「リテールメディアって具体的になんだろう」
「一般的なWeb広告より、リテールメディアのほうが広告効果は高いのかな……」
近年よく耳にする「リテールメディア」という言葉について、このような疑問をお持ちの方もいるでしょう。リテールメディアは国内外で注目される広告手法の一つであり、収集データを活用した広告運用が実現できます。
リテールメディアを正しく活用すれば、企業の認知度向上や利益拡大において高い成果が期待できます。ただしリテールメディアには注意点も存在するので、しっかりと理解することが大切です。
今回はリテールメディアの概要や注目されている理由、リテールメディアの主な種類などについて解説します。記事の後半ではリテールメディアを導入している企業事例も紹介しているので、自社のプロモーションや売上に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
今注目されるリテールメディアとは
リテールメディアとは、小売店(小売業)が提供している広告枠全般のことを指します。わかりやすい事例としては、Amazonや楽天市場などに表示される広告などが挙げられるでしょう。オフラインでは、家電量販店や郵便局などで掲示されているポスターやPOPなどもリテールメディアに該当します。
特にオンラインのリテールメディアはターゲットの細かい設定や行動分析などが活用できるうえ、テレビや新聞などのマス広告に比べると低コストで広告を配信することが可能です。
また経済産業省の資料によると、リテールメディアの市場規模は2026年には14兆円*1に成長すると予測されています。具体的な魅力は後述しますが、リテールメディアは従来の広告媒体よりもターゲットに最適化した配信が期待できます。そのため、近年では多くの企業が導入を検討しているようです。
なぜリテールメディアが注目されているのか
リテールメディアが注目される背景はさまざまです。リテールメディアには以下のような魅力があり、広告宣伝・利益向上を目的に導入する企業が増えていると考えられます。
順番に見ていきましょう。
1st Partyデータの活用ができる
1st Partyデータとは簡単にいうと、Cookieなどに依存しないデータ・情報のことです。というのも近年のインターネットでは、Cookieを使用した情報収集に対する規制が厳しくなり、Web広告の精度が落ちつつあります。そのため一般的なWeb広告を活用する際は自社で得たデータが必要であり、マーケターの労力がやや増えている傾向があるのです。
しかしリテールメディアは小売店が保有しているデータを利用できるため、具体的なユーザー行動に基づいた広告運用が実現できます。機械学習の精度が高いメディアを活用すれば、長期的に運用するほど高い成果が期待できることも魅力の一つです。
ビジネスのデジタル化
近年では、店頭ではなくインターネット経由で消費行動をするユーザーが増えています。そのため、アクセス数やユーザー数が多い人気の小売店が運営するメディアの広告では、高い成果が期待できるのです。
また広告主だけではなく広告枠を販売している小売店にとっても新たな利益につながるため、新しいビジネスモデルとしてもリテールメディア事業を展開する企業が増えつつあります。近年では特定のジャンルに特化した個人ブログでも広告枠を販売する方も多く、リテールメディアは汎用性の高いビジネスとして注目されています。
消費者の価値観の変化
一般的なマス広告は細かいターゲット設定ができないため、不特定多数のユーザーに広告が表示されます。認知拡大が目的なら一定の成果は期待できますが、近年は「欲しい情報を自ら取りに行く」という能動的なユーザー行動が見られます。そのため、不特定多数を対象にした広告は費用に見合わない結果になるリスクが存在するのです。
しかしリテールメディアは消費者が好む媒体で広告を配信できるため、関心を持ってくれる可能性が高いといえるでしょう。例えばAmazonであれば、ユーザーが閲覧・購買した商品に関連する製品の広告が表示されるので、クリック・購入される確率は高くなります。つまりインターネットやSNSの普及によって変化した消費行動への対応にも、リテールメディアは有効と考えられるのです。
リテールメディアの主な種類
ここからは、リテールメディアの主な種類を紹介します。前提として、リテールメディアの媒体に明確な線引きはありません。代表的なメディアの例として、以下の種類が挙げられます。
それぞれの特徴を解説します。
ECサイト
リテールメディアを導入しているサービスとしては、ECサイトをイメージする方が多いのではないでしょうか。具体的にはAmazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなどが該当します。近年では中小企業が運営するECサイトでも広告枠を提供しているメディアも多く、その媒体の顧客にとって関心のある広告を配信できることが特徴です。
ただしECサイトの広告では、サービスではなく現物の製品が対象とされることが一般的です。したがってECサイトでの広告出稿は、ファッションアイテムや日用品など、実物の商品を扱う企業におすすめのメディアといえるでしょう。
スマホアプリ
スマホアプリでも多数の広告が配信されています。例えば無料のゲームアプリでは他のゲームアプリなどの広告が配信されることが一般的です。またニュースアプリなどでは、ビジネスに関連するツール・サービスなどの広告コンテンツが見られます。
つまりスマホアプリでは、「そのアプリと関連するジャンルの広告」が配信でき、ユーザー属性に沿ったサービスを紹介することが可能です。したがってユーザーからのアクションが期待できるでしょう。
店頭広告
インターネットだけではなく、飲食店やスーパーなどに掲示されている広告もリテールメディアに該当します。例えば郵便局などでは地域のイベントを紹介するポスターなどが多く、地域密着を目的に使用されることが一般的です。近隣で受講できる習い事やスポーツ団体などの広告がスーパーマーケットでも掲示されています。
Webのリテールメディアに比べると効果測定やターゲティングができないデメリットはありますが、地元に根付く事業を運営したい方にはおすすめの媒体といえるでしょう。
デジタルサイネージ
デジタルサイネージとは簡単にいうと、機械で作られたデジタル看板のことです。駅や空港に設置していることが多く、動画で広告を配信できることが特徴です。近年では店頭の入り口や通行者の目に留まる場所にデジタルサイネージを設置する店舗も多く、チラシやポスターに比べてユーザーが興味をもつ可能性が高いとされています。タッチパネルに対応したデジタルサイネージも増えつつあり、ユーザー体験型の広告も注目されています。
ただしデジタルサイネージの広告メディアによっては料金が高額になる場合もあるため、利用する際は発生するコストを確認することが大切です。
リテールメディアの魅力
リテールメディアの概要や特徴は理解したものの、「もっと詳しいメリットが知りたい……」と考える方がいるかもしれません。ここでは、リテールメディアの具体的な魅力やメリットを3つ紹介します。
それぞれ順番に見ていきましょう。
広告主側の魅力
広告主側の魅力はさまざまですが、大きな魅力として前述したCookieに依存しないデータを活用できることが挙げられます。実際のユーザー行動をもとに広告を設計できるため、高い成果が期待できます。また購買行動などをもとにPDCAサイクルを効率的に回せるので、より精度の高い広告運用が実現できるでしょう。一般的なマス広告よりもコストを抑えられるため、広告予算の最適化にもおすすめです。
Web広告でも一定のターゲット設定はできますが、近年ではCookieの情報規制により、プラットフォーム側で精度の高い情報を集めることが困難になっています。しかしリテールメディアは媒体が保有するデータを活用できるため、広告効果の最大化に便利なツールといえるでしょう。
メディア側の魅力
広告枠を設置することで商品やサービスの売上だけでなく、広告収入を新たな事業利益として得ることが可能です。そのため一定の集客ができる小売店はビジネスを成長させ、安定した経営が期待できます。
例えばアクセス数の多いメディアを運営している事業者が広告枠を設置して他社に提供すれば、最小限の労力で収益率を高められるでしょう。特定のジャンルに特化したブログやSNSを運営する個人が企業から広告掲載の依頼を請けることも多く、リテールメディアはメディア側にも魅力的な仕組みといえるのです。
消費者にとっての魅力
自身の興味関心に合った情報を入手できる点が消費者のメリットといえます。例えばAmazonなどでは、自身が購入したい商品に関連する広告が表示されるため、よりユーザーの課題解決につながるかもしれません。広告限定のクーポンを発行している企業も多く、消費者は自分に関係する製品をお得に購入することが可能です。つまりリテールメディアを活用すれば、顧客の消費体験を向上させることが期待できます。
リテールメディアの企業事例
ここからは、リテールメディアを導入している企業事例を4つ紹介します。
それぞれの特徴を解説するので、ぜひ参考にしてください。
Walmart(ウォルマート)
Walmart(ウォルマート)は、アメリカの大手スーパーマーケットチェーンです。自社で運営しているWebサイトやスマホアプリで広告を配信しており、米国で人気の広告媒体でもあります。保有する顧客データを活用した詳細なターゲティング設定が可能であり、広告を配信するタイミングも自由に指定できます。そのため、幅広いユーザーを対象にした広告の最適化にも活用できるでしょう。
<参考>
Walmart(ウォルマート)公式サイト「Walmart Ad Center」より
Walmart Connect「Display」より
Amazon(アマゾン)
世界的に有名なECサイトであるAmazon(アマゾン)は、国内外でトップクラスの利用者数を抱えるリテールメディアと考えられます。「スポンサー」と表示されている商品が広告であり、ユーザーの購買行動に沿った製品が表示されます。機械学習の精度が非常に高く、消費者の平均予算なども分析して製品を紹介することが可能です。そのため自社製品を適切なユーザーに届けられるでしょう。製品の販売だけではなくデータ収集に活用できることも、Amazonで広告を配信する魅力の一つといえます。
<参考>Amazon公式サイト「Amazonの広告ソリューションで認知と売上を向上しましょう」より
Family Mart(ファミリーマート)
FamilyMart(ファミリーマート)はレジ上にデジタルサイネージ広告を設置して、広告収益を得て事業成長を実現した事例の一つです。2024年3月時点で10,000店舗にデジタルサイネージを設置し、来店者が広告と接する機会が大幅に増えたことが特徴です。地域に根付いたサービスの紹介などにも活用されているため、地域密着を目的にした広告運用を検討している方にもおすすめのメディアといえるでしょう。
<参考>
ファミリーマート公式サイト「ファミリーマート店内メディア 媒体資料」より
ファミリーマート公式サイト「FamilyVision」より
ファミリーマート公式サイト「店舗販促ツールと店頭サイネージの連動で商品訴求力を最大化 FamilyMartVison×ファミリーマート売場連動連動企画」より
セブン-イレブン
セブン-イレブンは、自社アプリでのリテールメディアを実施しています。ユーザーの購買データからターゲティングを行い、消費者に合ったクーポンの配布などを行っていることが特徴です。アプリ内ではアンケートの実施なども行っているので、ユーザーニーズを分析しながら広告効果を高めることが期待できます。またセブン-イレブンアプリは2,000万人以上のアプリ会員が存在します。そのため国内での消費者データ量は非常に高いといえるでしょう。
<参考>セブン-イレブン公式サイト「広告事業への新たな挑戦」より
リテールメディアを導入する際の注意点
リテールメディアを上手に活用すれば、自社製品の認知向上や利益拡大、新しい収益モデルの確立などが期待できます。しかし以下の2点には注意しましょう。
順番に解説します。
媒体によって広告出稿料に差が生じる
メディアによって広告に発生するコストは異なるため、適切な予算管理や配信期間を設定する必要があります。例えばAmazonはクリックによる課金制度であり、1日の上限金額などが設定できます。しかしECサイトの多くは1回のクリックで購入に至る可能性が高くないので、一定の予算が必要になるでしょう。
ファミリーマートなどで配信されるデジタルサイネージは全体的に出稿料が高い傾向にがあり、コンテンツ制作を外注するとコストが膨らむ可能性があります。したがってリテールメディアを活用する際は、自社の広告予算を考えたうえで、適切な戦略を策定することが大切です。
クリエイティブの品質で成果が変動する
リテールメディアはユーザーからの反応が高いことが特徴です。しかし配信する画像や動画、文章などのデザインが販促効果に影響します。例えばAmazonで製品の広告を出稿する場合、商品の写真を美しく撮ったり、実際に使用している様子などの画像を作成したりするほうが売上につながると考えられます。
デジタルサイネージで動画広告を配信する際は、視聴者の興味を惹く動画にするための編集スキル・構成能力が重要です。つまり広告効果を最適化するには、媒体選定だけでなく質の高いコンテンツ企画・制作スキルも大切なのです。
リテールメディアに関するよくある質問
最後に、リテールメディアに関するよくある質問を紹介します。
リテールメディアに広告を配信する方法は?
リテールメディアへの広告配信方法は、媒体の運営企業によって異なります。例えばAmazonであれば公式サイトから申請できますが、店頭などのメディアに出稿する場合は企業への問い合わせが必要になります。
リテールメディアの代表例は?
世界的に有名な事例としては、ビッグデータを活用しているWalmart(ウォルマート)が挙げられるでしょう。国内でもリテールメディアを導入している企業は増えつつありますが、メディア側としてビジネスを成長させた事例としてはFamilyMartが参考になると考えられます。
リテールメディアを活用してビジネスを成長させよう
リテールメディアは精度の高い情報をもとに運用できる広告手法の一つであり、購買確率が高い消費者に自社製品を知ってもらうことが可能です。また、メディア側は広告枠を設置し他社に提供することで、新しい収益を得る戦略としても活用できます。広告を使って事業を成長させたい方は、ぜひ導入を検討してみてください。
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<参考>
*1:経済産業省「DXを加速させるリテールメディアの効率 公理企業のデータと広告の新たな収益〜【データと広告】という新たな収益基盤〜」より