インボイス制度とは?やるべきことや登録の判断基準をわかりやすく解説

インボイス制度とは?やるべきことや登録の判断基準をわかりやすく解説

インボイス制度とは、主に複数の消費税率に対応することを目的とした制度です。インボイス制度導入により、買手側が仕入税額控除を受けるには、原則一定の記載事項を満たしているインボイス(適格請求書)を売手側に発行してもらい、保存しなければなりません。

今回は、インボイス制度の概要や対応事項、個人事業主やフリーランスに与える影響について紹介します。ぜひこの記事を参考にし、インボイス制度への理解を深めてください。

インボイス制度とは?

インボイス制度とは、インボイス(適格請求書)の交付や保存、複数税率に対応した仕入税額控除に関する方式のことです。正式名称を適格請求書等保存方式といい、令和5年10月1日より開始されました。

消費税の課税事業者が仕入税額控除を受けるためには、仕入元からインボイスを発行してもらい、保存するなどの対応が求められます。ここからはインボイス制度導入の背景や仕入税額控除、インボイスの記載事項について詳しく解説します。

インボイス制度が導入された目的・背景

インボイス制度の目的は、納税する消費税額を正確に算出し、複数税率への対応や不当な益税をなくすことなどがあげられます。令和5年12月時点、日本では標準税率(10%)・軽減税率(8%)の2種類の消費税率が混在しており、従来の請求書では正しい消費税額を把握できない可能性があるためです。

インボイスには、8%・10%の税率ごとの消費税額が明記されます。消費税が正確に記載された請求書により、納税されるべき税額を正しく把握できるようになります。

仕入税額控除を受けるにはインボイス等が必要

インボイス制度導入により、消費税の課税事業者が仕入税額控除を受けるためには原則インボイスを発行してもらい、保存しなければなりません。仕入税額控除とは、仕入れや経費における消費税額を控除する制度のことです。消費税の納税額は「(売上に対する消費税額)ー(仕入や経費にかかった消費税額)」となり、この仕入や経費にかかった消費税額を引くことができることを仕入税額控除と言います。

たとえば商品・サービス提供の売上における消費税額が10,000円、商品・サービス提供にかかった仕入れにおける消費税額が2,000円とします。原則課税を選択している事業者の場合、仕入税額控除を受けると消費税の納税額は「10,000円ー2,000円=8,000円」です。

上記のような仕入税額控除を受けるには、原則インボイスが必要となり、売手側のインボイス発行可否によっては事業者間の取引に影響が生じるといわれています。なお、インボイス発行事業者以外との取引については、一定期間において一定割合を控除できる経過措置などが設けられています。経過措置の詳細は以下の「仕入税額控除に関する経過措置」で解説しています。

インボイスに必要な記載事項

インボイス制度には、インボイス(適格請求書)と簡易インボイス(適格簡易請求書)の2種類が存在します。インボイスの場合、次の記載事項*1が定められています。

  • インボイス発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額等
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

簡易インボイスの場合、税率ごとに区分した「消費税額等」もしくは「適用税率」のどちらかの記載で交付することが可能です。また、書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称(つまり領収書の宛名)の記載が不要になります。簡易インボイスは、小売業や飲食店などの不特定多数の相手に対して販売を行う際に、通常のインボイスに代えて発行できます。

インボイス制度へ対応する場合にやるべきこと

インボイス制度へ対応する場合にやるべきことを以下2つの場合に分けて解説します。

  • 売手(インボイスを発行する側)の場合
  • 買手(インボイスを受け取る側)の場合

それぞれ順に解説します。

売手(インボイスを発行する側)の場合

売手側がインボイス制度に対応する場合、インボイス発行事業者への登録申請手続きが求められます。これまで免税事業者だった事業者がインボイス発行事業者となる場合、消費税の課税事業者となる手続きも必要です。

また買手の要望に応じて売手はインボイスを発行し、写しを保存する義務が発生します。写しの保存期間は、提供した日の属する課税期間の末日の2か月を経過した翌日から起算して原則7年間*2です。商品の返還や値引きが発生したときには適格返還請求書の交付、請求書の内容に誤りがあった場合は修正版のインボイスを交付する必要があります。

買手(インボイスを受け取る側)の場合

自分が消費税の課税事業者で原則課税で消費税の納税額の計算をしており、納税額の計算で仕入税額控除を受けるためには、原則インボイスなどの書類保存や帳簿づけが必要です。受け取った請求書の保存期間は、受け取った日の属する課税期間の末日から2か月を経過した翌日から起算して原則7年間*3です。取引先に対してはインボイス登録の有無や登録番号の確認が求められるでしょう。

また受け取った請求書の保存・管理や帳簿の記載方法、インボイスが必要な取引なのかなどを確認しておくことも重要です。免税事業者からの課税仕入れに対して経過措置の適用を受ける場合は、区分記載請求書の保存も求められます。

インボイス制度に対応するために免税事業者から課税事業者になる手続きについて

免税事業者が課税事業者となり、インボイス発行事業者の登録を受けるには「消費税課税事業者選択届出書」と「適格請求書発行事業者登録の申請書」を所轄の税務署へ提出しなければなりません(郵送で提出する場合は最寄りのインボイス登録センターへ提出)。ただし、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中にインボイス登録を受ける場合、「消費税課税事業者選択届出書」の提出は必要ありません。

また登録後、想定以上に税負担が大きい場合やインボイス発行事業者である必要がなかった場合など、インボイス登録を取りやめたいケースがあるかもしれません。そのような場合は、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書(登録取消届出書)」を提出することでインボイス登録を取消すことが可能です。

登録取消届出書を提出する日の属する課税期間の翌課税期間の初日から起算し、15日前までに提出すれば、翌課税期間の初日からインボイス発行事業者の効力がなくなります。

インボイス制度が個人事業主やフリーランスに与える影響

インボイス登録を受けずに免税事業者のままでいる場合、売上先が課税事業者であれば今後の取引が難しくなる可能性があります。仕入先からインボイスを受領できなければ、その売上先は仕入税額控除ができなくなり消費税の納税額が増えてしまうためです。

ただし、売上先がインボイス保存を必要としない場合、取引へ影響が生じる可能性は低いと考えられます。たとえば、消費者や免税事業者、簡易課税制度選択事業者などに該当する事業者はインボイスの保存が不要です。

一方で自身が免税事業者から課税事業者となり、インボイス登録を行う場合、納税負担が大きくなる場合もあります。また消費税の申告や、インボイスの写しの保存などの事務における労力増加などの影響があるでしょう。

インボイス制度がフリーランスに与える影響は以下の記事で具体的に解説しています。

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免税事業者がインボイス登録を検討する際の判断基準

売手として免税事業者がインボイス登録を検討する際の判断基準の例として、以下のポイントがあげられます。

  • 売上先がインボイスを必要とするか
  • 自身にとってのインボイス登録のメリット・デメリット

たとえば、先述したように売上先が消費税や免税事業者、簡易課税事業者である場合はインボイス保存が必要ありません。また免税事業者からインボイス発行事業者となり、2割特例によって消費税を申告する課税事業者も一定期間の間はインボイスが不要とされています。

そのため、「売上先がインボイスを必要とする場合は登録する」「売上先がインボイス不要の場合は登録しない」などを判断できるでしょう。
(実務上、売上の相手先に「あなたは消費税の課税事業者ですか?」や「簡易課税ですか?」と聞くのは困難であるため、「貴社と取引するにあたってインボイス登録は必要ですか?」と質問するのがよいでしょう。)

また、インボイス登録を受けたあとは消費税を申告したり、インボイスの記載事項を満たした請求書を発行・保存したりと事務負担が増大する可能性があります。一方で取引の継続や新規取引先へのアプローチがしやすくなる可能性があるといったメリットがあります。

インボイス登録は、取引先にインボイスが必要かを相談し、登録によるメリット・デメリットを考慮したうえで検討しましょう。インボイス登録に関する具体的なメリット・デメリットについては以下で詳しく解説しています。

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インボイス制度による負担軽減のための経過措置・支援措置

インボイス制度導入に伴う事業者の負担軽減を目的とし、以下の経過措置や支援措置が設けられています。

  • 仕入税額控除に関する経過措置
  • 少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置)
  • 2割特例(小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置)
  • 特定の取引に対するインボイス交付義務免除

それぞれ順に解説します。

仕入税額控除に関する経過措置

インボイス発行事業者以外の取引先(免税事業者など)からの仕入税額は、帳簿や請求書等の保存の対応をすることで、一定期間において一定割合を控除できる経過措置*4があります。具体的な期間と割合は以下の通りです。

  • 令和5年10月1日から令和8年9月30日まで:仕入税額相当額の80%
  • 令和8年10月1日から令和11年9月30日まで:仕入税額相当額の50%

経過措置の期間が過ぎる令和11年10月1日以降については、基本的にインボイス発行事業者以外からの取引においてインボイスがないと仕入税額控除が適用できなくなります。

少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置)

少額特例とは、1万円(税込)未満の仕入れであれば、インボイスを必要とせずに帳簿保存のみで仕入税額控除ができる制度*5です。これにより、細かい金額のやり取りが発生する取引の事務負担が軽減されます。対象者は、基準期間における課税売上高1億円以下または特定期間における課税売上高5,000万円以下の事業者です(※)。

少額特例は仕入れ先がインボイス発行事業者か否かに関わらず、免税事業者であっても適用されます。ただし、1回の取引における合計金額が1万円以上である場合は適用されません。たとえば、7,000円(税込)と3,000円(税込)の商品を一度に仕入れ、合計金額が1万円(税込)となった場合などです。なお、少額特例は令和5年10月1日から令和11年9月30日までに行う仕入れが対象です。

※消費税の基準期間と特定期間は以下のように定められています。

基準期間特定期間
個人事業者の場合前々年前年1月から6月まで
法人の場合前々事業年度前事業年度の開始の日以後6月

2割特例(小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置)

2割特例とは、売上税額の8割相当を特別控除でき、消費税の納税額が本来の売上にかかる消費税の2割となる経過措置です*6。たとえば売上にかかる消費税額が10万円の場合、仕入れにかかる消費税に関わらず、納付する消費税は「10万円×20%=2万円」となります。通常の仕入税額控除が適用される場合、仕入税額が5万円とすると、納付する消費税は「10万円ー5万円=5万円」です。

2割特例の対象者は、インボイス制度をきっかけに免税事業者からインボイス発行事業者となった課税事業者です(基準期間の課税売上高1000万円以下等の要件を満たす必要あり)。もともと基準期間における課税売上高が1,000万円超の課税事業者や、資本金1,000万円以上の新設法人の場合などは対象外*7となります。適用期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間です。

特定の取引に対するインボイス交付義務免除

次の取引はインボイス交付が困難であるとされ、一部交付義務が免除されます*8

  • 3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送
  • 出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限ります。)
  • 生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります。)
  • 3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等
  • 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります。)

以上の取引では、インボイスの発行や保存を必要とせず、仕入税額控除の適用を受けられます。

インボイス登録にかかる期間はどのくらい?

国税庁によると、令和5年11月9日時点において登録申請書を提出してからインボイス登録通知が届くまでの標準期間は約1か月*9とされています。この標準期間は、登録通知までの正確な期間を保証するものではないため、あくまでも目安として把握しておきましょう。時期によってはインボイス登録申請書の提出が一時的に集中し、目安の期間よりも長引く可能性があります。

また提出日から15日以降であれば、申請書にインボイスの登録希望日を記載できます。登録希望日を記載すれば希望日までに通知が届かない場合でも、登録希望日にさかのぼってインボイス発行事業者としての登録を受けられます。

インボイス制度に関する知識を身につけて適切な対応を検討しよう!

インボイス制度への対応を迷われている方は、取引先にインボイスが必要かを確認したり、登録のメリット・デメリットなどを加味したうえで検討しましょう。また、インボイス制度は複数の特例措置などもあり複雑化しています。正しく理解できているか不安な方は自分一人で判断せず、不安な場合は税理士などの専門家に相談して判断することも大切です。

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<出典>
*1:「国税庁|適格請求書等保存方式の概要」p5より
*2:「国税庁|5 適格請求書等の写しの保存」p99より
*3:「国税庁|No.6625 適格請求書等の記載事項」より
*4:「国税庁|5 経過措置 (免税事業者等からの仕入れに係る経過措置) 【答】 適格請求書等保存方式」p143より
*5:「国税庁|少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置)の概要」より
*6:「国税庁|2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」より
*7:「国税庁|2割特例の適用ができない課税期間①」より
*8:「国税庁|交付義務の免除」より
*9:「国税庁|適格請求書発行事業者の登録件数及び登録通知時期の目安について」より

ABOUT ME
ライター Keisuke Ito
一橋大学卒。投資銀行や資産運用会社での社会人経験がある傍ら、ライターとして5年ほどの実績。転職や起業、キャリア形成や資産運用、不動産投資など多様なジャンルで多数の記事の執筆実績あり。証券アナリスト資格保有。
エディター Kakuhata Kyosuke
同志社大学 生命医科学部医情報学科卒。在学中、基礎科学や生体情報の取得・制御、プログラミングについて学ぶ。大学院進学後Pythonデータ解析や生体化学を学んだあとライター業を開始。現在はフリーランスとして活動し、キャリア領域のメディアを中心にSEO記事を編集・執筆している。
税理士 / 監修者 高橋和也
大阪市立大学法学部卒業後、クボタ、インテリジェンス等で10年以上営業職に従事。その後、会計知識ゼロで35歳のときに会計業界に転身。2017年に43歳で税理士登録・開業。営業経験を活かしたフットワークの軽さで、都内から関西、四国、九州まで幅広いエリアのお客様をサポート。一般社団法人など非営利団体の税務を得意とし、最近では大学アメリカンフットボール関連の一般社団法人の顧問税理士も務める。また、自身のYouTubeチャンネル「たかはしかずや税理士チャンネル」で一般社団法人やインボイス制度などの情報を発信。共著に『一般法人・公益法人の理事・監事・評議員になったらまず読む本』(忘羊社)。

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