「デザイナー」という言葉を聞くと、どのような職業が思い浮かびますか?
実はデザイナーと一括りにいっても、Webサイトのビジュアルを考えるWebデザイナーや、雑貨・日用品・車などの身の回りの製品をデザインするプロダクトデザイナー、本の装丁を作るブックデザイナーなど、あらゆる業界でデザイナーが活躍しています。
この記事では、デザイナーの種類とそれぞれの役割や仕事内容を紹介します。
そもそもデザイナーの仕事とは
デザイナーは、さまざまな製品の見た目や構造をデザインする職業です。デザイナーが仕事を手がける業界は多岐に渡り、専門とする領域によって求められる知識やスキルが異なります。
すべてのデザイナーに共通しているのは、商品やサービスのコンセプトを伝えるため、そのテーマについての魅力を洗い出して「設計」し、それを目に見える形へと落とし込んでいくという点です。その商品やサービスで伝えたいコンセプトを組み立てたうえで、実用的な機能やユーザーに魅力が伝わるようなビジュアルを考案します。
デザイナーの種類と仕事内容
デザイナーの種類と仕事内容をみていきましょう。それぞれのデザイナー職で求められる知識やスキルはさまざまです。
Webデザイナー
Webデザイナーは、Web上で表示されるコンテンツの色合い、フォント、イラスト、アニメーションなど、ビジュアル面を制作するデザイナーです。ユーザーが実際に触れるWebコンテンツの表側を制作します。
Webサイトのテーマとなる企業やサービスの雰囲気に合うカラーリングに加え、ユーザーの動線や使いやすさを考慮し、多くの人にわかりやすいようなデザインを作っていく点が特徴です。このため、「こんなふうに写真を使えば訪れてみたくなるはず」、「ここに文章を配置すれば読んでもらえる可能性が上がる」、「この部分にこんなデザインのボタンを置けば購買率が上がるのでは?」といった、マーケティングの視点に基づいた発想も重要です。
Webデザイナーを目指すなら、デザインとマーケティングの知識やデザインツールを使いこなすスキルのほか、簡単なコーディングやプログラミングを身につけておくのがおすすめです。HTMLやCSSのスキルがあれば、Webサイトの構造を理解したうえでデザインすることができます。
UI/UXデザイナー
UI/UXデザイナーは、Webサイトをはじめとする商品・サービスの開発において、ユーザーにとって使いやすいシステムやビジュアルをデザインする仕事です。
UIはユーザーと製品・サービスとの接点のことで、例えばWebサイトであればブラウザ上に表示されるレイアウトや文字のフォント、操作性など、利用者が直接目にしたり触れたりするものがUIに含まれます。
UXは、ユーザーがサービスや製品を利用することで得られる体験のことを指します。例えばECサイトでは、欲しい商品が見つけやすい、サイトの機能性が高く直感的に操作しやすい、カスタマーサポートが充実しているといったサービスや製品に関わるすべての体験がUXにあたります。
つまりUI/UXデザイナーは、Webサービスのほかにも食品や日用品のパッケージ、車、家電など、商品・サービスを使ってユーザーが得られる体験全体をデザインしているといえます。UI/UXデザイナーに必要なスキル・能力は、ユーザビリティの視点、マーケティングの知識、コミュニケーション能力、分析力、デザインソフトウェアを使いこなす力、プログラミングの知識などさまざまです。
ゲームデザイナー
ゲームデザイナーは、ゲーム作りに必要なさまざまな要素をデザインしながら、1つの世界観を仕上げるデザイナーです。ゲームのストーリーやシステム・ルールを踏まえて、それに基づいて魅力的なキャラクターや背景、サウンドなどあらゆる要素を考案しながら完成を目指します。
また、難易度のバランスを調整したり、プレイ中に感情に訴えかけるような要素を入れたりすることで、プレイヤーが没頭できるようなゲーム体験を作ることも大切です。
ゲームデザイナーを中心に考案したゲームの企画は、ゲームプログラマーやイラストレーター、サウンドクリエイターなどと連携することで実現されます。視覚デザインに関する知識だけでなく、ゲームのアイデアが実現可能なのかを検討するためのゲームプログラミングの知識や、プレイヤーの心を動かすギミックを搭載するための心理学の知識があるとよいでしょう。ゲーム作りには多くのメンバーが関わることになるので、コミュニケーションスキルやプレゼンスキルも身につけておくことで仕事を円滑に進めることができます。
プロダクトデザイナー
プロダクトデザイナーは、日用品や家電など実体のある製品について、形状や機能、色彩などを考えるデザイナーです。ユーザーの使いやすさやニーズを理解し、それをデザインに反映させます。
モノをデザインするプロダクトデザイナーは、製造方法や材料の特性を理解し、技術的に実現可能かどうかを考慮しながらデザインしなければなりません。
また、その製品を使うユーザーの体験にも焦点をあて、UX全体をデザインすることが求められます。製品そのものに加え、パッケージや取扱説明書、Webサイトなど、製品に関係する全体を総合的にデザインするのも業務範囲内です。
最近では、SDGsへの意識もますます高まっています。リサイクルできる素材を使用したり、プラスチックの使用を控えたりと、環境に配慮しながらデザインを考案することも大切です。
プロダクトデザイナーを目指すなら、基本的なデザインスキルはもちろん、製図・設計に使うCADソフトを使いこなせるように基本的な操作方法を身につけましょう。また、人が生活のなかで使うものをデザインするため、人間工学や心理学も勉強するのもおすすめです。
インダストリアルデザイナー
インダストリアルデザイナーは、自動車や家電製品、事務機器などのさまざまな工業製品をデザインする仕事で、工業デザイナーとも呼ばれます。
デザインをする際は、製作する製品の仕様書・企画書を元に情報や資料を収集し、技術者や販売責任者などと連携しつつ、ユーザーにとって最適な形で製品化できるようにデザインをおこないます。
インダストリアルデザイナーには、デザインセンスだけでなく製品に関する専門知識も必要です。機械の内部設計を行う場合は、理工系の専門知識も求められます。
工業デザイン科がある大学や短大、専門学校を卒業していたり、公益社団法人日本インダストリアルデザイン協会(JIDA)が実施しているプロダクトデザイン検定を取得していたりすると、インダストリアルデザイナーとして採用されやすいといえるでしょう。
DTPデザイナー
DTPは「Desktop Publishing(デスクトップ パブリッシング)」の略で、パソコン上で印刷物のデータを制作することをいいます。
DTPデザイナーは、DTPソフトウェアを使用して書籍や雑誌、新聞、カタログといった印刷物のレイアウトをおこない、デザインを制作する仕事です。現在ではほとんどの印刷物がこの方法で制作されています。
DTPデザイナーは、文章や見出し、写真、イラスト、表などの情報をまとめ、ユーザーに伝わりやすいレイアウトを作成します。デザイン能力だけでなく、編集能力も求められる職種です。
DTPデザイナーになるために必須の資格はありません。「Illustratorクリエイター能力認定試験」や「Photoshopクリエイター能力試験」などDTPデザイン向けのソフトのスキルや、「Webクリエイター能力認定試験」、「DTP検定」、「DTPエキスパート」などの基礎的な知識、スキルが測れる資格を取得していると実務で役に立つでしょう。
ブックデザイナー
ブックデザイナーは、本のカバー、表紙、扉、帯など、本の装丁をデザインするデザイナーです。
イラストレーターやグラフィックデザイナーと兼任しているブックデザイナーであれば、本の表紙や挿絵に使うイラストを手掛ける場合もあります。
ブックデザイナーには、編集者や著者と連携し、本の内容を汲み取りつつ読者が興味を惹かれる形に仕上げることが求められます。多くの人に本を手に取ってもらうためにも、読解力やコミュニケーション能力、調整能力などを身につけることが大切です。
また、本の装丁はそれ自体に魅力を感じて購入するきっかけになるケースも多いので、デザインの手法のほか文字組みやフォントに関する知識が求められます。実現可能なデザインかどうかを判断するためにも印刷・製本、流通など、書籍の販売に関係する総合的な知識が必要です。
大学や短大、専門学校などでデザインを学んで出版社やデザイン事務所に就職したり、ブックデザイナーのアシスタントとして働いたりすることで実務経験を積むことができるでしょう。必須の資格はありませんが、「Illustratorクリエイター能力認定試験」や「Photoshopクリエイター能力試験」、「Webクリエイター能力認定試験」、「DTP検定」、「DTPエキスパート」などの資格が実務に取り組む際に役立ちます。
エディトリアルデザイナー
エディトリアルデザイナーは、書籍や雑誌、商品カタログ、各種マニュアルなど、ページ数が多い紙面のレイアウトデザインを行うデザイナーです。
誌面の美しさと読みやすさを両立することが要求されるので、編集者と打合せをおこないつつ、文章や写真、イラストなどのレイアウトを整えて全体の構成をデザインしていきます。
また写真やイラストを使う場合、カメラマンやイラストレーターへのディレクションもおこないます。
エディトリアルデザイナーの仕事に就くためには、美大や美術系の専門学校を卒業し、デザイン事務所に就職して実務経験を積む方法が一般的です。
特別な資格は必要ありませんが、「Illustratorクリエイター能力認定試験」や「Photoshopクリエイター能力試験」、「Webクリエイター能力認定試験」、「DTP検定」、「DTPエキスパート」などの勉強を通じてエディトリアルデザイナーに必要なスキルを身につけることができるでしょう。
グラフィックデザイナー
グラフィックデザイナーはポスターや書籍、カタログや、商品のパッケージ、看板などの平面デザインを手掛けるデザイナーです。「グラフィック」とは視覚に訴えかける表現全般を意味し、平面の上に文字や写真、色を配置したりロゴを制作したりすることが業務範囲になります。
グラフィックデザイナーは、広告制作会社やデザイン事務所、企業の広告宣伝部や商品開発部などで活躍しています。特別な資格は必要ありませんが、「Illustratorクリエイター能力認定試験」や「Photoshopクリエイター能力試験」、「Webクリエイター能力認定試験」、「CGクリエイター検定」、「色彩検定」などが役立つでしょう。
イラストレーター
イラストレーターは、書籍や雑誌、Webサイトの挿絵やソーシャルゲームで使われるキャラクター、背景のイラストを描く職業です。
最近では書籍やパッケージ、ポスターなどの紙媒体のみならず、ゲームをはじめとするさまざまなオンラインコンテンツでも活躍の場が広がっています。自分の描きたいものを描く画家とは異なり、依頼主であるクライアントの要望を汲み取って媒体やコンセプトに合うイラストを制作することが大切です。
イラストレーターを目指す方法としては、大学の芸術系学部の美術学科やデザイン学科、専門学校のイラストレーション科を卒業して、デザイン事務所などに就職する人が多いようです。独学からSNSを活用して自分が制作したイラストを投稿し、人気を集めてイラストレーターとして独立する人もいます。
イラストレーターを目指している方は、「Illustrator」などのデザインソフトや「CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)」などのペイントソフトを使いこなせるようにしましょう。
CGデザイナー
CGデザイナーは、CG(コンピューターグラフィックス)を活用してデザインをおこなう職業で、「CGアーティスト」や「CGクリエイター」と呼ばれることもあります。
CGデザイナーは専用ソフトウェアを使い、2Dや3Dのグラフィックを制作します。最近は3GCGの進化と普及に伴い、ゲーム業界やテレビ・映画業界などの映像業界だけでなく、建築物や機械の設計などにもCGの技術が活用されています。さらに、現実を拡張するAR(Augmented Reality)、仮想現実を体験するVR(Virtual Reality)、現実に仮想を投影するMR(Mixed Reality)といった技術も発展しています。CGデザイナーの活躍の幅が広がっているといえるでしょう。
CGデザイナーを目指す際に必須の資格はありませんが、「Webクリエイター能力認定試験」、「CGクリエイター検定」を取得することでCGデザイナーとしての基礎力を身につけることができます。
ファッションデザイナー
ファッションデザイナーとは、服飾・ファッション分野のデザインをおこなう職業です。 ファッションデザイナーは、オーダーメイドの洋服をデザインするオートクチュール・デ ザイナーと、大量生産を目的にした企業内デザイナーの大きく2つに分けることが可能です。
ファッションデザイナーは、企業やブランドに所属したり、自身のブランドを立ち上げたりすることで、ファッションアイテムのデザインをおこないます。
ファッションデザイナーの仕事は、ほかのデザイナーと比べてやや特殊といえるでしょう。仕事の流れとしては、まず考えた企画に基づいて、素材や縫製の仕方、カラーバリエーションなどを考えながらデザイン画を作成し、パタンナーと一緒にパターン(型紙)を作成します。パターンが完成したら仕様書を作成し、企業デザイナーであれば工場へサンプル作成を依頼します。その後できあがったサンプルをチェックし、価格などの設定をおこないます。
ファッションデザイナーになるために必須の資格はありませんが、豊富な知識や技術が求められるため、服飾系の専門学校に通う人が多いです。しっかりと勉強したことを客観的に証明するためにも、「ファッションデザイナー資格認定試験」や「パターンメーキング技術検定」、「ファッション色彩能力検定」、「カラーコーディネーター検定試験」などを取得するとよいでしょう。
テキスタイルデザイナー
テキスタイルとは布地や織物のことで、テキスタイルデザイナーはファッション・アパレル製品やインテリアの素材として使用される生地をデザインする職業です。
テキスタイルデザイナーになるためには、デザインや色彩の知識、素材や染色に関する知識や技術、グラフィックソフトの知識など、さまざまな専門知識が必要になります。染織やデザイン系の学部・学科のある大学や短大、専門学校のテキスタイルデザイン科などを卒業してアパレルメーカーや繊維メーカー、インテリアメーカーに就職するコースが一般的です。
テキスタイルデザイナーになるために必ず必要な資格はありませんが、「衣料管理士(TA/テキスタイルアドバイザー)」や「ファッション色彩能力検定」、「カラーコーディネーター検定試験」などに合格することでスキルを証明することができます。
インテリアデザイナー
インテリアデザイナーは、住宅や商業施設などの建物や乗り物の内装に関わるデザインをおこなう職業です。壁や床、天井の内部空間の装飾のほか、家具やインテリア雑貨、照明器具のデザインを手掛けます。建築企画段階から携わり、完成まで監督する場合もあります。
デザインや色彩などのセンスはもちろんのこと、建築家や施工業者とも連携してスムーズに仕事を進めるために建築に関する知識も必要となります。
インテリアデザイナーを目指したいと考えている方は、インテリアや空間デザイン、建築などについて学ぶのがおすすめです。役立つ資格としては、「インテリアデザイナー資格認定試験」、「インテリアコーディネーター」、「インテリアプランナー」、「一級建築士」、「二級建築士」などが挙げられます。
建築デザイナー
建築デザイナーは建築物の居住性、機能性などを総合的に考えて外観や内部空間をデザインする職業です。それぞれの建築物が果たす機能や目的に応じて設計コンセプトを立て、外観的にも機能的にも優れた建築物を生み出すことが求められます。
建築設計には大きく分けて「意匠設計」、「構造設計」、「設備設計」があり、このうち「意匠設計」を扱うのが建築デザイナーです。似た職業として建築士が挙げられますが、建築士が構造や設備の設計を中心に担当する国家資格であるのに対し、建築デザイナーは見た目のデザイン部分を担当します。このため、建築デザイナーになるために必須の資格があるわけではありませんが、建築士の資格を取得することで活躍の幅が広がるといえるでしょう。
建築デザイナーを目指す流れとしては建築の専門学校や大学の建築学部を卒業し、建築会社やデザイン事務所、ハウスメーカーなどに就職する方法が中心です。
空間デザイナー
空間デザイナーは、室内や屋外で空間(スペース)のデザインや装飾、空間設計を担当する職業で、「スペースデザイナー」とも呼ばれます。
飲食店などの店舗からショッピングセンターなどの商業施設、個人宅、庭園まで、さまざまな空間をクライアントの要望を取り入れながら具現化していきます。
建築学部や建築を学べる専門学校で勉強し、ハウスメーカーやデザイン事務所などに就職して空間デザイナーになる方が多いです。「空間ディスプレイデザイナー資格認定試験」、「インテリアコーディネーター」、「インテリアプランナー」、「一級建築士」、「二級建築士」などを取得することで、空間デザインの技術力があることを証明することができるでしょう。
デザイナーになるにはスキルや資格は必要?
ここまで、さまざまなデザイナーの種類を紹介してきました。
一括りにデザイナーといっても、デザインするものによってさまざまなデザイナーがいます。必ずしも資格を取得しなくてよいものがほとんどですが、制作物に関係のある専門知識やスキルを証明できる資格を取得することで、専門性のあるデザイナーとして活躍することができるでしょう。
またどんな種類のデザイナーを目指すとしても、パソコンスキルは必須です。デザインに必要なソフトウェアを使いこなせるよう、実際にデザインを作りながら操作方法を学習するのがおすすめです。
デザイナーの仕事に未経験から転職する方法
IT技術の進展に伴い、Webデザインをはじめとするオンラインコンテンツのデザイナーの需要は高まっています。デザイナーは専門知識や技術が必要な仕事ではありますが、デザインの理論を学びツールの使い方を身につけることで、未経験からでもデザイナーとして転職できる可能性があります。
未経験から転職活動に取り組む際は、サンプル作品をたくさん制作してポートフォリオを作成しましょう。ポートフォリオでは、ただ作品の完成形をまとめるだけでなく、そこに至るまでにおこなった試行錯誤やそれぞれのデザインに込めた意味合いが伝わるように編集することが大切です。
デザイナーの種類ごとに必要な知識・スキルはさまざま
この記事では、デザイナーの種類やそれぞれのデザイナーに必要なスキルなどについて解説しました。
あらゆる業界でデザイナーが活躍していることからもわかるように、デザイナーは商品やサービスを作るうえで欠かせない非常に需要の高い職業といえます。スキルをしっかりと身につけ実績を重ねることで、幅広く活躍することができるでしょう。
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