アクティブラーニングとは、従来の受動的な学習スタイルとは異なり、主体性を持って能動的に学んでいく学習スタイルです。
近年、アクティブラーニングは注目を集めており、文部科学省も導入を推進しています。この背景には、現代社会の急速な変化や、それにより求められるスキルが変化していることが関わっているようです。
本記事でアクティブラーニングについて正しく知り、現代社会を生き抜くために必要な学習方法の理解を深めていきましょう。
アクティブラーニングとは?簡単に解説
アクティブラーニングとは、簡単に言うと「能動的な学習・授業」を意味する言葉です。文部科学省の定義では「学修者* の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称」*1 とされています。
アクティブラーニングでは、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験などを含めた汎用的能力の育成を目的にしています。座学形式の受動的な授業ではなく、グループディスカッションやディベート、グループワークなどを通して学修者の積極的・能動的な授業への参加を促すスタイルが特徴です。
アクティブラーニングの最大の特徴は、正解のない議論に向き合い、課題解決の方法を身につけることを目的としている点です。正しい知識をインプットすることを目的としていた従来の学習とは大きく違うことが分かります。
* 文部科学省の資料ではこの漢字を使用しています。
アクティブラーニングが注目されている背景
これまでの学習形式は、教員が一方的に知識や情報を伝え、生徒は座って教員の講義を聞くスタイルが一般的でした。しかし、近年では一方向的な形式とは異なるアクティブラーニングが注目されるようになりました。
平成29年には、文部科学省の「新しい学習指導要領の考え方」 でも、アクティブラーニングの視点から学習過程の改善について記されています*2。
この背景には、日本社会の変化が大きく影響しています。現代の日本では、グローバル化、ITやAIの発展、少子高齢化、社会構造の変化など、急速な変化とそれによる数々の問題が起きています。
また「ものづくり大国」とも呼ばれたこれまでの日本では、与えられたものの中で正しく取り組む能力が必要でした。しかし、環境が変わりつつある現代、私たちに求められる能力も変化しているのです。
アクティブラーニングが必要な理由
では、なぜ今アクティブラーニングが必要とされ、どのような能力が求められているのでしょうか。
たとえば近い将来、私たちが行っている仕事の一部はAIが担うようになると言われています。便利になる反面、人間の仕事が減ってしまうことに不安を感じる人も多いのではないでしょうか。
仕事がAIに取って代わられても私たちが生き抜くためには、主体的に動き、課題解決をしたり新たなものを生み出したりする力が必要になってくるのです。
そのほかにも、少子高齢化やグローバル化による外部環境の変化など、現代の日本では新しい課題が次々と生まれています。こうした課題に向き合い、生き抜いていくためにも、アクティブラーニングを通した主体性や協調性、課題解決能力を養うことが必要とされているのです。
アクティブラーニングのメリット
では、アクティブラーニングにはどのようなメリットがあるのでしょうか。今回は、アクティブラーニングを通して身につくとされている能力について解説します。
主体性が身につく
アクティブラーニングを実施すると、主体性が身につくと言われています。
座学で受動的に参加する学習では、教員が一方的に知識や情報を伝え、用意された問題を解いていきます。一方、能動的な学習スタイルであるアクティブラーニングでは、学修者自身が考えたり、他者と関わったりしながら学習を進めます。
学修者が主役となり自ら取り組む姿勢を求められるアクティブラーニングを活用することで、自然と主体性が身についていくのではないでしょうか。
協調性が身につく
アクティブラーニングを通して他者と関わりながらひとつの課題に向き合う経験をすることで、協調性も身につくでしょう。
グループディスカッションやディベート、グループワークなどを行うことが多いアクティブラーニングでは、他者とコミュニケーションを取りながら学習を進めていく場面が多くあります。ひとつの物事に対して意見を出し合い、協力し課題解決に向けて取り組む中で、協調性が身についていくでしょう。
もちろん、意見が合わずに対立することもあるかもしれません。そのような場合でも、どのように話を進めればよいのかを考えながら進めることがさらに学びにつながるでしょう。また、自分にはない考え方や価値観に触れることで、相手を尊重する力も身につくのではないでしょうか。
課題を見つけ、解決する力が身につく
課題を見つけ、解決する力を身につけられるのもアクティブラーニングのメリットです。
今までの学習は、用意された問題の正解に辿り着くことを目的に、正しい知識をインプットしていくスタイルでした。一方、用意されたものの正解を答えるだけではなく、そもそも課題は何なのかを見つけ出し、その課題に対してどのようなアプローチをしていくのかを考えるのがアクティブラーニングです。
正解のない問いに対して向き合い、解決に向けて考える力をつけることがアクティブラーニングの目的であり、実施を通して得られるメリットと言えるでしょう。
アクティブラーニングの種類
アクティブラーニングにはさまざまな種類・方法があります。今回は、その中でも取り入れやすい3種類の方法をご紹介します。
KJ法
KJ法とは、カードや付箋にひとつずつ情報やアイデアを記載し、カテゴリ分けを行いながら整理をする手法です。
まずはひとつのテーマに対して情報や意見を出し合い、ひとつずつカードに記入し状況の可視化を行います。その後、カードを並び替えたり、カテゴリ分けをしたりすることで情報の整理を行い、分析や解決策の検討を行います。
可視化と整理を行うことで論理的に課題と向き合うことができるため、本質的な課題の発見や解決策の検討につなげることができる手法です。
ジグソー法
ジグソー法は、ひとつのテーマについて、チームで役割分担を行いそれぞれの知識を深め、チーム内で自分が担当した内容を教え合う手法です。
具体的な方法としては、まず全体のテーマを決め、学修者をチーム分けし、チーム内での役割分担を行います。その後、各チームの同じ役割を持つ学修者同士で集まり知識を深めます。そして再びチームに戻り、自分が深めた知識についてチームメンバー同士で教え合い、全体のテーマへアプローチしていきます。
自分の役割に責任を持つことや、メンバー同士でそれぞれの知識を教え合うことを通して、主体性や協調性が養われる手法と言われています。
学び合い
学び合いとは、教員が一方的に教えるのではなく、学修者同士で教え合い課題を解く手法です。
教員が正解を教える従来の学習方法とは異なり、学び合いでは学修者が主体となって課題解決というゴールを目指します。そのため、教員はあくまでオブザーバーとして課題を提示したり、ゴールまでの道のりを中立的にフォローしたりする役割を担います。
学び合いでは、学修者同士が協力し合いゴールへ向かう活動を通し、協調性や主体性が身につくでしょう。
アクティブラーニングの導入事例
最後に、アクティブラーニングの導入事例をご紹介します。実際に各大学で行われている事例なのでぜひ参考にしてみてください。
立教大学 経営学部
立教大学経営学部 では、「最先端の経営と、社会が求めるリーダーシップをビジネスの現場から学ぶ」をテーマに、リーダーシップのある人材育成を目指しアクティブラーニングを取り入れています *3 。
たとえば、経営学科では「ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)」というカリキュラムが用意されています。BLPでは、チームで課題解決に向けた研究やディスカッションを行ったり、企業と連携しプロジェクトを行ったりしているそうです。
BLPでは、起業家や経営者のような強力なリーダーだけではなく、チームの目標達成に向けて主体的に動き、協働しながら成果を出せる人をリーダーシップのある人と定義し、授業を展開しています。
同志社大学
同志社大学では、2006年度より学部生の正課科目として「プロジェクト科目」を設置し、アクティブラーニングを実施しています*4。
プロジェクト科目はその名の通り、プロジェクトをベースに進めていく科目です。テーマに沿って学生が主体的に構想・計画し、プロジェクトの進行をする授業形式をとっています。
また、プロジェクト科目の元となるテーマを企業・団体・個人から公募しているのも特徴です。地域社会や企業と直接関わり合うことで、学生に実践的な知恵や技術を学ばせたいという思いのもと、プログラムを導入した背景があるようです。
同志社大学ではこうしたアクティブラーニングを通して、実践的な問題発見・解決能力など、総合的人間力を養うことを目指しています。
関西大学
関西大学では、教員・職員・学生による三者協働型のプログラムを通してアクティブラーニングを行っています*5。
全学共通のゼミ形式による授業では、ラーニングアシスタント(LA)と呼ばれる既修者である学生が受講生の学びをサポートする点が特徴です。LAがいることで、受講生は身近なロールモデルから具体的な行動を考えられるようになり、主体性や行動力を身につけることができます。
関西大学では、自ら考え行動する「考動力」の養成を目指しています。「考動力」を身につけるために不可欠な主体性の向上を目的に、このような形のアクティブラーニングを取り入れているそうです。
現代社会を生き抜くために、アクティブラーニングが必要!
変化が目まぐるしい現代、これまでのように正解が決まった環境で正しい知識を修得できる人材ではなく、自分で考え、動き、新たなものを生み出す力を持つ人材が求められるようになってきました。アクティブラーニングとは、そのような人材を育成するために必要とされている学習方法なのです。
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出典
*1 文部科学省「教育課程企画特別部会 論点整理 補足資料(5)」
参考
*2 文部科学省の「新しい学習指導要領の考え方」
*3 立教大学|BLP/ビジネス・リーダーシップ・プログラム[経営学科コアカリキュラム]
*4 同志社大学|全学共通教養教育センターについて「プロジェクト科目」より
*5 関西大学|三者協働型アクティブ・ラーニングの展開