転職で内定を承諾した後に、何かしらの事情で内定を辞退しなければならないことがあるかもしれません。「承諾した後に辞退すると迷惑が掛かるのでは」「企業と揉め事になったりするのは怖い……」と不安になってしまう方もいるのではないでしょうか。
この記事では、内定承諾後に辞退をするリスクや注意点、よくある辞退理由と企業への伝え方を詳しく解説します。
転職の内定承諾後に辞退はできる?リスクも解説
内定承諾後の辞退について、以下の3点を解説します。
内定承諾後に辞退をする場合、一定のリスクは存在するため、慎重に判断し伝え方にも注意を払うことが大切です。
内定承諾後の辞退は可能
結論として、内定承諾後でも入社を辞退することは可能です。一般的に、内定承諾書にサインをした段階で労働契約を結んだことになります。そのため、内定辞退は労働契約を解約することになりますが、以下の通り民法627条第1項で労働者は労働契約の解約権があるとされています。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
引用:e-Gov法令検索|民法(明治二十九年法律第八十九号)より
内定承諾後に辞退することは法律的に違法ではありません。しかし、内定承諾は双方の信頼関係に基づく約束であり、いくらでも破棄できるものと安易に考えてはいけません。辞退する際は、企業側の立場も考慮し、丁寧な説明と謝罪が必要です。
内定承諾後の辞退はリスクもある
内定承諾後の辞退は、無視できないリスクが存在します。一番認識しておかなければならないのは、損害賠償を請求される可能性がゼロではないということです。
内定承諾書にサインをした時点で労働契約が成立しています。そのため、内定承諾後の辞退は「契約違反」として、発生した損害について損害賠償を請求される可能性があるのです。たとえば、入社を前提に企業の経費を使用した研修を受けていた場合や、すでに名刺や制服を企業側が用意してしまっていた場合、その費用の返還を求められる可能性があります。
本当に損害賠償請求を行うかは企業次第ですが、可能性があるということは認識しておきましょう。
内定承諾後の辞退で注意すべきこと
内定承諾後に辞退をする場合、再度応募しようとしても採用枠がないことがあったり、辞退した企業の関連企業の選考に影響が出る可能性があったりする点には注意しましょう。
辞退をしたもののやっぱり入社したいと思っても、ほかの応募者の採用が決まって採用枠がなくなってしまう可能性があります。また、内定承諾後の辞退は企業に迷惑を掛けるため、企業があなたに持つイメージが低下している可能性があります。
そのため、辞退した企業の子会社やグループ企業に転職したいと思っても、辞退した事実が伝わっており採用が見送りになる可能性があります。このような影響が考えられるため、内定承諾後の辞退は慎重に考えるべきでしょう。
転職の内定承諾後に辞退を考えるケース – よくある理由
よくある内定辞退の理由は以下のとおりです。
内定承諾後の辞退になってしまうことを避けるために、よくある理由に自身が当てはまる可能性がないかチェックしてから内定を承諾するようにしましょう。
現職企業から引き止められた
内定承諾後に退職の意志を伝えると、現職企業から引き止められるケースは少なくありません。転職の意向を知った現職企業が、待遇改善や新たな役職の提示など、魅力的な条件を提案してくる場合があります。これにより、転職を踏みとどまる人もいます。
引き止めに合った場合は再度、現職での実績や人間関係、将来性を踏まえ、内定先と比較検討することが大切です。安易に現職にとどまることのリスクも考慮し、慎重に判断しましょう。
家族から反対された
内定承諾後に家族から転職を反対されるケースも珍しくありません。特に、転職に伴い収入が減ったり転居が必要になったりと生活に影響が出る場合は、反対を受ける可能性があります。
家族の意見は軽視せず、転職の目的や将来のビジョンを丁寧に説明し、理解を得ることが大切です。転職する際は、内定を承諾する前に家族に相談しておくことをおすすめします。
内定先の企業に不信感を抱いた
内定承諾後に内定先企業へ不信感を抱くケースもあります。たとえば、入社前の手続きや連絡のやり取りの中で企業の対応に問題を感じたり、新たな情報により企業の将来性に疑問を持ったりする場合があります。
このような不信感は、将来の自身のキャリアに影響を与える可能性があるため、無視するべきではないでしょう。しかし、内定承諾前に念入りに企業研究をしておくことも大切です。
転職の内定承諾後に辞退したいがどうすればいい?よくある理由と伝え方
内定承諾後の辞退というシチュエーションは頻繁に経験するものではないため、どのように対応すればいいか不安になってしまう人が多いでしょう。以下の3パターンについて辞退の伝え方を例文とともに解説します。
企業側の立場を考慮しながら辞退の理由を丁寧に説明することが大切です。
志望度の高い他企業から内定をもらった場合
まずは、志望度の高い他企業から内定をもらった場合です。辞退については基本的に口頭で伝えるのがおすすめです。ただし、採用担当者が不在で電話がつながらない場合や、内定後の連絡はメールで行うようにと指示があった場合などはメールで問題ないでしょう。
辞退の理由については正直に話すのがおすすめです。入社をしなかったとしても、今後その企業と取引を行うなど何かしらつながりが発生する可能性があります。そのため、辞退について「体調を崩して働けなくなった」というような嘘をついてしまうと、後々自身の首を絞めてしまうことになりかねません。電話の場合と、メールの場合それぞれの伝え方を紹介します。
電話の例
あなた:
先日、御社より内定をいただきました◯◯と申します。恐れ入りますが、採用担当の◯◯さまはいらっしゃいますでしょうか?
(採用担当者にかわる)
あなた:
お世話になっております。◯◯と申します。先日いただいた内定についてお伝えしたいことがあり、連絡させていただきました。今、少々お時間をいただいてもよろしいでしょうか。
採用担当者:
はい。大丈夫です。どうしましたか?
あなた:
内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございました。大変申し上げにくいのですが、検討の結果、この度は御社よりいただきました内定を辞退させていただきたく、連絡させていただきました。内定承諾後の辞退になり、ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。
採用担当者:
そうなんですね。差し支えなければ、理由を伺えますか?
あなた:
御社と並行して応募していた別企業から内定をいただき、悩んだのですが今後のキャリアを考えた結果、そちらの企業への入社を決意いたしました。
採用担当者:
そうですか。残念ですが、承知しました。
あなた:
本来ならば、直接お詫びに伺うべきところですが、取り急ぎお電話でご連絡を差し上げました。申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします。
メールの例
件名:【内定辞退のご連絡】〇〇(氏名)
株式会社〇〇
採用ご担当
〇〇様
お世話になります。先日内定をいただきました〇〇です。
この度、誠に勝手ながら、貴社への入社を辞退させていただきたく連絡させていただきました。他社からも内定をいただき、慎重に検討した結果、そちらの企業への入社を決意いたしました。
突然の連絡となり、申し訳ございません。内定をいただいたにも関わらずこのような結果となり、心よりお詫び申し上げます。何卒ご理解いただけますよう、よろしくお願いいたします。
やむを得ない事情の場合
やむを得ない事情の場合も、正直に事情を話しましょう。やむを得ない事情があるからといって企業に迷惑を掛けていることには変わりないため、丁寧にお詫びをする姿勢が大切です。
電話で伝える場合とメールで伝える場合の例を紹介します。
※電話の場合、理由を伝える箇所以外は「志望度の高い他企業から内定をもらった場合」と同様のため省略しています。
電話の例
あなた:
内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございました。大変申し上げにくいのですが、家族の健康状態が急変し介護が必要な状況となり、貴社への入社を辞退せざるを得ない状況となってしまいました。内定承諾後の辞退になり、ご迷惑をお掛けして申し訳ございません。
メールの例
件名:【内定辞退のご連絡】 〇〇(氏名)
株式会社〇〇
採用ご担当
〇〇様
お世話になります。先日内定をいただきました〇〇です。
この度、誠に勝手ながら、貴社への入社を辞退させていただきたく連絡させていただきました。理由としましては、家族の健康状態が急変し介護が必要な状況となったため、現在の居住地を離れることが難しくなってしまったためです。
突然の連絡となり、申し訳ございません。内定をいただいたにも関わらずこのような結果となり、心よりお詫び申し上げます。何卒ご理解いただけますよう、よろしくお願いいたします。
内定辞退を伝えた後におわび状を送る場合
電話やメールで辞退を伝えた後に、おわび状を送るとさらに丁寧に誠意を伝えることができます。特に、他者から紹介を受けた企業や格式を大切にする老舗企業の内定を辞退する場合には、おわび状を送ったほうがよいでしょう。
おわび状を作成する際は、書き方のマナーを調べておくことが大切です。せっかくおわび状を送っても、マナー違反をするとマイナスイメージになってしまいます。おわび状の書き方の例を紹介します。
おわび状の例
株式会社◯◯ 人事部
◯◯様
拝啓
初春の候、貴社ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
この度は、内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございました。
この度は一身上の都合により内定を辞退し、大変ご迷惑をお掛けいたしました。また、辞退の旨をご了承いただき誠にありがとうございます。
選考にあたり貴重なお時間をいただいたにもかかわらず、ご迷惑をお掛けすることとなり、心よりおわび申し上げます。
末筆ではございますが、今後も貴社のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。
敬具
令和◯年◯◯月◯◯日
◯◯(氏名)
転職の内定承諾後に辞退を伝える際のポイント
内定承諾後に辞退を伝える際は、迅速かつ誠実に伝えることが大切です。企業側の立場を考えた丁寧な説明と謝罪を心がけ、良好な関係を維持できるように努めましょう。
辞退の意向は早めに連絡を入れる
内定辞退を決意したら、速やかに企業に連絡を入れることが重要です。企業側は内定を辞退されると、採用計画の調整や代替候補者の検討をしなければなりません。そのため、内定辞退を言い出しにくい気持ちはわかりますが、早く伝えるほうが企業のためになります。
連絡が遅れれば遅れるほど、企業側の困惑や不信感が増す可能性があるため、できるだけ早く連絡を入れることを心がけましょう。
誠意をもって伝える
内定辞退を伝える際は、誠意を持って伝えることが大切です。もう入社はしないのだからと適当な対応をしてしまうと、企業に悪い印象を与えてしまいます。
今後、取引先として付き合いが生まれたり、しばらく経ってから転職をしたくなったりと、長い社会人生活の中でその企業と何かしらの縁が生まれるかもしれません。そのため、良好な関係を維持できるよう誠意を持って辞退を伝えましょう。
辞退は面談や電話など、直接対話できる方法で伝えたほうが誠意が伝わります。また、企業側の採用活動への感謝と、迷惑を掛けたことに対する謝罪の気持ちを伝えるようにしましょう。
転職の内定承諾後に辞退するのを避けたい方へ – 準備と対処法
やむを得ない事情がある場合は仕方がないですが、企業側にも迷惑がかからないよう、なるべく内定承諾後の辞退は避けたほうがよいでしょう。
上記のような、事前準備や迷った際の相談を内定承諾前に行うようにしましょう。それぞれ詳しく紹介します。
ビジョンを明確にする
転職先を検討するにあたって、自身のキャリアビジョンを明確にすることが大切です。長期的な目標や自身の価値観を整理し、その企業でどのように働きたいかを具体的にイメージしましょう。
転職先の企業で働くイメージが具体的に出来ていれば、内定承諾後に迷いが生まれるといった事態を防ぐことができます。自己分析を通じて、自身の望むキャリアプランを見極めることが大切です。
改めて企業についてリサーチする
内定を承諾する前に、改めて企業について徹底的にリサーチすることが大切です。Webサイトや求人票などの情報だけでは判断できないのであれば、現場の社員と面談で話を聞く機会を設けてもらえないか企業に交渉してみるのもよいでしょう。
企業の文化や将来性、実際の業務内容などを深く理解すれば、入社に対する不安が減るはずです。疑問点や不安があれば、内定承諾前に確認しておくのが大切です。
迷いや悩みをしかるべき人に相談する
内定を承諾する際に迷いや悩みが生まれたら、信頼できる相手に相談するのがおすすめです。信頼できる家族や友人、キャリアアドバイザーなどに相談し、客観的な意見を求めましょう。
自分一人で抱え込まず、多角的な視点のアドバイスを得ることで、より良い判断ができます。後悔のない決断をするためには、人の手を借りることも大切です。
内定承諾後の辞退は慎重に!リスクと対処法を理解し後悔のない転職を
内定承諾後の辞退は可能ですが、リスクがゼロではないため慎重な判断と適切な対応が必要です。やむを得ず辞退する場合は、迅速かつ誠意を持って企業に伝え、企業との関係性を良好に保てるようにすることが大切です。
内定承諾後の辞退になることを避けるには、自身のキャリアビジョンを明確にし、企業について十分にリサーチしましょう。迷いや悩みがある場合は、適切な相談相手に意見を求めることも大切です。
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