OKRとは?基本的な考え方やKPI・MBOとの違いをわかりやすく解説

OKRとは?基本的な考え方やKPI・MBOとの違いをわかりやすく解説

目標管理のために、さまざまな企業が取り入れている、OKR(Objectives and Key Results)という手法。目標を管理するフレームワークのひとつで、企業と従業員の連帯感や、業務へのモチベーションを高める効果が期待できます。

本記事では、OKRの意味やKPI・MBOとの違い、OKRで期待できる効果をわかりやすく解説します。運用効果を高めるためのポイントやGoogle社の事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

OKRとは

OKRとは、組織において生産性や連帯感向上が期待できる、目標を管理するためのフレームワークのひとつです。「Objectives and Key Results(目標と成果指標)」の略で「O(Objectives)」は目標、「KR(Key Result)」は主要な成果(成果指標)を意味します。

企業では、社内全体、部署/チーム、従業員個人でそれぞれOKRを設定します。社内全体のOKRを起点に、部署とチームのOKRを設定し、最後に各個人のOKRを設定します。社内と個人の目標を連動させることによって、社員のモチベーション向上や、組織内のコミュニケーション活性化が期待できるでしょう。

OKRの目標達成期限は、1ヶ月から四半期ごとを目安とした短期間で設定することが特徴です。目標達成期限までに、週次ミーティングなどで何度も進捗確認や修正の必要性を議論します。

OKRにおける目標管理の基本

OKRは、「目標(O)」に対して、達成度を測る複数の「主要な成果(KR))」が付随して成り立ちます。適度なKRを設定するために「自信度」をチェックして、進捗を確認する際は「達成度のスコアリング」を参考にします。

OKRの実施を検討するなら、この4つの要素を最初に押さえましょう。

O – Objectives(目標)

O:Objectives(目標)は、「何を」達成するべきか、具体的に述べたものです。シンプルで覚えやすく、社員のモチベーションが上がるようなものに設定することが重要です。また、目標は具体的な数値ではなく定性的なものがよいでしょう。

企業全体のObjectivesの具体例として「最新技術で、IT業界をリードする企業になる」「ビールと言えばA社、と第一想起される企業になる」など、企業の理想の姿を示したものが挙げられます。

Oの達成率は、60〜70%が目安です。現状に対して適度に挑戦的なレベルにすることで、社員のモチベーションアップが期待できるでしょう。

KR – Key Result(成果指標)

KR:Key Result(成果指標)は、目標を「どのように」達成するかを示します。達成の度合いを客観的にモニタリングする指標になるため、数字を用いた具体的な内容や、測定と検証が可能なものが望ましいでしょう。KRは1つのOに対して3〜5つくらいが理想です。

具体例として「リピート率を30%にする」「製品・サービスの顧客満足度を、アンケートで80%越える」などが挙げられます。Oの目標達成に直接結びつく内容を設定しましょう。

自信度

自信度とは、設定したKRに対する、主観的な自信を測る指標のことです。KRの自信度は10段階中、5〜6程度が良いとされています。自信度0では達成が不可能な目標となり、自信度10では達成が容易くなり、どちらも成長が期待できないためです。

定期的にチームで自信度を確認し、必要に応じて適宜調整することが大切です。自信度が低くなりすぎている場合、KRを再検討したり、働き方を見直したりする必要があります。

達成度のスコアリング

OKR期間が終了した際は、個人、チーム、企業それぞれで設定したOKRの達成度を測るスコアリングをおこないます。スコアリングは「0.0〜1.0」や「%」で数値化します。各KRのスコアの平均がOのスコアです。

OKRの評価は、人事評価に直接つながるわけではありません。Oのスコアが低かった場合は、次のOKRを設定するときの参考にします。

OKRとKPI・MBOとの違い

社内での目標設定として、OKRと混同されやすいものに、KPIとMBOがあります。それぞれ設定する意図や目的、評価の頻度が異なるので、3つの違いは押さえておきましょう。

KPIとの違い

KPIとは「Key Performance Indicator(重要業績評価指標)」の略称です。最終目標(KGI)を達成するにあたって、その過程を評価するために定める指標のことを指します。例えば、サービスの受注や登録などのCV数(成果件数)、自社メディアへのアクセス数など、具体的な数字をKPIに設定します。

OKRとの違いは、OKRが目標を達成するために用いる目標管理のひとつであることに対し、KPIは最終目標を達成するための過程に定める指標そのものであることです。OKRが重きをおいていることは社員のモチベーションアップや、企業と個人の結束力の向上なので、目標に対する達成率は60〜70%が理想とされています。一方、KPIはプロジェクトの目的を達成するための中間指標なので、達成率100%を目指します。

あわせて読みたい
コンテンツマーケティングのKPIとは?具体的な指標や設定方法を解説
コンテンツマーケティングのKPIとは?具体的な指標や設定方法を解説コンテンツマーケティングとは、WebサイトやSNSなどのコンテンツを通して見込み客や既存顧客と接触するマーケティング方法のことです。…

MBOとの違い

MBOとは「Management by Objectives(目標管理制度)」の略称です。組織と個人の目標を連動させて、社員が「自主的に」目標設定と管理を行い、成果を出すための目標管理手法です。

OKRとMBOは、どちらも企業と個人の連動が生じる目標管理のフレームワークですが、MBOの目的は、従業員の直接的な人事評価を含みます。一方、OKRの評価は、人事評価や報酬とは切り離して考えます。そのため、OKRは目標に対する達成率は60〜70%が理想であることに対して、MBOは達成率100%を目指します。

OKRの導入によって期待できる効果

OKRを導入することによって、組織や従業員に以下のような効果が期待できます。

それぞれの効果を詳しく見ていきましょう。

企業の目的や方向性を組織全体に示せる

OKRは企業のOKRを起点に、部署や個人のOKRを設定します。OKRによって企業の現在の目的を各個人が意識するようになるため、全社員が同じ方向性で業務に取り組めるようになります。所属部署だけで目的が独立せず、社内全体の連帯感が生まれやすくなるでしょう。

従業員のエンゲージメント向上が見込める

OKRは組織の目標と個人の目標がリンクしているため、自分の仕事が企業にどのように役立つのかが、わかりやすくなります。そのため、なんとなく指示された業務をこなすよりも、モチベーションを保ちやすくなるでしょう。

社内のコミュニケーション活発化につながる

OKRは組織の全員が公開するため、従業員同士で進捗を把握できるようになります。そのため、状況に合わせた相談や会話がしやすくなるでしょう。

また、企業全体のOKRを設定することで、部署や役職問わず、OKRが共通言語になります。業務で直接関わりがない社員同士でも、コミュニケーションを取りやすくなるでしょう。

難易度が高い目標設定により成長が促される

OKRでは100%達成できる目標ではなく、達成率を60〜70%とした、挑戦的な目標を設定します。現状の成果や能力よりも少し高い位置にある目標を設定することで、スピーディーな成長が期待できるでしょう。

仕事の優先順位を判断しやすくなる

企業OKRやチームOKRが公開されることによって、従業員は企業が今なにを優先しているのかを把握することができます。企業やチームが重要としていることを意識することで、個人OKRで設定するKRの優先順位がつけやすくなります。注力すべきタスクが明確になることによって、効率アップが期待できるでしょう。

OKRの具体的な導入手順

OKRの設定は、企業全体から個人へと細分化していくのが特徴です。OKRを導入するまでの具体的な手順を見ていきましょう。

  1. 企業の方向性を確認する
  2. 社内全体のOKRを設定する
  3. 部署やチームのOKRを設定する
  4. 個人のOKRを設定する
  5. OKRを公開する

1.企業の方向性を確認する

社内全体のOKRを設定する前に、企業の方向性を改めて明確化します。

社会に対して企業が成し遂げたいこと、企業が果たすべき使命である「ミッション」と、将来ありたい企業の姿である「ビジョン」を決めます。

2.社内全体のOKRを設定する

ミッションとビジョンに基づいて、企業全体のOKRを設定します。

OKRは細分化していきますが、最終的に企業のOKRを達成することが目的になります。そのため、経営層だけでなく、社内全体で考えることがポイントです。企業OKRが決まったら、各チームに展開してフィードバックを受け、必要に応じて修正しましょう。

企業OKRが決まったら社内に表明します。

3.部署やチームのOKRを設定する

企業OKRをもとに、各部署・チームのOKRを設定します。

設定したら自分のチームのOKRと他のチームのOKRを共有し、整合性を確保できるように、必要に応じて修正します。

4.個人のOKRを設定する

部署・チームのOKRと連動した、個人のOKRを設定します。個人OKRはチーム内で共有し、チームでバランス良くタスク配分できるように調整します。

5.OKRを公開する

個人OKRを設定したら、社内全体でOKRを公開します。

誰もがお互いの作業状況を確認できる状態になることで、会社全体の動きがイメージしやすくなるでしょう。

OKRの運用効果を高めるためのポイント

OKRは設定するだけでは効果が期待できません。設定後、定期的な進捗管理や調整を行うことで、組織内のコミュニケーション活性化や、目標達成に近づくことができます。

OKRの運用を高めるためのポイントを見ていきましょう。

短期的に進捗確認・調整を行う

OKRは通常、四半期単位で行います。四半期末にKRの達成状況をもとに、OKRの評価を確定します。

四半期の間、OKRは短期的に進捗共有やミーティングを実施します。1週間に1回程度の頻度で、自信度の更新や達成度のスコアリング、今週やるべき優先事項などを共有し合います。停滞している案件があったら、対策を練ったり、問題解決方法を検討したりしましょう。

人事評価の指標として直結することは避ける

OKRで重要なことは、企業の目標を意識したり、挑戦的な個人目標を立てたりすることで、従業員のモチベーションを上げることです。モチベーション向上と成長のために、企業も個人も敢えて達成率が60〜70%になる難易度の高い目標を設定します。

そのため、OKRの評価を人事評価の指標に直結させることは避けましょう。人事評価に影響すると、達成率が容易い目標にしたほうが得になってしまいます。

システム・ツールを導入する

OKRは組織全員に公開することがポイントなので、導入の際は社内で共有できるツールを使用しましょう。ツールでKRの内容や進捗を確認できることによって、組織やチームと整合性が取れたOKRを設定できるようになります。

例えば「Googleスプレッドシート」は、オンライン上で共同編集が可能な表計算ソフトです。無料で使用できて、OKRを実施しているGoogleによるOKRのスコアシートも配布*1しています。

Googleが導入しているOKRの事例

OKRはGoogle社でも導入されています。GoogleはOKRを導入するメリットについて、「簡単に達成できないOKRを設定することによって、チームや個人が仕事の優先順位を判断して、成功と失敗の両方から学ぶことができる」、と提示しています。*1

GoogleのOKR設定の考え方

同社では、自身が可能と考える設定値より高い目標(ストレッチ ゴール)を設定することがよくあります。こうした目標は、優秀な人材を引き付けて職場を活気に満ちた環境に変えたり、達成できなかった場合でも、格段に成長を遂げられたりする可能性があります。ストレッチゴールにおいて重要なのは、「ストレッチゴールの性質」「成功かどうかの判断基準を明確に伝えること」です。OKRにおいても、「70%達成できれば成功」と言えるような、ストレッチゴールを設定します。

Googleによる組織OKR設定のヒント

同社のOKR設定は、まず組織のOKR設定から着手し、3〜5 個の目標を立て、それぞれの目標について成果指標を 3 個ほど設定します。その後に全体としての優先順位を決めます。

同社の資料では、目標を設定する際のヒントとして、以下が紹介されています。

  • 目標は 3~5 個に絞る
  • 到達点や状態を示す表現を使用する
  • さらなる高みを求めない表現は使用しない

ヒントを参考に、仮に100%達成した場合、組織に直接利益がもたらされる価値の高い目標を設定します。ストレッチゴールであるからこそ、OKRをすべて達成した場合は驚異的な成果と見なされます。

Googleによるチーム・個人のOKR設定の例

組織全体のOKRを設定したら、組織OKRとの整合性に注意しながら、チームと個人のOKRを設定します。同社が例として挙げている、組織OKRを「市場シェア××%を達成する」とした場合の、チームと個人のOKRの事例は以下のとおりです。

目標: [製品名] の評判を上げる

成果指標:
・3つの業界イベントで講演を行い、[製品名]の市場牽引力を再構築する
・トップユーザー xx 人を特定し、個人的に働きかける
・ユーザーのエラー報告に対する応答時間を xx% 短縮する*2

同社によると、チームのOKRは「目標期限内に取り組むべきチェックリスト」ではありません。組織のOKR達成や成果指標を考慮して、「チームとして、組織にどのような影響を及ぼしたいか」を定義し、それを達成するための方法を考え出すためのものとされています。

OKR導入は個人のモチベーションアップや企業の成長に効果的

OKRの導入は、組織内のコミュニケーション活性化や、従業員のモチベーションアップが期待できます。導入後は頻繁にミーティングを行って、必要に応じて見直しをしたり、問題解決方法を練ったりしましょう。

また、ビジネスで役立つさまざまなスキルを高めたい方には、女性向けキャリアスクールSHElikes(シーライクス)がおすすめです。

マーケティングやデータ分析など全45以上の職種スキルが学び放題なので、企業で活躍したい方や、自分らしい働き方を実現したい方の複合的なスキルアップに役立つでしょう。無料体験レッスンを実施しているので、興味のある方はぜひ参加してみてください。

女性向けキャリアスクールSHElikes無料体験レッスンはこちら

※参考
*1:Google re:Work – ガイド「OKRを設定する」より
※引用
*2:Google re:Work – ガイド「OKRを設定する」より

ABOUT ME
ライター 島田 史
美容・医療・ビジネス分野などで活動中のフリーライター。 2016年よりライター活動を始め、2019年に個人事業を開業。 保有資格を活かして美容分野を中心に、多くのwebメディア等で、執筆・記事企画・美容記事監修・撮影・取材などを担当。 保有資格:日本化粧品検定特級 コスメコンシェルジュ®︎、化粧品成分検定1級 化粧品成分上級スペシャリスト、一般社団法人 薬機法医療法規格協会YMAA認証マーク取得、など
エディター Tomomaru
フリーランスWeb編集・コンテンツディレクター兼たまにライター。 略歴は、アパレル→事務職を経てWebデザインをスクールで学んだのち、SHElikesと出会いWeb制作会社でマーケOLしてみたり。結果、書くことが天職だと思い込み、副業ライター道を歩んでいる。次なる野望は絵描きになること。思い込むのは自由です。

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。