映画やアニメ、ゲームなどのエンターテイメントコンテンツでは、3D技術を使ったアニメーションが多く見られます。さまざまな作品を見た人には、「自分でもCG作品を作ってみたい…!」「3Dアニメーションってどうやって作っているんだろう…?」と気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、3Dアニメーションの意味や具体的な作り方、おすすめのソフトなどについて解説します。記事の後半では初心者が3Dアニメーションを作るコツについても解説しているので、CGを使った映像制作に興味のある方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
注目されている3Dアニメーションとは
作り方を理解する前に、3Dアニメーションの意味を理解しておきましょう。3Dアニメーションとは仮想空間でキャラクターや建造物を作成して、アニメーションを加える制作手法のことです。
映画やアニメ、ゲームなどのエンターテイメントコンテンツだけではなく震災の被害予想や製品開発のテストなどにも使用されており、3Dアニメーションはさまざまな業界で活用されています。
パソコンの性能や3D制作ソフトの向上により3D制作のレベルは日々成長しており、近年では現実の物体と変わらないCG作品を作ることも可能です。
3Dアニメーションと2Dアニメーションの違い
2Dアニメーションとは簡単にいうと、奥行きのない平面アニメーションを指します。具体的には、YouTubeなどで見られるイラストで作成したアニメなどが該当します。
一方で3Dアニメーションは奥行きのある映像を作成でき、制作過程も大きく異なるのです。そのため2Dアニメーションは、イラストレーターなどの方におすすめのコンテンツとも考えられます。
3Dアニメーションの作り方8ステップ
それでは、3Dアニメーションの具体的な作り方を紹介します。企業やクリエイターによっても異なりますが、これから3D制作に挑戦する方は下記のステップを参考にしてください。
- ラフ・コンテを作成する
- モデリングで形を作る
- マテリアルで色や質感を設定する
- テクスチャで表面の柄を作る
- リギングでボーン(骨)を加える
- スキニングでアニメーションを設定する
- カメラワークを行う
- レンダリングを行う
順番に見ていきましょう。
1.ラフ・コンテを作成せる
アニメーションの制作を始める前に、どのような作品を作るか考えておきましょう。具体的にはキャラクターの形や色、動き方やカメラワークなどのことです。空間やキャラクターを作る際はモデルのスケッチを行い、特徴を掴んでおきましょう。
カメラワークを事前に決めるなら、絵コンテや字コンテを作って見てください。理由は、いきなり3Dアニメーションを作ると方向性がわからなくなり、無駄な作業が増える可能性があるからです。したがって実際の作業を始める準備として、必要なプロセスを理解しておきましょう。
2.モデリングで形を作る
3D制作はモデリングから開始します。モデリングとは簡単にいうと、作品に登場する建物やキャラクターなどを組み立てる作業のことです。デッサンに置き換えると、被写体の輪郭や形などを描く作業に該当するかもしれません。
3Dでのモデリングには奥行きも含まれるため使用しているソフトの視点を動かして、あらゆる方向からオブジェクト(モデリングをしている物体)を観察することが大切です。
下記の記事では3DCGモデリングについて詳しく解説しています。モデリングについてより詳しく理解したい方は、こちらも参考にしてください。
3.マテリアルで色や質感を設定する
モデリングが完了したら、マテリアルで色や質感などを設定します。キャラクターの肌や髪、洋服などの色を整えましょう。建造物を作る際は、壁や扉などの素材の質感も調整することが大切です。
例えばメタリックな物体を制作する際は、オブジェクトの反射率の数値をあげることで光沢を加えられます。また光を当てることで色や質感は変化するので、マテリアルの設定をする際はテストライティングを行いながら作業を進めるとよいでしょう。
4.テクスチャで表面の柄を作る
3Dにおけるテクスチャとは物体の質感ではなく、オブジェクト表面の柄を指すことが一般的です。例えば崖などの壁を作成するなら、石に近いテクスチャを使って表現する必要があるでしょう。
テクスチャはCGソフトで自作できますが、多くのクリエイターは専用の画像を使って設定することが多いようです。「Pply Haven」や「Texture Ninja」などには無料で利用できるテクスチャ素材が多数公開されているので、自分の作品にあった画像を使ってオブジェクトに貼り付けてみましょう。
5.リギングでボーン(骨)を加える
リギングとはモデリングを行ったキャラクターなどにボーン(骨)を加えて、どのような動きをするかをプログラムする作業のことです。
例えば人が走るシーンを作る際は、キャラクター全体にボーンを設定して、腕や足などを動かす設定を行います。人の関節や筋肉の動きを理解することで、よりリアルなアニメーションを作ることが可能です。
ただし適切なリギングを行うには高度なスキルが必要になります。そのため、まずは簡単な動きから作ってみてください。
6.スキニングでアニメーションを設定する
オブジェクトにボーン(骨)を加えたら、ボーンと一緒に動く部位を設定します。前述した人が走るシーンを作る際は、下半身のボーンと足が連動する動きをプログラムするイメージです。
また人物キャラクターだけではなく、海中で揺れ動く海藻などを作る際もオブジェクトにボーンを加えて、アニメーションを設定する必要があります。つまりリギングとスキニングは、アニメーションを作るうえでのセットの作業とも考えられるでしょう。
7.カメラワーク・ライティングを行う
アニメーションの設定まで完了したら、照明やカメラを起動して撮影を行います。CG制作ソフトには仮想空間で使用するカメラ機能が搭載されているので、適切な位置にカメラを設置してください。
キャラクターの動きに合わせてカメラの視点を変えながら撮影する場合は、カメラのアニメーション設定を事前に行う必要があります。またオブジェクトに光を当てる際は、明るさや影の入り方、物体の反射度合いなども確認しておきましょう。
8.レンダリングを行う
レンダリングとは、作成した3Dファイルを書き出す作業のことです。カメラで撮影した映像を保存して、動画編集ソフトでエフェクトやトランジションなどを加える作業に進みましょう。
ただし3Dのレンダリングはパソコンへの負荷が大きく、書き出しに時間がかかります。そのため3Dアニメーションを作る際はシーンごとに細かくレンダリングすることをおすすめします。
3Dアニメーション制作におすすめのソフト
ここでは、3Dアニメーション制作におすすめのソフトを紹介します。職種やクリエイターによって使うツールは異なりますが、一般的には下記のソフトが使用されています。
また下記の記事では、3Dを制作できるソフトについて詳しく解説しています。3Dアニメーション以外のCG制作にも興味のある方は、こちらも参考にしてください。
Blender
OS | Windows:8.1以降 mac:10.13以降 |
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料金 | 無料 |
メリット | 完全無料で使用できる 3D制作全般の機能を搭載 |
デメリット | AR・VRには対応していない |
Blenderは、完全無料で利用できる3DCG制作ソフトです。オープンソースのツールであり、プラグインを実装すればさまざまな機能を追加できます。本格的なCG作品も制作できるので、コストをかけずに3Dアニメーションを作りたい方に適切なソフトといえるでしょう。
YouTubeなどの動画配信サイトにはBlenderの使い方を紹介しているコンテンツも多数存在するので、独学での勉強も可能です。
VR・ARなどのファイルには対応していないため、メタバースなどの仮想空間制作には使用できません。しかし全ての機能を無料で利用できるソフトは少ないので、初心者の方はBlenderからチャレンジしてみるとよいでしょう。
参考:Blender.jp
MAYA
OS | Windows:10以降 mac:11 x以降 |
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料金 | 1ヶ月プラン:858,000円 1年プラン:286,000円 1ヶ月プラン:36,300円 (30日間の無料体験あり) |
メリット | 全てのCG制作に対応 操作方法が理解しやすい |
デメリット | ソフトが高額 |
MAYAは、CG制作業界やスクールなどで導入されている、シェア率の高い3D制作ソフトの一つです。アニメーションだけではなく建築業界のパースやファッション業界のデジタルファッション制作にも使用されており、汎用性の高いツールと考えられます。
MAYAを扱えることが採用条件になっている企業もあるため、CG業界への就職・転職を検討している方におすすめのソフトです。
ただしMAYAは有料ソフトであり、月間・年間の使用料がやや高額な傾向があります。そのためMAYAを本格的に勉強したい方は、自分の経済状況に負担がないか確認したうえで、まずは無料体験を利用してください。
参考:Autodesk
CINEMA 4D
OS | Windows:10以降 mac:11 x以降 |
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料金 | 契約会社によって変動 |
メリット | 全てのCG制作に対応 比較的簡単に操作できる Adobe製品と連動して利用できる |
デメリット | 映画やアニメなどの制作にはやや不向き |
CINEMA 4Dは海外での映像制作業界での人気のソフトであり、直感的に操作できることが魅力の一つです。3Dを使った映像演出である「モーショングラフィックス」の制作に特化したツールでもあり、ゲーム業界のエフェクターにも愛用されています。Adobeソフトと連動して利用できるため、After Effectsなどを使っている方にもおすすめです。
ただしCINEMA 4だけ3Dアニメーションを完結させるには、細かい機能に物足りなさを感じるかもしれません。とはいえ操作性には優れているので、無料体験を活用して自分にあっているか確認してみましょう。
初心者が3Dアニメーションを作るコツ
3Dアニメーションの作り方は理解したものの、「未経験でも作れるのかな…?」と気になる方もいらっしゃるでしょう。ここでは初心者の方におすすめの、3Dアニメーションを作るコツを紹介します。具体的には下記の通りです。
- 参考モデルをしっかりと観察する
- 簡単なアニメーションから作成する
順番に解説します。
参考モデルをしっかりと観察する
3Dの良し悪しはモデリングで決まるといっても過言ではありません。したがって、まずは作りたい物体をしっかりと観察して、特徴や質感、形を適切に理解することが大切です。例えばCGで人間を作る場合、実際の人の肌を観察すると「肌色」のなかには、黄色や薄いピンクなどが混じっていることがわかります。
また実際に存在しない「宇宙船」などをモデリングする際は、絵に書き起こしてから作業を始めるとよいでしょう。イメージだけでCG制作を行うと味気ない作品になる可能性があるので、まずは観察力を高める努力をしてみてください。
簡単なアニメーションから作成する
3Dアニメーション制作には、複雑な作業が多数存在します。そのため、いきなり難易度の高いアニメーション作りに手を出すと挫折する可能性があるのです。
例えば初心者の場合、簡単な関数の設定で動かせる「海」や「川」などの制作から始めてみるとよいでしょう。ボーンを使ってアニメーションを作る場合は、単調な動作から制作して、使い方を徐々に理解するとよいかもしれません。
3Dアニメーション制作の注意点
3Dアニメーションを作る際は、下記の2つに注意しましょう。
- スペックの高いパソコンが必要になる
- ソフトによって機能・特徴が異なる
順番に解説します。
スペックの高いパソコンが必要にある
3D制作はパソコンへの負荷が大きい作業です。スペックの低いパソコンでは適切な制作プロセスが実行できません。ソフトが動作しないだけではなくパソコン本体が故障する可能性もあるので、3Dアニメーション制作は下記に記以上のスペックのパソコンを使用しましょう。
名称 | 推奨スペック |
---|---|
CPU | Core i7-14900K以上 |
GPU | GeForce RTX4000以上 |
メモリ | 32GB以上 |
一般的なパソコンに比べると、ハイスペックPCの値段は高くなります。しかし「メルカリ」や「ラクマ」などでは比較的安価で購入できるので、コストを下げたい方はフリーマーケットサービスを活用してみてください。
ソフトによって機能・特徴が異なる
3D制作ソフトは各ツールによって機能や特徴が異なります。例えば「Blender」は3Gアニメーション全般の機能を搭載しているうえ無料で利用できますが、ARやVRの制作には不向きです。「MAYA」であればCG制作を完結できますが、ソフトの使い方は難しいと感じるかもしれません。
また、モデリングやエフェクト制作に重点をおいている「特化型」のソフトも存在します。作りたい作品に合わせて適切なソフトを使用しましょう。
3Dアニメーションに関するよくある質問
最後に、3Dアニメーションに関するよくある質問を紹介します。
3Dアニメーションはスマホでも作れる?
「SculptGL」や「Penzil」などのスマホアプリを活用すれば、簡単な3Dアニメーションを作成することは可能です。しかしより細かいモデリングやエフェクト作成などには、パソコンのソフトを使用する必要があります。
初心者におすすめのソフトは?
人によっても異なりますが、まずはコストが発生しない「Blender」から試してみるとよいでしょう。理由は、3DCG制作に必要な機能が全て利用できるからです。しかしCG制作をしている企業への就職などを検討している方は、「MAYA」を勉強するとよいかもしれません。
スキルを身につけて3Dアニメーションを作ってみよう!
3Dアニメーションを作るには、一定のスキルや適切なソフトが必要です。スペックの高いパソコンは必要ですが、スキルを身につけるとさまざまな業界で活躍できるチャンスがあります。映像制作に興味のある方は、ぜひチャレンジしてみてください。
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