IT業界には多様な働き方があり、ITエンジニアにも「客先常駐」という働き方が存在します。客先常駐は「大変」という声もありますが、経験の浅いエンジニアにとってはメリットの大きい働き方の1つです。
今回は、客先常駐(SES)の働き方やメリット・デメリット、向いている人やキャリアパスについて解説します。
客先常駐(SES)とは?
客先常駐とは、クライアント先(客先)に常駐して働く勤務形態のことを指します。実機での作業やセキュリティ対策が求められるIT業界で多く見られる働き方の1つです。
SES(システムエンジニアリングサービス)は、企業がエンジニアの技術力・労働力をクライアント先に提供するサービスです。SES契約では、基本的に成果物に対する責任は負わず、出向されたエンジニアの業務に対して報酬が支払われます。
つまり、客先常駐(SES)とは、SESサービスの提供元企業に所属しているエンジニアがクライアント先に派遣されて働くことを意味します。この記事では、このSESにおける客先常駐について解説していきます。
客先常駐と派遣社員の違い
客先常駐(SES)とよく似た働き方に派遣がありますが、2つの主な違いは「雇用主」と「指揮命令権の持ち主」です。
客先常駐は「正社員」や「契約社員」(アルバイト等も含む)として所属するSES企業と、派遣は「派遣社員」として登録している派遣会社と雇用契約を結びます。また、SES契約では出向元の企業が指揮命令権を持ち、業務を遂行するのに対し、派遣では派遣先企業に指揮命令権があります。
客先常駐のメリット
エンジニアが客先常駐で働くメリットは、以下の5つです。
- さまざまな経験が積める
- 未経験も入社しやすい
- 引き抜いてもらえる可能性がある
- 収入が安定しやすい
- 常駐先エンジニアと交流など出会いがある
それぞれのメリットについて見ていきましょう。
さまざまな経験が積める
大手企業をはじめとしたさまざまな業界・企業で経験を積めるのは、客先常駐の大きなメリットです。自社で働くのとは異なり、数ヵ月から数年という短期間で現場が変わるため、同じ職種でも常駐先のプロジェクト内容や開発環境によって多種多様なスキルや知識が身につきます。
また、企業ごとのビジネスモデルや雰囲気なども学べて、社会人としての視野も広がるため、今後転職を検討する際に自分に合った職場選びがしやすくなるでしょう。
未経験も入社しやすい
専門職であるエンジニアの転職では、求職者に高いスキルや経験を求めている企業も少なくありません。しかし、客先常駐は下流工程の業務を担当することが多く、SES企業は実務未経験者でも入社しやすい傾向にあります。
また、SES企業は人材を確保することで成り立つサービスを運営しているため、未経験でも積極的に受け入れてくれる企業が多いです。さらに育成体制が整っているケースも多く、未経験の状態から正社員のエンジニアに挑戦したい人には嬉しい選択肢でしょう。
引き抜いてもらえる可能性がある
働く姿勢やスキルが常駐先で評価されれば、常駐先企業の正社員として引き抜いてもらえる可能性もあります。人材採用にはコストや労力がかかり、ミスマッチが起きないよう慎重になる必要があるため、既に自社で働いている姿を見てから採用できるのは企業としても好都合なのです。
企業規模や条件によっては、給与が上がる可能性もあり、キャリアアップにつながるでしょう。ただ、よほど優秀な人材や企業にマッチした人間性の持ち主でなければ、引き抜いてもらえるのは難しいのが現状です。
収入が安定しやすい
世の中のDX化が推進されていく一方で、IT業界は慢性的な人材不足が課題となっています。そのため、SES企業に所属しているうえで仕事がなくなるという状況には陥りにくく、収入も安定しやすいでしょう。
また、仮に常駐先が見つからない「待機期間」に入ったとしても、企業によっては給料を100%支給してくれる場合もあります。最低でも月給の60%*1は支給されるため、無給になる期間はありません。働いていない期間は無給になる派遣社員に比べて、収入が途絶えるという不安はなくなるでしょう。
常駐先エンジニアと交流など出会いがある
短期間で勤務先が変わる客先常駐は、さまざまな企業で一緒に働くエンジニアとの出会いがあります。人脈が広がれば、新しい発見があったり、フリーランスとして独立した際に案件を紹介してもらえたりする可能性があるため、客先常駐で得られる大きなメリットの1つと言えるでしょう。
さまざまなエンジニアとの出会いは刺激にもなり、今後のキャリアやプライベートを左右するような出会いもあるかもしれません。客先常駐で働く際には、積極的に交流を深めるとよいでしょう。
客先常駐のデメリット
客先常駐には、上記で紹介したメリットに対し、以下のデメリットも存在します。
- スキルアップしにくい可能性がある
- マネジメント力が磨けない場合がある
- 昇給が見込めないことがある
自分に合った仕事を選ぶためには、客先常駐として働くデメリットもしっかりと理解することが大切です。それぞれ解説するので、参考にしてみてください。
スキルアップしにくい可能性がある
常駐先によっては、簡単な作業を多く任されるケースもあり、なかなかスキルアップしにくい可能性があります。たとえば、ひたすらテストを繰り返したり、運用をメインに担当したりする場合もあるでしょう。
また、多くの現場で経験を積めるのはメリットでもありますが、一貫した作業を経験しにくい点はデメリットにもなります。常駐先の企業に必要とされるスキルや知識を身につけたとしても、次の現場で活かせるとは限らないため、着実にスキルアップしていくのは難しいこともあるでしょう。
マネジメント力が磨けない場合がある
機密性の高い仕事やプロジェクトを統括するような仕事は、自社の正社員が担当する場合が多く、客先常駐は下流工程の仕事を任されることが多い傾向にあります。そのため、マネジメント力や設計力といった上流工程で得られるスキルは磨けない可能性が高いです。
もちろん、企業によってはスキルや働く姿勢を見て上流工程の仕事を任せてもらえるケースもあります。しかし、そもそもスキルをアピールできないような仕事内容では実現が難しく、マネジメント力などの上流工程で得られるスキルは磨けない場合もあると考えておくとよいでしょう。
昇給が見込めないことがある
客先常駐は収入が安定するというメリットがある一方で、昇給が見込めないことがあるといったデメリットもあります。原因としては、契約期間によるキャリアの断絶と客先常駐における評価体制の2つがあります。
常駐先でのスキルが身についてきたり大きなプロジェクトに参入できたりした場合でも、契約期間が終わってしまえば、別の常駐先でまた一からのスタートになります。そのため、継続的なスキルアップが難しいことと並行して昇給も見込みにくいのです。
また、仕事の評価は所属企業が常駐先からの報告を受けて行います。実際に評価する人が働く様子を見ていないため、正当な評価を受けにくいのも特徴です。
客先常駐に向いている人
客先常駐に向いている人は、エンジニアとしての現場経験を多く積み、さまざまな知識やスキルを身につけていきたいと考えている人です。また、コミュニケーション能力が高く、職場環境や人間関係がリセットされても苦にならないような人も向いているでしょう。
スキルアップがしにくいと言われている客先常駐でも、経験を積みながらスキル向上を怠らなければ、転職をしてキャリアアップを目指せる可能性があります。エンジニアとしての経験が浅く、正社員として働きながら実務経験を積みたい人にはおすすめの働き方です。
客先常駐からのキャリアパス
客先常駐からのキャリアの積み方としては、自社開発をしている企業のSEや社内SE、他のエンジニア職へ転職する道があります。
さらに上流工程を経験したい場合は、1つの企業で企画・設計・開発を担当できる自社開発のSEを目指すのがおすすめです。客先常駐での経験を活かして1つの分野を極めて行きたい場合は、Webエンジニアやネットワークエンジニアなどの専門性の高い職種へのキャリアアップを目指すのもよいでしょう。
また、客先常駐を経て、フリーランスとして独立するという道もあります。客先常駐での働き方は、クライアントごとに仕事内容が変わるフリーランスと似ているため、スムーズに対応できるでしょう。
以下の記事でエンジニアのキャリアパスの事例やポイントを解説しているので、あわせて参考にしてみてください。
エンジニア常駐以外のIT系クリエイティブ職の働き方
IT業界では、エンジニア常駐(SES)の他に、IT系クリエイティブ職でも多様な働き方が広がっています。
たとえば、女性向けキャリアスクールSHElikes(シーライクス)を運営するSHE株式会社では、SHElikes現役受講生と即戦力人材を求める企業のマッチングサービス「SHE WORKS」を提供しています。
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このように多様な働き方があるIT業界。これからIT・Web系のスキル習得を目指す方は、ぜひ自分に合った働き方を選んでみてください。
客先常駐(SES)とは、IT業界における多様な働き方の1つ
客先常駐(SES)とは、SES企業に所属しているエンジニアがクライアント先に常駐して働くことです。SES企業は未経験でも入社しやすく、現場経験を積みたいエンジニアにとってはピッタリな働き方でしょう。
また、近年はエンジニアの客先常駐以外に、IT系クリエイティブ職の働き方も多様化しています。女性向けキャリアスクールSHElikesでは、全45以上の豊富な職種スキルから自由に組み合わせて学べるため、多様化した働き方にも対応できる実践的なスキルを複合的に身につけることができます。
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※出典
*1:厚生労働省「労働基準法 第二十六条」より