大学院でのリスキリングに使用できる助成金・給付金制度を解説!個人向けの制度も紹介

大学院でのリスキリングに使用できる助成金・給付金制度を解説!個人向けの制度も紹介

近年、IT技術の発展や企業のDX推進に伴い、業務に必要となる新たな知識やスキルを身につけるリスキリングが注目されています。政府も給付金や助成金の制度を拡充し、リスキリング推進を図っています。

なかには、高度な専門技術を求め、従業員に大学院でのリスキリングを推進したいという企業もあるでしょう。この記事では、大学院でのリスキリングに使用できる給付金や助成金制度を解説します。大学院に限らず、個人でリスキリングを行いたいという方に向けた支援制度とおすすめのスクールも紹介します。リスキリングを通じてキャリアアップしたい方は、ぜひ参考にしてください。

大学院でのリスキリングに使用できる給付金・助成金制度とは?

大学院でのリスキリングに使用できる支援制度は、厚生労働省による「教育訓練給付金」と「人材開発支援助成金」の2種類があります。それぞれ詳しく解説します。

教育訓練給付制度

教育訓練給付制度とは、働く方々の主体的な能力開発やキャリア形成を支援し、雇用の安定と就職の促進を図ることを目的として、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に、受講費用の一部が支給されるものです*1

対象になっている教育訓練を修了すれば、訓練にかかった費用の一部を支給してもらえる制度です。対象となる訓練には大学院でのリスキリングも含まれています。

種類

教育訓練給付制度には「一般教育訓練」「特定一般教育訓練」「専門実践教育訓練」の3種類があり、大学院でのリスキリングは「一般教育訓練」と「専門実践教育訓練」に含まれます。「一般教育訓練」には、修士や博士を取得するための過程が含まれ、受講費用の20%(上限10万円)が給付されます。「専門実践教育訓練」には、MBAや法科大学院などの専門職大学院での過程などが含まれ、最大で受講費用の70%が給付されます。

支給対象

支給対象は、以下の条件いずれかに当てはまる方です。

  1. 雇用保険の一般被保険者等
    一般教育訓練の受講開始日に、支給要件期間(同一の事業主に一般被保険者等又は短期雇用特例被保険者として雇用された期間)が3年以上ある
  2. 雇用保険の一般被保険者等であった方
    一般被保険者等の資格を喪失した日(離職日の翌日)以降、受講開始日までが1年以内であり、かつ、支給要件期間が3年以上ある方

過去に給付を受けたことがない場合や過去に給付を受けてから時間が経っている場合は、支給要件期間が1年以上あれば受給可能です。

申請方法

「特定一般教育訓練」「専門実践教育訓練」で支給を受ける場合は、まずハローワークで受給資格の確認手続きを行います(一般教育訓練の場合は不要)。厚生労働省の指定を受けた講座を受講し、費用を支払います。講座修了後、ハローワークで支給申請を行います。

補助金・制度名 教育訓練給付制度
補助金・支援制度の概要 働く方々の主体的な能力開発やキャリア形成を支援し、
雇用の安定と就職の促進を図る。
受講費用の一部が支給される。
対象者 3年以上雇用保険の被保険者の方、
離職後1年以内で、雇用保険に3年以上加入していた方
給付率 一般教育訓練:
雇用の安定や就職の安定につながる教育訓練。
受講費用の70%(上限10万円)が支給される。
特定一般教育訓練:
労働者の速やかな再就職及び
早期のキャリア形成に資する教育訓練。
受講費用の40%(上限20万円)が支給される。
専門実践教育訓練:
中長期的なキャリア形成に役立つ教育訓練。
受講費用の50%(上限40万円)が支給される。
申請方法 各講座の修了日から、
1ヶ月以内にハローワークで申請

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、厚生労働省が企業向けにおこなっているリスキリング支援制度です。人材開発支援助成金は、企業を対象にした支援制度で、従業員個人ではなくリスキリングを推進した企業に対して、決められた金額が助成されます。7つのコースがあり、コースや企業規模によっては最大で75%助成がされるなど、手厚い支援が特徴です。

種類

人材開発支援助成金には、「人材育成支援コース」「教育訓練休暇等付与コース」「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」「建設労働者認定訓練コース」「建設労働者技能実習コース」「障害者職業能力開発コース」の7コースがあります。

支給対象

人材開発支援助成金の受給対象は、主に大企業・中小企業や事業主団体または中小建設事業主団体における事業主です。契約社員や派遣社員・短時間労働者などを除いた労働者(正規雇用の従業員)がリスキリングを行った場合、支給されます。

申請方法

人材開発支援助成金は企業を対象とした助成金のため、申請も企業が行います。助成金を申請する前に、まず企業内で「職業能力開発推進者」を定め、「事業内職業能力開発計画」を作成する必要があります。「職業能力開発推進者」とは、社内で職業能力開発のキーパーソンとなる立場で、「事業内職業能力開発計画」の作成や、リスキリングに関する相談、指導を担当します。従業員の意見を反映した「事業内職業能力開発計画」の作成方法は、厚生労働省のWebサイトでも紹介されています。

準備が整ったら、訓練開始日の1ヶ月前までに「訓練実施計画届(訓練様式第1号)」と必要書類を管轄の労働局へ提出します。訓練対象者の登記簿謄本の写しや人材開発支援助成金事前確認書(訓練様式第11号)などさまざまな書類が必要になるため、事前に確認しておきましょう。訓練が終了したら、訓練終了日の翌日から2ヶ月以内に「支給申請書(訓練様式第5号)」と必要な書類を管轄の労働局に提出します。助成の内訳や訓練の実施状況報告書などの書類が必要になるため、事前に準備しておくことが望ましいです。

提出した書類の内容は労働局で審査され、支給か不支給かの決定が行われます。他の助成金に比べて確認項目が多いことから、支給の決定までに時間がかかることを認識しておきましょう。事業主、訓練を受ける労働者の双方が認識を深め、余裕を持って申請準備を行うことが大切です。

助成金・補助金制度名 人材開発支援助成金
助成金・補助金制度の概要 従業員の専門的な知識や技能の習得を目的として、
企業が計画に沿って職業訓練などを実施した場合に
訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成される制度
申請要件 ・有給教育訓練休暇制度(3年間で5日以上)を導入し、
労働者がその休暇を取得して
訓練を受けた場合に助成 
対象者 雇用保険適用事業所の事業主
(人材育成支援コースは事業主団体等も含む)
経費助成率 ・人材育成支援コース:45%(訓練によって異なる)
・教育訓練休暇等付与コース:30万円
・人への投資促進コース:75%(訓練によって異なる)
・事業展開等リスキリング支援コース:75%
申請の流れ コースによって異なる

大学院でのリスキリングが向いている人

大学院でのリスキリングと聞くと、ハードルが高く感じる人もいるでしょう。どんな人が、大学院でのリスキリングを視野に入れるのに向いているのか紹介します。

専門分野をアカデミックな観点から学びたい人

専門分野を学術的に学びたい人には、大学院でのリスキリングが向いています。大学院は、その技術や知識を学問として極め、その道のプロとなった大学の教員から学べる場です。実務として生かせる知識や技術を学ぶというよりは、より理論的に、学問としての知識を学ぶことができます。

また、大学院を修了する際は、修士論文を提出することが一般的です。その分野を学問として学んだ上で自分で課題を設定して研究を文章にまとめることで、学問として学んだことを自分なりにアウトプットし、定着させることができます。専門分野について学術的に学びたい方には最適な環境と言えるでしょう。

金銭的に余裕がある人

アカデミックな観点からリスキリングを行いたい人に加えて、金銭的に余裕がある人にも大学院でのリスキリングはおすすめです。大学院は、それ以外のキャリアスクールなどに比べて学費が高額です。前述した給付制度を利用したとしても、大部分は自己負担になってしまいます。逆に言えば、金銭的に余裕のない人にはおすすめできない方法と言えます。

その分野についてお金をかけてでも学術的に学び、修士や博士の学位を取りたい場合は、助成金や給付金の使用はもちろん、大学院進学に向けた貯金計画を立てたり、勤めている企業の福利厚生を利用し、学費を負担してもらえないかなどを検討しましょう。

時間的な余裕がある人

大学院でリスキリングを行って学位の取得を目指す場合、修士の場合は2年、博士の場合はさらに3年かかるのが一般的です。学術的に学びたく、金銭に余裕がある方でも、その知識やスキルを早く習得したい人には、大学院でのリスキリングは向きません。

数年単位の時間を使ってじっくりとその分野に向き合いたい人、時間をかけて学位を取得することで、自分のキャリアが開ける人にはおすすめです。

大学院以外で使用できる個人向けのリスキリング支援制度

大学院でのリスキリングには使用できませんが、キャリアスクールでの学習に利用できる個人向けの支援制度を紹介します。転職や新たなキャリアに向けて新しい知識を身につけたい人には、最適の制度です。

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業

リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業は、経済産業省が認定した事業者からキャリア相談やリスキリング講座の受講、転職支援のサービスを受け、条件を満たすことで最大で受講料の70%(上限56万円)の給付を受けられる制度です。スキルを身につけて、キャリアアップし、転職したいという方には最適の制度になっています。*2

補助金・制度名 リスキリングを通じた
キャリアアップ支援事業
補助金・支援制度の概要 経済産業省が認定した事業者からキャリア相談や
リスキリング講座の受講、転職支援のサービスを受け、
条件を満たすことで最大で受講料の70%(上限56万円)の給付を受けられる制度。
対象者 経済産業省が認定する
リスキリング講座やサービスへの登録時と
キャリア相談対応における初回面談時に在職者であり、
雇用主の変更を伴う転職を目指している方。
給付率 スキリング講座の受講を修了した場合、
講座の受講費用(税別)の1/2相当額(上限40万円)。
その後、実際に転職して1年間継続的に転職先に就業していることを確認できる場合、
講座の受講費用(税別)の1/5相当額(上限16万円)。
申請方法 経済産業省が認定するリスキリング講座やサービスにより異なる。

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ハロートレーニング(公共職業訓練・求職者支援訓練)

ハロートレーニングは、ハローワークが提供している職業訓練制度です。公共職業訓練と求職者支援訓練の2つがあり、公共職業訓練は雇用保険を受給している求職者が対象で、訓練期間は約3か月〜2年なのに対し、求職者支援訓練は、雇用保険を受給できない方が対象で、訓練期間は2〜6か月の期間の講座になっています。*3

コースの種類はさまざまで、ITやサービス、デザインなど幅広い分野のスキル習得を目指せます。また、無料で受講できるのもポイントです。

申請手続きは最寄りのハローワークで受け付けているので、離職中にリスキリングに取り組みたい方や個人事業主になるためにスキルを身につけたい方は、足を運んでみてください。

補助金・制度名 ハロートレーニング
(公共職業訓練・求職者支援訓練)
補助金・支援制度の概要 ハローワークが提供している職業訓練制度。
幅広いスキル習得を目指せる講座が無料で提供されている。
対象者 ハローワークの求職者
給付率 無料
(テキスト代等は実費負担)
申請方法 ハローワークでの求職申し込み、
職業相談の後、受講申し込み

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リスキリングにおすすめのスクール

個人向け支援支援制度である、リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業を利用して、リスキリングと転職支援を受けられるおすすめのスクールを紹介します。

SHElikes

SHElikes(シーライクス)は、全45以上の職種スキルを学べる女性向けキャリアスクールですWebデザインやWebマーケティングをはじめ、動画編集、広告運用、SNS運用、プログラミングなど多彩なコースが用意されており、未経験からでもキャリアチェンジを目指せます。

またSHElikesは、月に1回のグループコーチングで振り返りと学習の目標設定ができたり、受講生同士で交流できるコミュニティがあったりと、コース受講以外のサービスも利用しながら、モチベーション高くリスキリングに取り組めるのが魅力です。

「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」の補助対象となる「レギュラープラン」では、キャリアカウンセラーによる1on1キャリアカウンセリングや書類・面接対策などの転職支援サービスを受けることもできます。

スクール・講座名 SHElikesレギュラープラン(SHE株式会社)
リスキリング講座内容
(リスキリングを通じた
キャリアアップ支援事業対象)
・45職種以上のWebスキル学び放題を中心とした
スキルアップのための学習サポート
・キャリアカウンセリングなどの
キャリアチンジに向けたサポート
対象者 下記条件に当てはまる方
・入会時点で企業等と雇用契約を交わしている方
・雇用主の変更を伴う転職を目指している方
(個人名義で入会される方が対象)
補助金額 ・入会時に受講料の50%早期還元
(早期還元はカウンセリングの場でご入会いただいた
初回参加時のみ適用となります。)
・SHElikes入会中かつ2027年4月30日までに
SHE株式会社が紹介した転職先へ転職し、
1年間継続勤務した場合は20%追加還元
公式サイト https://shelikes.jp/landing_pages/reskilling2024

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DMM WEBCAMP(ウェブキャンプ)

DMM WEBCAMP(ウェブキャンプ)では、プログラミングやWebデザイン、WordPressなどを学べます。転職サポートやキャリア相談などを利用できるのもポイントです。

「DMM WEBCAMP エンジニア転職 専門技術コース」は厚生労働省の専門実践教育訓練給付金の対象講座のため、最大56万円の給付金が適用されます。AIやクラウドのような専門技術を学びたい方は、ぜひ給付制度を活用して受講してみてください。

DMM WEBCAMPが気になる方はこちら

スクール・講座名 DMM WEBCAMP(ウェブキャンプ)(株式会社インフラトップ)
リスキリング講座内容
(リスキリングを通じた
キャリアアップ支援事業対象)
Webデザインやプログラミングなど。
DMM WEBCAMPエンジニア転職 職業両立コースと専門技術コースでは、
AIやクラウドなどの最新技術も学べる。
対象者 雇用契約を締結しており、
転職を目指している方のみ
補助金額 ・コース修了時に50%のキャッシュバック
・コース修了後に転職し、1年間継続勤務をすれば追加で20%のキャッシュバックを受けられる。
公式サイト https://web-camp.io/

マケキャン by DMM.com

マケキャンbyDMM.comは、実務で役立つマーケティング戦略を学べるキャリアスクールです。Webマーケター養成スクール3年連続No.1の実績を誇り、現役のWebマーケターによるマンツーマンレッスンを受けられます。

大きく「転職コース」「学習コース」「副業コース」に分かれており、3ヵ月でWebマーケターを目指せる「転職コース」が「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」の対象です。

転職コースでは最初の1、2ヵ月で広告運用の基礎知識やプランニング手法を取得し、3ヶ月目に現役マーケターとのグループワークを通じて広告プランニングを行います。SNSの広告運用やChatGPTの活用方法など、実践で役立つWebマーケティングスキルを幅広く学べるのが魅力です。

補助金適用で最大70%の補助を受けられ、通常33万円(税込)の転職コースを12万円(税込)で受講できます。

スクール・講座名 マケキャンbyDMM.com(株式会社インフラトップ)
リスキリング講座内容
(リスキリングを通じた
キャリアアップ支援事業対象)
転職コース(SNS広告運用やデータ分析などを
含むWebマーケティングスキル)
対象者 企業と雇用契約を締結している方かつ転職を目指している方
補助金額 ・コース修了後、提供される規定のサービスを
すべて完了していた場合に50%還元
・コース修了後に転職し、1年間継続的に転職先に就業していることを
確認できた場合に20%追加還元
公式サイト https://makecam.web-camp.io/lp/jobchange/

補助金を利用して、大学院でリスキリングしよう

大学院でのリスキリングは、専門分野をアカデミックに学べ、論文を書き、学位を取得することで、その分野で権威性のある実績を積めるなど、大きなメリットがあります。一方で、卒業までに時間がかかること、金銭的な負担が大きいことなど、デメリットも存在します。

給付金や助成金を上手に活用することで金銭的な負担を多少減らすことも可能です。仕事やライフプランとのバランス、今後歩みたいキャリアや求めるスキルなどとのバランスを見ながら、大学院でのリスキリングが最適かどうかを判断するとよいでしょう。

近年は、はやくスキルを身につけて転職したいという方に合った、個人向けリスキリング支援制度も充実しています。学びたい分野や目指したい職種、働きたい企業の特徴などを踏まえた上で、リスキリングを行うスクールや利用する制度を選びましょう。

女性向けキャリアスクールSHElikesでは、Webデザインやマーケティング、ライティングなどの専門スキルだけでなく、ビジネススキル全般を学ぶことができます。また、リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業の対象となっているレギュラープランでは、転職に向けたキャリアカウンセラーのサポート、書類添削や面接対策なども受けられます。

気になる方は、ぜひ1度無料体験レッスンに参加してみてください。

参考
*1 厚生労働省「教育訓練給付制度」
*2 経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」
*3 ハロートレーニング(公共職業訓練・求職者支援訓練)

ABOUT ME
ライター 古澤 椋子
鹿児島大学大学院水産学研究科修了。水産系社団法人にて、水産に関わる調査研究、行政との折衝などを経験したのち、水産系ベンチャーにて、広報を担当。2023年からフリーライターとして活動を始め、主にエンタメ系の記事を執筆。SHElikesでキャリア、マインド共に変化した経験から、SHEsharesのライターを務める。
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エディター 渋谷 富子

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。