「働き方改革」の実現に向けて、政府は副業・兼業を推進させるためにさまざまな取り組みを行っています。それに伴い、副業・兼業を解禁する企業も増え、企業と個人が副業に対する理解を深める必要性が高まっています。
今回は、企業や従業員が副業解禁で得られるメリットやデメリット、副業解禁に向け準備すべきことを紹介します。ぜひこの記事を参考に、副業解禁に向けた準備を進めてみてください。
働き方改革による副業・兼業の推進
従来、日本では副業禁止の企業が一般的でしたが、副業・兼業に対する意識が変化しつつある昨今において、副業解禁が推進される元となった「働き方改革」はいつから始まったのでしょうか。
まず2017年に政府が「働き方改革実行計画」をまとめ、2018年7月には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立しました。そして、2019年より「働き方改革」に関連する法律が順次施行されています。
厚生労働省によると、「働き方改革」の目指すものは以下のように記されています。
我が国は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」などの状況に直面しています。こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題になっています。
「働き方改革」は、この課題の解決のため、働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。*1
これらのことから、国は「働き方改革」の施策として、副業・兼業を推進しています。
また、2018年1月には「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が作成され、2020年9月と2022年7月に改定されています。そのため、2018年は「副業元年」とも呼ばれ、副業・兼業を解禁する企業が増えた時期と言えます。
副業は法律で認められている?
前提として、働き方改革関連法が制定される前から副業への法的規制はありません。ただし、法的規制がないからといって、副業解禁を個人で押し進めるのは注意が必要です。
会社に勤める際には、競業避止や秘密保持、職務専念の義務化が適用されます。法的効力をもつ就業規則で副業が禁止されているにもかかわらず、副業をした場合、懲戒処分の対象となる恐れがあります。
また、公務員については、公務員法により副業が禁止されているため、副業は法的に違反行為になってしまうという認識を持ちましょう。
法改正で政府が副業・兼業を推進する理由
政府が法改正をしてまで副業・兼業を推進する理由としては、以下のものが挙げられます。
- オープンイノベーションや起業の手段になる
- 主体的なキャリア形成の促進
- 地方創生の推進
- 労働力の確保
日本は、少子高齢化の影響により、労働力人口の減少が問題とされています。副業・兼業を推進することで、個々人のスキルアップやキャリア形成を促し、経済活性化を図っているのです。
政府や企業が中心となり、今後の労働人材にとって多様な働き方を選択できるような環境を作っていくことで、働き方改革の実現につながるでしょう。
副業解禁の企業・従業員のメリット
副業を解禁することで、企業・従業員の双方がさまざまなメリットを得られます。ここでは、それぞれの視点で得られるメリットについて解説していきます。
企業側のメリット
まず、副業を解禁することで企業側が得られるメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
- 従業員のスキル向上・成長促進
- 優秀な人材の獲得・流出防止
- 事業機会の拡大
それぞれのメリットを解説します。
従業員のスキル向上・成長促進
従業員が副業をすることで、社内だけでは得られないような知識やスキルを習得することができます。また、キャリアに対する自律性や自主性を促すことができるため、業務の質も向上していくでしょう。さらに、副業をしている人材を受け入れることで、自社に足りない知識やスキルを企業側が得ることも期待できます。
優秀な人材の獲得・流出防止
自己成長やスキルアップができるような環境を作ることで、優秀な人材の獲得や流出の防止につながります。優秀な人材ほどキャリアに対して真剣に向き合い、自らの希望する働き方を模索していくため、それが実現可能な環境へ集まりやすくなります。また、本業をしながら副業として新しい挑戦もできるようになるため、人材の定着率向上も期待できるでしょう。
事業機会の拡大
従業員が副業で得た新しい知識・情報や人脈を本業に活かすことで、自社の事業機会の拡大も期待できます。従来では得られなかったアイデアの創出や既存事業の改善につながるかもしれません。
従業員側のメリット
次に、副業を解禁することで従業員側が得られるメリットとして、以下の4つを紹介します。
- 主体的なキャリア形成が可能になる
- 本業の所得を活かして自分がやりたいことに挑戦できる
- 所得が増加する
- 小さいリスクで起業・転職に向けた準備ができる
それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。
主体的なキャリア形成が可能になる
離職をしなくても本業とは別の仕事に就くことができるようになるため、本業と並行しながら新しいスキルや経験を得ることができます。結果として、若いうちから主体的にキャリアを形成できるようになり、将来に対しての不安も拭えるでしょう。
本業の所得を活かして自分がやりたいことに挑戦できる
やりたいことや興味のあることが未経験の場合、収入面を気にしてなかなか挑戦できないことも多いでしょう。副業が可能となれば、本業の所得を支えにしながら挑戦することができます。生活費用を気にせずに自己実現を追及できるのは、副業ならではのメリットです。
所得が増加する
従業員側が得られるメリットとして最もわかりやすいのは、所得の増加です。副業により収入が増えることで、経済的な不安からの脱却や将来の資金計画にも役立つでしょう。また、収入源を分散させることで、リストラや会社の倒産にも備えることができます。
小さいリスクで起業・転職に向けた準備ができる
本業を続けたまま、起業や転職に向けた準備や試行ができるのもメリットの1つです。退職をしてから起業・転職を目指すとなると、生活費用が尽きてしまうというリスクがあります。副業として準備を行えば、リスクを低減しながら挑戦することができるでしょう。
副業解禁の企業・従業員のデメリットや注意点
副業を解禁することで、企業・従業員に多くのメリットがありますが、同時にデメリットや注意点も存在します。ここでは、それぞれの視点でデメリット・注意点を紹介します。
企業側のデメリット・注意点
企業側の副業解禁によるデメリット・注意点は、以下の2つです。
- 従業員の就業時間の把握・健康管理
- 情報漏えいのリスク
それぞれを詳しく見ていきましょう。
従業員の就業時間の把握・健康管理
従業員は本業以外の時間を使って副業を行うケースがほとんどのため、結果的に労働時間が増え、体調を崩してしまう可能性があります。そのため、従業員の副業状況や就業時間、健康状態を把握し、本業に影響を与えないよう注意喚起が必要です。
情報漏えいのリスク
従業員が行う副業のなかには、自社の競合となる企業の仕事を請け負っている場合もあるでしょう。情報漏えいを防ぐために、秘密保持契約を結ぶなど、改めて情報の取り扱いについてのルールを定め、周知しておくことが大切です。
従業員側のデメリット・注意点
次に、従業員側の副業によるデメリット・注意点として、以下の3つを紹介します。
- ワークライフバランスの管理
- 本業の義務に対する意識
- 手続きが増える
それぞれを詳しく見ていきましょう。
ワークライフバランスの管理
本業の他に副業を始めることで、必然的に労働時間が長くなるため、ワークライフバランスを保ちにくくなります。プライベートや本業が犠牲にならないような仕事量にしたり、健康管理を徹底したりするなど、注意が必要です。
本業の義務に対する意識
副業を始めても、本業の会社に対する職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務を守らなければいけません。本業と副業の境界線をしっかりと認識し、就業規則に反さないよう意識しながら副業を行いましょう。
手続きが増える
副業で収入を得ることで、確定申告や納税の手続きが増えます。副業の所得が年間20万円を超える場合は、所得税の確定申告が必要になります。また、副業の所得が20万円以下の場合でも、市区町村に支払う住民税の申告が必要です。
本業以外の収入がなければ、会社で年末調整を行ってくれるケースも多いため、新たに保険や税金の知識を習得するのは面倒だと感じる人にはデメリットの1つになります。
副業解禁に向け企業が準備すべきこと
いざ副業を解禁しても、企業・従業員ともに認識がずれている点があれば、後々のトラブルにつながりかねません。副業解禁に向け、企業は以下の3つを準備しておくことが大切です。
- 説明会やセミナーを開催する
- 労働時間の管理・把握をする体制を整える
- ルールの明確化・評価制度の見直し
それぞれの準備内容について解説します。
説明会やセミナーを開催する
せっかく副業を解禁しても、副業についての理解が少なければ、なかなか興味を持てなかったり行動に移せなかったりする人も多いでしょう。そうなれば、副業解禁のメリットを最大化できません。
また、職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務についても改めて理解してもらうことが大切です。副業に関する説明会やセミナーを開催し、従業員一人ひとりの理解が深まるような場を設けましょう。
労働時間の管理・把握をする体制を整える
副業により過重労働になる従業員が出ないよう、労働時間の管理・把握をする仕組みを整えることが必要です。企業は、副業を含めた従業員の労働時間を適切に把握する義務があります。
副業の労働時間に関しては、従業員からの自己申告をもとに管理をする方法が現実的です。生産性を保つためにも、副業解禁をする前に自社の管理方法を決めておきましょう。
ルールの明確化・評価制度の見直し
副業解禁にあたり、副業をする条件やルールを明確に決めたり、評価制度の見直しを図ったりして、従業員が本業に支障をきたさないような環境を作りましょう。厚生労働省が公表しているガイドラインを参考にしながら、自社に適した運用方法を決めることが大切です。
もしルール違反した従業員が見つかった場合は罰則を与えるなど、適切な処分があり得ることも同時に周知しておくとよいでしょう。
副業を開始するために個人が準備しておきたいこと
副業のメリットを得るためには、個人でも準備が必要です。限りある時間や体力を有効活用するためにも、将来を見据えた副業選定を行いましょう。
まず、現状に足りないスキルを見定め、自分が興味のある分野やキャリアアップにつながるような仕事を探します。たとえば、文章力を身につけたい場合はライティングの仕事、リモートでも働けるようなスキルを身につけたい場合はWeb系の仕事など、補いたいスキルや伸ばしたいスキル、ライフスタイルから考えることが大切です。
自分が副業で挑戦したい仕事や方向性が定まったら、その副業で収入を得るためのスキルアップを目指します。未経験分野の場合、書籍やスクールなどを活用して学習を進めるのがおすすめです。
働き方改革による副業・兼業解禁は、企業や個人の成長につながるきっかけ
副業・兼業は、従業員のスキルアップや自主性の促進など、企業・個人どちらにとってもメリットがあります。各企業の「働き方改革」への取り組みは、労働力人口の減少による経済成長の停滞にも効果を発揮するでしょう。
また、副業を始める個人が自分らしい働き方を実現させるためには、スキルの習得が必要です。自分が興味のある分野やキャリアアップにつなげられる副業を選び、必要なスキルを身につけましょう。
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引用
*1:厚生労働省「「働き方改革」の実現に向けて」より