ビッグデータとは?基礎知識や具体的な例、注意点をわかりやすく解説

ビッグデータとは?基礎知識や具体的な例、注意点をわかりやすく解説
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ライター あゆ
カナダ拠点のフリーランスライター。23歳で初海外・留学を経験。帰国後にWeb広告代理店に転職、SNS広告の記事・クリエイティブ作成、運用を担当。その後、再度カナダに渡航し現地で美容部員として働く。その後、SHEに出会い現在ライターを務める。
エディター Kakuhata Kyosuke
同志社大学 生命医科学部医情報学科卒。在学中、基礎科学や生体情報の取得・制御、プログラミングについて学ぶ。大学院進学後Pythonデータ解析や生体化学を学んだあとライター業を開始。現在はフリーランスとして活動し、キャリア領域のメディアを中心にSEO記事を編集・執筆している。

ビッグデータ(Big Data)とは、さまざまな種類や形をもつ巨大なデータ群のことです。近年、インターネットを介した情報量の増加によってさらに注目を集めています。一方でビッグデータという言葉は知っていても、正確な定義や具体例について明確にイメージできない方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、ビッグデータとは何かを初心者にもわかりやすく解説します。ビジネスでデータドリブンな意思決定を行うための活用方法が見つかるかもしれません。ビッグデータの基礎知識と具体的な例を詳しくみていきましょう。

ビッグデータとは?基礎知識を簡単に解説

ビッグデータ(Big Data)は、簡単にいうと「多種多様で巨大なデータ群」のことです。一般的なソフトウェアでは処理しきれないデータ量をもち、その形式や速度はデータによって異なります。ビッグデータに明確な定義はありませんが、厚生労働省では以下のように解説されています*1

<ビッグデータとは>
一般的なデータ管理・処理ソフトウエアで扱うことが困難なほど巨大で複雑なデータの集合のこと。

また、総務省では「事業に役立つ知見を導出するためのデータ*2」と解釈されています。

3Vから5Vへの拡大

ビッグデータを特徴づける要素は「Velocity(生成頻度)」「Variety(多様性)」「Volume(量)」の頭文字を取って「3V」と呼ばれています。最近は、「Varacity(正確性)」「Value(価値)」が追加された「5V」の考え方も浸透してきているようです。

ビッグデータが持つ特性
Velocity(生成頻度):データの背生成・処理が速い
Variety(多様性):データの質が多岐にわたる
Volume(量):データ量が圧倒的に多く手作業では処理しきれない
Varacity(正確性):信頼できるデータである必要がある
Value(価値):データを組み合わせることで新たな価値が生まれる

引用:厚生労働省「ビッグデータ講座」p9より

これら「5V」の特徴の一部、もしくは全てに該当するデータがビッグデータと呼ばれています。これら5つのVを把握し、ビッグデータの特性を包括的に捉えることで、ビッグデータ活用のために適切な処理や解析方法を定められます。

構造化データと非構造化データ

ビッグデータは、「構造化データ」「非構造化データ」の主に2種類にデータを分類できます。簡単にまとめると、構造化データはExcelやCSVファイルなど列や行をもつデータのことです。一方で非構造化データは、メールや文章ベースの資料や画像、動画や音声などを指します。非構造化データは、構造化データに比べて集計や解析が難しいことが特徴です。

形式がある程度決まっている構造化データに対して、非構造化データは大量であるうえに形式もさまざまです。たとえば、SNSの投稿画像や音声一つ一つも非構造データの一種であると考えれば、その膨大な量をイメージしやすいのではないでしょうか。「構造化データ」「非構造化データ」はまとめてビッグデータと呼ばれていますが、大量の非構造化データをいかに解析可能な形に変換できるかが課題といわれています。

ビッグデータの分類と身近な例

幅広いビッグデータをビジネスに合わせて活用することで、ニーズに合わせたサービスの提供が可能になります。ビッグデータはさまざまですが、主に以下のような種類が存在します。

  • ソーシャルメディアデータ
  • マルチメディアデータ
  • ウェブサイトデータ
  • カスタマーデータセンサーデータ
  • オフィスデータ
  • ログデータ
  • オペレーションデータ

身近なものでは、SNSのプロフィールやコメントなどの情報は「ソーシャルメディアデータ」の一部です。たとえば、SNS広告では、登録されている個人情報や「いいね、シェア」などの行動データを含むビッグデータを元に、ターゲットを選定した配信が可能となります。

また、交通系ICカードなどの「センサーデータ」からは移動ルートや購買情報の収集が可能です。消費者の購買活動が多い駅を特定することで、どの駅で店舗販売を行うべきかなど、データを元にした戦略が立てられます。

ビッグデータが注目される理由・背景

ビッグデータが注目される背景には、以下の3つが挙げられます。

  • インターネットやスマートフォン、IoTの普及
  • クラウドやAIなどのテクノロジー発展
  • 政府によるオープンデータの提供

それぞれ、詳しく解説します。

インターネットやスマートフォン、IoTの普及

ビッグデータが注目され始めた背景には、インターネットやスマートフォン、loTの普及による世界的なデータ量の増加が関係しています。たとえばスマートフォンの普及と同時に、FacebookやInstagramなどのSNS利用者が急激に拡大したことで、SNSを介した情報量は膨大なものになりました。

また、loTの例として「デジタル家電」を考えてみると、人の行動パターンがカメラやセンサーを通じて蓄積されるのが分かります。loTが取得したビッグデータを分析する高度なAI機能が登場すれば、さらに高度なデータの可視化も期待できます。

クラウドやAIなどのテクノロジー発展

AI技術の目まぐるしい発展も相まって、ビッグデータ活用の動きが強くなってきているようです。従来のインターネット処理技術では処理しきれなかったビッグデータも、テクノロジーの発展によって収集や分析が可能になってきています。次々と新しいクラウドやAI技術が登場し、昔に比べてコストを抑えながらもビッグデータの処理が可能になりました。

ビッグデータがあっても、その中から価値ある情報を見つけられなければ、ビジネスでの活用は難しくなるでしょう。そこで、ビッグデータから必要な情報を収集し分析するテクノロジーの力を借りることで、より高速で正確なデータ管理が可能になります。

政府によるオープンデータの提供

ビッグデータの一種であるオープンデータとは、国や地方公共団体から提供され、誰でも無料で入手できる情報のことです。「官民データ活用推進基本法(平成28年法律第103号)」では、国及び地方公共団体は、オープンデータに取り組むことが義務付けられています*3。営利、非利益目的問わず、誰もがアクセスし活用できる情報を提供することで、経済活性化を目指しています。

オープンデータには、国民に対して政府がアンケート調査を行った結果など、年齢層や地域別にさまざまな統計データがあります。これらのデータを元に、市場が求めるニーズや顧客の問題を発見することで、消費者ニーズに基づいた事業やサービスを創り出すことができるでしょう。

ビッグデータ活用がもたらす効果

効率的にビッグデータ活用をすることで、データに基づいて根拠のある意思決定が行えるようになります。個人の直感的な決断ではなく、属人化を解消して論理的でデータに基づいた判断ができるでしょう。

ここからは、ビッグデータがもたらす効果を具体的に詳しく解説します。

リアルタイムで現状を把握できる

ビッグデータからオンタイムで情報をキャッチすることで、現状データを把握できます。たとえば、新製品リリース後の売上状況の変化や、SNS上の自社に関する投稿内容についてリアルタイムで観測可能です。ツールを活用して現状における顧客の動向を素早く分析すれば、解釈に時間を要することなく、課題解決のための意思決定を迅速に行えるでしょう。

また、金融系サービスにおいては、カードの不正利用時に素早く異変を察知することが求められます。このような問題発生時にも、リアルタイムでデータ分析を行い、不審な行動を即時に検出し対処できます。

予測分析により戦略を立てやすくなる

ビッグデータから予測分析のためのデータを入手できれば、データドリブンな戦略設計が可能になります。たとえば、季節によって売上が左右される小売業のビジネスでは、過去の販売や在庫状況、天候などのデータを分析できます。分析結果からある程度の売上を予測して商品を生産すれば、効率的な生産管理につながります。

販売促進戦略においても過去のデータを収集・分析することで、プロモーション成功率を予測できます。過去実績や顧客情報などのデータに基づいた予測分析により、効果的な販売促進計画を立てることができるでしょう。

多様化する顧客ニーズをより正確に分析できる

ビッグデータを活用して顧客データを収集、分析することで、ニーズや購買行動パターンの把握精度が高まります。たとえば、インターネットやSNS上でのユーザーの行動はマーケティングで活用できる重要なデータです。観光業を例にすると、SNSの位置情報や投稿から顧客の行動パターンを分析し、旅行客のニーズを満たしたサービスが創れるかもしれません。

また、インターネットの購買履歴や行動、SNSの反応などの膨大なデータを統合し、異なる興味や嗜好を持つ顧客グループを特定することで、ターゲットに合わせた広告やパーソナライズドマーケティング戦略を立てることもできます。

ビッグデータの具体的な活用事例

巨大なビッグデータは、さまざまな業界で活用されています。ビッグデータの基本を理解したら、具体的な活用事例を参考に解像度を高めてみましょう。ビジネスで使える新しいヒントや視点を得ることができるかもしれません。

ここからは、ビッグデータの具体的な活用事例を3つ紹介します。

Webサイトのアクセス解析

Webサイトのアクセス解析において、訪問者の行動を把握し、パフォーマンスを向上させるためにビッグデータは活用できます。訪問者数や滞在時間、コンバージョン率などユーザーの行動全般データとオープンデータを組み合わせることによって、より精密な解析が可能になります。

通常、収集したデータはさまざまな形式が存在するので、ビッグデータ処理フレームワークなどを利用して、データのクレンジングや変換、集約を行うことで、分析しやすい形式にデータを整えることができます。Google Analyticsや解析ツールなどの利用も良いかもしれません。

GPS機能を活用したエリアの混雑状況表示

GPS機能を活用することで、特定のエリアの混雑状況データを元にビジネスの意思決定ができます。たとえば、Googleマップでは対象の店舗・エリアにおいて混雑状況を閲覧することが可能です。コインロッカー、自動販売機、ATM設置箇所などを最適化するために、時間帯の混雑レベル、性別や年齢データが活用できるでしょう。

また、観光地において、GPS機能で観光客の行動パターンを把握することで、イベント開催のエリアや時間帯を決めるなど、街づくりや広報活動においてもビッグデータは活用できます。GPS機能を活用したエリアの混雑状況表示は、ユーザーとサービス提供者の双方において有益なサービスといえるでしょう。

参考:混雑エリアに関する情報を Google マップから入手する

生活道路の安全対策

ビッグデータは、生活道路の安全対策にも活用できます。実際に総務省によると、交通状況をモニタリングし、GPSデータやセンサーデータを分析するなど、交通予測においてもビッグデータの予測分析を行っているようです*4車両や交差点に設置されたセンサーなどからのビッグデータを収集し、事故発生時や交通違反の状況を分析します。事故のパターンや発生確率を予測し防止策を取ることで、より安全な生活道路の実現につながるでしょう。

また、事故や渋滞発生をリアルタイムで交通管理センターに提供し、素早い対策を打つことも可能です。自動車メーカーや安全運転支援システムにデータを組み込むことで、リアルタイムで運転手にアラートを届けるなどの注意喚起もできます。

ビッグデータを活用する際の注意点

巨大なビッグデータは、活用の幅が広い反面で少なからずデメリットも伴います。入念な運用・保守と情報漏えいへの対策を実施することで、データ品質とセキュリティを確保し、継続的な活用が可能になります。事前にビッグデータを取り扱う際の注意点を知り、問題点を把握しておきましょう。

入念に運用・保守の方針を決めておく

ビッグデータは多岐にわたる情報源から収集され、異なる形式や品質のデータが存在します。巨大なビッグデータであるがゆえに、運用・保守の方針が定まらない場合、管理が難しく混乱を招くリスクがあるかもしれません。データ洪水により本質的な情報が埋もれてしまうと、ビジネスでビッグデータを活用できなくなるケースもあるでしょう。

また、運用方法を誤ってしまうと、データ品質やシステム効率の低下が生じるかもしれません。対策としてデータの収集やクレンジング、変換や統合などのプロセスを、定期的かつ一貫して行う必要があります。場合によっては、ビッグデータの処理・解析のため専門的なツールの導入や人材確保などの検討も必要かもしれません。

情報漏えいに気をつける

ビッグデータには個人情報や機密情報が多く含まれることもあるため、情報漏えいが発生するとプライバシー侵害や法的な問題が生じるリスクがあります。適切なアクセス制御や暗号化、匿名化の手法を導入することで、これらリスクの軽減が見込めます。

また、情報漏えいが発生した場合、企業は法的な制裁金を支払わなければならない可能性もあります。顧客の信頼喪失や企業の評判悪化により、大きな経済的な損失が発生するリスクもあるでしょう。情報漏えい防止のために、社内でネットリテラシーの共有、社員一人ひとりのデータ管理を徹底するなど、セキュリティ対策を万全にすることが必要です。

ビッグデータを分析するために必要な準備

ビッグデータを分析するためには、データ収集・整理・情報を抽出するなど、幅広いスキルが必要です。新しい分析ツールやAI情報などのトレンドに追いつき、どのテクノロジーを利用すべきか見極める必要があります。

ここからは、ビッグデータの分析に必要なスキルを詳しく解説します。

AIや機械学習などの知識を身につける

AI(人工知能)とビッグデータは密接な関係にあり、互いの性能を発揮するために欠かせない存在といえるでしょう。膨大な量のビッグデータにおいて、AIを活用することで効率的かつ高度な分析が可能です。AI開発言語である「R言語」「Python」などは、機械学習の開発に使われています。

また、ビッグデータはAIにとって栄養のような存在であり、ビッグデータをAIに読み込ませ学習させることで、さらにAIの質を高めることが期待できます。次々に新しい技術が登場するAI分野では、日々のリサーチと実務経験でのアウトプットを継続的に行う必要があるでしょう。

データ分析スキルを習得する

ビッグデータ分析では「データ収集・クレンジング・分析・可視化」まで幅広いスキルが求められます。とくに、データクレンジングは、不完全なデータを見極め取り除く重要な作業です。膨大なデータを処理、可視化するために、BIツールスキルも必要になるでしょう。

また、データ分析は「目的を達成するための手段」という認識も忘れてはいけません。現状の課題を解決するために、「何の」データを「どのように」分析すべきかを把握する論理的思考力が問われます。目先の膨大なデータに惑わされず、必要な情報だけ収集し、足りないデータはあとから追加する意識も大切です。

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目的に合ったデータ分析の手法を把握する

多種多様なビッグデータは、目的に合わせて適切な分析手法を使いこなす必要があります。種類は幅広いですが、代表的なものに以下のような分析手法が存在します。

  • クロス集計
  • クラスター分析
  • ロジスティック回帰分析
  • アソシエーション分析
  • 決定木分析

また、分散処理フレームワークやクラウドサービスを活用することで、大規模なデータセットに対する効率的な処理が可能です。データ性質やビジネスの目的に合わせて、適切な手法を選択しましょう。

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ビッグデータの活用方法を学び、ビジネスに活かそう

ビッグデータの基礎知識を理解することで、具体的な活用方法がイメージできるようになります。リアルタイムな現状把握や顧客ニーズの分析など、事業の目的に合わせてさまざまな分析方法を試してみましょう。今すぐビッグデータを活用するのが難しい場合でも、早い段階でAIや機械学習のスキル習得に取り組んでみるのも良いかもしれません。

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※引用・出典
*1:厚生労働省「第一章ビッグデータ概要」より
*2:総務省「平成24年版 情報通信白書」より
*3:デジタル庁「オープンデータ」より
*4:総務省「地方公共団体における行政改革の取組」p18より

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。