販売チャネルの種類は、企業から直接消費者に届けるものや卸売業者や小売業者などを挟むものなどさまざまです。
この記事では、販売チャネルの種類を紹介します。適切なチャネルを選び、運用するための戦略のポイントや戦略を考える手順、事例なども紹介しますので、参考にしてください。
販売チャネルとは?
販売チャネルとは、商品を顧客に届ける経路や手段のことです。単に販売を行うための方法という意味にとどまらず、顧客とのコミュニケーション、市場調査、プロモーション活動など多様な役割があります。
従来は代理店やマスメディア広告が主流でしたが、近年はECサイトやSNSを活用したオンライン販売が主流となり、企業はより広範な顧客層にアプローチできるようになりました。企業は自社の商品・サービス、ターゲット顧客層などを分析し、最適な販売チャネルを選択することで売上の拡大や顧客満足度の向上が期待できます。
マーケティングの他のチャネルは?
販売チャネル以外のマーケティングにおける他のチャネルには、流通チャネルとコミュニケーションチャネルがあります。それぞれの概要を紹介します。
流通チャネル
流通チャネルとは、商品が生産者から最終消費者へと渡るまでの物理的な経路のことで、間接流通チャネルと直接流通チャネルの2種類があります。間接流通チャネルとは、メーカーから卸売業者、小売業者などの中間業者を経て、最終的に消費者に商品が届けられる形態のことです。多くの企業が採用するスタンダードとして知られています。
一方、直接流通チャネルとは近年注目を集めているオンラインで企業と顧客を直接つなげる流通経路です。ECサイトなどが該当し中間業者を介さずに商品を販売できるため、コスト削減や迅速な顧客対応ができます。
コミュニケーションチャネル
コミュニケーションチャネルは、Webサイト、SNS、メール、チャットなど企業と顧客が双方向的に情報をやり取りできる伝達経路のことです。
企業はコミュニケーションチャネルを使うことで、商品に関する情報を伝えたり、顧客からの意見や感想を集めて商品を改善したり、問い合わせに対応したりできます。これらは顧客満足度を向上させ、よりよい商品を届けるために大切なことです。
販売チャネルの種類を一覧で紹介
販売チャネルは、顧客と企業の間に介在する業者数により、4つに分けることができます。
販売チャネルの種類は以下の通りです。
それぞれを簡単に分かりやすく解説します。
0段階
0段階は、企業が中間業者を一切挟まずに直接顧客に商品を届けるルートのことです。従来の小売店や卸売業者といった流通経路を経由せず、企業と顧客がダイレクトにつながります。
企業が品質や価格、顧客対応などを一貫性を持って管理し、一人ひとりに寄り添った対応ができるのがメリットです。一方、多くの顧客に商品を届けるには中間業者を挟むなど販売ルートの規模を広げる必要があり、大量販売には向きません。
1段階
1段階は、商品が企業から小売業者を経由して消費者に渡るルートのことです。従来の2段階流通では、メーカーから卸売業者、そして小売業者を経由して商品が顧客に届くため中間マージンが発生していましたが、1段階流通では、卸売業者分のマージンがなくなります。
流通経路が短くなるため納期を短縮でき、消費者はより早く商品を受け取ることができます。また、企業側も利益率を上げながら商品コストを下げられるのがメリットです。一方で、自社での在庫管理や顧客対応、また小売業者への販売ノウハウの習得が必要で業務負担が大きくなります。
2段階
2段階は、商品が企業から卸売業者、小売業者を経て消費者に届くルートのことです。スーパー、家電量販店、コンビニエンスストアなど、幅広い商品を取り扱う店舗では2段階チャネルが一般的です。
これらの店舗では数千点から数万点の商品を扱っており、メーカーと直接取引すると発注や物流が複雑になるため、卸売業者が商品を管理し小売業者が仕入れて販売します。
3段階
3段階は、商品が企業から卸売業者、二次卸売業者、小売業者を経て顧客に届くルートのことです。広範囲な販売網を構築できる一方、チャネルが長くなるほど中間マージンが発生し、商品価格が上昇するのがデメリットです。
販売チャネルの分類
販売チャネルは、長さと幅の2種類で分類できます。それぞれの概要と種類分けを紹介します。
販売チャネルの長さ
販売チャネルの長さとは、商品が顧客に届くまでのルートのなかで中間業者を介する段階数を指します。この段階数は前項で解説した通り、0段階から3段階まで4つに分類されます。
販売チャネルの幅
販売チャネルの幅とは、商品が消費者に届くまでのルートのなかで流通業者が網羅する範囲を指します。この幅は大きく3種類に分類することができます。
開放的流通施策
開放的流通施策は、流通業者に制約を設けず、商品を広く流通させることを目的とした戦略です。スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストアなど、さまざまな業態の販売店を通じて販売することで、多くの人に商品を知ってもらう機会を増やすことができます。
選択的流通施策
選択的流通施策は、特定の流通業者を選定し、商品を販売する戦略です。百貨店や専門店など、ブランドイメージにマッチする販売店のみから商品を販売することで、ブランド価値を高めることができます。
排他的流通施策
排他的流通施策は、特定の販売業者を唯一の販売業者として選んで商品を販売する戦略です。高級ブランドや希少価値の高い商品などで、希少性や特別感を演出するために使われます。
販売チャネルの戦略のポイント
販売チャネルの戦略を立てるには、顧客のニーズを満たし売れる仕組みを作るマーケティング視点に立って考えましょう。
具体的には以下のポイントをおさえてください。
オムニチャネルを検討する
オムニチャネルとは、実店舗、ECサイト、SNS、アプリなど、さまざまな販売チャネルをつなぎ、シームレスで便利な買い物体験を届けるビジネス戦略のことです。オムニチャネルを導入することで顧客は時間や場所に縛られず、好きなチャネルで自由に商品を購入できるようになり、満足度を高められます。
オムニチャネルを検討するために、複数の販売ルートを使ってより良い購買体験ができないか考えてみましょう。たとえば「ECサイトで販売している商品を実店舗でも取り扱えないか」「SNSで新商品情報を発信し、ECサイトで販売につなげられないか」などの検討ができます。
商品のターゲットを明確に決める
商品のターゲットを明確に決めることで、ターゲットが求める最適な販売チャネルが分かります。
ターゲットの属性、行動、ニーズを深く理解することで、ターゲットに最適な販売チャネルを的確に選定できるからです。ターゲットの興味・関心、価値観、ライフスタイルを把握しながら、共感を呼ぶメッセージや訴求内容を考えましょう。
顧客の視点で考える
販売チャネルの選定は、自社の内情や都合にとらわれず、常に顧客目線で考えましょう。
自社の都合を度外視して、顧客体験を最大化できる販売ルートは何かを考えてみてください。その後、自社でできないことを考えて、できる限り顧客に満足してもらえる方法を検討します。顧客満足度が上がり、商品を購入する人や回数が増えれば結果として自社の利益が上がります。
販売チャネルの戦略を考える手順
販売チャネルの戦略を考える際は、ターゲットの選定から顧客に商品を届ける物流やコスト管理など全体の流れをとらえましょう。全体の流れを捉えて考えることで、顧客の満足度を高めることができます。
販売チャネルの戦略を考える際は、次の手順で進めましょう。
1.商品の調査
商品に顧客がどれほど興味を持っているのかや関心を持っている顧客層とそうでない層を調査しましょう。それぞれの顧客が求めるニーズを明らかにし、商品をどのように販売していくべきかを検討します。
調査方法は、顧客へインターネットや郵送、電話など、さまざまな方法でアンケートを行いましょう。また、インタビューを行ったり、ウェブサイトのアクセス解析やSNSの分析をしたりすることも有効な情報源となります。
2.ターゲットを決める
顧客の興味関心やニーズを踏まえて、具体的なターゲットを決めます。商品に最も関心のある顧客を定め、ターゲットする顧客のペルソナを細かく設定していきましょう。年齢、性別、居住地、職業、ライフスタイルなどを決めていきます。
ターゲット像を詳細に決めることで、ターゲットが求めていることを明確にすることができ、ニーズにマッチする販売チャネルの戦略を決められるようになります。
3.ターゲットに接触する
商品へ興味を持ってもらうためには、商品の認知度を高める必要があります。効果的に認知度を高めていくためにどのようにターゲットに接触するべきかも考えてチャネルを選定しましょう。
まずは、ターゲットがテレビ、ラジオ、インターネット、SNSなど、どのようなメディアを普段利用しているのかをアンケートやインタビュー調査、Webサイトアクセス解析などを行い分析しましょう。
ターゲットが利用しているメディアの種類や利用頻度、メディアごとにどのようなコンテンツを視聴・閲覧しているのかを分析し、ターゲットにリーチするために適切なメディアを選んでください。
4.プロモーションを行う
ターゲットに接触した後、どのように興味や関心を高め商品の購買につなげるかを考えるため、プロモーションの戦略を立案し、実行しましょう。
競合他社の商品ではなく、なぜ自社の商品を選ぶべきなのかを明確にし、ターゲットのニーズを深く理解し、それに合致する商品の価値を訴求しましょう。
5.物流の流れを考える
物流の流れを考え、商品を届けるための最適なシステムを整えます。どんなに優れた商品であっても、お届け日が指定より遅れたり、商品に傷があったりすれば、顧客の評価は下がりかねません。
顧客が商品を購入してから、どのように物流が介入し、商品が届けられるのかを商品の取り扱い方も含めて確認し、連携しながら最適な形に構築しましょう。
6.コストを管理する
最後は、コスト管理を行います。まず、全体的な予算を明確にしたうえでこれまで策定した戦略に基づき、各工程におけるコストを洗い出します。洗い出したコストを全工程における合計予算と比較検討し、各工程の予算配分を調整していきます。
たとえば、商品特性として温度や湿度管理が重要で取り扱いが難しい製品の場合は、物流管理コストが膨らむことが想定されます。その場合、ターゲット層へのリーチ手段として、コストのかかる広告などを避け、無料で活用できるSNSを積極的に活用するといった施策にすることでコストのバランスを取ることができるでしょう。
販売チャネルの事例
販売チャネルの事例を知ることで、自社の戦略を考える際に活かせるヒントを得られます。
販売チャネルの事例について、次の3つの業界を紹介します。
銀行
銀行で、古くから利用されている支店とATMは、対面でのやり取りを行い顧客との信頼関係を築き、地域住民とのリアルな接点を担うチャネルです。担当者は顧客一人ひとりに合わせた金融商品を提案できます。
また、近年急速に普及しているのがオンラインバンキングです。インターネットを通じて時間や場所に縛られずに取引ができ、口座の確認や振り込みやローンの申請などが24時間365日可能です。モバイルアプリを通じてリアルタイムでの取引や各種通知を受け取ることができます。支店に足を運ぶことが難しい働き盛りの世代にとって、オンラインバンキングは利用しやすく、顧客のニーズに応えるチャネルを追加した事例と言えます。
コンビニエンスストア
コンビニエンスストアは、24時間営業の実店舗を持っており、夜遅い時間や早朝でも気軽に商品を購入できます。また、近年コンビニエンスストアもオンライン販売を強化しています。公式サイトやアプリを通じて商品を注文し、自宅まで届けてもらうことができるサービスです。
他にも、オンラインで注文した商品を近くのコンビニエンスストアで受け取ることができるサービスも人気です。自宅に不在の場合はもちろん、通勤・通学途中などに商品を受け取ることができ、さまざまなチャネルが私たちの生活を豊かにしています。
コスメメーカー
多くのコスメメーカーは、百貨店のカウンターで販売しています。百貨店ではプロの美容スタッフが顧客に対面で商品の説明やデモンストレーションを行います。
また最近では、定期購入型のサブスクリプションサービスも人気です。毎月一定の料金で商品が自宅に届くサービスは、特にスキンケアやメイクアップ製品で成功を収めています。顧客は新しいアイテムを試すことができ、メーカーは安定した収益を得られます。
販売チャネルの種類を把握しよう
販売チャネルについて、その種類や戦略を考えるポイントや手順などを紹介しました。販売チャネルの戦略を考える際は、自社のターゲットを明確にし、ターゲットの行動やニーズを深く理解することが大切です。
また、認知度を高め、購入につなげるための接触方法やプロモーション内容をターゲットに合わせて考えることでより心を打つ施策を打ち出せます。効果的な戦略を考えるためにも、マーケティングに関する知識を深めていく必要があるでしょう。
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