テキストや図形を立体的にデザインするなら、Illustrator(イラストレーター)での3Dモデリングがおすすめです。しかしIllustratorを使い始めた方には、「Illustratorで3Dモデリングができるの…?」と考える人もいるかもしれません。
そこで今回は、Illustratorの3Dモデリング機能の概要や基本的な手順、モデリングのポイントなどについて解説します。記事の後半では3Dモデリングをする際の注意点も紹介しているので、3Dでのデザインに興味がある方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
Illustratorの3Dモデリング機能とは
Illustratorの3Dモデリング機能とは、オブジェクトに3D効果を適用して、押し出しやベベル(エッジ部分を滑らかにする)などを編集できる機能のことです。オブジェクトのマテリアル(質感)やライティングの調整にも対応しており、クオリティの高いデザインを実現できます。
ただし一般的な3DCGソフトのようなアバター作成や空間設計などには不向きなので、使用用途は間違えないようにしましょう。
Illustratorで3Dモデリングを行う手順
それでは、Illustratorで3Dモデリングを行う基本的な手順を紹介します。デザイナーによって作り方に違いはありますが、モデリングに慣れていない方は下記のステップを参考にしてください。
各手順を順番に見ていきましょう。
1.ラフを作成する
デザインを行う際は、まずラフ(下書き)を作成しましょう。手書きが好きな方は、スケッチブックなどにラフを描くとよいでしょう。近年ではイラスト作成アプリなどを活用する方も見られます。自分に合ったやり方でデザインのイメージを形にしてみてください。
2.3Dモデリングを行う
ラフを作成したら、Illustratorでモデリングを行いましょう。手書きでラフを描いた方は、Illustratorのワークスペースに撮影した下書きの写真を配置して、不透明度を落とします。イラスト作成アプリなどでラフを作った方は、Illustratorのフォーマット(.ai)に変換して読み込むか、画像で出力してワークスペースに配置します。
ワークスペースにラフを配置したらモデリングに使用するテキストや図形を追加して、下記の手順を行いましょう。
- メニューの「効果」をクリックする
- 「3Dとマテリアル」を選択する
- 「3D(クラシック)」を選択する
- 「押し出しとべベル」を選択する
- モデリングを行う
Illustratorでは、下記のモデリングを行うことが可能です。
名称 | 内容 |
---|---|
押し出し | 物体の奥行きの調整 |
フタ | オブジェクトにフタをつける |
べベル | オブジェクトのエッジ部分の調整(ギザギザなど) |
陰影 | オブジェクトの影の設定 |
回転 | 縦・横・奥行きでの回転 |
上記に加え「マッピング」や「詳細オプション」では、ハイライトの色や物体の面の表示位置などを設定できます。しかしすべての機能をいきなり使用すると操作が複雑になるので、まずは上記の表で説明しているモデリングを実施してみましょう。
3.マテリアルを設定する
オブジェクトのモデリングが完了したら、マテリアルの設定を行いましょう。3Dにおけるマテリアルとはオブジェクトの質感を表す言葉であり、Illustratorにはさまざまなマテリアル素材が用意されています。
「3Dとマテリアルパネル」に表示されている「マテリアル」をクリックすることで、オブジェクトの質感を編集することが可能です。Illustratorに搭載されているマテリアル素材は、「すべてのマテリアルとグラフィック」をクリックすると表示されます。
またマテリアルメニュー下部の「新規マテリアルとグラフィックの追加」から、使用したいマテリアル画像を追加することが可能です。マテリアル素材は「Texture Haven」や「Texture Ninja」などから無料でダウンロードできるので、ぜひ活用してください。
4.ライティングを設定する
オブジェクトの質感が設定できたら、ライトの設定を行いましょう。デザインによっては照明を使用する必要はありませんが、オブジェクトにライトを当てることで独自の世界観を表現することが可能です。なお具体的な設定方法は、下記の通りです。
- 「3Dとマテリアルパネル」の「ライト」を選択する
- プリセットから任意のライティングを指定する
- 照明の強さ・柔らかさ・影の強さを調整する
- ライトの位置を微調整する
ライティングのやり方に正解はありませんが、照明が目立ち過ぎるとデザインとして成立しない可能性があります。したがってライトを設定する際は、伝えたい情報が目立つ工夫を考えることが大切です。
また照明の設定によってはマテリアルが白飛びするかもしれないので、プレビュー画面を確認しながら慎重に調整しましょう。
5.レンダリングをする
ライティングの調整まで完了したら、レンダリングを行いましょう。3Dにおけるレンダリングとは簡単にいうと、3Dで作成したグラフィックを最適化する作業のことです。前述で設定した照明をリアルなライティングに変換できるので、ライトを使用する方は必ず行いましょう。
3Dとマテリアルメニューの最右部に表示されている「レンダリングマーク」をクリックして、下記のレンダリング設定を行いましょう。
レンダリング設定名称 | 内容 |
---|---|
レイトレーシング | リアルに近いレンダリングにする。光の屈折や反射を現実に近い状態にする。 |
ラスタライズ | ピクセルデータへの変換設定。 |
品質 | レンダリングの品質設定 |
例えば、よりリアルな3Dオブジェクトを作成する場合は「レイトレーシング」をオンに設定する必要があります。一方でアニメ風の3Dを作成する際は、「レイトレーシング」オフにして問題ありません。
またラスタライズや品質の設定はデフォルトの状態でも大丈夫ですが、より品質を上げたい方は高い設定を行いましょう。ただしレンダリングの品質を高くするほどパソコンへの負荷が大きくなるので注意してください。
6.書き出しを行う
レンダリングまで完了したら、データの書き出しを行いましょう。例えば画像として保存する際は、Illustratorのファイル保存メニューにある「書き出し」から任意の拡張子を設定するだけで問題ありません。
しかし別の3DCGソフトなどで編集を行う際は、使用するCGソフトに適切なフォーマットで出力する必要があります。画像ファイルやIllustratorファイル(.ai)以外での書き出しを行う方は、「3Dとマテリアルパネル」の下部の「3Dオブジェクトを書き出し」から、必要なファイル形式を選択してください。
Illustratorでの3Dモデリングのポイント
前述ではIllustratorで3Dモデリングを行う手順を紹介しました。しかし3Dモデリングに正解はなく、人によっては品質に差が生じるかもしれません。そこで、ここからはIllustratorでの3Dモデリングのポイントを紹介します。
モデリングの勉強をしている方は、上記の2つを意識してみてください。順番に解説します。
ラフデザインを作り込む
3Dでの作業においては、ラフの完成度がデザインの品質に大きく影響します。例えば物体の形や大きさなどを数値で設計することにより、ミスのないモデリングが実現できるでしょう。よりリアルに近い3Dオブジェクトを作りたい方は、モデルになる物体などに実際に触れてみて、感覚的な質感も理解して表現することが大切です。つまり3Dの制作は、下書きの段階でクオリティが変わると考えられるでしょう。
3Dオブジェクトをパスで編集する
Illustratorでは、オブジェクトをパス化して編集することが可能です。3Dオブジェクトをパスにすることで、より微細な部分を編集できます。一般的な3DCGソフトでは利用できない機能なので、ぜひ活用してください。具体的なやり方は下記の通りです。
- モデリングした3Dオブジェクトを選択する
- メニューの「オブジェクト」を選択する
- 「ラスタライズ」をクリックする
ただしパス化されたオブジェクトを大幅に編集するとデザインが崩れる可能性があります。したがってパスでの編集は、オブジェクトの細かい箇所の修正などに活用しましょう。
Illustratorで3Dモデリングをする際の注意点
最後に、Illustratorでモデリングをする際の注意点を紹介します。
Illustratorでモデリングを行う際は、上記の2つに注意してください。順番に解説します。
スペックの高いパソコンが必要
一般的なデザイン作業に比べると、3Dを使用した編集はパソコンへの負荷が大きくなります。そのため、効率的に作業をするには一定のスペックを搭載したパソコンが必要です。性能が低いパソコンで3Dモデリングを行うと画面が固まったり、パソコンがクラッシュしたりする可能性があるので注意しましょう。
本格的な3Dモデリングには不向き
Illustratorの3D効果はデザインに特化した機能であり、3DCGアニメーションや空間設計(パース)などには不向きと考えられます。そのため本格的な3Dモデリングには推奨できません。しかしテキストや図形の3D化などが手軽にできることはIllustratorの魅力といえます。したがってIllustratorでの3Dモデリングは、デザインを作る前提で活用しましょう。
Illustratorの3Dモデリング機能を活用して魅力的なデザインを作ろう!
Illustratorの3Dモデリングのやり方を覚えると、作成できるデザインの幅がグッと広がるでしょう。一般的な3DCGソフトに比べると手軽に利用できることも魅力の一つです。ただしスペックの高いパソコンが必要になるので注意してください。
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