ケイパビリティとは?意味や使い方、高める方法をわかりやすく解説

ケイパビリティとは?意味や使い方、高める方法をわかりやすく解説
ABOUT ME
ライター 木村さき
新卒で求人広告代理店に就職したのち、結婚を機に退職して夫の地元に転居。そこで金融関係の企業に転職し、顧客対応部門のサブリーダーとしてメンバーの育成に携わる。現在は0歳児を育てながら、子どもを寝かしつけた後にwebライターとして活動中。
エディター 古澤 椋子
鹿児島大学大学院水産学研究科修了。水産系社団法人にて、水産に関わる調査研究、行政との折衝などを経験したのち、水産系ベンチャーにて、広報を担当。2023年からフリーライターとして活動を始め、主にエンタメ系の記事を執筆。SHElikesでキャリア、マインド共に変化した経験から、SHEsharesのライターを務める。

企業の組織力を高めるには、企業のケイパビリティを把握して活用することが大切です。自社が持つケイパビリティを意識して事業を行うことは、会社だけではなく従業員にもさまざまなメリットがあります。従業員が自社のケイパビリティを理解している企業は、生産性と優位性の高い事業を行えます。

本記事では、ケイパビリティの意味を解説します。ケイパビリティを把握する方法や強化する方法も紹介しているので、企業における組織力や個人の市場価値を高めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

ケイパビリティとは?

ケイパビリティ(Capability)とは、「能力」や「才能」といった意味です。ビジネスシーンでは、「企業が他社と比較して優位性がある強み」を指します。ケイパビリティの有効な使い方を理解することで、一貫性のある経営戦略の策定や競合との差別化につながります。

事業プロセス全体における組織の強みを正確に把握すれば、競合が模倣しにくい独自の事業を確立できるでしょう。次に、具体例や混同しやすい言葉との違いについて解説します。

  • ケイパビリティの具体例
  • スキルとの違い
  • コア・コンピタンスとの違い

ケイパビリティの具体例

ケイパビリティを有効活用した有名な具体例には、アップル社の事例があります。アップル社のケイパビリティは、iPhoneなどの「洗練されたかっこいいデザイン」といえます。

アップル社では、先進的なデザインの認知を拡大するために直営店を展開し、自社の魅力を顧客にPRしました。店舗にも製品のような洗練されたデザインを取り入れ、アップル社のブランドイメージを世間に定着させています。

従業員が自社のケイパビリティの共通認識を持っていることから、一貫性のある経営や組織力の向上が実現した事例です。

スキルとの違い

「スキル」と「ケイパビリティ」の意味は異なります。ケイパビリティは組織全体の能力や強みであり、スキルは個人の能力です。個々のスキルを統合して組織の総合的な力となり、自社の強みになったものがケイパビリティです。

たとえばコミュニケーションスキルやマネジメントスキルは、個人が保有する「スキル」です。一方で、個人の営業スキルやノウハウが全従業員に受け継がれることで構築された営業プロセスは、企業のケイパビリティといえます。

1人の成果によって保たれる営業力であれば個人のスキルですが、独自に生み出した営業プロセスにおける強みは組織力となり、売上や生産性を継続的に高めるケイパビリティになります。

コア・コンピタンスとの違い

「中核的な能力」を意味する「コア・コンピタンス」と「ケイパビリティ」は、混同して認識されやすい言葉です。ちなみにコア・コンピタンスとは、他社に模倣されにくい技術や能力を指しています。

ケイパビリティとコア・コンピタンスは、どちらも企業の競争力を高める要素です。ただし、ケイパビリティは組織の事業プロセス全体の強みであり、コア・コンピタンスは事業における特定の能力です。

コア・コンピタンスを形成する要素が企業のケイパビリティになっている場合もあれば、ケイパビリティの一部がコア・コンピタンスである場合もあります。

なぜケイパビリティが重要なのか

近年、グローバル化やITの発展などにより、市場やビジネス環境の変化が著しいといえます。「将来の予測が立ちにくい不確実で複雑な時代」を意味する「VUCA時代」において、企業のケイパビリティは重要です。ここでは、なぜケイパビリティが重要なのかを企業の場合、個人の場合に分けて解説していきます。

企業の場合

企業がケイパビリティを把握することで、自社の優位性を確立しやすくなります。変化し続けるビジネス環境において自社ならではの経営戦略を策定できたり、独自に生み出した業務プロセスの最適化を図れたりするからです。

たとえば営業ノウハウやマーケティング手法は目に見えて理解できる能力であるため、他社に模倣されやすいといえます。しかし、時間をかけて構築された営業プロセスは、他社に模倣されにくいことが考えられます。

市場調査や営業先のリストアップの方法、また商談スタイルや資料の内容など、業務のプロセスなどは簡単に理解して模倣できるものではないことが想像できるでしょう。自社のケイパビリティを従業員が認識することで、組織力が高まり一貫性のある事業を行えます。

個人の場合

ケイパビリティは、企業で働く個人にとっても重要といえます。ケイパビリティによって個人の行動指針が定まりやすくなり、企業が求める人材に成長することができます。

たとえばITを活用した事業プロセスがケイパビリティである企業では、ITに関する知識やスキルを習得することで、社内における市場価値を高めやすいでしょう。

ケイパビリティを正しく把握すると、その企業でやるべきことやあるべき姿を理解しやすくなります。個人の能力が上がれば、組織のケイパビリティの向上にもつながるでしょう。

企業のケイパビリティの把握に役立つ方法

企業がケイパビリティを正確に把握することで、的確なマーケティング施策の立案や、経営方針の策定につながります。ケイパビリティの把握には、以下の分析方法が役立ちます。

バリューチェーン分析

バリューチェーン分析とは、企業の活動を機能や事業工程ごとに書き出し、それぞれが生み出す価値を細かく分析することです。バリューチェーン分析では、企業の活動における機能や工程の強みを、以下の項目で整理します。

  • 経済的価値(Value)
  • 希少性(Rareness)
  • 模倣可能性(Imitability)
  • 組織(Organization)

これらの項目の頭文字をとって、VRIO分析とも呼ばれる分析方法です。書き出しておいた活動内容の強みを、項目ごとにYes/No形式または5段階で評価します。

それぞれの活動の具体的な強みが明確になるため、企業の優位性を把握したり、強みを活かしたマーケティング施策を策定したりできます。

SWOT分析

SWOT分析とは、企業のビジネス環境を理解して整理することで、最適な経営戦略の策定を目指すフレームワークです。SWOT分析では、企業の外部環境と内部環境を以下の4要素から分析します。

  • 強み(Strength)
  • 弱み(Weakness)
  • 機会(Opportunity)
  • 脅威(Threat)

表形式で分析するなら、縦軸に内部環境と外部環境を、横軸にプラス要因とマイナス要因の要素を設定するのが良いでしょう。内部環境については「強み(Strength)」と「弱み(Weakness)」を、外部環境については「機会(Opportunity)」と「脅威(Threat)」を書き出します。

SWOT分析で企業の活動における外部環境と内部環境を要素ごとに分析することで、自社のケイパビリティを把握しやすくなります。課題の発見や競合の把握にもつながるでしょう。

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企業がケイパビリティを強化するための戦略・ポイント

企業がケイパビリティを強化するには、以下の戦略やポイントを活用しましょう。

  • ダイナミック・ケイパビリティ
  • ケイパビリティ・ベース競争戦略
  • 人材育成・教養育成

戦略やポイントを把握していれば、効率的かつ的確にケイパビリティを強化できるでしょう。ここでは1つずつ解説していきます。

ダイナミック・ケイパビリティ

ダイナミック・ケイパビリティは、既存の経営資源を活用しながら時代の流れに沿ってケイパビリティを高めるといった経営戦略を指します。状況に応じた事業を展開していくことで、ビジネス環境の変化による企業側のリスクを最小限に抑えられるでしょう。

たとえばDX化が進んだり、ビジネスの不確実性が高まったりするなど、企業のビジネス環境は日々激しく変化しています。従来通りの見立てで事業計画を検討していると、予想外の出来事によって計画が崩れる可能性が高いでしょう。

ダイナミック・ケイパビリティという方法を使うことで、元々持っている経営資源を活用しながら競争力を高めることができます。

ケイパビリティ・ベース競争戦略

ケイパビリティ・ベース競争戦略とは、ケイパビリティを基礎とした経営戦略を策定し、企業の競争力や優位性を高めることです。ケイパビリティ・ベース競争戦略には、以下の4つの原則があります。

  • ビジネスプロセスの重視
  • 主要なビジネスプロセスの変換
  • 部門間のインフラ整備
  • トップの推進

これらの原則を実践していくことで、自社のケイパビリティを生かしながら事業を拡大することができます。

人材育成・教養教育

組織のケイパビリティを強化するには、従業員の育成や教養教育が重要です。教養を身につけ幅広い知識を持つ従業員が増えることは、企業を支える人員の増加につながります。

人材を育成するには、セミナーや自主学習の支援、また若手社員の社内プロジェクト登用などといった、サポートや機会提供の方法があります。

ほかにも、立場に関わらずフィードバックを行う「360度フィードバック」も活用できます。従業員の客観的な評価をさまざまな視点から得られるため、効果的な育成方法や仕事の方針を検討しやすくなるでしょう。

個人のケイパビリティを高めるために大切なこと

個人のケイパビリティを高めることは、企業のケイパビリティの強化につながります。従業員の育成や組織力の強化にお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。

ネガティブ・ケイパビリティを強化する

すぐには対処できない事態に耐える能力を意味する「ネガティブ・ケイパビリティ」の強化によって、個人のケイパビリティを高めやすくなります。変化が目まぐるしいビジネス環境において、すぐには答えが出せない問題とじっくりと向き合い、独自の解決策や戦略プランを導く能力は個人の強みになります。

ちなみに、不明確な事態の問題を明らかにして迅速に対処する能力は、「ポジティブ・ケイパビリティ」といいます。学校教育では答えがある問題を学ぶため、学生はポジティブ・ケイパビリティが身につきやすい傾向があります。

しかし、社会に出ると答えのない状況が発生することが頻繁にあるでしょう。そのため、ビジネスシーンにおいてはネガティブ・ケイパビリティの強化が大切です。

幅広いスキルや知識を身につける

幅広いスキルや知識を身につけることで、さまざまなシーンにおいて個人のパフォーマンスを最大限に引き出せます。スキルや知識によって活躍できるフィールドが広がり、自身の市場価値を高めるでしょう。

たとえば、仕事と両立しながらスキルの習得や資格取得に挑戦することや、社内留学制度などを利用して他部署の事業を知るといった方法があります。視野が広い人材が増えれば、ビジネス環境の変化にも柔軟に対応して的確な判断ができる組織力の向上につながります。

ケイパビリティを正確に把握して事業や業務に活用しよう

ケイパビリティとは、不確実な要素が増えた近年のビジネスシーンにおいて、競合との差別化や一貫性のある経営を目指すために必要な企業の強みです。時間をかけて高めたケイパビリティは、市場における自社の価値を高めてくれます。

ビジネスシーンで優位性を高める人材になるには、企業のケイパビリティを理解し個人のスキルを磨くことが重要です。幅広い知識を身につけ、自身のビジネス的な価値を高めましょう。働きながら継続的に学習をするには、ライフスタイルに合わせて学びやすいオンラインスクールがおすすめです。

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