デジタル技術の発展やビジネス環境の変化が著しい昨今では、アンラーニングやリスキリングが注目されています。しかし、以下のような疑問を抱く方もいるのではないでしょうか。
「アンラーニングとは具体的に何をする?」
「アンラーニングとリスキリングの違いは?」
そこで、本記事ではアンラーニングの方法やメリット、リスキリングとの違いを解説。また、アンラーニングを理解するにあたっておすすめの本も紹介します。
アンラーニングについて知りたい方やアンラーニングに取り組みたい方は、ぜひ最後までチェックしてみてください。
アンラーニングとは
アンラーニングは英語では「unlearning」と表記され、日本語にすると「学習棄却」「学びほぐし」です。これまでに身につけた知識やスキルを見直して現状に合わないものは使用を停止し、新たな知識やスキルの習得を目指すことを意味します。
アンラーニングの具体例
アンラーニングが必要な場面の具体例としては、異動や転職があげられます。たとえば、営業部から経理部へ異動する場合は、これまでに学んできた交渉力や課題解決力などの使用を一旦やめ、新たに会計の知識やパソコンスキルなどを身につける必要があるでしょう。
また、大手メーカーの企画職からITのベンチャーに転職する場合は、これまでに培ってきた知識や成功体験などを脇に置き、新たにITに関する知識やスキルを習得することが求められます。加えて、従来の働き方から、裁量権を持って会社の成長に直結するような仕事の仕方に切り替えることも必要だと考えられます。
アンラーニングとリスキリングの違い
アンラーニングと似た意味で使われるのが、リスキリングです。経済産業省によると、リスキリングは以下のように定義されています。
新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること*1
要するに、リスキリングの主な目的は新しい知識やスキルの習得です。それに対し、アンラーニングはこれまでに身につけた知識とスキルの棄却や取捨選択に重点を置いています。
なお、アンラーニングとリスキリングは相反するものではありません。その理由は、アンラーニングを通じてこれまでに身につけた知識やスキル、経験を取捨選択することで、新しい知識やスキルの習得に集中しやすくなるからです。
アンラーニングとリカレント教育の違い
アンラーニングは、リカレント教育とも異なります。リカレント教育の定義は、以下の通りです。
学校教育から一旦離れたあとも、それぞれのタイミングで学び直し、仕事で求められる能力を磨き続けていくこと*2
つまり、リカレント教育とは、社会人が学校教育を終えたあとも学習を続け、就労と勉強を繰り返すことを指します。リカレント教育をすることで、市場価値の高い人材になれると考えられます。
リカレント教育はリスキリングに似ており、今後のキャリアに役立つ知識やスキルの習得が主な目的です。そのため、これまでのキャリアを見直して知識やスキルの棄却を図るアンラーニングとは意味が異なるといえます。
ただし、リスキリングと同様にアンラーニングとリカレント教育も矛盾するものではありません。アンラーニングを実施することで、リカレント教育をスムーズに進めやすくなるでしょう。
なぜアンラーニングやリスキリングが必要なのか
アンラーニングやリスキリングが必要な理由の1つに、企業によるDXの推進があげられます。DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、デジタル技術やデータを活用することで会社の競争力強化や生産性の向上などを図り、企業としての優位性を高めることを指します。
インターネットやスマートフォンの普及により急速にデジタル化が進む昨今では、企業も個人もデジタル社会への対応が欠かせません。そのため、これからはデジタル技術を活用した働き方に適応する必要があるうえ、ITに関する知識やスキルを持った人材の需要が高まると考えられます。
たとえば、昨今ではオンライン会議が一般的になりつつあるため、パソコンスキルやオンラインでのコミュニケーション力を身につけることで働き方の変化に対応できるでしょう。また、プログラミングのスキルを習得すれば、キャリアの幅が広がるといえます。
アンラーニングやリスキリングは、デジタル技術の発展に対応するために欠かせないでしょう。
アンラーニングを実施するメリット
ここでは、アンラーニングのメリットについて説明します。結論からいうと、メリットは以下の3つです。
- 業務効率化のヒントを得られる
- 急速な環境変化への対応力を身につけられる
- これまでの考え方や価値観を見直すきっかけとなる
各メリットを詳しく見ていきましょう。
業務効率化のヒントを得られる
アンラーニングを実施するメリットの1つは、業務の効率化につながる可能性があることです。これまでの働き方を見直して新たな知識やスキルを身につけることで、生産性が上がると考えられます。
たとえば、パソコンスキルやITツールの使い方を身につけることで時間や場所を問わず仕事ができるようになれば、業務効率がよくなるでしょう。
急速な環境変化への対応力を身につけられる
急速な環境変化に対応しやすくなることも、アンラーニングによって得られるメリットの1つです。技術の発展が著しく環境変化のスピードが速い現代では、習得した知識やスキルが数年で時代遅れになってしまうことも考えられます。
身につけた知識やスキル、経験、これまでのキャリアなどに執着せず、常に知識やスキルのアップデートをすることで、環境変化に対応できる人材になれるでしょう。
これまでの考え方や価値観を見直すきっかけとなる
アンラーニングは、これまでの考え方や価値観を見直すきっかけにもなります。特に、成功体験を多く積んでいる人はこれまでのやり方に対するこだわりが強く、新しい知識やスキルの習得をためらってしまうこともあるでしょう。しかし、前述の通り現代は環境の変化が激しいため、従来の考え方や価値観では対応できない問題が出てくる可能性があります。
アンラーニングを実施して自分の知識やスキルの取捨選択をすることで、意識改革ができるでしょう。すると、新たな発想や価値観を持つことができ、環境の変化に柔軟に対応できるようになるはずです。
アンラーニングのやり方4ステップ
続いて、アンラーニングのやり方を紹介します。具体的には、以下の4ステップで行います。
- 自己内省に取り組む
- 知識やスキルを整理する
- 新しい知識やスキルを身につける
- 客観的な評価を受ける
各ステップを詳しく説明します。
1.自己内省に取り組む
まずは、自己内省をします。これまでに身につけた知識やスキル、経験などを洗い出しましょう。
なお、自分の価値観やこだわりなど、捨てるのが難しいと思うものも内省に含めるようにしてください。その理由は、マインドを変えないと従来の自分に固執してしまい、アンラーニングの効果を得にくくなってしまう可能性があるからです。
もし一人で内省をするのが難しい場合は、人事担当者に相談したりワークショップに参加したりなど、第三者から客観的な意見をもらうことを検討してみてください。
2.知識やスキルを整理する
続いて、知識やスキルを整理します。自己内省で棚卸しした知識やスキルのなかから、古いものや今後のキャリアに活かせないと思うものを明確にしましょう。
また、価値観も整理する必要があります。自分がこれまで大切にしてきた考え方や仕事で重視していることを将来のビジョンやビジネス環境などと照らし合わせ、必要ではないと思う価値観を見つけてみてください。
価値観の取捨選択をすることで今後の方向性が明らかになり、新たな知識やスキルの習得に意欲を持って取り組めるようになるでしょう。
3.新しい知識やスキルを身につける
これまでに身につけた知識やスキル、価値観の取捨選択をしたら、新しい知識やスキルの習得を目指します。テキストや参考書、スクールなどを活用し、今後も需要が見込まれるスキルの学習をしたり、自身の成長につながる知識や考え方を身につけたりしましょう。
なお、新しい価値観や考え方を身につけるのは一人では難しいうえに時間がかかるため、社内研修やワークショップなどに参加するのがおすすめです。また、コーチングを活用するのもよいかもしれません。
コーチングについては、以下の記事内で詳しく解説しています。
4.客観的な評価を受ける
アンラーニングを実施したら、客観的な評価を受けるようにしてください。これまでの取り組みによる成長や新たに見えてきた課題などを第三者から教えてもらうことで、今後の行動が明確になるといえます。
客観的な評価を受ける方法としては、定期的な面談やヒアリング、フォローアップ研修などがあげられます。
アンラーニングを実施する際の注意点
アンラーニングを実施する際には、以下の3点を意識するようにしてみてください。
- ネガティブ思考にならないように気をつける
- 周囲の人を巻き込んで進める
- 自分に合った方法で知識やスキルを学ぶ
それぞれを詳しく説明します。
ネガティブ思考にならないように気をつける
まず、ネガティブ思考にならないよう注意してください。アンラーニングはこれまでの知識やスキル、経験などを棄却するため、「これまでに身につけた知識やスキルは無駄だったのか?」「自分が積み重ねてきた経験は意味がなかったのか?」といった気持ちを抱くと、新しい知識やスキルを身につけるモチベーションが低下する可能性があります。
アンラーニングは自分が成長するために欠かせない取り組みだと考え、ポジティブに知識やスキルの取捨選択をするよう意識することが大切です。
周りの人を巻き込んで進める
アンラーニングは一人でも行えますが、周りの人を巻き込んで進めるのがおすすめです。その理由は、チームや会社全体で取り組むことで、効果を得られる可能性が高まるからです。
たとえば、デジタル化に対応するために一人でパソコンスキルやITスキルを身につけても、周囲の人がこれまでのやり方や考え方を変えなければ、従来と同じ働き方を続けることになるでしょう。また、個人で取り組むと、モチベーションの維持が難しい場合もあります。
アンラーニングを実施する際は目的やメリットなどを社内で共有し、チームや組織として取り組むようにしてみてください。
自分に合った方法で知識やスキルを学ぶ
アンラーニングをして新しい知識やスキルを身につける際は、自分に合った方法で学習を進めることが大切です。たとえば、通勤時間や就寝前などのすきま時間を活用して勉強したい方には、書籍やオンラインスクールが適しているでしょう。一方で、対面での学習が向いている場合は、通学型のスクールがおすすめです。
これまでの知識やスキルを棄却するだけではなく、新たな知識やスキルを身につけることもアンラーニングの一部だといえるため、自分に適した勉強方法で知識やスキルの習得を目指すようにしてください。
アンラーニングについて理解を深められるおすすめの本
最後に、アンラーニングの理解を深めるにあたっておすすめの本を紹介します。
『仕事のアンラーニング -働き方を学びほぐす』著:松尾 睦
さまざまな職場で働く人たちを対象にインタビューを実施し、その回答をもとに得られたアンラーニングに関する有益な情報が書かれています。アンラーニングの概要に加えて、自己内省や自己変革の方法などについても学べます。
キャリアに伸び悩んでいる方や成長する方法が分からない方は、ぜひ手にとってみてください。また、部署異動や昇進、転職など、キャリアに変化が訪れた方にもおすすめです。
アンラーニングとリスキリングの違いを理解して、知識やスキルをアップデートしよう
アンラーニングとリスキリングは混同されがちですが、それぞれの意味は異なります。本記事で説明したアンラーニングとリスキリングの違いやアンラーニングのメリット、実施する方法などを参考にし、知識やスキルの取捨選択に取り組んでみてください。
なお、アンラーニングをする際は知識やスキルを棄却するだけではなく、新しい知識やスキルの学習を始めることも大切です。今後もニーズが高いとされるスキルや興味のあるスキルなどを見つけて、習得を目指しましょう。
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※引用
*1:経済産業省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―」リスキリングとはより
*2:厚生労働省「リカレント教育」より