YouTubeやTikTok、Instagramのリール動画などSNSの普及により、動画を活用したマーケティング施策が一般的になりつつあります。しかし、「動画マーケティングってどれくらい効果があるの……？」「コストが高いイメージがある……」と考える方がいるかもしれません。確かに動画を利用した施策は高い成果が期待できますが、戦略によっては動画が最適とは限らないので正しい知識をつけることが大切です。
今回は、動画マーケティングで得られる効果やデメリット、具体的な施策事例などについて解説します。記事の後半では動画マーケティングを実施するフローも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
そもそも動画マーケティングとは
動画マーケティングとはその名の通り、「動画を活用したマーケティング施策全般」のことです。具体的にはSNSでの動画を活用した情報発信や、映像を使用した広告などが挙げられます。
サイバーエージェントの調査によると、動画広告の市場は2027年には1兆228億円*1になると予想されています。SNSの普及により動画を視聴するユーザーが増えつつあるので、映像を軸にしたマーケティングは時代のトレンドに沿った施策と考えられるでしょう。
動画マーケティングで得られる効果・メリットとは
それでは、動画マーケティングで得られる効果を紹介します。具体的なメリットは施策によっても異なりますが、一般的には下記の通りです。
順番に見ていきましょう。
短時間で膨大な情報を伝えられる
動画マーケティングの大きな魅力として、短時間で膨大な情報を伝えられることが挙げられます。具体的な情報の伝達量は動画の作り方によっても異なりますが、「視覚」と「聴覚」から情報収集ができるため、文字を読むことよりも短時間でのインプットが可能です。
つまりLP（ランディングページ）を活用した広告などよりも、短い時間で製品やサービスの魅力を伝えることができます。隙間時間を活用しながら動画を視聴するユーザーも増えつつあるため、動画マーケティングは消費者の可処分時間の隙間を縫って、効果的に情報を伝えられます。
相手の記憶に残りやすい
画像やテキストに比べると、映像は記憶に残りやすいことも動画マーケティングの特徴の一つです。動画は、感情に訴える表現がしやすいので、感動するシーンや共感できる場面など記憶に定着しやすいコンテンツということができます。
またオーディオビジュアル（動画・映像）が記憶に残る可能性が高いという研究結果もあります。ただし記憶への定着率は、動画の構成や品質などによっても差があるようです。そのため動画マーケティングを導入する際は、コンテンツの質にこだわることが大切といえるでしょう。
効果測定がしやすい
一般的な画像コンテンツに比べると、動画は効果測定がしやすいと考えられます。例えばYouTubeのアナリティクスではコンテンツの離脱率だけではなく、具体的な離脱箇所も表示されます。視聴者がどこで関心を無くしたか分析できるようになっています。Web広告でも配信する動画によってのクリック率などをテストすることが可能です。つまり動画マーケティングは、質の高い効果を挙げるための施策作りに役立つといえるでしょう。
動画マーケティングのデメリット
さまざまなメリットがある一方で、動画マーケティングには下記のデメリットも存在します。
動画マーケティングの導入を検討している方は、上記の3つは理解しておきましょう。順番に解説します。
制作コストが発生する
動画の作成には一定の費用が発生することが一般的です。例えば動画編集ソフトを使用する場合、月額のランニングコストや、買い切りの初期コストが必要になります。無料の動画編集ソフトも多数存在しますが、使用できる機能に制限があったり、商用利用が認められていなかったりします。
映像制作を外注する場合はより大きな費用が必要になるため、コスト面でのデメリットは免れないかもしれません。そのため動画マーケティングに取り組む際は、自社の資金と期待できる効果を適切に判断することが大切です。
制作に時間がかかる
映像の制作に時間がかかることも、動画マーケティングのデメリットといえるでしょう。例えば人物を使ったコンテンツを作成する場合、撮影と編集を行います。
制作する映像によっては、絵コンテやロケハン（撮影場所の調査）、撮影の許可取りなどが必要になるでしょう。そのためコンテンツの企画から配信までには、一定の時間がかかります。つまり動画マーケティングは、緊急性の高い情報発信にはやや不向きかもしれません。動画を活用した施策を実施する際は、適切な事業計画を考えましょう。
修正が困難
コンテンツの修正が困難なことも、動画マーケティングのデメリットの一つです。例えば視聴者の離脱率が高い箇所を修正する場合、動画編集ソフトを使って再度編集を行う手間が発生します。収録でのミスが発覚した際は、再度撮影する必要があるでしょう。
一般的なLPや画像などであれば、手軽に修正・編集することが可能です。しかし映像を再編集する場合にはさまざまなリソースが発生するので、動画マーケティングを実施する際は制作に細心の注意を払うことが大切です。
効果が期待できる動画マーケティングの施策事例
ここからは、動画マーケティングの施策事例を見ていきましょう。企業によって適切なメディアや媒体は異なりますが、一般的には下記のように活用されています。
それぞれのメリットやデメリットなどについて解説します。
テレビCM
動画マーケティングの代表例としては、テレビCMが挙げられます。不特定多数の視聴者にコンテンツを届けられるうえ、配信エリアを指定できます。そのため、さまざまな企業が、認知拡大のために活用している手法の一つです。契約内容によっては長期間の映像配信ができるため、自社ブランドの確立に効果的な戦略といえます。
ただしテレビCMは細かいターゲティングができないうえ、配信コストが高い傾向があります。したがってマスメディアでの動画広告を検討している方は、適切な戦略設計が重要になるでしょう。
SNS運用
InstagramやTikTok、YouTubeなどでは、動画広告が主流になりつつあります。画像やテキストよりも短時間で多くの情報を伝えられるため、サービスの認知拡大や自社ブランドのファン作りに活用できます。無料で利用できることも、SNSの魅力といえるでしょう。最近では、縦型のショート動画風の広告も増えつつあります。
一方で配信する内容によっては、競合他社とコンテンツが被る可能性があります。そのため企業によっては、比較・検討の対象になるかもしれません。SNSを活用した動画マーケティングを実施する際は、自社の強みを生かせる戦略やコンテンツを考えることが大切です。
Web広告
近年では、動画を使ったWeb広告を利用する企業が増えつつあります。例えばメディアなどに掲載されている広告も、バナーではなく動画広告が増えつつあります。 画像よりも伝えられる情報量が多いため、製品やサービスの魅力を短時間でユーザーに伝えることが可能です。
ただしWeb広告で動画を活用する際は、映像の冒頭で視聴者の心を掴まないと離脱される可能性があります。また画像の方が高い成果を挙げられる事例もあるため、テストをしながら最適解を探すことが大切です。
デジタルサイネージ
デジタルサイネージとは動画などを表示できる電子掲示板のことで、駅や街頭などに設置されています。不特定多数の方に広告を配信できるため、認知拡大などに利用できます。
デジタルサイネージを設置している店舗での広告配信も可能なので、顧客属性にあったコンテンツを配信できることが特徴といえるでしょう。一般的なWeb広告よりも出稿費用は高い傾向がありますが、ポスターなどよりも記憶に残る可能性は高いといえます。
高い効果を期待できる動画マーケティングのフロー
ここからは、動画マーケティングを実施するまでの手順を見ていきましょう。最適な立案方法は企業によっても異なりますが、動画を活用した施策で高い効果を得たい方は、下記のフローを参考にしてください。
それぞれの工程について詳しく解説します。
1.目的を明確にする
まずは動画マーケティングを実施する目的を明確にしましょう。なぜなら目的によって適切な媒体、動画の構成が異なるからです。例えば認知拡大をゴールにするなら、コンテンツの配信期間や視聴維持率などを適切に設計することが大切です。
コンバージョンやセールスを目標にする際は、視聴者の課題を解決する内容を魅力的に伝える構成が重要になります。目的がブレると一定の効果が期待できないので、まずは自社のゴールを正しく設定しましょう。
2.ターゲットを設定する
次に、「誰に動画を届けるか」を設定しましょう。自社に顧客がいる場合は、ロイヤルカスタマー（優良顧客）に近い属性を対象にすると高い効果が期待できるかもしれません。競合他社の顧客を分析することで、市場にいる消費者のニーズが把握できるでしょう。
適切なターゲットにコンテンツを提供するとクリック数やコンバージョン率が高くなると予想できます。コンテンツの効果を最大化するためにも、ターゲティングはしっかりと行いましょう。
3.エリア・媒体を選定する
ターゲットの選定まで完了したら、動画を配信する媒体やエリアを検討します。例えばWeb広告を活用する際は、プラットフォームの選定や配信エリアなどを決める必要があります。
SNSでの試作を実施する方は、自社のターゲットが利用するサービスをリサーチしてください。また複数のメディアを活用することで、それぞれのマーケティング施策の効果を比較することが可能です。
4.動画を制作する
ここまでの作業が完了したら、動画コンテンツの作成に取り掛かります。動画を作る流れは目的によっても異なりますが、慣れていない方は下記のプロセスを参考にしてください。
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 1.伝える内容決める | 動画を通して視聴者に届ける情報を明確にする |
| 2.動画の構成を決める | ターゲットにあった構成・表現・順番を考える |
| 3.撮影の準備をする | 撮影に必要な機材・モデル・撮影場所の準備香盤表や絵コンテなどの作成 |
| 4.撮影・制作 | 動画の撮影を行う |
| 5.編集 | 構成に沿って動画の編集を行う |
上記のなかでも、撮影する前の構成作りは非常に大切です。構成やプロットをより具体的にすることで、撮影や編集の作業を効率的に進められます。いきなり撮影をせず、土台を作ってから収録に挑みましょう。
5.動画を配信する
動画の編集まで完了したら、SNSに投稿したり、広告を配信したりします。配信するプラットフォームによっては、コンテンツのコンプライアンスチェックなどが必要です。また媒体によっては配信までに時間がかかるので、事前に必要な情報を集めて計画を立てておきましょう。
6.効果を測定する
動画の投稿・配信をして一定の期間が経過したら、効果測定をしましょう。例えばInstagramなどであれば、インプレッション数に対するユーザーのアクション数が分析対象になります。Web広告などを利用する方は、クリック数やコンバージョン率をもとに、広告の費用対効果を調査することが大切です。
7.評価・改善を行う
最後に、現状の評価・改善を行います。例えば期待している成果が挙がっていない場合は、アナリティクなどを活用して、コンテンツを改善する必要があります。
一方で予想以上の結果が出ている場合でも、「なぜ成果が挙がっているのか」を分析することで、より品質を向上できるかもしれません。動画マーケティングで高い効果を挙げるために、PDCAサイクルを回しながら適切な評価を行いましょう。
動画マーケティングの効果を最大化する際の注意点
最後に、動画マーケティングの効果を最大化する際の注意点を紹介します。
上記の3つに注意しながら、適切なマーケティング戦略を策定しましょう。
動画が最適とは限らない
前述でも解説したように、目的やユーザーなどによっては動画広告が最適とは限りません。例えばSNS広告などで動画を使用する場合、ユーザーにアクションを起こしてもらうには一定の秒数を視聴してもらう必要があるでしょう。
しかし画像などを活用した広告であれば、ユーザーに刺さるキャッチコピーをダイレクトに伝えることが可能です。近年は動画マーケティングが注目されつつありますが、サービス内容によって最適解が異なることは理解しておきましょう。
冒頭でユーザーの関心を掴む
動画マーケティングで成果を挙げるには、映像の開始1〜3秒で視聴者の心を掴む必要があります。理由は、冒頭で関心を惹けないと視聴者が離脱する可能性があるからです。
近年のSNSはスクロールするだけで次の動画が再生されるため、動画を作り込んでも流れてしまう可能性があります。つまり効果の高い動画マーケティングを実施する際は、ユーザーが手を止めて見たくなる工夫が大切です。
競合他社と内容が被る可能性がある
製品やサービスによっても異なりますが、競合が多いジャンルでは他社と配信内容が被る可能性があります。例えば脱毛業界などは顧客への施術内容が基本的に同じなので、撮影する映像の内容が似てしまう傾向があります。
多くの企業が参入している市場では、他社にはない魅力を適切に表現することが大切です。競合他社と動画の内容が類似すると比較対象になり、価格競争に巻き込まれる可能性があるので注意してください。
動画マーケティングの効果を高めてビジネスを成長させよう
動画マーケティングとは動画を活用したマーケティング施策全般のことであり、具体的な戦略などによって効果が異なります。動画マーケティングの実施を検討している方はターゲットにあったコンテンツを作成して、適切な方法で情報を届けましょう。
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＜参考＞
1.Cyber Agent公式サイト「サイバーエージェント、2023年国内動画広告の市場調査を発表」より
