副業で個人事業主になる方法とは?メリット・デメリットや必要な手続きについて解説

副業で個人事業主になる方法とは?メリット・デメリットや必要な手続きについて解説
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ライター 大竹菜々子
高校3年生で脚本家としてデビュー。2018年5月、脚本を担当した映画『猫カフェ』及び『チャットレディのキセキ』が公開される。 慶應義塾大学法学部進学後は、「トラベル Watch」「グルメ Watch」(株式会社インプレス)にてライター・編集者としての活動を開始した。 現在に至るまで、「レスポンス」(株式会社イード)や「ビギナーズ」 (株式会社マーケットエンタープライズ)などで取材記事やSEO記事作成を手掛けている。 なお 2022 年からは、オウンドメディア立ち上げに関わるなど、メディアプロデューサーとしても活動している。JAPAN MENSA会員。
監修者 板山 翔
平成28年に日本初のオンライン専門の税理士事務所を開業。塾講師歴7年、大手WEBメディアで連載を持つなどの異色の経歴を持つ。5人以下の小さな会社の経営者へ向けて、様々なメディアで情報を発信しており、YouTubeチャンネル「税理士ショウの超わかりやすいビジネスQ&A」は動画9本で登録者1,000人を超えるなど急成長している。

会社員として働いている人のなかには、「好きなことを仕事にしたい!」「会社のお給料以外にも収入がほしい!」「時間や場所に縛られず自由に働きたい!」と考え、副業を検討している方もいるのではないでしょうか。

最近は副業も一般的になってきており、会社員として働きながら個人事業主として開業する人もいます。なかには、副業を軌道に乗せて独立を目指す方もいますよね。

そこでこの記事では、副業で個人事業主になることのメリット・デメリットや必要な手続き、社会保険や税金について解説していきます。

会社員をしながらでも副業で個人事業主になれる?

いざ実際に副業を初めようと思うと、「副業をするなら個人事業主にならなければいけないの?」「会社員でも個人事業主になれる?」という疑問が湧いてくるのではないでしょうか。

結論から言うと、会社員として働きながら個人事業主になることは可能です。

そもそも個人事業主とは、税法上の区分です。会社員が副業をする場合、必ず個人事業主にならなければならないわけではありませんが、個人事業主として開業することで税金面でのメリットを得られる可能性があります。

会社員をしながら個人事業主になるメリット

副業をする際、必ずしも個人事業主としての開業が必要というわけではありません。ですが、会社員をしながら個人事業主として開業することには様々なメリットがあります。主なメリットとしては、次の5つが挙げられます。

収入が増える可能性がある

副業を始めると、会社からのお給料に加えて報酬を得られるようになります。収入を増やすことができれば、将来のために貯金をしたり、趣味や好きなものにお金を使ったりと、毎日をより充実させることができそうですよね。

副業の収入だけをみても、うまくスケジュールを調整して仕事をたくさん引き受けたり、単価をアップさせたりすることで、収入を増やせる可能性があります。働いた分だけ収入が増えるので、効率よく仕事をして収入アップに挑戦できるのも、個人事業主の醍醐味です。

独立を目指して準備ができる

個人事業主として収入が得られるようになると、独立や起業という道も見えてきます。自分がやりたい仕事で生きていくことができるようになれば、なりたい自分にぐっと近づけるのではないでしょうか。個人事業主として仕事をすると、自分の力で収入を得たという実感が得られるので、自己肯定感が上がる方もいるかもしれません。

また、個人事業主は自分次第でいくらでも仕事の幅を広げられるので、「どんどん挑戦するのが好き!」という方も日々成長を感じられる働き方といえそうです。仕事で成果を出すことでまた新たな依頼が舞い込んでくることもあり、日々手応えを感じられますよ。

個人事業主は様々な手続きを自分で対応する必要があるので、独立や起業を考えている方はその練習にもなるでしょう。

必要経費を計上することができる

個人事業主は、収入全体から仕事で使ったパソコン代や交通費などを経費にすることができます。このように、個人事業主として確定申告をする場合、経費を所得から差し引くことができるため、会社員よりも節税できる可能性があります。

個人事業主が経費として計上できるものには、次のようなものがあります。

  • 仕事をするために必要なもの(パソコン、ボールペン、名刺など)
  • 交通費(電車賃、ガソリン代など)
  • 通信費(電話代、インターネット代など)
  • 宣伝広告費(インターネット広告、チラシなど)

自宅で副業をする方は、家事按分として家賃や光熱費の一部を計上できる可能性もあります。会社員と比べて、経費として計上できるものが多いといえるでしょう。

青色申告特別控除が使える

また、税務署に開業届を提出するときに青色申告承認申請書を一緒に提出することで、青色申告をすることができるようになります。青色申告には、最高65万円の特別控除が受けられたり、青色事業専従者給与を経費にできたりと、白色申告にはない様々なメリットがあります。

開業届を出さずに白色申告をすることも可能ですが、副業での収入が増えるにつれて、青色申告のメリットが大きくなるといえるでしょう。

本業と副業の所得を損益通算できる

個人事業主は、会社員と副業の所得を損益通算することができます。副業の事業所得が赤字であれば、会社員としての給与所得と相殺して税金の納付額が抑えられる可能性があります。

「個人事業主になって副業に挑戦してみたいけれど、損をしてしまわないか不安……」という方もいるかもしれませんが、お金をかけずにできる副業もあります。会社員とあわせた収入全体や得られる経験を総合的にみて、個人事業主になるかどうかを考えていきましょう。

副業をする際に活用できるものが増える

個人事業主として事業が公的に認知されれば、必要に応じて国や自治体が提供する補助金・助成金を利用することも可能です。

また銀行によっては、開業して個人事業主になることで屋号つきの口座を開設できるようになる場合があります。クライアントや外注先との金銭のやり取りを屋号がついた口座で行いたい方も、開業届の提出を検討してみてください。

会社員をしながら個人事業主になるデメリット

様々なメリットがある一方で、会社員をしながら個人事業主になることにはやはりデメリットもあります。主なデメリットとしては、次の3つが挙げられるでしょう。

時間管理が難しい

「副業に挑戦してみたい!」と考える方のなかには、会社員としても仕事を頑張っている方が多いと思います。ただでさえ忙しいなかで時間を捻出しようとすると、生活リズムが乱れてしまうこともあるかもしれません。

会社員としての仕事を含め、日々のスケジュールをしっかりと管理できていないと、副業を進めたい週末を体力回復に費やさなければならなくなったり、締め切り直前に徹夜で仕事をすることになったりというように、無理をしなければならない状況に陥ってしまいます。プライベートとの境界が曖昧になると、楽しみにしていた用事も思い切り楽しめなくなってしまうのではないでしょうか。

納期より早めに完成できるように目標を立てるなど、自己管理をしっかりとできるように準備していきましょう。

確定申告の手間がかかる

個人事業主として開業して青色申告を行う場合、白色申告よりも処理が複雑になるといわれています。複式簿記の手法について地域の青色申告会で学んだり、税理士さんに経理作業を手伝ってもらったりと、まずは人の協力を得て進めていくのがおすすめです。

会社員として働いていると、税金関係の手続きは会社がしてくれるものなので、最初は自分から申告して支払いをすることに戸惑いを感じる人もいるのではないでしょうか。ですが、自分たちが受ける社会保障につながる手続きでもありますので、しっかりと対応するようにしましょう。会計ソフトを使って日頃からコツコツと経費処理をしておいたり、税理士さんに相談したりと、機械や人の力を借りることで自分がする作業を減らすこともできますよ。

失業保険がもらえないリスクがある

会社員が個人事業主として開業すると、会社をやめたときに失業保険がもらえなくなってしまうリスクがあります。個人事業主として働くことができているとみなされ、失業状態にあると認定されない可能性があるのです。失業保険をもらいながら独立の準備を進めるのではなく、ある程度の収入を得られるようになってから会社をやめることができるよう、よく注意してスケジュールを立ててみてください。

なお、失業保険を受給している方が受給期間中に個人事業主として開業した場合も、仕事を再開したとみなされて給付が停止されてしまう可能性があります。会社をやめたことをきっかけに個人事業主に挑戦しようと考えている方も、ハローワークなどの取り決め内容をあらかじめ確認して開業のタイミングを決めるようにしましょう。

会社員をしながら個人事業主になる場合に必要な手続きや必要書類

それでは、実際に会社員をしながら個人事業主になる場合に必要な手続きや必要書類について確認していきましょう。

開業届を提出する

個人事業主になるためには、開業届を提出する必要があります。国税庁のWebサイトからフォーマットをダウンロードし、名前や屋号、開業日などの必要事項を記入しましょう。その後、管轄の税務署の窓口に持参するか郵送することで手続きが完了します。

ちなみに、国税電子申告・納税システムのe-Tax(イータックス)を使ってオンラインで手続きを完了させることも可能です。e-Taxは確定申告の際も便利なので、開業の時点から使い始めてもよいでしょう。

なお、開業届を提出せずに事業をおこなっても罰則があるわけではありません。Webライターやイラストレーターなど、継続的に案件を受注して収入を得ている方は個人事業主として開業することでメリットを得られる可能性がありますが、まだ副業を始めたばかりの方にとってはあまりメリットがない場合もあります。不用品を時々フリマアプリで売っている場合も、一時的な収入として雑所得とみなされるため、そもそも非課税だったり経費にできるものが少なかったりと、個人事業主としてのメリットを享受しにくいかもしれません。

これからの事業のプランやなりたい自分、現在の仕事の受注状況などを照らし合わせ、開業届を提出するかどうかを検討してみてください。

青色申告承認申請書を提出する

青色申告を検討している方は、開業届と一緒に青色申告承認申請書も提出しましょう。青色申告承認申請書は、その年の3月15日まで、または事業開始から2ヶ月以内に提出する必要があり、これを忘れるとその年の確定申告は白色申告ですることになります。「副業での所得が多いので、青色申告で特別控除を受けたい!」と考えて個人事業主になる方は、開業届を出す段階で同時に提出しておくのがおすすめです。

事業用の口座開設やクレジットカードの作成をする

個人事業主として事業を始めるときは、事業用の口座開設やクレジットカードの作成も検討してみましょう。プライベート用の口座やクレジットカードを使っていると、私的な利用と事業での入出金が混ざってしまい、管理がしにくくなってしまいます。

銀行によっては、個人事業主として屋号つきの口座を開設するのはハードルが高い場合があるため、まずは個人名義の口座をプライベートと分けて新しく用意するのもおすすめです。クレジットカードについては、個人事業主も申し込めるビジネスカードもあり、ビジネスに役立つサービスが特典としてついていることもありますよ。

会社員をしながら個人事業主になる場合の社会保険や税金は?

個人事業主として開業するための流れはわかってきましたか? 

ここからは、無事に個人事業主になることができた後の健康保険はどうなるのか、税金の手続きをどのようにおこなえばいいのかを確認していきます。個人事業主として働き続けるために大切な内容なので、忘れずにチェックしましょう。

社会保険

会社員ではないフリーランスの個人事業主であれば、「国民健康保険」に加入することになります。ですが、会社員が副業で個人事業主になる場合、基本的にこれまでと同じように会社の社会保険や厚生年金保険に加入し続けることになります。引き続き会社に所属し続けるのであれば、特別な手続きは必要ありません。

なお、事業が軌道に乗り、会社員をやめて独立することになった場合は、勤めていた会社の社会保険を退職後も継続できる「任意継続保険」を利用することもできます。退職日までに2か月以上継続して社会保険に加入していることが条件で、独立してから2年間利用することが可能です。保険料は、これまで会社が負担していた分も支払うことになるため、それまでの倍になることを想定しておいてください。

所得税・住民税

会社員のまま個人事業主として副業をする場合、会社員としてのお給料と副業での所得を合計した額で税額が決まります。副業が赤字だった場合、本業と損益通算されることで税金が少なくなる可能性があるので、いきなり独立するよりも安心して個人事業主としての活動に挑戦できるかもしれません。

ただし、本業と副業が損益通算されることで、勤務先に副業が知られてしまう可能性があることは頭に入れておきましょう。会社に通知された住民税の金額が会社のお給料分と比べて高かったり低かったりした場合、個人事業主としても仕事をしていることが知られてしまうかもしれません。

最近は副業を推奨している企業も多くありますが、自分の会社がどのような姿勢をとっているのかは、あらかじめ確認しておくようにしましょう。「できれば会社に副業を知られたくない……」と考えている方は、確定申告の住民税徴収方法で「普通徴収」を選択してください。普通徴収であれば、個人事業主としての住民税納税通知書が自宅に届くため、会社に副業が知られてしまう可能性が下がります。

消費税

個人事業主は、基準期間の課税売上高が1000万円を超えた場合に課税事業者となり、消費税を納めなければならなくなります。基準期間の課税売上高が1000万円以下であっても、前年の1月1日~6月30日の課税売上高が1000万円を超えていた場合も、課税事業者となる可能性があります。課税事業者になることがわかった方は、税務署に届けなければなりません。

基準期間の課税売上高が1000万円以下だった場合は、免税事業者として消費税の納税義務が免除されます。ただし、免税事業者の方は、インボイス制度に注意しましょう。インボイス制度が導入されてからは、仕入税額控除を受けるために適格請求書(インボイス)の発行・保存が必要になります。免税事業者は、この適格請求書が発行できません。適格請求書を発行するためには、課税売上高が1000万円以下であっても、消費税の課税事業者となる必要があります。事業の運営にも大きく関わってくるため、よく理解して申請や準備を検討していきましょう。

会社員と個人事業主を両立するために意識したいポイント

ここまで、会社員が個人事業主として開業して活動を続けるために必要な手続きを解説してきました。せっかく開業するのであれば、副業でも活躍できるといいですよね。会社員の方が個人事業主としても仕事をする場合、両立するために意識すべきポイントをしっかりおさえていけるとよいでしょう。

効率的に時間を管理する

会社員が副業をする際は、高い自己管理能力が必要です。1日のなかで副業に取り組む時間を決めておくなど、効率的に副業を進めて本業に影響を及ぼさないようにしましょう。本業の繁忙期などのタイミングを見極めて早めにできることをしておくことで、せっかく始めた副業が滞らないようにすることも大切です。

効率的に時間を管理し、副業と本業をうまく両立することができれば、収入アップや理想の自分に近づくことができます。スマホのスケジュールアプリなどを活用し、本業と副業をあわせた計画を立てるようにしてみてください。

仕事の優先順位を立てる

副業が本格化してくると、本業でやらなければならないタスクと副業の納期とが複雑に入り混ざってきます。どちらかをおろそかにしてしまうことがないよう、仕事の優先順位を立てることを忘れないようにしてください。1日〜1週間をどのように過ごすのかという短期の計画に加え、1か月単位など中長期のスケジュールや目標にも目を向けることができるとよいでしょう。

体調管理を徹底する

副業を始める方のなかには、「収入アップや独立を目指して頑張りたい!」と意気込んでいる方も多いのではないでしょうか。

自分の好きな副業を始めることで毎日がさらに充実してくると思いますが、しっかりと体調管理は徹底することが大切です。仕事に対する責任感があればあるほど、本業も副業もしっかりやり切ろうと無理をしてしまうことがあるかもしれません。ですが、毎日会社から帰ってきてから夜遅くまで副業に取り組んだり、週末に少しも休めなかったりすると、体調に影響が出て結果的に仕事を続けることが難しくなってしまう可能性があります。

仕事をする時間と休憩時間のメリハリをつけ、「休むときは休む」ということを意識するようにしてみましょう。

労働規制を確認する

副業は法律では禁止されていませんが、就業規則で副業への制限や副業禁止の条項が設けられている会社は少なくありません

確定申告の際、住民税の徴収方法で普通徴収を選択しておけば副業がバレてしまう可能性は低いです。ですがこのような企業では、多くの場合、社員の過重労働や会社の仕事への影響を危惧して副業に制限を課しています。就業規則で副業をすることに制限がある場合は、その規則が設けられている理由を考えて働き方を決めることが大切です。本業に支障をきたさない限り、プライベートな時間をどのように使うかは自由に決めることができますが、優先順位のつけ方や体調管理について考えることも忘れないようにしましょうね。

なお、公務員の方は、一部の例外を除いて副業をすることが禁止されており、懲戒処分の対象にもなります。正直に申請することで副業の許可が得られる場合もあるため、よく注意して確認するようにしてみてください。

会社員をしながら個人事業主として副業できる!

会社員として企業で働いている方も、個人事業主として開業して副業をすることができます。ダブルワークをするのは大変かもしれませんが、自分がやってみたい副業に取り組むことで、より充実した毎日を過ごすことができるでしょう。

「いきなり副業を始めてうまくいくか不安……」という方は、さまざまなコースが定額で学び放題*の「SHElikes」などのキャリアスクールを活用してみるのもおすすめです。プログラミングやライティング、デザインといったスキルに加え、「ビジネス」「フリーランス」「お仕事を始めてみよう」といった副業をスタートするためのコースも用意されています。

「副業をやってみたい!」という気持ちがある方は、本業との兼ね合いや体調管理にも注意しつつ、ぜひチャレンジしてみてください。

*スタンダードプランの場合

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。