近年、企業のデジタルマーケティング戦略のひとつとして、オウンドメディアが注目されています。オウンドメディアを効果的に運用することで、企業のブランディングや集客効果が期待できます。
しかし、0からメディアを立ち上げるには何からすべきか、どのようなコンテンツを制作するのか、イメージが湧かない人もいるのではないでしょうか。
今回はオウンドメディアを立ち上げる土台作りとなる、戦略の立て方について解説します。オウンドメディアの運用に成功した事例も紹介しているので、最後までチェックし参考にしてみてください。
オウンドメディアの戦略とは
オウンドメディアを効果的に運用するためには、戦略を設計することが重要です。戦略設計をしっかり立てるためにも、まずはオウンドメディアについて理解していきましょう。
そもそもオウンドメディアとは
オウンドメディアとは、自社で保有・管理するメディアのことです。近年では、ブログやWebマガジン、情報発信サイトなどをオウンドメディアとして運用する企業が増えています。
混同されやすいホームページとの違いについても整理しておきましょう。ホームページは、企業概要や商品・サービス紹介、採用情報など企業そのものの情報を公開することを目的としています。
一方、オウンドメディアはブランディングやナーチャリング(顧客育成)を目的にしている場合が多く、企業と顧客の関係性構築につながるようなコンテンツの発信をします。
オウンドメディアの目的
オウンドメディアの目的について、もう少し具体的に掘り下げて解説します。大きく下記の2つの目的で運用することが多いです。
- リード獲得
- ブランディング
目的として一番多いのがリード獲得(見込み顧客の獲得)です。自社のターゲット層に価値のある情報を提供することで見込み顧客との関係構築を行い、自社商品・サービスの認知度向上や売上拡大へつなげます。
また、企業自体のブランディングを目的に運用しているオウンドメディアも増えています。コンテンツを通して企業のコンセプトや考え方を伝えることで、「◯◯といえばこの企業」といったブランドイメージの定着につなげます。
オウンドメディア戦略の設計手順
続いて、オウンドメディア戦略の設計手順について解説します。メディアを立ち上げる際、下記の手順でしっかり戦略立てを行い土台作りをすることが大切です。
- 現状分析をおこなう
- フェーズごとの目的を明確にする
- KGI/KPIを設定する
- ペルソナを設計する
- カスタマージャーニーを設計する
- 具体的な施策を考える
- スケジュールを組む
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.現状分析をおこなう
効果的な戦略を立てるために、まずは現状分析を行うことが重要です。戦略全体の質にも影響する部分なので、時間をかけてしっかり行いましょう。
自社分析と競合分析を行ったうえで解決したい課題を洗い出していきます。分析を行うには、マーケティングのフレームワークを使うのが効果的です。たとえば、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の視点から分析する3C分析や、「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販売促進)」から分析する4P分析は代表的なフレームワークです。
現状分析を行うには、上記のような基本的なマーケティングの知識や考え方が必要になるでしょう。
2.フェーズごとの目的を明確にする
中長期的な取り組みになることが多いオウンドメディアの運用では、各フェーズごとにコンテンツの目的を明確にしておくことが大切です。
たとえば立ち上げ段階である最初のフェーズでは、メディアの基盤作りを目的としてコンテンツの制作本数などを指標に取り組むことが多いです。ある程度基盤ができれば、次の段階としてメディアの認知拡大を目的にし、その後はユーザーとの関係構築を目的にコンテンツの質向上に注力していきます。
オウンドメディアの運用はすぐに効果が出ることが少ないからこそ、上記の例のようにそれぞれのフェーズで運用の目的を明確にしたうえで、最終的なゴールに向かうことが大切です。
3.KGI/KPIを設定する
最終的な経営目標達成指標である「KGI」と、KGIを達成するまでの各プロセスでの中間目標である「KPI」を設定しましょう。
まずは最終ゴールであるKGIを設定します。その後に、KGIを達成するためにはいつまでに何を達成すべきかを逆算し、フェーズごとにKPIを設定しましょう。また、前述の2で定めた「各フェーズごとのメディアの目的」にも立ち返り、新規ユーザー数やPV数、読了率、サイト内の回遊率など具体的な数字を用いて考えるとよいでしょう。
4.ペルソナを設計する
ユーザーに求められるコンテンツを作るために、ペルソナを設計することは非常に重要な作業です。
ターゲットと混同されがちなペルソナですが、両者は区別して理解しておきたいところです。ターゲットはサービスを届けたい「集団」を指し、20代・女性・会社員など当てはまる人が複数人含まれる属性で設定します。一方ペルソナは、サービスを届けたい「架空の人物像」で、「25歳の女性で、営業職をしていて都内で一人暮らしをしている」のように1人の人間を想定して細かく設定するイメージです。
ペルソナ設計を行うことで、届けたい相手が求めているものを理解しやすくなります。それがコンテンツの質向上にもつながり、メディアや自社のファン獲得にも効果をもたらすでしょう。
5.カスタマージャーニーを設計する
続いて、ペルソナをもとにカスタマージャーニーを設計します。カスタマージャーニーとは、顧客が商品を知ってから購入するまでの道のりを整理し可視化したものです。
例として、下記のようなフローで顧客の行動や感情の変化を言語化します。
- ニーズ・課題認識
- 商品認知
- 比較検討
- 購入・利用
- 共有・拡散
中長期的な取り組みになることが多いオウンドメディアの運用では、途中で方向性を見失ってしまうケースも少なくありません。カスタマージャーニーを参考に、今は何を届けたいのか見直しながら運用することで、長い道のりでもやるべきことを的確に考えられるようになるでしょう。
6.具体的な施策を考える
現状分析やペルソナ設計を経て、施策を考えるためのタネが揃ってきました。いよいよ、発信するコンテンツや内容を具体的に検討していきます。
コンテンツや発信方法は、記事、動画、音声配信などさまざまな手法があります。また、フェーズによってユーザーが求める内容も変わるでしょう。ここまで設計したペルソナやカスタマージャーニーをもとに、届けたい相手がどのような行動を取るのか、何を考えているのかを想像しながら適切なコンテンツや発信内容を考えましょう。
どれだけクオリティの高い内容であっても、ユーザーが求めている内容でないと意味がありません。ユーザーが求めているものを汲み取り形にするためにも、やはりペルソナ設計やカスタマージャーニーなどの土台作りは大切です。
7.スケジュールを組む
最後に、運用スタートに向けてスケジュールを組みましょう。KGI・KPIをもとに全体のスケジュールを決め、スムーズに運用できるように各作業やスタッフごとのスケジュールも決定していきます。
計画通りに運用を進めるためには、どのくらいのリソースを確保すべきかを明確にしておくことも大切です。各作業にどのくらいの工数が必要なのかや、何ができるスタッフが必要なのかもスケジュールを組む段階で洗い出しておきましょう。そのうえで必要であれば外注する部分を決めたり、スタッフを選定したりする必要があります。
決定したスケジュールや担当業務、運用・コンテンツ制作のフローなどは表を作って管理しておくと、運用が始まってからもスムーズに進められるでしょう。
オウンドメディア戦略を実行する際のポイント
戦略を設計し、いよいよオウンドメディアの運用をスタートさせていきます。ここまでに立てた戦略の効果を最大限に引き出すためには、運用を実行する際に下記のポイントをおさえておくとよいでしょう。
定期的な効果検証・改善を欠かさない
オウンドメディアを効果的に運用するためには、ただコンテンツを作るだけではなく定期的な効果検証と改善を繰り返すことが大切です。
サイトへのアクセス数や伸びているコンテンツを確認したり、ユーザーの属性を分析したりすることで、その後の運用に生かせるヒントが見えてくるでしょう。
オウンドメディアの運用は、効果が出るまでに時間がかかることが多いです。効果検証と改善を繰り返し、軌道修正しながら小さな結果を積み上げ続けていくことで、結果的に大きな成果にもつながるでしょう。
ニーズを満たすコンテンツ作りを心がける
ユーザーにとって価値のあるオウンドメディアを目指すには、ニーズを満たすコンテンツを制作し続ける必要があります。どれだけたくさんのコンテンツを制作しても、求められている情報でなければユーザーは離れてしまうかもしれません。
届けたい相手がどのような情報を求めているのか適切に理解し、コンテンツの内容に落とし込んでいきましょう。そのためにも、ペルソナ設計をはじめに細かく行っておくことで「届けたい相手がどのような行動を取り、何を求めているのか」を想像しやすくなります。
ペルソナの行動や心理を徹底的に深掘りしたり、実際に配信したコンテンツの効果検証をしたりして、届けたい相手が求めているコンテンツを制作し続けましょう。
運用体制を整えておく
長期的に安定した運用を行うために、運用体制を整えておくことも大切です。発生する業務を洗い出し、運用の流れや体制をあらかじめ具体的に策定しておきましょう。オウンドメディア運用の場合、一例として下記のような役割・業務が発生します。
- 全体統括・編集長
- コンテンツ制作者(ライター、デザイナーなど)
- ディレクター
- 数値や企画の管理者・マーケター
幅広い業務が発生するオウンドメディアの運用は、チームで行うことがほとんどです。それぞれの役割に人員配置を行い、円滑に連携できるように担当業務の割り振りをしておきましょう。必要であれば部分的な外注も検討し、レギュレーションを明確にしておくことをおすすめします。
オウンドメディアの成功事例
オウンドメディアの成功事例をご紹介します。実際にオウンドメディアを運用する際にも参考にできるものなので、ぜひチェックしてみてください。
企業のブランディングと採用促進へつなげた「サイボウズ式」
業務効率化を推進するソフトウェア開発を行うサイボウズ株式会社の事例です。オウンドメディア「サイボウズ式」では“新しい価値を生み出すチームのメディア”をテーマに、働き方や生き方に関するコンテンツを発信しています。
「サイボウズ式」はブランディングを目的にしながらも、自社製品のPRはほとんどしておらず、働き方や生き方に関するインタビューやコラム記事の制作などを行っています。一見、企業とサービスとは関係ないようにも感じますが、ターゲットとなるユーザーにとっては価値のあるコンテンツが発信されています。
その結果、メディア自体のファンが増え、目的であった企業のブランディング・認知度向上と、さらに採用面のブランディングにもつながりました。ユーザー目線を徹底したオウンドメディアの代表的な成功例だと言えるでしょう。
オウンドメディアの作り方
ここまで、オウンドメディアの戦略設計について解説してきました。戦略を立て土台が完成すれば、実際にメディアを作っていきます。オウンドメディアを立ち上げるには何からすればよいのでしょうか。大まかに、下記の流れで立ち上げを行います。
- ドメイン取得、サーバー環境設定
- サイトデザインの決定
- CMSの決定・構築
- コンテンツの制作・運用
上記の工程を自社で完結させるケースもありますが、社内に専門的な知識を持つ人がいない場合、Web制作会社など外部に制作を依頼する方法もあります。メディアの構築までを外注し運用は自社で行うパターンや、構築から運用まですべて外注するパターンなど、どの工程を自社で行うかは場合によって異なります。
オウンドメディアの作り方は下記の記事で紹介しているので、これから自社で立ち上げを検討している方はぜひ読んでみてくださいね。
戦略を立てて、オウンドメディアを運用しよう!
オウンドメディアの運用を成功させるには、根拠のある戦略立てとそれをできるようにするためのスキル・知識が必要です。紹介した事例でも、ユーザー目線に立ち戦略に沿ってコンテンツを制作することで、高い効果が得られていましたね。
全45以上の職種スキルを学べるSHElikes(シーライクス)なら、オウンドメディアの戦略立てに役立つマーケティングはもちろん、Webデザインやライティング、動画編集などコンテンツ制作のスキルまで身につけることができます。戦略立てから制作まで、一連のスキルがまるっと学べるのは心強いポイントではないでしょうか。
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