての目標に期限を設定します。
従業員が期限を意識しながら仕事に取り組むようになると、業務効率アップや生産性の高い働き方を実現しやすくなります。目標の期限は管理職も把握し、進捗のサポートやフィードバックの面談を行いましょう。
目標設定をポジティブに転換するコツ
従業員が前向きに捉えられる目標設定を行うには、定期的なフィードバックやコーチングの導入がおすすめです。面倒に感じられやすい目標設定を管理職やコーチがサポートすることで、従業員は主体的に取り組みやすくなるでしょう。ここでは、目標設定をポジティブに転換する2つのコツを紹介します。
定期的に目標を振り返る機会を設ける
目標設定をしたら、定期的に振り返る機会を設けましょう。従業員の目標達成に向けた取り組み方を会社が小まめに把握することで、適正な目標値が設定できているかを確認できます。
たとえば月間目標に向けて週に1回面談を実施する場合、進捗状況や残りの期間でやるべきことなどを明確化します。達成期限後の面談では、次の目標設定に向けて、今回の反省点や良かった点を本人と振り返りましょう。
会社や上司からの定期的なフィードバックによって、従業員は達成までのプロセスも評価対象に含まれていると実感できるため、モチベーションを維持しやすくなります。
コーチングを取り入れる
目標設定に前向きに取り組むには、コーチングを取り入れるのもおすすめです。コーチングとは、「コーチ」にあたる者が従業員の目標設定や進捗管理、達成後の振り返りなどをサポートすることをいいます。社内にコーチングを担う管理者がいる場合もあれば、外部のコーチング会社と契約している場合もあります。
目標の設定や管理、達成をサポートするコーチングの導入によって、従業員はモチベーションを保ったまま自律的に目標と向き合いやすくなります。会社にとっても、主体的に動く従業員が増えることで、組織の生産性を高められるメリットがあるでしょう。

適切な目標設定は会社と個人どちらの成長においても重要
会社で効果的な目標を設定するためには、フレームワークの活用や従業員とのコミュニケーションが必要です。適切な目標を設定できると、従業員のモチベーションや会社の生産性を高める効果が期待できるでしょう。
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