カーニングとは、隣り合う文字と文字の間隔を調整するデザイン技法のことです。文字同士の余白調整や字詰めをすることで全体のバランスが美しくなり、ユーザーにとっての読みやすいデザインになります。
本記事ではカーニングの基本やトラッキングとの違いをはじめ、カーニングのやり方をIllustrator・Photoshop・Wordのソフトウェア別に解説します。カーニングのコツについてもお伝えするので、文字デザインに興味がある方はぜひ参考にしてください。
カーニングとは?
カーニングとは、隣り合う文字同士の間隔を調整する技法のことです。文字はそれぞれにことなった余白を持っているため、Adobe Illustrator(イラストレーター)やAdobe Photoshop(フォトショップ)などのソフトで文字をそのまま入力すると、余白にバラつきが出て全体のバランスが悪く見えてしまいます。
そのような場合に文字同士の余白を狭めたり広げたりして均一に調整することで、美しく読みやすくデザインするのがカーニングです。
1文字ごとに細かな調整が必要なので時間はかかりますが、カーニングをすることで洗練された美しいデザインにすることができます。特にタイトルや見出しは全体のデザインを決める重要な要素なので、カーニングが欠かせないと言えるでしょう。
トラッキングとの違い
カーニングと混同されやすい言葉として、トラッキングが挙げられます。「文字間隔を調整する」という意味では同じですが、細かなニュアンスが異なるので注意が必要です。
カーニングは隣り合う2文字同士の間隔を調整するのに対し、トラッキングはテキスト全体または複数の文字の余白を調整することを指します。つまりトラッキングは、選択した文字列全体を一括で等間隔に調整するものと考えると分かりやすいでしょう。
デザイナーは、トラッキングで全体の文字のアキ感を調整してから、カーニングで個別に文字間の余白を整えていきます。美しく読みやすい文字デザインにするためには、カーニングとトラッキングを組み合わせて「文字組み」することが大切です。
文字詰めとの違い
文字詰めは、文字の前後の空間を詰めるために使用する機能です。テキストの右側の余白を調整するトラッキングとは異なり、テキストの左側も右側も調整できます。
日本語フォントの間隔を調整する際に向いているとされており、狭めたり広げたりしたい間隔を「%(パーセント)」で入力すると一括で調整可能です。
紙とWeb上での違い
紙でもWebでも非常に重要な文字デザインですが、コーティング言語で表示されたWeb上の文字はカーニングが難しいとされています。
そのため、ブラウザ上で文字間を調整したい場合はトラッキングを用いるのが一般的です。ただし画像や動画として最終的に書き出す場合は、カーニングで美しく整えるほうが良いでしょう。
一方チラシやロゴなど紙媒体の文字デザインは、カーニングとトラッキングを使い分けて文字組みを行います。
カーニングのやり方をソフト別に解説
カーニングは、下記のようなソフトウェアに搭載されている機能を用いて行います。
ここからは、各ソフト別のカーニングのやり方を詳しく解説します。便利なショートカット方法も紹介するので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
Adobe Illustrator
Adobe Illustratorでカーニングを行う際の手順は下記の通りです。
- 文字同士の間にカーソルを置く
- 「文字パネル」を表示する
- 文字パネルの「カーニング欄」に数値を入力する(※1000emで1文字分の間隔)
カーニング欄に入力する数値は、文字間隔を広くしたいなら「プラスの数値」、逆に狭くしたいなら「マイナスの数値」を入力します。
なおショートカット機能を使用する場合は、文字間にカーソルを合わせたうえで「Alt(Macの場合はOption)+【←】または【→】」でカーニングできます。
Adobe Photoshop
Adobe Photoshopでカーニングをするなら、ショートカットを利用するのが便利です。Illustratorと同様、テキストを選択したうえでAlt(Macの場合はOption)と右または左の矢印キーでカーニングできます。手動でカーニングする場合は、下記の手順を参考にしてください。
- 調整したい2文字の間にカーソルを合わせる
- 「文字パレット」を表示する
- カーニングオプションの値を入力する
テキストの一部だけを選択しているとカーニングできないので、トラッキングで調整することになります。範囲を選択してから【Shift+Alt+矢印キー】で文字を詰めれば、一括でトラッキングできるので作業効率も上がるでしょう。
Microsoft Word
Microsoft OfficeのWordでも、簡単なカーニングは可能です。
- 調整したい文字を選択する
- 「ホーム」タブにある「フォント」グループのダイアログを開く
- 詳細設定を選択する(※「カーニングを行う」にチェックが入っているか確認)
- 「文字幅」と「間隔」に数値を入力する
IllustratorやPhotoshopに比べて本格的なカーニングはできませんが、余白調整をしたいだけなら十分と言えます。報告書や議事録などの事務資料を作成する場合は、カーニング機能で読みやすく調整するのがおすすめです。
カーニングのコツ
最後に、カーニングで美しく文字を整えるためのコツを解説します。
カーニングでは、あくまでも「人間の目から見た時に均等な余白になっているか」が重要です。特にロゴや見出しの余白を調整する場合は、徐々に数値を微調整して整えていくのが良いでしょう。
また、文字フォントやサイズによっても適したバランスが異なるので注意が必要です。下記で詳しく解説するので、初めてカーニングを行う方は参考にしてください。
カーニングの前に行間とトラッキングを調整する
カーニングを行う前に、まずは行間とトラッキングを調整するところから始めましょう。縦の行間を整えたり、横の間隔を均等に整えたりして文字テキスト全体の余白調整を行います。
全体的なバランスを大まかに調整しておくことで、カーニングで細かな文字間調整が必要な箇所が見えやすくなります。先にカーニングをしてからトラッキングをすると、かえって全体のバランスが悪くなる可能性もあるため注意が必要です。
ちなみに「縦の行間を調整すること」を「リーディング」と呼ぶこともあるので、覚えておくと良いでしょう。
自動調整機能を使用しない
Adobeソフトでは、メトリクスやオプティカルといった自動カーニングツールがデフォルト設定になっています。自動で文字間隔を調整してくれる便利な機能ですが、基本的にカーニングは手動で行うことが大切です。
カーニングは「人間の目で視覚的に見た時に美しいか」が重要なので、自動調整機能で機械的に揃えたとしても意味がありません。数値的には均等だったとしても、実際に見るとバラついた印象を与える恐れもあります。
そのため文字同士の間隔や余白感は、必ずデザイナーの視覚的な感覚を基準として調整するようにしましょう。特にロゴやタイトルといった重要な箇所は、微調整を加えながら美しく読みやすい間隔を見つけていくのがポイントです。
文字やフォントによって処理方法を変える
傾斜やカーブなど文字によって字形は大きく異なるので、カーニングでも文字やフォントに配慮する必要があります。
たとえばアルファベットの「V」や「A」といった傾斜のある文字だと文字間のスペースが余分に空いてしまうため、通常より多く詰めてバランスを取るのがおすすめです。
また日本語では「ひらがな」「カタカナ」「漢字」の3種類の文字を使い分けるため、調整が複雑になる傾向にあります。ひらがなやカタカナは、漢字に比べて間隔が空きやすいので可能な限り詰めて調整するのがポイントです。
文字やフォントごとの感覚を掴むのは非常に難しいので、さまざまな文字列でカーニングの練習を積み重ねると良いでしょう。
文字サイズに気をつける
文字の形状だけでなく、文字のサイズもカーニングに影響します。たとえばロゴや見出しのように文字サイズが大きい場合は、文字間が目立ちやすくなるためカーニングで余白を詰めることが大切です。
逆に小さな文字サイズの場合は、狭く詰めすぎると文字が重なっているように見える可能性もあります。かえって読みにくくなるため、余白を減らすことも検討してみましょう。
カーニングをやりすぎない
カーニングで文字バランスを整える際は、やりすぎに十分注意しましょう。文字間隔を詰めすぎると文字がつながっているように見え、読みづらくなってしまいます。
たとえば、小文字アルファベットの「r」と「n」の文字間を詰めすぎると「m」に見えてしまうこともあります。場合によってはこちらの意図がうまく伝わらない可能性もあるので、スペースを詰めすぎないよう調整してください。
カーニングとは隣り合う文字同士の間隔を調整すること
カーニングとは、隣り合う2文字の間隔を調整し見た目を美しく整えることです。カーニングとトラッキングを使い分けることで全体的なバランスが良くなり、ユーザーにとって読みやすいテキストを作成できます。
カーニングに絶対的な正解はないため、繰り返し練習をして感覚を掴んでいくことが重要です。「より体系的に学びたい」「文字デザインの基礎を知りたい」という場合は、キャリアスクールを活用してみてはいかがでしょうか。
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