プロジェクトを成功へと導くマネジメントのためには、適切な管理手法で進めていくことが大切です。なかでも「PMBOK」は、効果的なプロジェクトマネジメントには欠かせないといわれていますが、いったいどのような管理手法なのでしょうか。
本記事では、プロジェクトマネジメントを円滑に進めるための方法を体系的にまとめたPMBOKの管理手法のほか、PMBOKの学習に活かせるPMP®︎資格やおすすめの本まで解説しています。
プロジェクトマネジメントのスキルを高めたいと考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
プロジェクトマネジメントとは
プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトの目標を達成するため、あらゆるリソースをマネジメントかつコントロールすることを指し、プロジェクト管理とも表現します。
プロジェクトの成功を測るためには、以下に紹介するQCDのバランスを適切に管理することが大切です。
- Quality(品質)
- プロジェクトの成果物が求められる品質を満たしているかを評価
- Cost(コスト)
- プロジェクトの実行にかかる費用を管理
- Delivary(納期)
- プロジェクトのスケジュールを管理
これらの3つの要素をバランスよく管理することにより、プロジェクトの成功率を高められます。QCDのバランスが取れていないと、成果物の品質低下やコストの増加、また納期の遅延といったリスクが生じるでしょう。
PMBOKとは
PMBOKは、プロジェクトマネジメントの育成や標準策定などを行う米国の非営利団体PMI(Project Management Institute)が発行するガイドを指し、読み方はピンボックです。プロジェクトマネジメントの標準的な管理手法が定義されており、マネジメントのために何をすべきかを明らかにするベストプラクティスとして活用されています。
プロジェクトマネジメントの理論と実践のバランスを取ることを目的として、作成されているPMBOKガイドは、1987年にはじめて公表され現在では第7版が発行されました。今では標準的ガイドラインとして、世界中のプロジェクトマネージャーから活用されています。
PMBOKの管理手法とは
PMBOKを活用するためには、以下に紹介する管理手法について理解する必要があります。
それぞれ詳しく解説します。
PMBOKの目標
PMBOK第6版の目標は、QCD管理の達成でした。しかし、最新版のPMBOK第7版では、プロジェクトのゴールを「価値の提供」と変更されています。マニュアル通りの成果物を作ることに重点を置く考え方から、プロジェクト遂行にあたり、臨機応変な対応のもと価値を提供することにシフトしたといえるでしょう。
プロジェクトの遂行により求められるものは、時代の変化とともに変化していきます。この変化をキャッチし、ベストな管理手法を定義するのがPMBOKガイドです。
【PMBOK】5つのプロセス
PMBOKガイドでは、プロジェクトマネジメントのプロセスを以下の5つのプロセス群に分類しています。
- 立ち上げ
- 計画
- 実行
- 監視・管理
- 終結
それでは、一つずつ解説します。
1.立ち上げ
立ち上げのプロセスは、プロジェクトやプロジェクトフェーズの開始を定義し、必要な承認を得るために行います。たとえば、プロジェクトにおける目的や目標のほか、予算や成果などを定義し、プロジェクト憲章の作成やステークホルダーを特定します。
ちなみに、プロジェクトの立ち上げには、トップダウン型プロジェクトとボトムアップ型プロジェクトの2種類があります。
2.計画
プロジェクトマネジメントにおける計画は、プロジェクトの目標を設定し、達成するための実行計画を策定するプロセスです。たとえば、以下のような要素について計画を作成します。
- スコープ
- スケジュール
- コスト
- 品質
- リスク
- リソース
- コミュニケーション
- 調達
- ステークホルダー
上記の要素について、プロジェクト計画書を作成し、目標達成に向けて実行していきます。
3.実行
実行のプロセスは、計画したプロジェクトを実行し、プロジェクトの成果物を作成するための活動です。たとえば、チームのマネジメントや品質保証のほか、コミュニケーション管理やステークホルダーの関与および調達の実施などが含まれます。
ちなみに、5つのプロセスのうち最もリソースを消費するプロセスのため、進捗状況に応じて、適宜計画の修正や更新が必要です。
4.監視・管理
監視・管理とは、プロジェクトの進捗を監視し、計画に対する実績の評価や調整を行うプロセスをいいます。たとえば、スコープや各種リソース、また変更要求の処理やパフォーマンスの報告などが含まれます。
プロジェクトを進めていくにあたり、実際の作業と計画に差異が生じないかをチェックする過程のため、プロジェクトの正式な完了に欠かせないプロセスといえるでしょう。
5.終結
終結のプロセスでは、プロセスが規定通りに完了しているかを検証し、プロジェクトや工程を正式に完了させます。たとえば、プロジェクトの終結報告書の作成や契約の締結などです。
しかし、ただプロジェクトや工程を完了させることが目的ではありません。プロジェクトの過程で獲得したノウハウや教訓を文書などに保管し、次のプロジェクトに活かすことが重要とされています。
【PMBOK 】10の知識エリア
PMBOKの10の知識エリアとは、プロジェクトを完了させるための重要な要素を体系的に整理したものです。以下に紹介する各知識エリアは、【PMBOK】5つのプロセスに関する内容をカバーしています。
- 統合管理
- スコープ管理
- スケジュール管理
- 品質管理
- コスト管理
- 資源管理
- コミュニケーション管理
- リスク管理
- 調達管理
- ステークホルダー管理
それぞれ詳しく解説します。
1.統合管理
統合管理とは、プロジェクト全体を統合し、目的を達成するためのプロセスを調整したり管理したりする分野です。プロジェクト憲章の作成や計画の策定、プロジェクトの指揮やマネジメントなど、プロジェクトの終結まで行います。
統合管理という名のとおり、他の9つの知識エリアをそれぞれ統合し、マネジメントする位置付けです。
2.スコープ管理
スコープ管理とは、プロジェクトのスコープを明確に定義し、スコープが変更されないよう管理することを目的とします。スコープ管理計画の作成や要求事項の収集、WBS(作業分解構成図)の作成などを行う分野です。
この分野は、プロジェクトの成果に大きく関わる部分であり、10の知識エリアにおいて最も重要な項目であるともいわれています。
3.スケジュール管理
スケジュール管理とは、プロジェクトのスケジュールを計画し、進捗を管理することをいいます。スケジュール管理計画書の作成やアクティビティの定義、またスケジュールのコントロールなどを行う分野です。
プロジェクトを成功させるためには、生産性の向上やスケジュール管理が必須。適宜スケジュールを調整しながら、成果を高める役割を担っています。
4.コスト管理
コスト管理とは、プロジェクトのコストを計画し、予算内でプロジェクトを完了させるように管理することです。たとえば、コスト管理計画の作成やコストの見積もりのほか、コストのコントロールなどを行います。
プロジェクトの成功および品質の高い成果物を作成するためには、プロジェクト費用を適切に見積もり、管理することが大切です。
5.品質管理
品質管理とは、プロジェクトの成果物が品質基準を満たすように管理することを指します。たとえば、品質管理計画の作成や品質保証、また品質コントロールなどの役割を担う改善活動です。
クライアントの要求と合致した成果物を作り上げるために、品質を管理する方針や計画をたて実行する分野といえます。
6.資源管理
資源管理とは、プロジェクトに必要な人的および物的資源を計画し管理することです。資源管理計画の作成や資源の見積もりのほか、資源の取得やコントロールなどが含まれます。
プロジェクトの成功のためには、人的および物的資源の調達・管理が重要です。適宜、人材および物的資源を調整しながら、計画を実行するとより成果をあげやすいプロジェクトマネジメントが可能となるでしょう。
7.コミュニケーション管理
コミュニケーション管理とは、プロジェクトの成功のために、ステークホルダーとのスムーズなコミュニケーションを管理することです。プロジェクトの情報伝達の計画や管理を目的としています。
実施内容は、コミュニケーション管理計画の作成やコミュニケーションの管理および監視です。ただ情報伝達するのではなく、プロジェクト関係者からの理解を得ながら管理することが大切といえるでしょう。
8.リスク管理
リスク管理とは、プロジェクトのリスクを特定し、評価および対応策を管理することを指します。実施内容は、リスク管理計画の作成やリスクの特定、またリスクの定性的・定量的分析や管理などです。
ただ、リスクを回避することに集中してしまうと、機会損失の可能性も高まってしまいます。そのため、プロジェクトに関わるリスクは、適切に管理し調整することが重要といえるでしょう。
9.調達管理
調達管理とは、プロジェクトに必要な物品やサービスの調達を計画し、管理することをいいます。調達管理計画の作成や調達作業、また調達のコントロールなどを行う分野です。
この分野では、プロジェクト業務を進めるなかで、適宜必要なサービスやプロダクトの調達を行い、円滑な終結を迎えられるよう管理します。
10.ステークホルダー管理
ステークホルダー管理とは、プロジェクトのステークホルダーを特定および関与させ、管理していくことを指します。ステークホルダー管理計画の作成やステークホルダーの特定、また管理などを行う分野です。
プロジェクトの成功には、社内外を問わずさまざまなステークホルダーを管理する必要があるため、非常に重要な管理のひとつです。
PMBOKが身に付くPMP®️資格とは
つぎに、プロジェクトマネジメントにおける標準手法のPMBOKが身に付く「PMP®️資格」について紹介します。
主催団体 | プロジェクトマネジメント協会 (Project Management Institute:PMI) |
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出題範囲 | 人・プロセス・ビジネスのドメインより出題 |
受験資格 | 1.1)大学卒業またはそれに相当する資格保有者。直近3年以上かつ4,500時間以上の実務経験があること 2)高校卒業またはそれに相当する資格保有者。直近8年間に5年以上かつ7,500時間以上の実務経験があること 2.35時間以上の公式なプロジェクトマネジメント研修の受 |
試験形式 | オンライン試験もしくはピアソンVUE試験会場 |
受験費用 | PMI会員/再受験:405ドル/275ドル PMI非会員/再受験:555ドル/375ドル |
PMP®︎資格は、Project Management Professionalの略で、プロジェクトマネジメントに関する専門知識やスキルの証明に役立つ資格です。PMBOKは当資格の主催団体であるPMIが発行しているガイドであり、PMP®︎資格の試験内容はPMBOKガイドをベースに作成されています。そのため、PMP®️資格の取得は、PMBOKに関する知識を習得することでもあるといえます。
受験には、一定時間以上のプロジェクトマネジメント実務経験が必要なため、プロジェクトマネジメントスキルを高めたいという方におすすめな資格です。
PMP®️資格取得によるメリット3つ
PMP®︎資格は、プロジェクトマネジメントスキルの証明に役立つことがおわかりいただけたのではないでしょうか。しかし、以下に示したとおり、資格取得によるメリットはこれだけではありません。
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
実務経験に活かせる
PMP®️資格の試験は、プロジェクトマネジメントの標準的管理手法であるPMBOKガイドをもとに作成されています。そのため、プロジェクトマネジメントの実務経験に加え、より専門的な管理手法の学習および知識の習得が可能です。
資格取得のための学習によって、プロジェクトのスコープや各種資源などを効果的に計画・管理するスキルが向上し、実務経験に活かせるでしょう。
キャリアアップにつながる
国際資格であるPMP®︎資格は、プロジェクトマネジメント以外のビジネスシーンにおいても活用できることで知られています。そのため、PMP®︎資格を保有するプロジェクトマネージャーを求める企業もあるほど、需要の高い資格です。
資格取得によって実務経験に活かせるだけでなく、需要の高さからキャリアアップの機会にもつながりやすい資格といえます。
年収アップにつながる
実務経験に活かせキャリアアップにもつながりやすい資格のため、必然的に年収アップにつながる可能性が期待できます。実際に、PMP®️資格を保有するプロジェクトマネージャーは、未保有のプロジェクトマネージャーよりも、給与の中央値が高い傾向にあることがわかっています。
これらのことから、PMP®️資格の市場価値の高さやスキル向上につながるメリットをお分かりいただけたのではないでしょうか。
【PMBOK(第7版)対応】プロジェクトマネジメントおすすめ本5選
ここからは、プロジェクトマネジメントの学習におすすめな本を5つ紹介します。
- 『改訂7版 PMプロジェクトマネジメント PMBOK®︎ガイド対応』著:中嶋秀隆
- 『PMBOK第7版実践活用術』著:中谷公巳
- 『図解入門 よくわかる 最新PMBOK第7版の活用』著:鈴木安而
- 『プロジェクトマネジメント標準PMBOK入門』著:広兼修
- 『PM教科書 PMP完全攻略テキスト PMBOKガイド第7版対応 改訂版』著:鈴木安而
それぞれの見どころやおすすめのポイントについて、詳しく紹介します。
『改訂7版 PMプロジェクトマネジメント PMBOK®︎ガイド対応』著:中谷公巳
本書は、2021年7月に発行されたPMBOKガイド第7版対応の解説本です。ウォーターフォール型プロジェクトの基礎について触れた内容となっており、事例や管理用フォーマットなど、充実したコンテンツが揃っています。
また、最新のPMBOKガイド対応であり、PMP®︎資格の試験を想定した練習問題などが掲載されているため、資格取得のための学習にも活用できる点もおすすめです。
『PMBOK第7版実践活用術』著:中谷公巳
「商業施設の再開発などの大規模な建設プロジェクト」など、架空の事例3つをもとに、プロジェクトマネジメントの実務スキルを習得します。また、5つのプロセスにあわせて構成されており、プロジェクトの進行がイメージしやすい作りとなっているのもおすすめなポイントです。
PMBOK第7版に対応しているため、PMP®️資格取得のための学習にも活用できる書籍となっています。
『図解入門 よくわかる 最新PMBOK第7版の活用』著:鈴木安而
PMBOKガイドの翻訳と監訳にも携わる著者が解説する、PMBOK第7版の図解本です。従来の内容からどのような変更点があるのか、またプロジェクト現場でのノウハウ活用法について紹介されています。
PMBOKガイドは、発行版によって内容が異なることはもちろん、解釈のポイントも異なるため、体系的に理解するにはおすすめな一冊といえるでしょう。
『プロジェクトマネジメント標準PMBOK入門』著:広兼修
プロジェクトマネジメントにおける基礎の解説や、実践の糸口を作ることを目的とした本書は、プロジェクトマネジメントの初心者にもやさしい内容となっています。付録には失敗事例なども含まれた事例集が用意されており、実務経験の少ない初心者にもイメージしやすく構成されているのが特徴です。
PMP®️資格取得に向けた学習においても、まずPMBOKガイドの概要を理解するうえで活用できる一冊と言えるでしょう。
『PM教科書 PMP完全攻略テキスト PMBOKガイド第7版対応 改訂版』著:鈴木安而
本書は、PMBOKガイド第7版に対応するPMP®︎試験の対策書として知られています。PMBOKガイドの全体像の把握はもちろん、PMP®︎資格受験の流れや申し込み方法など、網羅的に解説されているのが特徴です。
各章末に確認テストが用意されていたり、要所要所で第6版と第7版の比較解説があったりと、PMBOKガイドの体系的かつ具体的な理解を助ける一冊といえます。
PMBOKの知識を深め、プロジェクトマネジメントスキルを高めよう!
プロジェクトマネジメントのスキルを深めより専門性を高めていくには、PMBOKにおける管理手法の習得が大切です。より効果的なプロジェクトマネジメントを行うには、PMBOKの知識を取り入れ、実務経験を増やしていくと良いでしょう。
プロジェクトマネジメントの基礎やプロジェクトを円滑に進めるためのスキルを習得するには、書籍での学習や資格取得にスクールを活用するのもおすすめです。
女性向けキャリアスクールSHElikes(シーライクス)では、プロジェクトマネジメントの基礎から実践に向けたノウハウについて学べるプロジェクトマネジメントコースが用意されています。また、円滑なプロジェクトマネジメントに欠かせないコミュニケーション術について学べるビジネスコースなど、全45種以上の職種スキルがあるのが特徴です。
効果的なプロジェクトマネジメントを行い、プロジェクトの成果を上げたいとお考えの方は、ぜひ一度無料体験レッスンへ参加してみてはいかがでしょうか。